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ヒュージスライム


 ヒュージスライム。中級に位置する魔物であり、低級の魔物とは大きく討伐難易度が変わる。攻撃の精度、威力、そして速度が段違いだ。


「ダークジャベリン!」


 叫び声と共に二本の黒い槍がヒュージスライムに放たれる。回避はしないのか緩やかな弧を描きヒュージスライムに命中した。……やはりこれだけでは大したダメージにはなっていないか。

 ジースも魔法を放つ。やはり全然効いているようには見えない。想像以上にコイツは……タフだ。

 そして次の行動を考えようと意識を逸らしたその隙をえぐるように強烈な水弾が飛んでくる。ネロの足元には数個の窪みができていた。これは当たりたくない。……なるほど、これは強敵だ。


「ネロ! じっくり考える余裕なんてない。考えてる暇があるなら撃て!」

「了解。……ダークジャベリン!」


 レオンの声に押し出されるようにしてネロは二度目のダークジャベリンを放った。今回も当たったが、手応えはあまりない。……本当にこれ効いているのか?

 レオンがヒュージスライムのすぐ近くまで迫って剣を振り回している。付与魔法は付けていないからただの剣撃だ。傍目から見ているだけだが、手応えは無さそうだ。恐らくあれでは大した攻撃にはならない。……一体何の目的があるんだろう?


 考えていても結論は出ない。こういう時はどうするか。ネロは決まってこういう時深呼吸をするのだ。落ち着くために深呼吸する。そうすれば頭はずっと冷静になれる。冷静になった頭はある結論を出していた。戦闘中ではあるが、ネロは収納魔法から図鑑を引っ張り出していた。


「ネロ⁈ 図鑑なんて読んでる暇はないよ!」


 後ろから困惑が混じった声が聞こえてくる。だがネロはそれを気にしない。図鑑の挿絵と目の前の実物を見て比べた。……核は、核はどこだ?


「ノーラ、あいつの核はどこに?」

「あぁ、それを確認してたのか。ヒュージスライムの核ならそんなの見えないよ」

「どうして?」

「ヒュージスライムはいくつものスライムが集まっているの。そして核は1つだけ。ただしスライムをかき集めて見えなくしてる。だからレオンがあんな風に振り回してるのよ」


 やはり、ネロの読み通りだ。核とは弱点のこと。中級の魔物となればタフさは段違い。弱点をつかずに倒すなんて少なくともネロには不可能だ。

 そしてそれはレオンも同じのようだ。核さえ見つかれば倒せる。つまりネロがやることは攻撃ではない。サポートだ。

 収納魔法に手を突っ込む。取り出したのは短刀。短刀の刀身に手を添える。イメージは見たまま。狙う場所はレオンの真上だ。


「……ヴァンパイアエッジ!」


 ネロが放ったヴァンパイアエッジは赤黒い斬撃となり狙い通りヒュージスライムのからだを上に少し切り離した。部位が減ることで核の場所も限られてくる。レオンは少し小さくなったヒュージスライムを二撃ほど斬りつけた。「お!」という呟きが聞こえた気がした。


「もらったぁ‼︎」


 大きく剣を振りかぶってレオンは何かを叩きつけた。金属と固いものが当たる音がした。その固いものが核であろうことにネロはもちろん気がついていた。


「討伐完了、……だな」


 レオンはそう言ってふぅとひとつ息を吐いた。目の前には核を壊されたヒュージスライムが倒れていた。ネロにとって初めての戦闘はなんとか成功に終わったのである。あたたかい光を感じた。ノーラからの労いである。もちろんありがたく受け取っておく。


「ヒュージスライムの討伐の証拠はスライムゼリーだ。討伐してから間がないほど評価は高くなる。せっかく討伐したんだ。採取していくぞ」


 レオンは収納魔法から空き容器を取り出すと器用にスライムゼリーを採取した。ネロもそれにならって採取を試みる。空き容器なんてないからレオンにもらうことにした。幸いまだ余りがあるようだ。


「討伐の証拠はこれで充分なんだが……、採取してどうするんだ?」

「魔物の一部を使って召喚するんだ。まだ闇属性しか召喚できないけどいつか必要になるかなと思って」

「召喚する魔物を増やすってことか。増やして何になるんだ?」

「戦闘の幅が広がるのがひとつ。あとは魔法かな。魔物が習得してる魔法は魔物使いも使えるようになる。だから召喚できる魔物の種類は多い方がいいんだ」

「へぇ」


 レオンはそういうこともあるのかという表情だ。まあ魔物使いでないならこの辺の事情に明るくないのも仕方がないだろう。ネロだってヨードルに聞くまでは知らなかった話だ。

 ネロは気を取り直して採取をしようとした。……が、熱い視線を感じ後ろを振り返った。ノーラが真剣な表情でネロを見ていたのだ。


「……ど、どうした?」

「ネロ、今の話本当?」

「どれ?」

「魔物使いが魔物の魔法が使えるって話! それ本当の本当?」

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