表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/49

ギルドのほど近い古い木造小屋にて


 キダルに連れられてネロとノーラは帝都の道を歩いていた。日も随分と傾き赤くなりつつある。違いはそれくらいでネロは首を捻った。この道はつい先ほども通ったはずである。となれば向かう先はひとつだ。


「……魔導士ギルド?」

「あぁ、そうだね。途中まで同じ道だ。今から案内する場所は魔導士ギルドのすぐ横の道、路地裏にあるのさ」


 そう言ってキダルは魔導士ギルドの建物の横を通っていく。細い道を曲がる。なるほどこれは路地裏だ。本当にこの道で合っているのか? とネロが疑問に思ったその時、キダルは足を止めた。

 目の前には古い木造の建物。バドラ島ではよく見かけるボロ屋だ。お店なのか? と思ったが、看板がある。崩した字ですぐには読み取れない。ネーダリア。それがこの店の名前のようだ。


 入り口には邪魔な布がかかっていた。閉まっているのか? と思ったがキダルがそれを潜って入っていったので後を追う。古い木の匂いが鼻をつく。ノーラは少しばかり顔が険しくなっていたが、田舎育ちのネロにとっては慣れたものだ。店の中では60過ぎくらいのお婆さんが暇そうに雑誌を読んでいた。


「おや、いらっしゃい。何か買いに来たのかね」


 足音に気付いたのか雑誌から目を上げ、額に乗せた眼鏡をかけ直した。やはりこの人が店主で間違いない。

 ネロはバドラ島にいたお婆さんたちを思い浮かべた。彼女たちに婆さんと言っていつも怒られたものだ。目の前の彼女もまた同じタイプに見える。となれば……、


「おばちゃん、水晶の入れ物はどこにあるんだい?」

「ほう、あんた名前は?」

「……? ネロ・プリズマン」

「ネロ・プリズマンというのかい。なんと失礼な子だね。あたしのことはお姉さんと呼びなさい」

「……お姉さん、水晶の入れ物はどこにあるんだい?」

「それでよろしい、あたしは素直な子が好きだよ。どれ贔屓してあげよう」


 そう言って彼女は棚から大きな瓶を取り出した。どうやらなんとかなったようだ。ジャラジャラと音が聞こえる。この中に水晶の入れ物が入っているのだろうか? えらく雑に仕舞われているんだな。


「好きなのを取るといい。なに安心しな、ネロにとって必要なもののはずさ」


 怪訝な表情でネロはその大きな瓶に手を突っ込んだ。中には金属製の何かが入っているようだ。その中のひとつ。何となく最初に触れたそれを取り出した。手に取ったそれはブローチだ。紫色のその小さなブローチは十字のマークが刻印されていた。


「それは装飾品といってね。魔物に付けてやれば潜在能力をより引き出してくれるありがたい代物だよ。紫色は闇属性の魔物用、そしてブローチの効果は魔力強化。そのバッドバットなり、もう1体なりに付けてやるといい」


 へぇ、魔力強化か。感心しながらブローチをしばらく見て、ネロは眉をひそめた。どうしてもう1体闇属性の魔物がいることを知っているのだろう? ヴァンのことはここではキダル以外知らないはずだ。


「そんなに不思議な顔をしなくてもいい。あたしはネロがまだ魔物使いになって間もないことも分かっておるよ。しかしネロ、あんたとんでもないものを連れてるねぇ」


 彼女は感心したようにそう言った。確かにヴァンはとんでもない存在ではある。……最初に召喚したきり一度も出していないのだが、どうしてそれを分かっているのだろう? ネロはバレないくらいに小さく首を傾げた。


「キダルはもういいとして、だ。そこのあんたもこれ欲しいかい?」

「うん、私も欲しい」

「……名前は何て言うんだい?」

「私はノーラ・ヴァイス。お姉さん、私にもそれ下さい」

「よろしい。あたしは素直な子が好きだよ。あんたは光属性だからこれさね」


 棚から違う瓶を取り出してノーラの前に置いた。恐らく光属性の魔物用の装飾品が入っているのだろう。ノーラはすぐに手を突っ込むと取り出した。……あれはペンダントだな。


「ペンダントは速度強化だよ。それなら大抵の魔物にも似合う。ノーラがどんな魔物を召喚したとしても、腐ることはないさ」


 ノーラがまだ何の魔物も召喚していないこともお見通しのようだ。どう思い返してみてもそれが分かった理由が分からない。謎な人物である。この店主はいったい何者なのだろうか?


「ただの占い好きだよ。人より心が読めるだけさ」

「なるほど、……すごいな」

「ふふ、素直だねぇ。もっと贔屓してあげたくなるよ。さて、ネロたちは水晶の入れ物が欲しいんだったね。……ところでキダル、あんたは冷やかしかい?」


 慌ててキダルは首を横に振った。口調こそ突き刺すようだが冗談だよと緩んだ口元が言っていた。人より心を読める。あっさり言ったが結構怖い。この人の前では変なことを考えられないな。

 ネロは息をひとつ吐いて無心になろうとした。それを見てまた彼女はニヤリと笑った。なんだか全てを見透かされているようだ。最早笑うしかない。


「水晶の入れ物ならあそこの棚に並べてある。上にいけばいくほど質は上がる。属性ごとに並べてあるから好きなのを取ってくるといい。……あ、そうそう。あれは衝撃に弱くてね。あっさり割れやすい。もちろん割れたものは即買い取りだ。気をつけて持ってくるんだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ