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分類の意義


 イシュタルはまっすぐにシルバを見ている。測定の時もちらりと思ったことだが、真面目な性格の持ち主のようだ。恐らく気になったことをそのままぶつけてみたのだろう。

 ネロはそもそもアロエ草が回復薬の材料であることを知らない。故に葉が重要であることも知らないから何の引っかかりもなかった。だが言われてみれば気になる話である。ネロもまっすぐにシルバの方を見た。シルバはとても面白いものを見たかのように目を輝かせて笑っていた。


「素晴らしい、実に良い質問だ。それを既に知っているならさらに進んだ話ができる」


 シルバは収納魔法からあるものを取り出した。ネロは手元のプリントに目を落とす。……うん、間違いない。あれはアロエ草だ。説明をする前にシルバは取り出したその植物の葉をすべてむしり取った。


「お察しの通りこれはアロエ草だ。この葉で回復薬を作ることができる。アロエ草の本質を回復薬とするのであれば、この葉こそがアロエ草ともいえる。ではこの残りはアロエ草ではないのか。……答えはNOだ。これはアロエ草である。……だがしかし一方で、この葉のみではアロエ草とは認められない。これが魔導士ギルドが出している公式の見解だ。さて、君たちはその理由が分かるかい?」


 シルバは微笑んでいる。クラスの面々は渋い顔だ。理由なんてちっとも分からない。要するに葉だけではアロエ草とはいえないと魔導士ギルドは考えているのだ。回復薬の材料には葉だけが必要なのにも関わらず、だ。

 ネロは先程までの話を思い返す。イシュタルの質問で進んだ話ができるとシルバは言った。進んだ話ということは、今までの話も無関係ではないはずだ。


 不意にネロはシルバの言葉を思い出した。大事なのは違いは何かということだ。取った葉はアロエ草ではなくなるが、取られた葉はアロエ草である。違いは何か。……そうか、そういうことか。ネロは静かにその手を挙げた。


「ネロ、答えてみろ」

「……根がないから?」


 瞬間教室全体の空気が止まった気がした。皆の視線がシルバに集まる。シルバはにこりと笑った。


「……実に素晴らしい、正解だ。魔導士ギルドは根がないアロエ草をアロエ草と認めていない。アロエモドキと混同するのを防ぐためだ」


 シルバは再び収納魔法に手を突っ込むと今度はアロエモドキを取り出した。同じように葉をむしり取る。そしてアロエ草の葉と一緒にしてごちゃごちゃに混ぜた。こうなると判別するのは難しい。少なくともネロにはどちらも同じに見える。


「このように混ざってしまった場合、アロエ草の葉を正確に判断するのは難しい。あたしでさえ断言はできない。確率が半分だからと博打をするのは馬鹿のすることだ」

「……そうなったらどうすればいいですか?」

「まずはそうならないように丁重に取り扱うのが一番だ。もし葉が取れてしまって区別がつかなくなったら、素直に諦めた方がいい。アロエ草は特段貴重な植物ではないからね」


 なるほど、アロエ草は貴重な植物ではなくそれなりにありふれたもののようだ。それでも丁重に取り扱うべきなのは葉が取れないようにするということに加え、貴重な植物を取り扱う時の練習という意味合いもあるかもしれない。

 ネロは静かに自分の収納魔法の取り扱いを反省した。少なくともポイポイ放り込む癖と雑に取り出す癖は直した方がいいだろう。壊れることはそうそうないだろうが、もし壊れたら大変である。


「さて、まだ質問の答えにはなっていないな。話を戻そう。乾燥地帯に見られる4番のようなアロエ草だが、魔導士ギルドではアロエ草と認められている。回復薬として活用はできないが、茎部分に少量の水分が流れており、水分補給の手段として現地では広く活用されているらしい。……ちなみに乾燥地帯でもアロエモドキは存在している。もし活用する時は根元の色をよく確認するといい。イシュタル、以上が君の質問への回答だ。これで大丈夫かい?」

「大丈夫です」

「よし、それでは続きを説め……」


 シルバがそこまで言ったところでチャイムが鳴り響いた。いつの間にかこんな時間になっていたらしい。


「おっと、もうこんな時間か。それでは前半の授業は一旦これで終わる。後半ではこの続きから始めて分類についてもう少し深掘っていくことにする。それではしばし休憩してくれ」


 そう言ってシルバは教室を去った。授業の合間の休憩時間では水分補給をしたり、トイレに行ったりする。ネロはどちらの気分でもなかったからそのまま座って後半の授業が始まるのを待つことにした。

 せっかくだからさっきまでの内容を復習しようか。そう思ってプリントを手に取ったネロを呼ぶ声がした。振り返るとジースである。


「ネロ、今大丈夫かい?」

「どうした?」

「ネロって昼食は食堂? それとも弁当か何か持って来ているのかい?」


 しばらくフリーズした後、ネロはひとつの結論に達した。あぁ、そうか。ジースはお昼を一緒に食べないかと誘っているのか。そうじゃないと昼飯が何かなんて知っても仕方ないもんな。ええと、昼は……パンかなぁ。


「昼は持ってきたパンを食べようかと」

「あぁ、良かった。僕も今日はお弁当を持ってきててね。良かったら一緒に食べないかい?」

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