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175話

 稽古が終わり、汗を流して、授業の予習をして、朝食を食べる。

 そして、学院に行くのだけど、今日はその前に用事がある。

 ジーク師匠に少々尋ねたいことがあるのです。


 三つある。

 一つ目は、ダンジョンの地図があるのかどうか。

 いや、あるはずなんだけど、何故渡してくれなかったのか?

 まさか、訓練の一環で、自力で一から作成しろ、だとか言わないよね?

 あり得そうだけど、そうでないことを祈ろう。


 二つ目は、そのダンジョンに宝箱的なものはあるのか?

 あると言うのであれば、なるべく探して、生活費としたい。

 ないのならば、一直線に下の階層を目指すことにして、空いた時間でお金を稼がなくてはならない。

 倒した魔物の素材だけでは、いろいろと足りないのです。

 ここは王国の首都だけあって、なかなかの物価らしい(買い物をしたレベッカの話では、だけど)。

 困ったら師匠に相談すれば良いのだけど、なるべくそれは最終手段にしたいです。

 オレにだって、プライドはあるのだ!


 そして、三つ目は、転移魔法のことだ。

 今は、水を介して転移をしている。

 ある程度、水が溜まっていれば良いので、オレは桶に水を溜めて利用してる。


 が、しかし、自然に水があれば問題はないが、オレみたいなやり方だと、その溜めた水に何かあった場合、転移出来なくなってしまうのだ。

 例えば、桶が引っくり返る、だとか。

 一応、対策はしているけど、何があるかわからないのだし、そもそも迂遠なのだ。


 ジーク師匠みたいに、パッと転移したい。

 そのことについて、相談したいのです。


 というわけで、行きましょう、ジーク師匠の元へ!






「地図は、学院にあるはずじゃ。確認してみろ。

 宝箱は知らん。あるかもしれんし、ないかもしれん。

 転移魔法に関しては……もう出来るはずじゃ。

 精進せい」


 ……。

 もうちょっと、詳しくプリーズ!


「儂は忙しいんじゃがな……それはお互い様か。

 まぁ良い」


 ズズッと、珈琲(?)を啜る師匠。

 やたら苦そうだな。そんなに顔を顰めなくても……。

 目の下に隈が出来ているし、大分お疲れのようですね?

 ……あぁ、だから、苦い珈琲を飲んでいるのかな?


「アホなことが多すぎて、仕事が減らん。

 ……愚痴は言わないでおこう。止まらなくなりそうじゃ」


 師匠は大きく伸びをすると、バキバキとスゴい音がした。

 ……マジで大丈夫ですか?


「さっきも言ったが、地図は学院にあるじゃろう。最初に渡さなかったのは……自分で何とかするものじゃからな、ああいうのは」


 あれ?

 それじゃあ、自分で作成しなきゃダメでしたか?


「そうではない。自分で気付いて、自分で探して、自分で手に入れる。

 大事なのは、そこじゃ。手段はどうでも良い」


 なるほど。

 作成するも良し。

 既存のものを探して、手に入れるも良し。

 ただ、それを自ら為すことが重要なのですね?


「次は、宝箱か……。

 ダンジョンには、どういうわけか、たまに発生しているのは聞いたことがある。

 それで中に人を誘き寄せている……というわけじゃな。

 尤も、頻繁に見付かるものでもないらしいが……」


 うーん。

 となると、やっぱり魔物の素材を売るのが確実か。


「ふむ。

 下の階層ならば、どこかに鉱物が手に入ったはずじゃ。それと、薬草も自生していた。

 これらは、なかなか高く売れたと思ったぞ」


 はぁ?

 鉱物はともかく、薬草?

 そんなのがダンジョン内で育つのか?


「まぁ、覚えておくことじゃ。

 最後は転移魔法か……。

 お主は、短距離転移は出来ているし、一度は儂が手本を見せた。おまけに、方法は違えど、自分でも長距離転移は出来るじゃろう?

 ならば、もう自力で到達出来るはずじゃ。

 魔法なんてものは、人にやり方を聞いてするものではない。そんなのは、最初だけじゃ。

 己に出来る魔法は、己で見付けるしかない。

 精進せよ」


 ……なるほど、わかりました。


「なら、どうして、魔法学院があるのですか?」


 アヤノさんの質問。

 うん、その答えは、多分わかる。


「未知を知るために、そしてその方法を学ぶためにあるのじゃな」


 何言っているんだ、と思うけど、そういうことなんだよね。


 学校みたいな場所は、行かなくなってから初めてその価値がわかるんだと思う。

 でも、社会に出てしまうと、行きたくてもそんな暇はもうなくなってしまう。

 だから、お歳を召してから大学に行く人の話をたまに聞くけど、恐らくそういうことなんだろうね。


 まだ高校生のアヤノさんには、わからないことだと思うよ。


「さぁ、もう良いじゃろう。

 とっとと、学院に行け」


 はい、行ってきます。






 学院に到着した。

 教室には、既にほとんどの生徒がいた。

 もちろん、王子様たちもだ。


 オレとアヤノさんは、机の上に参考書や資料をドサドサと並べる。

 授業に遅れないために勉強しますよ、だから邪魔しないでね、というポーズなんだけど、昨日はあまり王子様には効果がなかった。

 それでも、やらないよりマシだよね。


 これが乙女ゲーなら、アヤノさんは王子様を攻略するべく行動するのだけど、現実的にはそんなことは出来ない。

 婚約者がいる王族にアタックするなんて、いろいろアウトだよ。


 かといって、邪険に扱うわけにもいかないし。

 軍曹先生は、普通の生徒と同じ扱いで構わない、と言ってくださったけど、だからといって、本当にそうするわけにもいかない。

 どうしたものか……。


 オレは、爽やかな笑みを浮かべてアヤノさんの元へと向かってくる王子様を見て、大きく溜息を吐くのだった。


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