185話
地面に突き刺さった剣は動けなくなったようだ。
小刻みに揺らして地面から抜け出そうとしているけど、鍔のところを踏んづけてやった。
これで、よっぽどのことがない限り、抜け出せないだろう。
ふぅ。
一息吐けるかな?
連戦になったときは、焦った。
尤も、段々と弱くなっていったから、良かったけど。
あの巨大な虎が、一番しんどかったよ……。
あぁ、弱くなった、というのとは違うか。
何て言うのか……そうだ、質量が減っていったから、戦い易くなっていった。
そんな感じかな?
あの虎は、単純に大きく重くて速かった。
だから、苦戦した。
翔ぶ剣は速かったけど、それだけだ。
剣本体だけだから比較的軽く、簡単に風に煽られて軌道をコントロール出来なくなって地面に突き刺さり、現在に至る。
ゲームなら第三段階になると、やたら強力になるもんだけど、現実はそうでもなかった。
まぁ、今回の場合、どうやら剣が本体のようだから、こういう結果になったのかね。
さて。
これから、どうしよう?
出入口を見てみると、まだ結界があるのか、中に入れないようだ。
ディーネたちやアヤノさんがなんとかしようとしているけど、時間がかかるかな?
床には魔法陣が未だに展開されていて、解除される気配はない。
そもそも、この魔法陣はなんだろうな?
踏んでいる剣が、また暴れだした。
鬱陶しいので、強めに蹴ったら大人しくなった。
この剣もなんなのかね?
んー、考えてもわからないか。
まずはここから出る方法を……って、なんだ、あれ?
破壊したはずのマネキン擬きの身体が動いている。
ふむ?
てっきり剣が本体かと思っていたけど、そうじゃないのか?
おお?
破片になったマネキン擬きが一ヶ所に集まったかと思えば、今度は骨格模型──つまりスケルトンになった。
……本当に、弱くなっていっているよな。
今更、骨だけになってどうするつもりなんだろう?
ただ、今はオレの足元にあるが、剣と一緒になるとどうなるかわからないな……。
あのスケルトンも、じわじわとこっちに近寄ってくるし。
よし。
「『ストーンバレット』」
軽く様子見で、石弾を当ててみる。
威力よりかは、連射出来るようにしてみたけど、どうだ?
ガシャン!
あっさり石弾によって砕けるスケルトン。
よわっ!
待機中の石弾が無駄になったじゃないか……。
あ、いや、復活したか?
バラバラになった骨片が寄り集まって、再びスケルトンになった。
なったけど、一度目より少し小さくなってないか、あれ?
ふぅむ?
ちょっと魔法を変えてみよう。
『ストーンバレット』だと貫通してしまうから、『アクアバレット』にしてみよう。水の質量でノックバックが期待できる。
「『アクアバレット』」
水弾に当たり吹き飛ばされるスケルトン。
また砕けた。
……なんだろう、弱い者イジメしているような気がしてきた。
足で踏んでいる剣もブルブル震えているし──いや、抜け出そうしているんだよ、こいつ。
って言うか端から見たら、オレってスゲー悪役っぽくないか?
相手が剣とスケルトンだから比較的マシだけど、これを人間に置き換えたら、完全にアウトだよね?
ふはははは、とか笑ってみようか。
……はぁ。
「『アクアバレット』」
また復活したスケルトンを砕く。
足元の剣は、強く踏んづけた。あ、少し深く刺さっていった。
まぁ、良いさ。
見た目がどうだろうと。
安全第一です。
ここで、あのスケルトンに剣を渡すようなバカな真似はいたしませんよ。
もし、反撃されたら笑い話にもならないからね。
このまま続けましょう。
十数回目の『アクアバレット』で、とうとうスケルトンが復活しなくなった。
最終的に、小型犬くらいのサイズになっていた。
もう動かないよね?
もう少し待っても変化がなかったので、『アポート』で骨を回収した。ほとんど粉末だったけど。
〈アイテム〉の中に入れてしまえば、もうどうしようも出来ないだろう。
剣はどうしようか?
さっきから何度も蹴っているけど、なかなか折れない。
かなり頑丈な刀身なんだよな、これ。
オレの剣が折れてしまったし、代わりにならないかとも思ったけど、勝手に動く剣なんて使えないよなぁ……。
おっと。
床の魔法陣が消えていく。
同時に出入口を塞いでいた結界もなくなったため、みんなが部屋の中に入ってきた。
「ラムダさん! 大丈夫ですか!?」
泣きそうな顔でアヤノさんが駆け寄ってくる。
心配かけて、申し訳なかったです。
ディーネたちも悪かったね。
「あの……血がスゴいですけど、本当に大丈夫ですか?」
あ、そうだった。
『清浄』の魔法でなんとかしよう。
それとディーネなら血液を分解して除去出来たはず。
お願いしよう。
「怪我は治っているから大丈夫です。
それより、アヤノさん」
「……。はぁ、なんでしょう?」
アヤノさんは何かを言いかけたようだけど、諦めたように首を振った。
……本当にごめんね。
「この剣を鑑定してもらえませんか?
確か、ありましたよね? スキルに【鑑定】」
「ええ、ありますけど……。
わかりました、この剣ですね?」
しゃがみこんで剣をじっと見つめるアヤノさん。
おや?
そんな驚いた表情をして、何かわかりましたか?
「ラムダさん……」
うん。
「この剣……精霊みたい、です」
はい?




