ノーラの役割は
ノーラの学年を聞きネロは思わず「へぇ」と声を漏らした。レオンとノーラはかなり仲が良く見える。学年が違うと聞きネロは予想を確信したのである。
「どうした?」
「2人は幼馴染かい?」
「よく分かったな。確かに俺とノーラは幼馴染だ。2人ともトルバ村出身でな。同郷だとやっぱり話は進むよ」
やはり予想は合っていた。同郷だと話は進むというのはよく分かる。ネロは特段人見知りはしない。誰でもそれなりに仲良くなることができる。だがそれでも差は出てくる。やはりエレクやマーサと喋るのは気が楽なのだ。
……ところで、ひとつ気になることがある。素直に聞いてみるか。
「2人が同じパーティなのは偶然?」
「いやわざわざ申請してパーティを組んだ。去年もそうだったんだが、俺はノーラと組むのがやりやすくてな」
それを聞いてネロは思わず顔をしかめた。パーティ申請にそんな裏技があるとは知らなかった。知っていたらエレクとマーサの3人で組んだと言うのに。
「……もしかしてネロにも幼馴染がいたの?」
「ああ、いるよ。同じクラスにエレク・ハルトマンとマーサ・バーガンディがいただろう? あの2人は俺の幼馴染なんだよ」
それを聞いてジースは納得顔だ。聞いた質問が合っていたのにネロは顔をしかめた。それが不思議だったのだろう。ひとり悔しがるネロにレオンが真顔のままさらに続けた。
「3人なら厳しいんじゃねぇかな。パーティは4人編成。4人中3人が新入生なパーティは俺の知る限りないなぁ。ノーラ知ってる?」
「知らない」
なるほど、パーティのバランスの兼ね合いもあるらしい。確かに4人中3人が新入生のパーティはしっちゃかめっちゃかになりそうで怖い。恐らく申請ができていても却下されるだろう。
それに2人までなら良いと言われた時の方が辛い。ネロは自分がエレクとマーサのどちらかを選べと言われた場面を想像してみた。……中々な地獄である。そんなこと無い方が精神衛生上良い。ネロは少しばかり顔を歪めほっと1つ息を吐いた。
「しかしあれだなぁ、この感じだと俺が前衛になるなぁ。魔法使いや魔物使いでも前衛の人はいるけど、お前たちそんなタイプじゃないよね」
「前衛って言うと、隊列のこと?」
「あぁ。俺たちの中で前衛に適した戦闘スタイルなのは普通に考えれば魔剣使いの俺だけだ。教科書通りの隊列を組むならダイヤフォーメーションになるかな」
ダイヤフォーメーション。まさに今朝聞いた話だ。ダイヤフォーメーションは前衛が1人中衛が2人、そして後衛が1人の隊列である。ネロは頭の中で隊列を思い浮かべた。前衛はレオンとして、中衛は誰になるんだろう? 魔物使いは良いとして、魔法使いはもっぱら後衛向きである。しかしダイヤフォーメーションで後衛は1人だけだ。となると……。
「ノーラと俺が中衛ってこと?」
「いや、違う。ジースとネロが中衛だよ。ノーラは後衛で固定だ」
「……なぜ?」
「ノーラは魔法使いだけど、ただの魔法使いじゃあない。ノーラは回復役なのさ」
「ヒーラー?」
「お、お前たちヒーラーがどんなものかさては知らないな? それにジースは確か登録もまだだったよな? ちょうどいいや。今から全員魔導士ギルドに行こう。あそこなら何でも撃ち放題だ」
ネロたち一行はギルドの修練場に来ていた。見た目は寮の修練場や学校のグラウンドと同じ。広さはグラウンド以上だ。だだっ広い空間で十数人が何かをしているのが見える。それなりに活気があるらしい。
ジースはさっきからギルドカードを見ている。まあ気持ちは分かる。ネロももらったときはずっと見ていた気がする。そろそろ仕舞っておけ、とレオンが促しジースはようやく仕舞った。
「お前たち回復魔法にはどんなものがあるか知ってるか?」
「回復魔法? ダメージの回復とか、状態異常の回復とか……かな?」
「うんうん、大体合ってる。でもノーラはそれだけじゃないんだな。それじゃあとりあえずネロとジースは魔力消費量のデカい魔法を撃ってみてよ」
やけにもったいぶるな。ネロはちょっとだけ不満顔だ。まあレオンのテンションが上がっているようだし、それなりに期待していいのだろう。言われたまま魔法を撃つ。……人もいるしダークジャベリンでいいかな。
ネロは近くにあったマジックドールにクロと一緒にダークジャベリンを放った。割と会心の出来である。多分これなら450以上出たかもしれない。
隣ではジースがバブルクラッシュを撃っている。攻撃魔法というより捕獲魔法だろうか? マジックドールが泡に纏わりつかれている。測定では撃ってない魔法。なるほど、彼は思っているより多彩かもしれない。
「どう? 疲れた?」
「疲れた? まあそれなりには疲れるけど。1回じゃあそこまで疲れないかなぁ」
「へぇ、そんなものなのか。見たところどっちも中級魔法だからそれなりには魔力を使ってそうだけどな。魔力の量が多いのかな? ま、それでも実感はできるか。ノーラ出番だ」
「はーい。それじゃあいくよ! マナチャージ」




