↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/228

176話

 午前の座学の授業が終了。


 今日で三日目だけど、まだまだ追い付けない。

 わからないところが多すぎる。

 歴史とか言語は、まだマシなんだ。

 日本で学んでいたことの感覚を、そのまま使えるからだ。内容が違うだけである。


 でも、魔法の授業はそうはいかない。

 基礎的な知識すらないから、他の生徒にとって知ってて当たり前のことが、オレたちはわからないのだ。

 かといって、質問して授業の進行を妨げるわけにもいかないし。

 とりあえずメモをして、後で調べるしかない。

 すると、その後の授業内容もよくわからないまま進むから、そこも後で調べることになる。

 復習の時間が増えていくので、予習に使う時間が減るから、また次の授業でわからない知識が出てくる。

 この悪循環だ。


 もっと、勉強の時間を増やせれば良いのだけど、そんなに勉強ばかりしてられないし。

 人はそんなに集中力が続かないから、勉強だけしていても逆に効率が悪いんだよね。

 試験があって、期間が区切られているなら出来なくもないけど、今の状況だとそうもいかない。

 マッハでストレスが溜まって、まず間違いなく身体を壊すだろう。

 それはいけません。


 でも、まだ三日しか経っていない、とも言える。

 そんなに焦ることもない。

 そうだな……一ヶ月経ってあまり状況が変わらないようなら、何か考えないといけないかな?

 ダンジョン行かないで、軍曹先生に補習をお願いするとか。


 そうなんだよね。

 ダンジョンに行くことがなければ、もう少し余裕があったのだけど。


 まぁ、言っても詮無いことだ。

 決めたのは、自分なんだし。自分で何とかしよう。


 少なくともオレは睡眠時間が必要ないから、その分アヤノさんよりも余裕がある。

 ストレスで胃を壊すこともないし、頭がキィーってなることもない。

 フォローは十分出来るだろう。


 焦らなくても、大丈夫です──勉強に関しては。


 そう。

 問題はもう一つある。

 王子様とイザベラ嬢だ。


 時間が出来る度に近寄ってきて、アヤノさんに話しかけてくるのだ。

 これが鬱陶しくて、仕方ない。


 見たところ、王子様は完全にアヤノさんに一目惚れしたようだ。

 どんなに鈍感な奴が見ても、そうとわかるだろう。

 そして、それを王子様は隠そうとしていないのだ!


 一目惚れしたのを隠そうとするなら良いのだ。

 一〇代の微笑ましさみたいのがあるし、婚約者がいる王族の責務というのがあるはずなのだから。


 ところが、この王子様はそういったことは何もなく、堂々と憚(はばか)ることなく、アヤノさんにちょっかいをかけてくるのだ!


 一応、アヤノさんに嫌われたくないのか、軍曹先生に釘を刺されたからなのか、そこまで強引なこともなく、アヤノさんが授業でわからなかったところを聞くと、懇切丁寧に答えてくれるので、便利ではあるから良いのだけど。


 そうしていると、キャンキャン言ってくるのが、王子様の婚約者であるイザベラ嬢だ。

 まぁ、当然なんだけど。


 婚約者が一目惚れした相手にコナかけているのを、何もせずにいられる女の子はいないだろう、いわんや一〇代の娘が、だ。

 余裕を持てよ、なんて言えるのは、部外者だからだろう。


 乙女ゲーだと、こういう役目を悪役令嬢などと言われるけど、彼女の立場からしたら、「おいおい、ちょっと待てよ」となるのは当然だよね。

 どう考えても、可哀想な立場にしか思えない(だからこそ、スゴい悪く描かれるのだけども)。


 と、同情したいのだけど、それをオレの耳元で喚かれると、そうもいかない。


 イザベラ嬢には、アヤノさんが全く王子様に興味がないのは見てとれる(そして、それはとても正しい)。

 かといって、婚約者とは言えイザベラ嬢から、王族である王子様を強く掣肘出来ない。

 しかも、アヤノさんのことをあまり貶しすぎると、王子様に反感を買われ、ますますアヤノさんの味方をされてしまう。

 これは良くない。


 なので、イザベラ嬢のターゲットは、アヤノさんに20%、オレことラムダに80%となる。


 オレを貶すことで、同じ立場のアヤノさんをも貶す、という高等テクニックを駆使しているのだ。

 なかなかやりおると、感心するが……。


 実は、アラフォーのおっさんに対して、一〇代の娘が悪口を言ったところで、そんなに効果はないのだ。

 可愛らしいなぁ、微笑ましいなぁ、と思うくらいです。


 まぁ、日本にいた頃は、本当に口が悪い子とかもいて、腹が立ったりもしたことがあったけど、それに較べたら、イザベラ嬢は育ちの良さが出てしまい、そこまででもないのだ。


 逆に、こっちの立場を逆手にとって、イザベラ嬢のことを褒めちぎると、ちょっと調子に乗っちゃって、オレに勉強を教えてくれるのだ。

 彼女こそ、チョロイン──げふんげふん……ヒロインと言っても過言ではないだろう。


「ちょっと! ちゃんと聞いていますの? これだから庶民というのは……」


「ええ、もちろん、聞いていますよ。庶民である私にも、とてもわかりやすくて、さすがですね。イザベラお嬢様は、貴族の中の貴族です」


「おほほ! それほどでもありますわ! おーっほっほっほ!」


 ……こんな感じです。

 昼食の間も付いてくるし、面倒だけど、このまま相手するしかないのかなぁ?

 害は(そんなに)ないし、喋る百科事典だと思って我慢するか……。


 アヤノさんを何とかして口説こうとしている王子様と、高笑いをし続ける公爵令嬢。

 それを見て、オレたちを睨み付けるお付きの方々。


 大丈夫ですかね、この国……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。