120話
契約関係の諸々を済まして、奴隷商さんの好意で、お店でお茶を頂いて、マッタリしています。
あまりにもマッタリし過ぎて、一時間ほどの休憩が、二日くらい経っているような感覚だけど、気のせいだよね?
それも奴隷商さんが、美人さんなのが悪いのだ。
話していて、なかなか楽しい。
商売が上手な人は、やっぱり接客も上手ですね。
さて。
この後は、買い物に行こう。
アヤノさんの服や身の回りの物を買わないと。
特に、服が早急に必要です。
今着ているのは、簡素な貫頭衣で、作りが甘いからか、襟刳りが緩めだし、脇からも下着がチラチラ見えている。
さらに問題なのは、日本にいるときと同じ感覚なのか、アヤノさんがそのことに無頓着なのだ!
気にして欲しいけど、オレから指摘して良いものなのか?
奴隷商さんの方を見ると、オレを見ていてニヤリとした。
気付いていることに、気付かれている。
なんか、恥ずかしい!
でも、何も言ってくれないよ。
それくらいは、自分でなんとかしろ、ということか?
セクハラで訴えられませんかね?
では。
ディーネの方から……えと、ディーネさん?
どうしたんだ?
いつものように微笑んで見えるけど、目が微笑っていないですよ?
何故に、ご機嫌ナナメ?
ワタシ、ナニカシマシタカ?
うん。
触らぬ神に、祟りなし。
今はソッとしておきましょう。
仕方ない。
オレは〈アイテム〉から、雨避け用のローブを取り出して、アヤノさんに被せた。
そのアヤノさんの様子も、ちょっと変だ。
ゼンマイの切れたおもちゃみたいに、静かになっている。
現に、今もオレがローブを被せても、反応が薄い。
もっとも、無理もないと思う。
たかだか一七歳の少女が、異世界に放り出された上に、それに一緒にいた同じ境遇の仲間からも放逐されるとか、ちょっとあり得ない。
そりゃ、心も折れるよ。
そんな中、頼れるかどうかはともかく、同郷の年上──それも父親くらいか?──の男性の庇護を得られるのだから、虚脱感を覚えて、茫然自失にもなるだろうな。
まぁ、今は良いけど、いずれはこの状況に危機感を持ってもらいたいものです。
世の中の男性の九割五分は、変態ですからね。
自分の身は、自分で守りましょう。
おっさんとの約束ですよ。
さてさて。
奴隷商さんのお店を辞去して、楽しい買い物の時間です。
まずは、古着屋に行こう。
何度かお世話になったお店だ。
だからだろうか、懸念がある。
さんざん女性物の古着を購入していたので、品薄になっていないだろうか?
この世界の衣服は、オーダーメイドか、自分で仕立てるか、の2パターンだ。例外はあるけど。
基本的に、貴族がオーダーメイド。庶民が自分で仕立てている。
そして、着れなくなったら、古着屋に売ってしまう。
それらを購入するのは、商人や冒険者など、お金に余裕のある人となる。
だから、日本とは違って、そうそう古着が出回らないわけで。
店頭にないときは、全くなかったりする。
先日に古着屋に来たとき、めぼしいものは買ってしまったので、今日なくてもおかしくないのだ。
恐る恐る、お店に入る。
店員さんもオレのことを覚えていたようだ。
目が合った瞬間、女性物の古着を出してくれた。
良かった、種類もサイズもそれなりに多くある。
これなら、問題ないだろう。
さぁ、アヤノさん、選んで下さい。
「え? 良いんですか?」
「当然です。福利厚生は大事なのです。近いうちに、オーダーメイドでちゃんとした服も用意するので、今日のところは、古着でお願いします」
「いえ、古着だけでも……」
「いやいや、皆の分も買うし、もちろん、自分の分も欲しいので。
気にせずに、選んで下さい。
ディーネ、ジュリア、ヴィヴィ。選んであげて。ついでに、自分たちの分も買って良いから」
って言う前に、既に選んでいたね。
ヴィヴィが奥にある試着室に、アヤノさんを引きずり込んで行く。
うん。
ホドホドにね。




