134話
「ふむ。まあまあじゃな。
それなりに基礎も出来てきたし、身体の動かし方も慣れてきたようじゃな」
ぜーぜー。
あ、ありがとうございます。
でも、声が出せません。
「やはり、手本となる存在がいると、違うようじゃな。
あたしよりかは、アヤノの方が、基本に忠実で動きが見てわかりやすい。
これからも、あれを参考にするように」
「はい」
やっと声が出た。
おい、【超回復】、サボるなよ。
「もっとも、あれとは刃の形状の違いから、その扱い方は異なる。そこは参考にするな。
あくまで、身体全体の動かし方、だからな」
剣と刀の違いか……。
なかなか難しいことを言ってますな。
ただ、大剣を二刀流で軽々と扱っている師匠を参考にするよりは、マシなのかもしれないけどね。
「お昼ごはんですよー」
アヤノさんが呼んでいる声が聞こえる。
お腹も空いたし、早く食べよう。
食べ終わったら、ダンジョンアタックだ!
オレは今、猛烈に感動している!
何にか?
昼食のメニューにだ!
テーブルに並んだのは、なんと、カツカレーだった。
それも、ライスがある!
思わず、アヤノさんの顔を凝視してしまった。その顔は、ドッキリ大成功と書いてあるように、ニコニコしている。
抱き締めようかと思ったが、そこは抑制した。
でも、そうしたいくらい、驚いたし、嬉しかった。
声を大にして、叫びたい。
この世界にも、お米があったんだ!
「アーガスト聖王国は稲作をしてまして。たぶん、日本人をその地に留めておくため、なのでしょう」
これだけで、聖王国を好きになれそうな気がする。
……気がする、だけですよ?
「アヤノがカレーにチョコレートとコーヒーを入れたときは、気が狂ったと思ったっす。
でも、出来上がりを味見したら、美味しかったっす。
故郷ではそうしてたって言うけど、ニホンというところは、少しおかしいっすよ」
レベッカの言葉に、エリーゼがコクコク頷いている。
まぁ、そうかもしれない。
食べ物を魔改造することにかけては、日本人は変態的なんじゃないかと、オレも思っている。
そもそも、魚介類を食べるのだって、一部のものは、どう考えてもおかしい。
イカやタコはギリギリだけど、ウニやホヤなんかは完全にアウトだ。何故、あんな見た目のものを食べようと思ったんだろう?
最近だと、深海魚も食べられているみたいだし。
捕った獲物を無駄にしないとか、そのチャレンジ精神は素晴らしいと思うけど、やっぱり変態なのでは? と、思う。
それはさておき。
「おかわり」
三杯目はありますか?
コメ、ウマ。
「ご馳走さまでした」
あー、美味しかった。
なんか、久し振りに食べたよ、カツカレー。
日本にいる頃も、そんなに食べなかったから、なおさらなんだよね。もう食べられないかも、と、思っていたし。
食べ慣れていないらしいレベッカとエリーゼがいたから、カレーは少し甘口だったが、十分満足しました。
カツも、カレーをかけていない状態のものを別皿に用意してくれたので、衣サクサク、肉汁ジューシーを堪能できた。
ソースがあれば、と、思ったが、塩コショウで十分美味しかったよ。
うむ。
これは、アーガスト聖王国に、是非とも行かなければ!
お米を手に入れるんだ。
一度行けば、転移出来るしな。
これは、最優先事項だね!
はっ?
もしかしたら、醤油とか味噌はないだろうか?
アヤノさん、知らないですか?
オレの表情を読んだのか、アヤノさんはそっと首を振った──横に。
ショックで崩れ落ちそうになったが、なんとか持ち直した。
大丈夫です。
聖王国にないだけで、この世界にないと決めつけるわけにはいかない。
きっと、どこかにあるはず。
いや、大豆で良い。地球と似た食材は多いんだ。大豆だってきっとあるはずなんだ。
あるよね?
絶対に見付けよう。
なかったら、八つ当たりで、醤油も味噌もないこんな世界は滅ぼしてやる!
強い決意をして、昼食を終えた。
これからアヤノさんを連れて、ダンジョンに向かう。
準備は万全だけど、体調はどうですか、アヤノさん?
「はい。問題ないです」
んー。
明け方まで起きていたけど……顔色は悪くなさそうです。
だけど、昼食の仕度をしてたよね?
睡眠時間足りている?
「もともと、ショートスリーパー気味なんです。
それに奴隷になって、この大陸に来るまでの船の中では、じっとしているしかなくて……,。
もっと身体を動かすかして、体力を使わないと、眠れないんです」
うーん?
まぁ、本人がそう言うなら、良いか。
オレとディーネが後ろから、気にかけていよう。
では。
まずはアヤノさんのダンジョンデビュー戦なので、地下一階から参りましょう。
なに、ザコばかりだし。
落ち着いて対処すれば、アヤノさんの実力なら、無傷で突破出来ますよ。
そのために夜中に散々、武具の調整をしたんだから。




