28話
「聞いてんのか!? てめえだよ! 頭の上の耳は飾りか? この獣人が!」
大声を張り上げる男の方を見ると、確かに頭に猫のケモミミのある10歳くらいの女の子がいた。
……。テンプレ展開かと思ったら、また違った。
もはや、オレの思い描くテンプレな展開は、存在しないのか。
「……うるさいエルフだなぁ。そんな大声出さなくても、聞こえているよ。ボクの耳はとても良いからね。
それよりも、どうして、ボクがここにいちゃいけないんだい?
なんで、エルフにそんなこと言われなくちゃいけないんだい?」
……あの大声出しているの、エルフなのか?
イメージと、全然違う。
あんなのエルフじゃない!
それとあの獣人の女の子、ボクっ娘か。盛り過ぎでは?
「うるさい! ここは魔法使いギルドだぞ! 獣人は魔法が使えないだろうが! このメスガキが!」
「……はぁ。これが、ギルドに所属している魔法使いか……。期待外れだよ」
「ンだと、ごらぁ!?」
「いくつか訂正するけど……獣人だって魔法は使えるよ。ただ、種族として魔力が少なく苦手で、その代わり身体能力が高いから、魔法を使わず、武器をよく使うってだけさ。
でも、たまに魔力が高く産まれる個体もいるのさ、ボクみたいにね。
それと……ボクは女じゃない、男だ!」
な、なんだと……ボクっ娘ではなく、男の娘だと……。
ネコミミ、子どもなのに口達者、獣人なのに魔法が得意(しかも自画自賛)、さらにかわいい男の娘だなんて……どれだけ属性を加えれば気が済むんだ。
恐るべし。テンプレ展開なんて、もうどうでもいいや……。
「そんなこともわからないオジサンに、用はないよ! オジサンこそどっか行ってよ!」
「……言わせておけば、このガキ……」
エルフさん絶句。口では勝てないな、あれは。
「放っておいていいのですか?
その内、手が出そうですけど……」
オレは、受付に座っている男性に声をかけた。
その受付の男性はオレに視線をやると、騒ぎの方を見て、再び慌てたようにオレを見た。
何故、二度見?
正確に言うなら、ディーネを見ているな。
「……あの?」
「あっ、申し訳ありません! 失礼しました。
ええと、あの騒ぎですけど……ギルド側ではなにもしません。
魔法使いなので口論はよくあることで、口が達者なのも素質の内です。
ただ手を出したなら、かなり厳重に処罰します。あのエルフの彼はそれをよく知っているので、殴ることはないかと」
「そうですか……。でも、それなら敢えて挑発して殴らせて、処罰を受けさせることは可能では?」
「その場合、双方を処分しますので、割に合わないでしょう」
それもそうか。
じゃあ、あの騒ぎはそのままにしよう。オレには、関係ないし。
「では、登録をしたいのですけど……実は既に冒険者ギルドで登録してまして」
「そうでしたか。では、プレートをお預かりします」
オレはプレートを渡すと、手早く手続きを済ませた。
どうやら、一枚のプレートでかまわないようだ。
それから簡単な説明を聞いて(冒険者ギルドとさほど変わらない)、オレは踵を返す。
魔法についてはもう遅いから、また明日。
「あの、少々お待ちください。
お連れしているのは、精霊様なのでは……?」
……? あ、そうだった。
すっかり忘れていた。ディーネも、白い目をしてオレを見ている。そんな目で見ないで!
「はい、城門のところで、魔法使いギルドに行くように言われていました」
「そうなんです。精霊様が悪さをするとはこちらも考えてはいませんが、都市内にいることは把握していたいので、報告を義務付けています。
面倒だとは思いますが、ご了承下さい」
「いえ、当然のことだと思います。
えと、質問なのですが、毎回この都市を出入りするたびに報告を?」
「いいえ。この都市に着いたときと、長期に離れるときに報告頂ければ大丈夫です」
ふむ。なにかしらの依頼で都市から出る分には、報告することはないんだ。まぁ、いちいち来られても大変だろう。
「では、今回はこれで報告完了ですか?」
「最初なので、精霊様にはこちらに手を触れて頂けますか」
そう言って、受付の男性は透き通った水晶を取り出した。
「城門では、紐の付いたリングを……ああ、それです。
それは簡易のものでして、こちらの水晶を」
ディーネが出された水晶に指で触れると、一瞬発光して、すぐに光は消えた。その代わり、透明だった水晶は青くなっている。
「……おお、かなり魔力の強い精霊様ですね。色が濃いほど、力ある証拠なのです」
そうなのか。ドヤっとした顔をしているディーネだが、なんか面倒なことになりそう。
「では、この水晶を手放さないように、お願いします。
申し訳ありませんが、チェーンを付けるなり、指輪にするなりの加工はそちらでお願いします。精霊様は様々なお姿をされているので、こちらであらかじめ加工してしまうと、二度手間になる可能性がありまして」
うーん、そういうことなら、仕方ないか。
どこか探すか。
「その木製のリングは、城門に返して下さいね」
「はい、わかりました。
お世話になりました、ありがとうございました」
これで用件は済んだ。
まぁ、他にもあるけど、明日以降でも良いか。
帰ろっと。宿屋でゴハン食べて、風呂入って、寝よう。
オレとディーネは建物から出るべく、扉に向かうと、
「待って下さい! そちらは精霊様なんですよね? ボクの話を聞いて欲しい!」
やってきたよ、面倒事。
しかも、さっきの騒ぎの男の娘じゃないか。
やだーもう帰りたい。




