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魔石


「依頼の報告をしに来ました」

「かしこまりました。お名前をどうぞ」


 キダルはこちらを振り返った。こういう風にやるんだと示すためだろうか? 初めてだから何から何まで分からない。こういう時もう知っている人がいると本当に助かる。

 ネロは呑気にそんなことを考えていた。キダルはやや戸惑った様子だ。何かあったのかと様子を見ていると手招きされた。首を傾げながらもネロはカウンターへと向かった。


「どうしたの?」

「……依頼の報告には名前とギルドカードがいるんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「……いや、君がするんだよ?」


 俺がするの? とネロはまだ気が付いていない。

 言われるがまま名乗りギルドカードを出した。事務員が確認している間にネロはギルド長が自分の名前で報酬を手配したと言っていたのを思い出し、顔が熱くなった。


「……ちなみに聞くけど、もしかして忘れてた?」

「…………うん」

「だよねぇ。ちっともこっちに来ないからびっくりしたよ」


 キダルはケタケタ笑っている。怒ってはいないようなので良かったが、恥ずかしいものは恥ずかしい。ゆっくり息を吐いて心を落ち着かせた。事務員が帰ってきた。トレイに白金貨がずっしりと乗っている。……思ったよりも多いぞ?


「お待たせしました。確かに依頼達成が確認できました。ありがとうございます。こちらが今回の報酬金で300000Gになります。ご確認をお願いします」


 300000G。白金貨30枚がトレイの上に乗せられている。数えやすいようにと10枚ずつに分ける。10枚ずつが3セット。間違いなく300000Gだ。


「それからこちらが今回の報酬の装備品となります」


 カウンターの上に杖がひとつ置かれた。それなりの重さがあるのかゴトリという音が響いた。キダルに促されネロはそれを収納魔法へ仕舞った。


「これで今回の報酬は以上になります。またのお越しをお待ちしています」


 事務員はにこりと笑って頭を下げた。思ったより報酬が豪華で嬉しい半分戸惑い半分である。後ろには待機列ができていた。ネロはとりあえずトレイの上の白金貨を全て回収し、その場を後にした。

 ギルドの中庭には休憩するにはちょうど良さそうなテーブルとチェアが置いてある。報酬の分配をするため3人はひとまずそこへ集まった。収納魔法から白金貨30枚を取り出すととりあえず半分ずつに分ける。キダルは不思議そうな表情だ。


「……え? そんなにはいらないよ? 仮に等分当だとしてももらいすぎじゃない?」


 やはりキダルもそう思うのか。ネロとヴァンは顔を見合わせた。以前パーティでも同じような会話があったのだ。今回も同じ。説明も同じでいいだろう。キダルなら理解するはずだ。


「私と主様はお金を共有しているのですよ。私にも報酬金が分配されれば2倍もらっていることになってしまう。ですから私にはお金の分配はいらないのですよ」

「……それはパーティでも?」

「もちろんですとも」

「……なるほど、でもそれならなおさら等分に分けなくてもいいかな。そもそも今回はヴァンが活躍したんだからヴァンが一番多くもらってしかるべきだろ? 僕が半分ももらうのは申し訳ないよ」


 どうやらキダルはあまり活躍できなかったと思っているようだ。それで報酬金をもらうのを遠慮しているらしい。

 だがそれはネロたちにとって小さな問題である。キダルがいたから調査の許可が下り、こうして報酬をもらったのだ。だからキダルには報酬金をもらう権利があるはずだ。

 それに活躍度で割合を変えるのは主観的すぎて揉める材料になりかねない。何も考えず等分する。多分これが一番いいはずだ。


 ……というのがネロとヴァンの認識である。ひとしきり説明したが、キダルはまだ渋い表情をしていた。


「それなら今回は報酬も主様がもらうということにしませんか?」

「報酬というと、……あの杖?」

「キダルさんは私が活躍したと思っているのでしょう? でしたらあの杖を主様にいただければ私は満足です」


 そういうことならとキダルは納得したようだ。実は杖は等分にはできないのでどう扱おうか気にかけていたのだ。これで杖の振り分けが決まりつつ報酬金の配分も決まった。ヴァンのおかげだ。念話で礼を言っておく。ヴァンは照れくさそうに笑っていた。


 ギルドの中庭から寮に帰った3人は食堂で昼食を取り、部屋へと戻った。部屋へ戻ってからネロは先程手渡されたペンダントを取り出す。ガラスでできたそのペンダントには幾何学模様があしらわれ、透明に輝く宝石が埋め込まれていた。


「……さすがはギルド長といったところか、質のいい魔石を使っていますね」

「へぇ、これ質がいいんだ」

「魔石の質は大きさと透明度の高さで測れます。そのレベルの魔石は魔界でも中々お目にかかれませんね」


 ヴァンの話を聞きながらネロは改めてペンダントを見た。確かに埋め込まれている宝石は見たこともないほど透明に光り輝いていて、かなりの大きさである。よく知らないが、かなり貴重な魔石なのだろう。


「……というか、そもそも魔石って何?」

「魔石は特定の魔力マナに長時間当てられた鉱石の総称です。魔力マナを流すことで誰でも設定された魔法を使うことができるのですよ」


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