↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
76/93

討伐は鮮やか


「……囲まれている⁉︎」


 思わずネロは叫んでしまった。洞窟の壁で反響したその声は嫌にうるさく響いた。


「主様、少し声が大きいかと。これでは魔物に場所を教えているようなものです」

「……ごめん、ちょっと予想してなかったから声が大きくなった」


 ネロは小声で謝りながら索敵魔法の範囲を広げた。幸いこの近くの魔物は囲んでいる魔物の反応だけだ。とりあえず厄介ごとは回避できそうだ。


「下手に戦闘を増やすこともないからな。こういう洞窟内では声の大きさに気をつけるんだよ。ま、これから気をつけてくれればいいさ」

「……ごめん」

「さ、さっさと囲んできた奴を討伐しようか」


 声に呼応してか、囲んできた5体の魔物は徐々にネロたちとの距離を狭めてきている。向こうから近づいてきてくれるならこちらとしては楽である。

 戦闘を見てみたいな、そんなレオンの言葉にヴァンはひとつ頷いて前へと進んだ。イービルラットが5体。既に目の前まで迫ってきていた。


「……さて、主様。依頼されている数よりも多く討伐するのは少しばかり問題だというのはよくご存知かと思います」

「……そうだな、3体多い」

「ええ、ですから2体以上は倒さないことにしましょう。……シャドウバインド」


 洞窟の中には光は入ってこない。ネロたちが持つ明かりが唯一である。せいぜい周囲1メートル程度が明るくなるくらいだが、影を作るにはそれで充分である。シャドウバインドによってイービルラットは5体ともその場を動けない。ならば簡単である。首をはねるだけだ。


「……討伐完了。それでは外へ帰りましょうか」


 ネロたちは洞窟から外へ出た。久しぶりの眩しい光にネロは目を細める。イービルラットは討伐こそ簡単だが群れで遭遇することも多く低ランクの依頼の中では敬遠されがちである。そんな依頼が一瞬で終わった。Gランクとはいえあまりに簡単である。やはりヴァンの実力は底知れない。


「……ゴブリンメイジの討伐といきたいところだが、ちょっと距離がある。先にアロエ草を採取しておこうか。群生地はここから近いんだ」


 そう言ってレオンは歩き始めた。歩きながらネロは分類学の授業を思い出す。大丈夫だ、見分け方はバッチリ頭に入っている。アロエモドキなんかに惑わされたりはしない。


「……ここだ」


 レオンはそう言って歩くのをやめた。目の前には小さな湖があった。綺麗な水があるからだろうか、そこには多種多様の植物が自生していた。なるほど、アロエ草の群生地はこういう場所らしい。

 ネロは一応とばかりに目を閉じる。索敵魔法に赤いシルエットの反応はない。さらに念入りにと変身魔法のフィルターも通してみる。……やはり反応はない。ここに魔物はいないらしい。


「……珍しいな」

「……何が?」

「アロエ草の群生地になってるってのは植物にとって育ちやすい環境である証拠なんだ。だから同時に魔物の生息域にも近くなる。……だが今魔物はどこにもいない。隠れている訳でもない」


 レオンはキョロキョロと周囲を見渡し眉をひそめている。アロエ草を採取するのにも戦闘が絡むだろうと思っていたのだろうか? 何にせよ魔物がいないのは助かる話である。いつもより安全に採取できるのだから。


「……ふむ、急ぎましょうか」

「それが良さそうだな。ネロ、ジース。悪いがアロエ草の採取は俺とヴァンですぐに終わらせる。お前たちはノーラと一緒に周囲を警戒しておいてくれ」


 そう言ってレオンはヴァンと一緒に湖の水際まで歩いていった。悪いと言ったのは多分レオンがネロたちに練習をさせたかったんだと思う。それはネロにも理解できる話だ。

 だがそれは今できなくなった。魔物がいないというのはラッキーであり非常事態でもある。素直にそれを受け入れたネロは日が高い空をじっと見つめた。非常事態であるとはとても思えないいつも通りの青空だ。


「戻ったぞ。これを納品すれば依頼完了だ。残る依頼はゴブリンメイジの討伐だ。……さっさと終わらせるぞ」


 レオンは相変わらず眉をひそめている。ずっと警戒しているからか目つきが鋭く怖い。時折空を見上げるのは何を警戒しているのだろう? 何となく変な緊張感をパーティ全員が感じていた。


「ここがゴブリンたちの生息域だ。……が、何だこれは」


 レオンが歩みを止めたここは見渡すばかりの草原である。レオン曰くここがゴブリンの生息域なんだそうだ。ここでゴブリンの群れを見つけゴブリンメイジを合計2体討伐する。それがレオンの見立てだったようだ。

 しかしゴブリンの群れはおろか魔物自体がどこにも見当たらないのである。


「……血の匂いがしませんから全滅という訳ではないでしょう。どこかに逃げてしまったと考えるのが無難でしょう」

「……そうだろうな。となるとここを早く去った方がいい。情報収集も兼ねて一度ギルドに戻るぞ」


 ヴァンの推測にレオンも同意のようだ。ここにいたって何もすることもない。ネロたちも当然のようにレオンに同意した。

 レオンは空をちらりと見た。空に何があるというんだろう? ネロも空を見上げてみた。いつも通りの青い空が広がっている。いつも通りのはずなのにそれが何となく恐ろしいように見えた。……きっと気のせいだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。