ヒカリは多彩
「……特殊な分類?」
「ええ、ソーラレイは発動前にタメが必要な攻撃魔法。しかもタメに必要なのは魔力だけではありません。太陽の光が必要なのですよ」
ヴァンはそこから詳しく説明を始めた。曰く、ソーラレイは日光をエネルギーに変え、魔力を増幅させて放つ魔法なのだという。そのため発動には日光が不可欠となる上に、エネルギーに変えるための時間が必要なのだ。
「タメの間何か特徴はあるのか? 例えば淡いオーラが出る……とか」
「さすがは主様、その通りでございます。タメの間発動したものは淡い光のオーラを纏います。十分に魔力が増幅できて初めて放つことができます」
予想は当たりのようだ。そしてあの時ノーラのからだが淡く光っていたのはそういうことである。決して怒っていたからではなかった。
そして淡く光りを帯び、魔力を増幅してから放たれるのがソーラレイなのだとすれば、そういうことである。
「ねぇ! それじゃあやっぱり私がさっき撃った魔法はソーラレイでいいってこと?」
「ええ、間違いなくあれはソーラレイです」
ノーラはヴァンの言葉にガッツポーズで喜んでみせた。これでノーラにとって3種目の攻撃魔法である。攻撃魔法の少なさがややコンプレックスであった彼女にとってこれは大きな前進である。前進に貢献したヒカリはノーラの頭上でニコニコ笑っていた。
「タメが必要な分威力も中々。厳密に言えば違うのかもしれませんが、中級以上の威力が出せるはずです」
「え、それものすごく強いのでは?」
「ええ、タメの間他の魔法が発動できなくなる点を除けば、光属性の攻撃魔法の中では上位に入る優れた魔法ですよ」
……今しれっととんでもないことを言ったな。タメの間魔法が撃てない? それじゃあマナチャージもマジックバリアとかもできなくなるな。……威力が大きいからかリスクもかなり重い癖のある攻撃魔法ってことだな。
ネロの前ではノーラが難しい顔でぶつぶつと何か呟いていた。今多分彼女の頭の中ではどうこの魔法を活用していくかシュミレートしているに違いない。
「ひとつ質問を聞いても?」
その時ジースが手を挙げた。皆の視線がジースに集まった。何を聞くんだろう? 集まったのはそんな視線である。
「発動には魔力の他に日光が必要だと。でもそれだと発動できる場所がかなり限定されることになる気がして……。それこそ洞窟の中だったら日光なんてありませんよ?」
あ、と声が上がる。確かにその通りだ。魔物との戦いは様々な環境で起こる。なんだったら陽の光が届かない場所で戦うことの方が多いかもしれない。そうなればタメができず発動もできなくなるだろう。
……とはならないらしい。
「確かに太陽の光がなければ発動は不可能。先程言った通りです。ですが、それは空の太陽である必要はないのですよ」
「……? どういう意味?」
「それを解決する補助魔法があるのです。サンシャイン。一定時間周囲を魔力で作った太陽の光で照らす補助魔法です。恐らくヒカリもソーラレイを習得する前にそれを習得しているでしょう」
ヒカリが習得している魔法なら自動的にノーラも習得しているはずである。ノーラは杖を構えると「サンシャイン」と呟いてみた。
杖の先から太陽に似た物体が浮かび上がる。それは天井近くまで浮き上がるとやわらかな光を放ち始めた。ほんのりと暖かい。なるほどこれが太陽の光の代わりというわけか。
「これで問題なし。いつでもどこでもソーラレイのタメができます」
ノーラはヒカリに視線を向ける。ヒカリはキリッとしちゃ表情を見せると同じようにサンシャインを発動させた。天井近くでは2つの太陽が輝いている。中々見ることのできない異様な光景だ。
「解除も簡単、魔法を解くだけです」
「……確かにこれは簡単だな」
魔法が解かれて太陽は2つとも消えてしまった。プラスマイナスゼロになったはずなのになんだか前より暗くなったように思えるのが不思議だ。
「……正直補助魔法は大体習得したと思っていた。知らないものがあるなんて。魔物が使う魔法は面白いな」
「おや? これで終わりではありませんよ? 私の見立てではまだ彼は魔法が使えます」
皆一斉にヴァンの方を見た。そしてゆっくりとその視線はヒカリへと移動した。魔物なんてそういくつも魔法を使ってこない。だが思っているよりもヒカリは多彩なようである。
「魔界では魔法は星の数ほど存在していると言われます。その中から未来を生きるために種として魔法を受け継いでいく。一種の生存戦略ですから多彩にもなります」
「……セイゾンセンリャク?」
「主様には後で詳しくお教えします」
出てきた単語が分からず思わず呟いてしまった。どうやらここに引っかかったのは俺だけのようだ。……後で教えてくれるのは嬉しいが、何となく恥ずかしいな。……勉強しないとね。
空気が何となく変わったのを引き戻すためレオンは大袈裟に咳払いをしてから口を開いた。内容はもちろんヒカリの魔法についてだ。
「……それで、コイツはどんな魔法を習得してるんだ?」
「ヘブンズゲート。光属性の攻撃魔法ですね」




