中衛の役割
「攻撃魔法を捨ててまで回復魔法にこだわってるんだからあんたたちが回復に困ることはないわよ。私に任せといて」
「ノーラは回復に専念する以上、なるべく攻撃が当たらないようにしたい。だから後衛なんだ。そして前衛には俺が入る。お前たちに攻撃が及ばないよう全力で受け止めてやる」
レオンはそう言って胸を張った。これで前衛にレオンが、後衛にノーラが入る意味が理解できた。あとは残った2人、ネロとジースの役割である。
「ダイヤフォーメーションを採用することは既に言ったな。そうなるとお前たちは中衛になる。……何をすればいいかは分かるだろう?」
ダイヤフォーメーションならば2人とも中衛になる。レオンが守りを固め、ノーラが回復をやってくれる。となれば残る役割は簡単だ。
「……火力」
「大正解。お前たちにはパーティの攻撃役を担ってもらう。サポートは俺たちに任せろ。思い切りやってくれていい。……精一杯がんばれよ」
そう言ってレオンはニヤリと笑った。初めて見る笑顔だ。なんだ笑えないんじゃないのか。ただ笑うのが苦手なだけだ。すぐに真顔に戻っちゃったのがその証拠。
……まあ、笑ったってことは心からの言葉ってことだ。精一杯頑張るとしようかな。
ネロがひとり決意を固めた背後でノーラは端末を操作していた。端末を使えば様々なことができる。例えばパーティ申請もそのうちのひとつ。これは既に登録済みで端末にはネロたち4人の情報が表示されていた。
慣れた手つきで操作を進める。表示されている文字をスクロールし、選別をする。……まずは簡単なものから。
「適当にいくつか選んだわよ」
「ありがとう、助かる」
「……選んだ?」
「お前たちこの後予定は特にないな?」
「まあ、……ないな。ジースは?」
「……僕もないかな」
「顔合わせして、実力もある程度分かった。それで今日は解散。……ってのはちょっと面白くないだろう? 依頼、まずはひとつやってみようぜ」
帝都の北出口を出てから歩いて15分ほど。ネロたちはとある草原地帯へと来ていた。自然豊かなこの場所にはいくつかの種類の薬草が自生しているという。そして当然のように魔物もまたここに棲んでいるのだ。
「申請してある依頼は全部で3つ。アロエ草4個の納品。ゴブリンメイジ 2体の討伐。そしてスライム5体の討伐だ。難易度はどれもGランク、期限はどれも2週間となっている。……ここまでで何か質問はあるか?」
レオンのその言葉にネロは首を横に振った。依頼をこなすと聞いてから何をするのかと想像していたのだ。パーティ最初の依頼であり、そう難しいことはしまい。今のところ想像の範囲内だ。
魔導士ギルドには帝都が抱えている様々な問題が寄せられる。それを依頼として請け負い解決するのが魔導士である。これは魔導士の最も大きな役割のひとつとなっている。
依頼を達成した時、魔導士ギルドから報酬が支払われる。もちろんこれも大切なことだが、それ以上に重要なことがある。それは実績である。
実績は依頼をこなすことで積み上げられる。五級魔導士の認定に必要な実績はGランクの依頼を 3件以上こなすこと。今申請してあるものを全て達成すれば実績は完了だ。
「どれから取りかかるんだ?」
「納品依頼はすぐに終わるから後回しでいい。討伐依頼のどちらか好きな方から取りかかろう。ネロ、ジース。どっちから戦いたい?」
ゴブリンメイジとスライム。どちらも低級に分類される魔物であり、無属性。討伐難易度はそんなに高くない。ゴブリンの群れの中に混じるゴブリンメイジと群れで活動することの多いスライム。要するにどっちも群れを相手にすることになる。討伐依頼の難易度差はトントンだ。
「……どうする?」
「僕はどっちでもいいかな。ネロはどっちがいいとかある?」
ない。ぶっちゃけどっちでもいい。選ばなかった方は討伐しないとかであれば変わるかもしれないが、結局どっちも討伐するのだ。このどっちでもいい選択を決めるの面倒くさいよなぁ。まあ数だけ考えればスライムの方が面倒なのかな。
「スライムの方を先にやろう」
「決まりだな。……それじゃあ早速狩場に向かおう」
草原地帯を歩くこと数分。ネロたちはとある場所に来ていた。地面がやや陥没しており、いくつか水たまりができている。そのせいか最初にいた場所と比べて地面が少しばかりぬかるんでいるようだ。今回の狩場はここである。目的地が近づいて、ネロは思わず「うわ」と声を漏らした。




