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32話

 それから、ギルドの受付で正式に依頼を受領した。

 もちろん、指名依頼という形で。


 指名依頼というのは、その名の通り、特定の人物を指名して依頼することで、つまりそれだけ周囲から評価されている、ということである。


 だから、本来はオレのような登録したての新人にはないことなのだが、依頼を完遂するには、精霊がいなければならないので、特別に許可された。


 その後、仕事のナッシュくんと別れて、オレ達は職人ギルドに向かった。


 ――魔法のことを聞き忘れたのに気付いたのは、魔法使いギルドからだいぶ離れてからだった。orz




 ※※※※※




 ギルドに登録して加入するということは、ギルドがその人物の身分を保証してくれる、ということだ。


 加入すること自体はそれほど難しくはなく、簡単な受け答えで可能だ。そうすれば、仕事を斡旋してくれる他、様々な権利を与えてくれる。


 ただし、その権利には当然のように、義務が付随する。

 いくつかあるが、代表的なことは、ギルドに持ち込まれる依頼を、定められた回数を、定められた期間の内に受けなければならないことだ。


 その義務が果たされないとなると、ギルドから除名されるのだが。

 つまるところ、ギルドに貢献してさえいれば、(ある程度は)何をしても構わないのである。


 もっとも、そうしないと、自らの命に関わるような危険な仕事を、引き受けるようなことなどしない。

 身分などの権利が欲しい側と、危険な仕事をして欲しい側、双方が得をするシステムなのだと言える。


 さて、魔法使いギルドでは、精霊を使役する――この言い方は賛否があるものの、他に適当な言葉は見当たらないので、このまま使用する――者は、強制的に登録しなければならない。


 これは、精霊の力が天変地異に匹敵するほどだからだ。

 もちろん、精霊によって力の強弱はあるし、そもそも無差別に力を行使することはない。

 だが、それだけの力を精霊ではなく、人が扱えることに問題があった。


 精霊を使役する者――精霊使いと呼ばれている。

 彼らとて、無差別に、かつ無尽蔵に精霊の力を扱えるわけではない。

 それ相応の代償が求められる。


 だが、それは端から見てわからないことなのだ。


 故に、魔法使いギルドは、彼らをギルドの一員として、言葉は悪いが、管理しているというわけだ。

 管理していると世間に喧伝して、実際は保護しているのだ。


 だから、というわけではないが、彼ら精霊使いは魔法使いギルドに加入しても、ノルマが発生することはない。

 というか、ノルマをこなせずにいても、ギルドから除名することなどできないのだ。

 ノルマの意味がない。

 なので、ノルマをなくした、というわけだ。




 ※※※※※




 オレがディーネにこんなことを話していたのは、理由がある。


 オレは現在、冒険者ギルドと魔法使いギルドに加入している。

 しかし、冒険者ギルドはともかく、魔法使いギルドに対し、精霊使いであるオレは、仕事のノルマはない。

 加えて、夜に眠る必要がなくなったオレは、夜中ヒマになる。

 さらに加えて、オレは【錬金術】のスキルがある。

 ならば、夜に【錬金術】のレベル上げをして、その成果は売るなりなんなりすれば、お金になる。

 そしてさらに、その成果を職人ギルドに報告すれば評価される。

 だからオレは、職人ギルドに登録したのです。


 別に、ディーネが責めてきたというわけでもないけど、浮気する旦那みたいになってしまった。

 言い訳することではないけど、なんとなくそうなってしまったのは後ろめたかったのか、と自己分析してみたり。


 とにかく、オレは職人ギルドに登録した。

 様々なサポートを得られるが、仕事のノルマをこなさなければならない。

 早速、今夜にでもいろいろ試そうと思う。

 そのために必要なものは、すでに職人ギルドで手に入れたのだ。


 もちろん、本来の目的も忘れてはいない。

 ナッシュくんの依頼である薬草――精霊草について、職人ギルドの資料室で調べたのだ。


 資料室の出入りは、職人ギルドの一員でなくてはならない。

 今回は、魔法使いギルドの紹介があり入ることができたが、次回からはそうはいかない。

 衝動的に職人ギルドに加入したくなっても、しょうがないよね?

 後悔はしていない。反省して言い訳したけど。


 精霊草を調べた結果、ナッシュくんの依頼は簡単だな、とオレは結論した。

 何故なら、それがディーネが知っている薬草だったと、判明したからだ。

 水から水へ転移できるディーネがいれば、すぐに行ける。

 それで依頼は完了だ。


 ただ、問題が一つある。

 あまりにも早く終わらせると、逆に疑われてしまうのではないか。

 あるいは、変に目立ってしまうのではないか。

 特に、ディーネという存在が目立ってしまうと、面倒なことになりそうな予感がするのだ。


 なので、ナッシュくんの依頼の他にも、冒険者ギルドで仕事を探そうと思う。

 また、メルガルド大森林は広大で、モンスターも多いらしい。

 きっちりと準備をして、万全の状態で森に向かおう。


 必要なものを手に入れるためにも、冒険者ギルドへ向かうことにした。


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