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マナチャージ


 ノーラは杖をネロたちに向けた。白い光がネロたちを包み込む。なんだかあたたかいな。光から感じられるじんわりとした温かさはネロに安心を感じさせた。……それになんだか元気が出てきた気がする。


「……効果はどうだ?」

「そうだな、なんだか元気になった気がする」

「そう、元気になるんだ。なんて言ったって魔力量が回復してるんだからな」


 マナチャージ。光属性の回復魔法のひとつである。効果は魔力量の中回復である。ノーラはこの魔法を得意にしており、ネロの魔力量の実に7割程度を1回で回復させることができる。そしてこの魔法の優れたところはこれだけではない。


「……大体1割くらいかな」

「1割⁈」

「ちなみに自分にも撃てるぞ」


 1割というのはマナチャージを1回撃つのにかかる魔力マナの割合である。そして回復量は消費魔力の約3倍。自分にも発動可能なため、速い話半永久機関なのだ。


「クールタイムはあるからいくらでも連発はできないよ?」

「……ちなみにそれどれくらいなんだ?」

「2発まで一度に撃てて、クールタイムが30秒かな」


 充分である。要は30秒おきに魔力マナが回復できるということだ。しかもその魔力マナ自体も回復させられる。よほど魔力マナをごっそり使わない限りは枯渇することはないだろう。


「当然普通の回復魔法も使える。何があるんだっけ?」

「単体回復のハイヒール、全体回復のヘイルメリー、あとは毒とか麻痺とかを治すセラピアかな」


 もはや何でもありだ。回復魔法と聞いてまず思い浮かべる要素を全て持っているといえる。こんな人がまだ二級にもなっていない三級魔導士であることが信じられない。……ノーラ以上の魔導士がゴロゴロいるってのか?


「そうだね、それは否定しないよ。そもそも回復魔法をメインにする魔導士はあんまりいないんだ」

「え? そうなの?」

「大抵攻撃寄りの魔法を習得したがる人が多い。回復魔法はアイテムで補えるからってのが一番の理由だな」


 言いながらレオンは収納魔法からポーションを取り出した。確かに回復自体はアイテムで代用できる。マナポーションやハイポーション、スプレーポーションはそれぞれマナチャージ、ハイヒール、ヘイルメリーと同様の効果だ。

 資金さえあればいくらでも使うことができるのが回復アイテムの特徴である。全て買い揃えておけば適宜使用することで回復の目的は果たせる。


 言ってしまえばノーラのような回復魔法の使い手は、お金をかけずに本人の魔力マナを使って回復しているだけに過ぎないのだ。そう考えれば回復魔法よりも攻撃魔法の方が好まれるのは理解できる。それに攻撃魔法はアイテムで代用できないのだ。


「……ちなみにノーラは何か攻撃魔法は習得しているのか?」

「魔弾【光】とディバインレイ……かな」

「……2個ぉ⁉︎」

「光属性は攻撃魔法よりも圧倒的に補助魔法の数が多いからなぁ」


 空気が重い。レオンは仕方ないと言いたげに頭をかいている。だがそんな言葉では誤魔化しきれない。たった2個である。しかもそのうち1つは魔弾シリーズ、すなわち誰でも習得できる初歩中の初歩だ。

 魔法使いではなく魔物使いであるネロでさえ、闇属性の攻撃魔法は4個ほど習得している。詳しく知らないが、多分ジースはそれ以上の数をほぼ間違いなく習得しているだろう。……一応聞いてみるか。


「……ジース、今お前何個攻撃魔法を習得してる?」

「僕は、……6個だね。補助魔法も3個くらい習得してるよ」


 となるとジースは全部で9個の魔法を習得していることになる。結構多いな。案外ジースは優秀なのかもしれない。……数だけ多いだけかもしれないが。


「……補助魔法を加えたら私だってそれなりの数にはなるわよ」

「おっと、魔法使いの実力は魔法の数では測れないぞ? 魔法は練習や戦闘で数をこなすことで熟練度が上がる。ただ習得しただけでは何の意味もない」


 ノーラはすねてしまったのかむくれた顔だ。レオンがフォローするが、逆効果だ。ノーラはそもそも習得していないのだからもっと意味がないことになる。これでは空気は悪いままだ。

 そして空気を悪くした原因の一端が自分にあることにネロは気づいていた。そもそもネロが聞かなければこんな空気にはならなかっただろう。となればネロは空気を変えねばならない。


 何か、何か気の利いた言い方があるだろうか。ネロは必死で頭を回した。


「レオン、それだと習得してない私がもっと意味がない存在になる」

「あれ?」

「まあ、フォローしようとしてくれるのは嬉しいけどさ。……それで何? なんか複雑な顔してるけど、ネロもフォローしてくれようとしてるの?」

「……まあ」

「あんた案外優しいのね。私はこんな扱い慣れてるのよ。魔法使いで攻撃魔法じゃなくて回復魔法にこだわってるのは他でもない私。自分の機嫌は自分で取るわ」


 そう言ってノーラはにっこりと笑った。フォローするつもりが逆にフォローされる形となってしまった。ノーラは案外強かなのかもしれない。

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