27話
結局、冒険者ギルドではテンプレ展開はなかった。
何故だ?
テンプレっぽい説明を聞いただけだなんて。
改めて、ギルドで聞いた説明を思い返してみよう。
・ランクがある。G~SSSまでの10段階。
・ランク毎に適した討伐、採取などの依頼がある。
・期限内にこなさなければならない依頼の数が定められている。
・できなければ、ギルドから除名される。
・基本的に、冒険者間のトラブルは関与しない。
・ただしその事で依頼人に被害がでるならば、ギルドで解決する。
こんなところか。
もうちょっとあったけど、これを覚えておけば、問題なしだ。
高校時代の教師が言っていて、納得したというか、やけに耳に残っている言葉がある。
と言っても、名言とか含蓄のあるとかではなく、ただその時の自分にはちょうど良かった、という程度だけど。
それは、
「暗記する必要なんてない。知りたいことがあったら、調べるか、知っている人に訊けば良い。調べ方こそ覚えておけ」
だった。テスト前だと思う。
ノートの持ち込みが認められていたテストだった。それでも平均点が低く、つまりただ漠然と教科書に書いてあることを答案に書いても、得点にならないということだ。
もちろん覚えておけば手っ取り早いが、全てを記憶しておくなんて、大抵の人にはムリである。
そんなことするくらいなら、全て記録したノートを持っていれば良い。
実際、そうして人類はPCやスマホといった記憶媒体を持つようになったのだ。
オレはあの言葉を聞いて、暗記するという行為は(ほぼ)しなくなった。
正確に言うなら、暗記しようという努力をしなくなった。
その代わり、大事なことはメモするようになった。必要になったら、メモを確認すれば良い。
問題は、人生においてメモができないことが多々ある、ということだった
手元に筆記具がないとか。
そう。今である。
こういうときは、頑張って覚えておくしかない。
忘れてしまうことは多いけど、本当に大事なことは意外と覚えているものなのさ。
テンプレなギルドのテンプレな説明だったけど、多分覚えていられる。なんとかなる……はず。
そんなことをディーネと話しながら、魔法使いギルドに向かっている。
冒険者ギルドで場所を訊いていたし、そんなにわかりにくいところにあるわけではなさそうなので、迷わずたどり着けるだろう。
その途中に、服屋があったので買い物をすることにした。
オレとディーネの服だ。あと、靴も買わないと。
あまり時間がなかったので、さほど選ばずに、当面の着替えだけ購入する。
ちゃんとしたのは、後日にしよう。
また、その近くに雑貨屋があったので立ち寄る。
ざっと見て、必要なものを買う。
意外だったのは、液体のセッケンとシャンプーがあったことだ。
訊くと、とある植物の樹液が、人体に害がなく汚れを落とせるのだとか。
すぐに買った。
これで風呂があればな。
「……あるよ」
なぬ?
店主が言い放った、とあるドラマに出てきたバーのマスターみたいなセリフを聞いて、思わず二度見してしまった。
どうやら公衆浴場があるし、最近では宿屋に風呂があるところも増えてきたそうな。
オレの泊まる宿屋にも、あると良いな。
風呂好きの日本人にとって、ありがたい風潮です。
もっとも、ディーネに頼めば、汚れを落とすことはできるのだが、やっぱり風呂は別物だと思う。
嬉しくなって、思わずたくさん買い物してしまった。
お金はそれなりにあるが、無駄遣いできるほどでもない。
反省しよう。……後悔はしないが。
※※※※※
なんやかんやあって、魔法使いギルドに到着した。
冒険者ギルドと違って、路地にある平屋のレンガ造りの建物だった。
そう言えば、この都市の建物は、ほとんどレンガ造りだな。
木製もないではないけど、少ない。
近くにあんな大きな森があるが、伐採しないのか。
そんなことを考えつつ、魔法使いギルド内に入る。
立て付けの悪い扉を開けて中を覗くと、ちょっと眩しかった。
外は太陽が落ちかけて薄暗くなり、建物の中は照明がついていたからだ。
勝手なイメージでランプを想像していたが、なかなかどうして、かなり明るい照明がある。蛍光灯とあまり変わらない。
神様は、剣と魔法のファンタジーな世界だと聞いていたから、勝手に文明も中世くらいかな、と思っていたのだ。
そういえば、中世の街中はあまり衛生的ではなく、臭いも酷かったと聞いたことがあったような気がするけど、今歩いてきた道はそんなことなかった。風呂とかセッケンとかもあるし。
ここだけなのか、それともこの世界全体がそうなのか。
1ヶ所に留まらす、いろいろなところを観て旅する、というのも楽しそうだ。
「おい、てめえみたいのが、ここで何やってやがる!? とっとと帰んな!」
……。
今さら、テンプレ展開、だと……?




