レオンには会えない?
「レオンにはまだ言えてないよね?」
「いや、知らない。この後説明しようかと思ってる。……ちなみにノーラはレオンが普段どこにいるか知ってる?」
「レオンは基本寮にいない。しかも普段何してるのか隠してる。私も知らないし、三年は学校にも中々行かないから多分活動日まで会えないと思う」
……順調に来ていると思ったが、そうでもないようだ。幼馴染のノーラが言うのだからきっとレオンに会うのは難しいだろう。さて、どうしたものか……。
「ねぇ、そのレオンって人は何寮なの?」
団子を美味そうに頬張りながらマーサはそんなことを言い出した。レオンは魔剣士だからブレイド寮だろう。ネロにブレイド寮の知り合いは……、いた。エレクだ。
「ブレイド寮だな。エレクに聞けば部屋が分かるも」
「残念だけど、……それではレオンに会えない」
「え? なんで?」
「レオンは転向組なのよ。寮は元々の戦闘スタイルに基づくからレオンはナックル寮にいるわ。ナックル寮に知り合いはいるの?」
なるほど、レオンは一度戦闘スタイルを変えているのか。ブレイド寮だったらエレクに聞けば分かるかと思ったけど、ナックル寮だと無理だな。
「ナックル寮には知り合いはいないな」
「だったら諦めた方がいい。活動日当日に直接お願いするのが一番早い」
「……仕方ない、そうするか」
ノーラに続けてレオンにも話を通そうと思ったが、そううまくはいかないようだ。談話室のテーブルには残りふたつとなった団子が置かれていた。ひとつはネロだとして、もうひとつは誰のだろう?
「……一応人数分買ったから遠慮なく食べてほしいんだけど、食べてないのは誰?」
「失礼、私がまだでした」
どうやらまだ食べていないのはヴァンだったようだ。ヴァンはネロが人数分買うのを見ていたので知っているはずである。……恐らくタイミングを逃したのだろう。現にネロだって食べているのは今だ。
……そういえばヴァンが何かを食べているのは初めて見るかもしれない。もしかして魔物には食べ物をあげなければいけなかったのだろうか? ネロは今更そんなことが心配になった。
「……ねぇ、ネロ。魔物って食事は必要なの?」
ノーラは心配そうな表情でネロにそう尋ねた。しかしネロだってそれを今心配しだしているのだ。聞かれたって答えられない。答えられるとすれば、本人だけだ。
「今それを俺も思ってたんだよ。キダルはそれについて何にも言ってないし、今まで特に問題は起きなかったから正直気にしてもなかった。……ヴァン、今更聞いて申し訳ないんだけども、魔物に食事って必要なのかな?」
「そうですねぇ。端的に答えるなら……生きている魔物なら必要、既に死んでいたら不要です」
……なるほど、つまりクロとドランには食べ物は不要ということだな。……そしてヴァンには必要だと。うわぁ、ものすごく申し訳なくなってきた。今までヴァンは食事が必要なのにずっと我慢させてたって訳だ。
「あぁ、私なら大丈夫ですよ」
……へ?
「必要な食事の頻度は魔物ごとに違います。私は飲まず食わずで3日ほどは生きていられます。それに皆さんが寝静まった頃にこっそり栄養を摂っていまして……」
ヴァンは収納魔法からあるものを取り出した。小さな小瓶に赤い液体が入っている。ヴァンはヴァンパイア種だ。ということはあれは恐らく、……血だ。
「毎晩これを飲めば魔力を短時間で一気に減らさない限りは飢えることはありません。……これは言っておくべきでした。ご心配おかけして申し訳ありません」
「いや、俺こそ聞いておくべきだった。申し訳ない」
これは結果論だ。もしヴァンが食事が必要だったら大変なことになる。いくらヴァンが言っておくべきことだったと自分を反省したとしても、自分が反省しなくていい訳じゃない。
知らないのはだめだ。もっともっと知らなくては。
「……ヴァン、ひとつ聞いても?」
「何でしょう?」
「既に死んでいる魔物と生きている魔物をどうやって区別すればいいの?」
ノーラは真剣な表情。彼女もまた日が浅いとは言え魔物使い。先程の食事の話も含めて詳しく知ろうと思っているのだろう。当然質問先はヴァンだ。この中ではヴァンが一番魔物に詳しい。
「召喚魔法で召喚した魔物の生き死にをどう区別するかという話ですね?」
「うん、そう」
「……直接本人に聞かない限りは、残念ながら区別はできません。ですから討伐したことがわかっている魔物の一部を召喚に使うようにすれば良いかと」
確かにその通りである。召喚魔法に使う魔物の一部に死んだ魔物の一部が勧められているのはそうした背景もあるのかもしれない。ネロは感心したように何度も頷いた。




