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ヒカリの魔法


「……へぇ思うだけか」

「ここじゃダメだぞ」


 すかさずレオンが止めに入った。……だが、さすがに洗い場で攻撃魔法を撃つ人はいない。そんなことはノーラも分かっている。冗談でも魔法で攻撃してくれなんて考えない。


「もちろん分かってるよ。ミリアさん素敵な場所を使わせてもらった上に、素敵なご飯もいただいて本当にありがとうございました」


 そう言ってノーラは頭を下げた。慌ててネロも頭を下げる。ジースもそれにならい、レオンも遅れてそれに反応した。顔を上げるとミリアは微笑みを浮かべていた。


「いえいえ。皆さんお礼が言えて素晴らしいですね」

「……当然だろ」

「一番遅かった人が何を偉そうに。……また何かあればいつでも来て下さいね」


 ミリアに釘を刺されレオンは少しむくれ面だ。それがなんだかおかしくてネロは吹き出しそうになった。楽しい時間だ。ネロはまた表情が緩んだ。





 微笑みを浮かべたミリアに見送られネロたちは教会を後にしたのである。向かった先はスレイブ寮の修練場。修練場はどこの寮にもあるが、スレイブ寮でなければならない理由がある。ここなら色々と都合がいいのだ。

 ノーラは我が物顔で扉を開ける。数人が自分の魔物と共に鍛錬をしていた。開いた扉に視線こそ向けたが、すぐに戻る。かなり集中していそうだ。これなら心置きなく検証ができる。


「……いや、まあ……。分かるよ。そりゃ詳しい人がいた方が検証はしやすいだろうしさ。……でも、呼びすぎじゃない? ずっと何かしらの要件で呼ばれてる気がするんだけど」


 不満気な人がひとり愚痴をこぼした。キダルである。いつもと比べ若干イライラしてるようにも見える。その理由は知っている。パーティ活動がないのかのんびり昼寝をしているところをネロが強引に連れてきたのだ。ノーラが言ったからと言い訳していたが、ノリノリで連れてきたのは内緒である。


「それで……ええと、ノーラは光属性の攻撃魔法が知りたい、で合ってる?」

「そう! ちなみに何か知ってたりする?」

「残念だけど、断言まではできない。でもバグライトだったら習得してる魔法は大体の見当がつくかな」


 その言葉にネロはニヤリと笑う。やはり強引に連れてきて正解であった。先輩魔導士は頼もしい限りである。


「魔弾【光】とディバインレイ以外だったらとりあえず何でもいい」

「なるほど、その2つは君が使えるのか」


 察しのいいキダルはノーラのその言葉から目的まで察したようだ。そして思案の表情である。大方その2つ以外に光属性の攻撃魔法があったかを考えているのだろう。

 そしてうん、と力強く頷いた。……これは期待できそうだ。


「それじゃあまず固有魔法から」

「固有魔法?」


 聞き慣れない単語だったのだろう。ノーラは首を傾げている。魔物使いなら大体知っている単語だが、そうではないノーラは知らなくても無理はない。レオンとジースも同様である。

 幸いそれほど難しい単語ではない。ネロはヨードルの説明を思い返しながら簡単に説明してみせた。固有魔法とは魔物が習得できる魔法の中で、種を共通して習得していると確認された魔法を指す。……我ながら記憶は完璧である。


「つまりバグライトが共通して習得している魔法ってことね」

「そういうこと」

「それで? その魔法は何なの?」

「ブライトだな」


 ブライトと聞いてネロはあまりピンとこない。ジースをちらりと見たが表情は浮かない。レオンは相変わらず無表情である。となると残りはノーラだが、……どこか不満そうだ。というか、若干キレてる?


「……おちょくってる?」

「いや別に」

「ブライトは補助魔法。攻撃魔法じゃない。私が知りたいのは攻撃魔法の話。……分かった?」

「……ごめん」


 言葉こそいつも通りだが声色が全然違う。キレた感情を噛み殺したような淡々とした声。ネロが思う最も恐ろしいキレ方である。この人は怒らせないようにしよう。ネロは心に刻んだ。

 キダルは収納魔法に手を突っ込むとあるものを取り出した。ネロもよく似たそれを持っている。恐らく図鑑の類だ。表紙には魔物大図鑑と記されていた。


「これを参考にするから間違ってても僕を怒らないでくれよ。ええと……、バグライトは攻撃魔法を習得しているかは個体による。魔弾【光】が高確率で、シャイニングが中確率、あとはかなり低確率でソーラレイかな」


 魔弾【光】はいいとして、あと2つは知らない魔法だ。名前としては強そうだがどんな攻撃魔法なんだろう? ノーラをちらりと見ると眉をひそめていた。……何の表情だ?


「シャイニングは分かる。確か光属性低級の魔法。……ソーラレイって何?」

「……それは僕も……、分からないや」

 

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