24話
いろいろ考えた。送還しよう、とか。
でも、いいや。
なんとかなるさ。このまま、行こう。
でも、スケスケの服や裸足、僅かに宙に浮いている身体の問題は、解決できるなら、してしまいましょう。
ということで、ディーネさん。
「その服なんだけど、もう少し透けないように……うん、できたんですね。じゃ、靴も水で……。ガラスの靴みたいだけど、うむ、問題なし。キレイキレイ。宙に浮いているのは……なるべく地面スレスレで。え? 疲れる? 服と靴は買うから、もう少し頑張って」
ふむ。なんとかなった。
エロい系神秘的お姉さんから、キレイ系天然的お嬢さんに変身した。
これで行こう。
ちょっとバタバタしたが、城門へ緊張しつつ向かう。
跳ね橋を通って、何食わぬ顔で城門をくぐり――
「ちょっと待て」
抜けられず、鎧を纏い槍を持った門衛さんに声をかけられた。
こういうときって、何もしてないけどドキドキするね。
自転車に乗っててお巡りさんに声をかけられたときとか。
「……なんでしょう?」
「ここを通るには、身分証が必要になる。持っているなら、見えるところに身に付けてくれ」
む。確かに今、オレの横を通り過ぎた男は、首にかけられた何か――ペンダントかタグらしきものを見せて行ったな。
あれがそうなのか?
「……えと、すみません。ないんですけど、入れます?」
「そうか。ならば、通行税を払ってもらおう。500Eだ。ただし、中で身分証を手に入れたら、それを持って来るがよい。半額は返すことができる」
大柄で髭面の門衛は、しかめ面でそう言った。
全額返すことができないのが、申し訳なさそうだ。多分、文句を言う人が多いんだろう。
ただ、税金と言っているわけだし、手間賃とかも含まれているんだろうから、仕方ないね。
それに、変なやつとか無差別に入れるよりは、マシなのでしょう。
「わかりました。今、出します」
「いや、あっちに行ってくれ。あの扉だ」
そう言って指し示した先に扉があり、その向こうから痩せた男性が手を振っていた。
「あの男についていけ」
言われた通り扉を抜けると、廊下が延びさらに扉がいくつかある。男性はその手前の部屋に入った。
オレとディーネも続いて部屋に入る。
少し狭い部屋で、小さな机と2脚の椅子しかない。
なんか警察の取調室みたい。
痩せた男性は椅子に座り、オレにも椅子に座るように合図した。
20代半ばくらいに見えるけど、やたら顔色が悪い。
胃でも悪いのかな。
仕立ての良い服を着ているからか、兵士っぽくない。どっちかというと、官僚みたいな。
「あー、申し訳ないけど、椅子がないんだ。そちらの方は立っていてもらうか、送還してくれないか?」
……。バレてるし。
「あの。わかるのですか? 何故?」
「うん。まぁ、精霊っていうのには驚いたけど。
一応、ここは城門だし、備えくらいはしているから。
どうやって、とかは秘密。
でも、わかる人はわかるよ」
ふむ。人前では送還した方が良いだろうか?
「城門の内側は安全だと、我々は人々に信じてもらわなければならない。
テイムしたモンスターとか、召喚獣とか、あるいは契約した精霊だとか、わからない人には恐怖でしかないから。
だから、君が精霊を連れていたいなら、ちゃんと許可を得なくてはならないんだ。
でないと、秩序が保たれない。
了承してもらいたいな」
「なるほど、理解しました」
逆に言うと、許可さえ得れば、連れて歩いても良いわけだ。
「わかってもらえて、嬉しいよ。時々、話の通じない人とかいるし。
うっ、胃が……。
ふう。じゃあ、早速手続きを。まずは君から。
名前は?」
「ラムダと申します」
男性は紙を取り出し、その上に丸い水晶を載せた。
「そう。で、これに、指を置いてくれるかい」
オレは言われた通り、ビー玉くらいの水晶に指を置く。
水晶が淡く青く光った。
その光は、敷いてある紙に広がり、消える。
「うん。問題なし」
そう言って、男性は紙に文字を書いていく。インクもなしに、すらすらと青い文字が綴られていった。
何これ。
「これは君の魔力を調べたのさ。
魔力って人によってそれぞれ違うから、1度調べれば済むんだ。
それで、もし仮にだけど、君が何らかの問題行為を以前にしていると、さっきの光が赤くなり、我々はそれを知ることができる」
へぇ。スゴい。便利だなぁ。
「さぁ、これで良し。この書類はなくさないように。君の一時的な身分証になる。
ちゃんとした身分証を作ったら、またここに来てくれ。この書類と引き換えに、払った通行税の半額を返すから」
書類を渡されたので、オレは500Eを払って受け取った。
なになに。『この者、ラムダは〜』云々と書かれている。
っていうか、日本語に見える。
今さらだけど、オレ、日本語で話しているけど、なんで通じているのかな? テンプレ? チート?
「何度も言って悪いが、その用紙をなくさないように。魔力を使って、文字が何度も書けるという高級紙なんだ。使い回しているので、なくされると、弁償してもらうから。結構高いよ」
「あ、はい」
その後、ディーネも似たような手続きをした。違いはというと、水晶ではなく、小さな木製のリングだった。首から下げるように、紐付きである。
「それも仮のものだ。精霊に関していうと、魔法使いギルドに行ってくれるかい。
詳しいことはそこで聞いて」
魔法使いギルド。なかなかの胸ドキワードだ。




