49話
「え? いない?」
「はい。そうなのです」
オレは依頼を完遂させるため、依頼人であるナッシュ君に会いに魔法使いギルドに来たが、肝心のナッシュ君がいないという。
「今日はお休みなのですか?」
「いえ……その、昨日から無断で休んでいまして……」
「普段からそういうことをしているのですか?」
「とんでもない! あの子は態度は大きいし、口も悪いですが、仕事に関しては真面目なんです!
休むときだって、必ず事前に伝えてきますので」
ふむ。
と、なると……。
「自宅は確認しました?」
「はい。正確には、このギルドの職員用の寮がありまして。
その一室に彼は暮らしています。
どうも、夜の内にこっそり抜け出したようで……」
「自分からですか。何か異変というか、なかったのですか?」
「先程も言いましたが、寮なので、何かあればわかります。
恐らく、自分からバレないように、出ていったのでしょう」
「探しているのですよね?」
「もちろんです。手の空いた職員が。
他にも、都市の警邏隊に報せてあります」
どうも、自分から姿をくらましたようなので、事件性はなさそうだが、かといって、働いているとはいえまだ子供なので、放っておくわけにもいかない。そんな状況か。
うーん。
あまりできることはないか。これ以上だと、大袈裟になりかねない。
まだ、一日しか経ってないし。
ただ、一日も経った、とも言えるが。
オレが口を出すことでもない、か。
「依頼はどうしましょう?」
「そうですね。こちらで処理できます。報酬は預かってますので」
ということなので、精霊草を『アイテム』から取り出し、受付の女性に渡す。
お金を受け取り、オレはギルドから出た。
受付嬢さんの視線を背中に感じつつ。
「やっぱり、疑われているなぁ……」
魔法使いギルドから離れて、しばらく歩いてから、オレの口からつい独り言が漏れた。
ディーネが首を傾げて、なに? という顔をする。
カワイイ。
……ではなく。
オレの視界の簡易マップには、しっかりと跡をつけてくる二つの光点が見えている。
勘違いの可能性もあったが、適当な屋台で買い食いをしたら、その光点も動かなくなった。
で、オレ達が歩き出すと、またついてくる。
決まりだよね。
まぁ、当然といえば、当然だ。
なんせ、ナッシュ君の依頼をオレが受けた夜に、ナッシュ君が寮から抜け出した。
これで疑うな、という方が無理がある。
ただ、オレがナッシュ君を連れて行った、とか、危害を加えた、とまでは考えていないと思う。
それなら、オレを拘束するとか、何かするだろう。
何か怪しい、程度なので、受付嬢さんはオレに事情を話し、泳がせているのだ。
どうしようかな?
オレはギルドからの──正確にはナッシュ君の──依頼は一応完遂した。
これ以上、この件に関わる必要はない。
むしろ、変に関わると、あらぬ疑いがかけられそうだ。
面倒を避けるなら、もう宿屋に戻った方が良いのだが──
「なに? ディーネ」
ディーネがオレの耳に顔を寄せて、何か伝えようとしてきた。
それを聞いたオレは──ナッシュ君を探すべく、走り出したのだった。




