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187話

 時間を確認すると、午前6時。

 まだそんな時間かと思うか、あるいは、もうそんな時間かと思うべきか。

 意識が戻ってから、一番最初に考えたのはそんなことだった。


 そして、ゆっくり目を開ける。

 そこに映るのは、ディーネの優しい微笑み。

 うん。

 オレの頭は柔らかいものの上にあるから、恐らく膝枕をされているな、と思っていた。

 想像通りでした。


 ディーネに軽く頷いてから、オレは起き上がる。

 いくら【超回復】があるからといっても、精霊契約後の貧血はどうしようもないな。

 尤も種族的に、エルフ以外は血がほとんどなくなって死んでしまうらしいから、この程度で済んでいるのはマシなんだよね。


 まぁ、その甲斐もあって、オレの手には新たな精霊がいる。

 ……剣だけど。


 その真紅の剣は、以前のときより形状が変わっている。

 刀身が厚く幅広になっていた。

 具体的には、オレが今まで使っていた剣に近い。


 ふむ。

 どうやら、オレの血が足された影響が出ているようだ。

 形状なんかも、オレの記憶が反映されたのだろう。

 無意識だったけど、やっちゃったものはしょうがないか。


 さて、剣よ。

 意識はありますか? 返事してくれる?


 …………。

 あるぇ?

 まさかの無視? オレが主と認められてない、とか?


 ん? ディーネ、違うって、何が?

 どうなっているの、契約出来たんだよね?


 …………。

 ほぅ。

 精霊として存在するために、剣であることを選んだ、と。

 なに言っているのか、サッパリです。


 ……つまり、今は精霊の力を蓄えるためにグッスリと眠っている状態である、と。

 いつか目を醒ますはず。

 契約していれば、オレの魔力を得られるので早く覚醒出来る。

 そのために剣となり、オレに使われていれば、さらに早く覚醒出来るわけだ。

 win-winの関係になれる契約、ということか。


 なるほど、理解した。

 早く目が醒めると良いな。


 よいしょっと、立ち上がった。

 周囲を見回すと、ディーネ以外の皆は散らばって何かを探しているみたいだけど……何かあった?


 オレが起きたのに気付いたアヤノさんが、こちらに駆け寄って来る。


「ラムダさん! もう起きても大丈夫なんですか!?」


「あぁ、はい。大丈夫です」


 オレの返答に、アヤノさんはほっとしたように、


「良かった……。死んじゃったかと思いましたよ」


 ううむ……。

 ディーネたち精霊はオレとの契約から、オレの状態を把握出来るからそんなに心配はしてないだろうけど、アヤノさんはそうではないからなぁ。

 本当に申し訳ないと思う。


 それにオレは【超回復】や【不死】があるから、多少無理しても問題ないけど、それを端から見ていたらむちゃくちゃ頭の変なヤツと思われてもおかしくないかもしれない。

 そこは反省しないと、な。


「ところで、みんなは何をしていたんです?」


「あ、えっと、この部屋に何か隠されていないかな……って」


 ふむ、なるほど。

 そういえば、剣の精霊はここを護るような雰囲気だったな。

 何かあってもおかしくないか。


「でも、何もなさそうなんですよね……」


 アヤノさんは【鑑定】があるから、そういうのがわかるのだそうだ。

 ということは……?


「罠(トラップ)……?」


「……だと思います」


 これみよがしに怪しい隠し部屋に、召喚されて現れるそれを護っているらしき魔物。

 そんなものを見付けたら、突入したくもなる。

 人の心理を突いた巧妙な仕掛けである。


「そういうことなら、もう撤収しようか。

 私としては収穫があったし」


「そうですね……」


 アヤノさんは残念そうに呟くけど、ここはまだ地下二階。

 チャンスはこれからもあるよ。


 じゃあ、帰るか……っと、忘れてた。

 使っていた剣が折れたんだった。

 放り投げたのだけど、どこだっけ?


 あぁ、ジュリア、ありがとう。見付けてくれて。

 魔法を使おうと思っていたけど、手間が省けたよ。


 うーん、折れたこの剣、どうしよう?

 【錬金術】で直せないこともないけど……新たな紅い剣があるからなぁ……。


 お?

 おお?

 折れた剣が紅い剣に吸収された。

 どうなってるの?


「あ……今、【鑑定】で見たのですけど……」


 その手があった!


「名称が『精霊剣???+(1)』になりました。それ以外は何もわかりません」


 『精霊剣???(+1)』?


「わからないって言うのは……?」


「全て『?』になっていて、読めないです」


 んー?

 待てよ。今まで精霊の名前はオレが付けていた。

 今度もそうなのかも?

 試しにやってみるか。


 名前は……紅いし、それに因(ちな)んだのが良いかな?

 ううむ。


 よし! 『血桜』としよう。

 オレの血を吸って紅くなったのだし。

 血と桜に関する都市伝説もあるから、その怪しい感じがピッタリだろう。

 ちょっと厨二っぽいけどね!


「! また変わりました!

 今度は……『精霊剣・血桜(+1)』です!」


 やっぱりか。

 『+1』は……折れた剣を吸収したから?

 これも試そう。


 同じ素材──透理石で出来た大剣があるから、それを『血桜』に近付けてみる……が、何も起こらない。

 はて?


 では、前に練習で作った鉄の剣は……?

 今度は成功。


「……(+2)になりました」


 ということは……木剣はどうだ?

 出来た。

 別の木剣は……ダメか。


「(+3)です。ラムダさん、これって……?」


 うん。

 多分、素材によって……ということなんだろう。


 剣の形である必要はあるのかな?

 ミスリルのインゴットを取り出して吸収させてみる。

 ……いける。


 というわけで、手元にある素材を手当たり次第に『血桜』に突っ込んだ。


 …………。

 ……。


「(+19)になりました」


 まぁ、こんなものか。

 毛皮とかは無理だったから、剣の材料になるもの、ということらしい。

 ゲームとかだとこういうのはよくあったから、今後も何か良さそうな素材を見付けたら、いろいろやってみましょうかね。


装備 

精霊剣・血桜(+19)(New) 透理石の大剣 透理石のハンマー 

透理石の杖 圧縮魔力木の杖 圧縮魔力木の木剣 

神のボクサーブリーフ 革の帽子(改) 革の胸当て(改) 

革の籠手(改) 革の脚甲(改) 革のブーツ 

革のマント 圧縮魔力木の小盾

ミスリル銀布の鎧下 ミスリル銀鎖の鎖帷子

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