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予定変更


 ネロは思わず首を少し傾げた。確か予定では今日は残った討伐依頼であるゴブリンメイジを倒しに行くはずだ。違う依頼とは何のことだろう? 一応様子を伺ったがジースも知らないようである。


「……ノーラ、ここからは自分で言え」

「ありがと。私のわがままでちょっと依頼を変更してもらった。今日はバグライトを討伐する」


 バグライト。名前は聞いたことがあるがどういう魔物か全く思い出せない。ネロは図鑑を取り出して調べてみる。……なるほど、そういうことか。


「前のスライムの討伐依頼の時からサブスタイルを魔物使いにしようと考えてて、それでこの討伐依頼に変えてほしいとレオンに言ったの」

「要はノーラが召喚する魔物にしたいってことだ。バグライトは光属性の低級の魔物。言ってしまえば光る虫だな。……一応確認するが、本当にこれでいいんだな?」

「もちろん! 魔法主体で戦う魔物らしいからとっても楽しみ」

「……見た目はどうだ?」

「見た目? 可愛いと思うけどそれが何?」


 レオンは眉をひそめている。ほとんど真顔だが、この顔は思うに心配している顔だ。ネロも図鑑の記述を読んで挿絵をもとに姿を想像する。……可愛い? むしろ割と怖いと思うんだが……。


「それならいい。さっきも言ったがバグライトの討伐依頼はGランク。ゴブリンメイジの討伐依頼は取りやめてある。だから俺たちがやる依頼の数は変わらない。……それじゃあバグライトのところに行こうか」


 レオンに連れられネロたちは帝都東の草原に来ていた。草原には多種多様の草花が生い茂っており、それを目当てに魔物も集まってくるんだそうだ。

 ネロは周囲を見渡す。魔物の姿は何体か見えるがバグライトはいなさそうだ。魔物はまるで誰もいないかのように草をかじっている。……恐らく刺激しない限りは安全である。


「襲われたらさすがに応戦するが、俺たちは基本的に無闇に理由なく戦闘はしない。……どうやらここにバグライトはいなさそうだ。別の場所に向かおう」


 レオンはそう言ってさらに東へと歩き始めた。足音を立てると刺激してしまうかもしれない。ネロはなるべく音を立てないようにそろりと追いかけた。


 歩いて十数分、ネロたちはまた別の草原に来ていた。魔物が近くにいないことを確かめて木の陰に隠れるとバグライトがいないか探る。……いた。

 ここから少し歩いた場所にあるやや大きめの岩に光る物体が止まっている。恐らくあれがバグライトだ。見つかったことを喜びたいが、ちょっとばかり場所が悪い。その近くで低級の中ではそこそこに厄介な魔物が優雅に食事をしているのだ。


 その魔物はハナビラトカゲ。2メートル近くある大柄な風属性低級の魔物である。ナワバリ意識が強く無闇に近づくと襲ってくるため注意が必要である。攻撃こそそれほど痛くないが低級の魔物にしてはかなりタフであり、戦うのが面倒な魔物として有名である。


「ハナビラトカゲが2体……か。タフで倒しにくい上に、バグライトと連携されると面倒ではある。……どうする? 他で探すか?」

「あの子がいいな。せっかく見つけたんだから」

「ということで戦闘に決まった。お前たち準備はいいか?」


 レオンが2人に振り返る。別に異論はないから無言で頷く。幸いどの魔物もこちらに気付いてはいない。先手を取ればそれほど苦戦はしないだろう。


「……僕が最初に攻撃しても?」


 横を向くとジースが手を挙げている。前回は大きくミスをしたこともあり、あまり戦闘にも絡めず上手くいっていなかった。今回は最初から積極的に戦闘に参加するつもりのようだ。

 もちろんその積極性に反対する理由はない。レオンは口元を上げジースに道を譲った。……さて、ジースは最初に何をしかけるつもりなのだろう。


「バブルクラッシュ!」


 構えた杖はまっすぐハナビラトカゲの1体に向かっている。地面に描かれた魔法陣を中心に泡がハナビラトカゲを包み込む。ハナビラトカゲは何が起こったか分からない困惑の表情だ。

 バブルクラッシュは水属性低級の効果魔法である。攻撃魔法では珍しく攻撃というよりも捕獲することがメインの魔法だ。ジースからちらりと聞いた話では、これで相手の動きを止めて大技で仕留めるのが定番となっているらしい。つまり次に撃つのは大技だ。ネロは期待のまなざしだ。


「……アイスボム!」


 アイスボムは水属性の低級魔法。ボムと名前がついているが別に爆発はしない。標的の真上に氷のかたまりを生成してぶつける攻撃魔法だ。

 アイスボムは大きければ大きいほど威力が高まる。その分回避の時間を与えてしまうデメリットもあるが、バブルクラッシュで拘束しているためそのデメリットは無い。心置きなくサイズを大きくできるのだ。

 ジースが作ったアイスボムは直径1メートルを超えた。ハナビラトカゲの半分以上の大きさ。もうそろそろ充分だろう。ジースはぶつけるために杖を下に下ろした。


 

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