160話
がくせいふくをてにいれた!
古典的なゲームのインフォメーションが脳裏に浮かぶ。
それくらい、ショッキングだ。
これをオレが着たら、コスブレになりませんか?
と言うのもこの学生服、黒の学ランなのです。
正確に言うなら、このニューカント王国の正式な軍服を少しアレンジしたものだそうだ。
数年前に学生にアンケートを取った結果、決まったらしい。
確かに、スッキリとしたシルエットでカッコいいのだけど、どう言い繕っても学ランなので、やっぱりなんとも気恥ずかしい。
女性用の制服は、セーラー服でいかにもなんだけどな。
まぁ、現役女子高生であるアヤノさんは、なんら問題ないだろう。
ふぅ。
学校に通うことが決まって以来、溜め息が止まらないよ。
幸せが逃げていってしまう。
簡単な試験と面接を、それぞれバラバラに受けて、渡された学生服に着替えた後、アヤノさんと合流する。
うん。
やっぱりアヤノさんは、学生服が似合うね。
いや、スタイルが良いから、何でも着こなせるのだけど。
鎧兜を着用していた先日までを思い出し、改めてそう思う。
日本人の感覚として、あれは違和感しかなかった。
どうでも良いけど、セーラー服って、絶対に過去の日本人が用意したものだよね。
よくやった、と声を大にして言いたいくらいです。
本当にありがとう。
「ラムダさん、お待たせしました。
わあっ、制服も似合いますね!」
はい?
アラフォーのおじさんに何を言っているのかな、この娘は?
からかってはいけませんよ。
「そんなことないですよ。
あと、アラフォーって言いますけど、とてもそうは見えませんから。
ねぇ、ディーネさん?」
はいはい。二人とも、お世辞をありがとうね。
そんなにクスクス笑いながら言ってたら、説得力はないよ。
「もう!
じゃあ……どうですか?」
アヤノさんはそう言いながら、クルリとその場で回転した。
スカートがヒラリと舞う。
それにしても、女性のスカートって、見えそうで見えないギリギリをよくコントロール出来るよね?
いつも、不思議に思うよ。
「うん。よく似合っている。
日本でもセーラー服?」
「はい。だから、本当はブレザーって憧れで、一度着てみたかったんですけど……言っても仕方ないですね。
ラムダさんは、学生時代、何でした?」
「私は、学ランだったね。
だから、今、またこれを着るとなると、とても恥ずかしいよ」
ブレザーだったら、スーツの感覚で着れたから、そこまででもなかったかもしれない。
「そういうものですか?」
そういうものです。
年を取ると、きっとわかるはず。
さて。
ここで長々と話していたら、怒られるかな。
教室に向かおう。
話は歩きながらでも出来る。
ところで、面接はどうだった?
「はい。
ジーク先生から事情を聞いていたようでして、わたしが奴隷であることは、学院長先生だけが知っているそうです。
だから、他の教師や生徒には話さないでいるように、とのことでした」
そうか……。
となると、オレはどういう立場でいれば良いのかな?
保護者?
「だと思います。
何かあったら、学院長先生に直接、話しても構わないそうですけど……」
まぁ、それは最終手段だね。
なるべく、自分たちで何とかしよう。
「そうですね!
あ、あと、ラムダさんが面接している間、そこの中庭で、遅刻してきた学生さんに会いまして……」
何でも、足を怪我して困っている様子だったので、回復魔法をかけてあげたんだそうだ。
その後、その学生に名前を聞かれたらしいけど、試験の時間がきて呼ばれたので、そのまま会釈だけして立ち去った、とのこと。
んー?
なんか……フラグが立った雰囲気が……。
「そこのキミ! そうだ! キミだ!」
もう少しで伝えられていた目的の教室に辿り着くところで、大きな声で呼び掛けられた。
いや。オレじゃなくて……アヤノさん?
「はい?
なんでしょうか?
……って、さっきの……?」
ん?
アヤノさん、どうかした?
立ち竦むアヤノさんに向かって、ズカズカと大股で近寄ってくる男子生徒。
クルクルとした金髪の癖毛はほどよい長さに切り揃えられ、清潔感とともに、とてもスタイリッシュである。
目鼻立ちはとても整っていて、日本にいたなら絶対にアイドルか俳優になっているだろうと思う。
背が高くて、足も長いし……帯剣しているのが、騎士っぽくて、またよく似合っている。
結論。イケメンです。それも、特上の。
オレたちが突然のイケメンの登場に唖然としている隙に、そのイケメンはアヤノさんの手を握り、
「やはり、この学院の生徒だったか!
まぁ、部外者は立ち入れないから、そうだと思ってたが、制服を着ていなかったから、少し悩んでしまった」
「はぁ……。
えと、あの……?」
目の前で捲し立てる男子生徒に、アヤノさんは戸惑っている。
でも、その手はさっさと振り払って良いと思うよ。
「先程は本当に感謝している。
誰が仕掛けたのか、悪質な罠に引っ掛かってしまい、足を怪我して往生しているところ、キミがやって来てたちまち怪我を治した上に、名前も言わずに立ち去るものだから、お礼も言えずに困っていたんだ」
ふむ。説明乙。
「その様子だと、キミは転入生かな?
よし!
何かあったら、俺に言ってくれ!
このニューカント王国第一王位継承者、レオナルド=ロンダ=サナダ=ニューカントを頼って欲しい。
大概のことは、力になれるはずだ!
ところで、麗しのキミの名前は?」
……。
さらっとナンパしてきたけど、王子様、キター!




