15話
「なるほど、精霊ですか。え? それも水を司る精霊? それはすごいですねぇ。うん? ウソ? 見栄を張った、ですか? 実は、森の泉を司っている……と。いやいや、十分立派ですよ、ええ、とても。
それよりも、どうして精霊様は喋ることなく、私と意志疎通ができているのですか? 私に心を読む、などという謎の能力はないはずですけど」
そんな力は、神様くらいしか持ってないだろう。しかし、オレは目の前にいる、自称『森の泉の精霊』様とコミュニケーションがとれている。っていうか、精霊も見栄を張るんだな……。別に良いけど。
「ほぉ。自分の言いたいことだったり、意思だったりを相手に伝えることができる、と。便利……なのか? なぜ言葉にしないのですか? その方が……え? 精霊が言葉を口にすることで、現象として起こり得る可能性が?」
なにそれこわい。『死ぬ』と言葉にしたら、本当に『死ぬ』のか? 格が上ならそんなことはないが、格下相手ならそうなってしまうようだ。
そして、精霊より格下な存在は多いので、基本的に言葉を口にすることはないそうだ。
まぁ、言霊っていうくらいだし。それぞれのローカルルールってあるよね。
「あれ、でも、神様はべらべら喋っていたけど……。はい、会いましたよ。気さくな方でした。ふむ。少々事情がありまして……」
今に至るまでのアレコレを、かくかくしかじかと話す。あまり吹聴することではないけど、精霊様なら良いよね。神様みたいなモノだし、そもそも、他人に言いふらすことはできないし――ここに人がいるとは思えない。
オレの話を聞いた精霊様は、理解した、という感じで手を叩き、逆に神様事情を教えてくれた。
それによると、神様も精霊と同じのようだ。なので、地上に降りることは滅多になく、その必要がある場合でも、極めて短時間にした上で、話す内容を決めて、それしか口にしないのだという。
ただし例外もあり、力をもった神官、特に女性である巫女になら、【神託】というスキルで意思を伝えることができるらしい。
また、神界でなら直接会って話をしても、問題ないそうだ。理屈はわからないそうだけど。
「……詳しいですね。へぇ、精霊というのは、神様から分けられた存在だから? むぅ、よくわかりませんが、そういうものなんですね」
うんうん、と頷く精霊様。かわいらしい。
「さて、だいぶ話が逸れましたけど……そもそも精霊様はどうしてここに? ……定期巡回、ですか。突然現れたように思うのですが……? 森の泉ならどこでも移動できる? 一瞬で? なにそれうらやますごい」
精霊様は、ドヤっと胸を張った。たゆん、と揺れるそれ。目がそちらに向かうのを、意地と根性で無理矢理逸らしたです。
「……あー、申し訳ないですが、何かその、身体を隠すようなもの、ないですかね? 服とか、羽織るような、ですね?」
オレは視線を遠くにやりながら言う。っていうか、精霊様、オレの視線の先に来ようとしないで。見えちゃうから!
別に、女性の身体に興味津々な年頃というわけではないですが、全く興味がないというほど、枯れているわけでもないのです。
まぁ、相手は精霊という存在なわけだし、全裸であっても色気というような感じはしない。人形を見ているようなものだ。
しかし、それでも目の前で話したり、笑ったりしているのを見ると、なんとも思わないではないわけで……。
と、オレが言い訳なのかよくわからない弁解をすると、精霊様は口に手を当てて、うふふと微笑み――
「#○●◇*▽£」
なにを言っているのか、全く聞き取れない言語を唱えると、精霊様は指を振った。
すると、精霊様の足元の水が身体にまとわりつき、ワンピースのような服になった。水のせいか、少し透けて見えるが、肝心なところが隠れているので、問題ないだろう。
「……わざわざ、ありがとうございます」
再び精霊様は、ドヤっと胸を張る。その豊満な双丘はわずかにしか揺れなかった。オレはそれを見て少し残念に思ったのは、秘密にしよう……。




