169話
カンカンカン。
という、木と木の打ち合う音がするかと思っていたら。
全く、そんなことはなかった。
そこには無音しかなかった。
オレは、軍曹先生の木刀に木剣で打とうとして。
軍曹先生はそれを弾く。
──いや、弾いているのではない。
受け流している。
しかも、オレの全ての力を吸収していた。
だからだろう。打ち合った瞬間、音がしない。
するり、ぬるり、とオレの木剣を滑らせる。
オレも、相手の斬撃を受け流すことは出来る。
でも、その力を完全に受け流すことなんて……。
有り得ない、とは言えない。
今も目の前で行われていることなんだから。
ああっ、まただ!
何だ、これ!?
本当に気持ち悪い!
くそっ! イライラする!
……ダメだ。
落ち着け。冷静になれ。
こういうとき、【状態異常無効】はありがたい。一呼吸で落ち着ける。本来の使い方じゃない気がするけど、気にするな。
上段から振り下ろして、返す刀で横薙ぎ、両手突きを仕掛けるも、全て受け流される。
木刀に当たる感触はなく、まさにのれんに腕押しだ。
バックステップして、距離を取る。
大きく深呼吸──。
「……魔法を使っても構わん」
──息を吐いた瞬間、声をかけられた。
ピクリ、と口の端が引き攣ったのがわかった。
舐められている?
いや、落ち着け。
実力差があるのは、今の攻防で理解している。
剣のみならば、確かにオレは軍曹先生の足元にも及ばない。
それに先生は、オレがどの程度魔法を使えるか知らないんだ。
だから、それを確かめるだけのこと。
そう。
それだけのことだ。
それだけのことなんだけど……なんだろうな? この腹の底からふつふつとしたものが沸き上がってくるのは。
怒り……なのかな?
剣に魔法が加わっても、まだあしらえる、と思われちゃったのかな?
……。
落ち着け。
大きく息を吸ってー、吐いてー。
「本気でかかってこい。全てを出せ」
吸ってー、吐いてー。
……。
……良いでしょう。
オレにだって、どうやらプライドというものがあったらしい。
バックステップでさらに距離を空けて、片手突きの構えをする。
「参ります」
たいした時間はかけてないけど、この異世界に来てから、それなりに研鑽してきたつもりだ。
言う通り、その全てをぶつけてやろう。
喰らえ!
ほぼノーモーションで木剣を投擲する。
同時に、軍曹先生に向かってダッシュ。〈アイテム〉から新たな木剣を取り出した。
木剣を回避する軍曹先生の足元に小さな落とし穴を仕掛けるも、避けられる。
構わない。
これで足元の注意を疎かにするわけにはいかなくなったはず。
また、落とし穴を回避したから、軍曹先生は一歩出遅れる。
その隙にオレは、【空歩】で空に駆け上がった。
もう地面に足を着けるつもりはないので、泥だらけにしてやる。
軍曹先生のあの気持ち悪い受け流しは、膝と足を使ったものだと想定して、その脚を使い難くしてみた。
そうでなくても、泥の地面でフットワークが損なわれるはず。
でも、あまり顔色が変化しないな。
まぁ良い。
オレはオレの攻撃をするだけだ。
強襲する。
上段からの振り下ろし。
重力も加えての一撃。
ガンッ!
軍曹先生に受けられたが、受け流すことは出来なかったようだ。
僅かに表情が変わる。
すかさず蹴り。
オレは魔力の足場を作ることで、地面に足を着けずに空中に留まったまま、三次元空間を利用して攻撃を仕掛ける。
厨二チックな命名をするなら……エリアルアタック、かな?
同時に、複数の攻撃魔法を展開。
あまり威力を重視せず、速度と数を優先する。
自分には、【結界術】で防御。
発動。
剣と蹴り、さらに二〇以上の魔法の銃弾を時間をずらして、放つ。
いくつかオレに当たるが、構わない。
当たらなかった分は、オレの身体が死角になっているだろうからだ。
それでも──ダメか。
剣も蹴りも受けられるし、軍曹先生も防御魔法を使っていたのか、魔法の効果がほぼない。
目とか狙ってみたんだけど、そういうのは上手く避けている。
【空歩】で死角からの攻撃を目論むけど、この人、後ろにも目があるのかな? 受けられるし、避けられる。
〈アイテム〉から石を出して、牽制の投擲をする。
さらに、【雷魔法】の『ライトニングウェーブ』だ。
放射線状に撒き散らされる雷撃は避けきれないはず。
射程が短いのが欠点だから、距離を取れば良いけど、それを見越して広範囲にすり鉢状の落とし穴を仕掛けた。
恐らくは、通用しないだろう。
でも、動きは止まるはず。
そこを狙って──っ!?
マジか!?
跳びやがった!?
軍曹先生も【空歩】を?
オレの攻撃に対処出来ていたのは、初見じゃなかったからか?
くそっ!?
混乱している場合じゃない!
軍曹先生が攻撃をしてきた。
一閃。
避けられたのは、運が良かったとしか言えない。
それほどの一撃。
でも、そこまでだった。
二撃目、三撃目と続く斬撃を受けきれない、避けられない。
強風を魔法で起こして、強引に距離を取る。
体勢を立て直して──うおっ!?
木刀を投げやがった!
間一髪で木剣での防御が間に合う。
だけど、一瞬目を離した隙に、軍曹先生の姿を見失う。
どこだ?
……さらに上空だと!?
目を向けて──軍曹先生の踵が迫ってくるのを、なんとか回避しようとするが……。
続けて放たれたお手本のようなローリングソバットを避けられず、こめかみに直撃を受けた。
数mの高さから吹き飛ばされ、グラウンドに落下。
ところが、狙ったのか、偶然なのか、最初にオレが作った泥の上に落ちたことで衝撃が緩和され、思ったほどのダメージはなかった。
でも、ローリングソバットの一撃によって、身体が動かない。
まぁ、じきに治るだろうけど。
これは、オレの完敗ですね。
軍曹先生。
そのお顔の通り、とっても強かったです。
これからも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
スキル
不死 状態異常無効 超回復
杖の才能 魔法の才能 高速思考
夜目 魔闘撃 魔力制御 魔力操作
魔法並列起動 バランス 身軽
空間把握 空間機動 空歩
杖LV.12 剣LV.10(+1) 体術LV.11(+1) 盾LV.10
投擲LV.10 必中LV.11 回避LV.11 ジャンプLV.10(+1)
ダッシュLV.10 耐久走LV.9 解体LV.10
危険察知LV.10 錬金術LV.11 結界術LV.11
召喚魔法LV.12 時空魔法LV.8
火魔法LV.9 水魔法LV.10 風魔法LV.10
地魔法LV.10 氷魔法LV.10 雷魔法LV.10
光魔法LV.10 闇魔法LV.10 無魔法LV.11




