16話
「話を戻しますが、先程森の泉を一瞬で移動しているというので、できればオレも……あ、自分だけですか……そうですか」
残念。オレも一緒に移動できれば、この森の中から脱出も可能だったのに。
「……それなら、ここから人のいるところまでどのくらいです?
そもそも、この森はどこにあるか、わかります?
……どちらもわからない、ですか。そうですか……」
それもそうか。この森の中、それも泉周辺でしか行動できないんじゃ、しょうがないか。
困ったなぁ。適当に移動するしか、方法はないんだろうか?
太陽の位置で方角を確認しながら……そもそも、太陽は東から昇るのだろうか?
地球と同じだという保証はどこにある?
本気でサバイバルをする覚悟をするときがきたか?
水はなんとかなるので、この場所をベースにして食べ物を探しつつ、少しずつ――
「え? なんですか? 今、忙しい……は? 森から出る方法がある? 契約する? もう少し、詳しく、kwsk!」
おもわず肩を強く掴んでしまった。
精霊様の顔が痛みで歪むのを見て、オレは冷静になった。
いかんいかん。
「っと、申し訳ありません! 本当に大丈夫ですか?
おぉ!? それは回復魔法ですか? すごい!
……いや、興奮してしまい、申し訳ないです。はい、話を戻しましょう」
いろいろ話を脱線させつつ、詳しく聞いてみると。
精霊様は森の泉を自由に移動できる。
これは精霊としての力であり、現状その力はそれほど強くないので、自分以外を移動させることができない。
なので、オレを移動させるためには、2つの方法がある。
1つは、精霊様の力が強くなること。
そうすれば、他者を任意の場所――と言っても、森の泉があるどこかだが――に移動させることができる。
もう1つは、精霊様と契約すること。
そうすることで、精霊=契約者となり、契約者も精霊の力を行使することができる。
この場合、オレ自身が精霊様の力で、森の泉を自由に移動できる。
問題は解決したかに思えるが、もちろんそんな簡単ではなかった。どちらの方法も欠点がある。
前者は、とにかく時間がかかる。精霊様の感覚では、100年くらいならなんとかなるだろう、とのこと。
……時間がかかりすぎる。
なんか100年もあれば、森から出れそうだと思う。
後者は、精霊との契約は難しいこと。エルフ以外は、無理だと言われているようだ。
詳しく聞いてみると、契約には魔力と血液が必要であり、どちらもエルフと相性が良いそうだ。その理由は、エルフの祖先が精霊だと言われている。本当かどうか、比較的若いらしい精霊様――年齢は教えてくれなかった――はわからないそうだけど、感覚的にはエルフと精霊は近い間柄のようだ。
では、エルフ以外との契約は不可能なのか、というと、そうでもなく、エルフに較べて多くの量の魔力と血液が必要になるのだという。
どのくらい違うのか。エルフの場合、酷くても貧血になり、成功率が9割以上となる。
他種族の場合、軽くて貧血、酷くて出血多量になり、成功率は1割以下という結果になる。運が良ければ生きているが、ほとんどの場合、契約に失敗した上、死んでしまう。仮に成功しても、なんらかの後遺症が残るのだとか。
こうなると、精霊契約はエルフしかできない、と言われているのは、納得できる。
同時に、今のオレなら精霊契約はできるのではないかと思う。
何故なら――【不死】のスキルがあるのだから。




