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光る羽


 まだ終わりではない。ノーラは手元の水晶の入れ物をバグライトに付けようとした。……が、フリーズしている。気持ちは分かる。どこに付けようか悩んでいるのだ。

 30秒ほど悩んでノーラはバグライトの足先にくくりつけた。若干邪魔な気もするがバグライトはこれを受け入れた。水晶は消え嬉しいのか空中で宙返りしてみせた。


「名前、名前だよね。……ヒカリかな。よろしくね、ヒカリ」


 ヒカリはさらに嬉しくなって2回宙返りをしてノーラの頭にそっと降り立った。ノーラもまた嬉しいらしい。にっこりと幸せそうな笑みを浮かべていた。


「気に入ったみたいだな」

「当たり前。この子を召喚するためにわざわざ依頼を変えてもらったのに気に入らなかったらおかしい」


 それもそうだと4人で笑った。これで召喚についてはひとまず完了である。ひと段落ついたからだろうか。それとも気が緩んだからだろうか。どこかでぐぅと気の抜けた音が鳴った。堂々としていれば誰か分からないのにすぐ下を向いて誤魔化そうとするからバレてしまう。音の主はジースだ。


「……レオン、あなたお昼ご飯はどうしたの?」


 ミリアがそう尋ねる。レオンはバツが悪そうな顔をした。確かに今はお昼過ぎ。本来ならご飯は食べているはずの時間である。


「……忘れてた」


 忘れていたのはレオンだけではない。朝に集まり依頼をこなしてその流れでここに来たのだ。夢中になるあまりご飯のことはすっかり忘れていたのである。そしてそれを全員自覚した今、ものすごく腹が減っているのだ。


「違っていたらそれで構いません。レオン、あなたは帝都魔法学校の最上級生。すなわちこのパーティのリーダーではありませんか?」

「……まあ、そうかもしれない」

「あなただけならば別に私は構いません。ご飯を食べなくてもいいのならそうしなさい。……ですが、他の人を巻き込むのは違います」

「……はい」


 レオンはうなだれている。ネロたちは少々居心地が悪い。別にレオンが全責任があるわけじゃない。誰だって気付く可能性があった話で、言い出していないということは誰も気付いていないことに他ならない。自分のこととしてみんな聞いたのだ。


「……申し訳ない。すっかりご飯のことを忘れていた」

「それは全員。みんな忘れていた。……でしょ?」


 ノーラのその言葉にネロとジースは無言で頷く。レオンはフォローされていると思ったのか頭をかいている。何となく空気が重い気がした。


「近くに屋台がある。ひとまずそこでいいか?」

「私は大丈夫。2人は?」


 来た道を思い返す。……屋台なんてあったか? 残念ながらネロの記憶にはなかった。まあこれだけ腹が減っていれば何でも美味しいに違いない。ネロもまた大丈夫と答えようとした。そのとき咳払いが聞こえた。


「……教会には食堂があるのです。少し待ってもらうけれど、お昼ご飯作りましょうか?」


 願ってもない話だ。いいんですか、というノーラにミリアは微笑みながらもちろんと答える。せっかくだからとネロたちはお言葉に甘えることにしたのである。




 庭の反対側、教会を挟んで食堂はそこにある。大人数で食事をすることでもあるのだろうか? 10人以上が一度に食事できるスペースがそこにはあったのである。


「……広いな」

「適当に座って待っていて下さい。すぐに作りますから」


 そう言うとミリアは厨房に消えた。手伝う、と言ってレオンも厨房へと消えていった。流れに乗って手伝った方がいいのかもしれないがネロは黙って椅子に座った。ネロは料理がからっきしである。恐らくいた方が邪魔だ。

 ジースとノーラもそれぞれ椅子に座った。……どうやらノーラも料理は苦手のようだ。厨房に消えたレオンのことも含めて意外でネロはこっそり笑いを噛み殺した。


 すぐに作るとの言葉通り、まもなくいい匂いが漂ってきた。ネロの頭の上ではクロが、ノーラの頭の上ではヒカリが、それぞれ楽しそうに鳴いている。魔物故に食事は不要だが、いい匂いは分かるのかもしれない。意外な発見である。


 十数分が経った頃、テーブルの上に数々の料理が運ばれてきた。腹が減っていたこともあり、ネロたちは何も言わず夢中になって料理を頬張った。たくさん運ばれてきたその料理たちはこうして瞬く間に無くなったのである。もちろん全員が腹いっぱいになったのは言うまでもない。


「ねぇ、ネロ。あなたの話だとこれで光属性の攻撃魔法が使えるようになったってことよね?」


 食器を洗い場に下げながらノーラはそんなことを言い出した。厳密に言えば答えはNOである。確かにヒカリが既に習得している魔法は使うことができる。光属性の攻撃魔法かどうかは分からない。……気は進まないけど、やんわりと言ってみるか。


「あぁ、ヒカリが既に習得してる魔法が使えるようになってるはずだよ。……まあ、攻撃魔法かどうかは分からないけど」

「それどうやって分かるの?」


 方法は色々ある。図鑑で確認するのもひとつの手だし、定番どころを片っ端から試すのもまたひとつの手ではある。一番手軽で簡単な方法は魔物ヒカリ自身に聞いてみる、だ。


「……どうやって?」

「契約まで済んだら魔物とある程度意思の疎通ができるようになる。だから魔法を何かしてほしいと思ったらヒカリは自分で使える魔法をしてくれるんだ」


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