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どれだけ叩き込めるか


「例えばここに合計スコア700で倒せる魔物がいたとしよう。マーサの魔法とワダマンドの魔法はこの魔物を倒すのにそれぞれ何回撃つ必要があるだろうか」


 リチャード先生の問いかけに軽く考えてみる。マーサのスコアは463。700を超えるには2回必要だ。ワダマンドのスコアは298。700を超えるには3回必要だ。……ふむ、今のところマーサの方が少なくて済んでいるな。


「……マーサが2回、俺が3回……です」


 困惑した表情でワダマンドは答えた。何を問うているのか分からないという表情だ。そしてそれは皆も同じ。だがそのことをリチャード先生は気にもかけない。


「その通り。これはスコアが高ければ撃つ回数が少なくなる実例だ。この場合単純にスコアが高い方が効率的に魔物を倒すことができる。……続いて合計スコアが200で倒せる魔物が3体いたとよう。マーサの魔法とワダマンドの魔法はこの魔物を倒すのにそれぞれ何回撃つ必要があるだろうか」


 これも軽く考えてみる。……どちらのスコアも200以上。一撃で倒せるんだから回数はどちらも3回だ。……まあ、今のところも変わらないと。


「……同じ」

「その通り。……と言いたいところだが、実態は少し異なる。マーサ、その魔法何発まで連発できる?」

「……連発したことがないから分からないけど、3発……かな?」

「ワダマンドは?」

「……考えたことないけど、いくらでも撃てる……かな?」


 ……なるほど、そういうことか。今度は軽く考えただけでリチャード先生が言いたいことが理解できた。

 魔力マナの総量には限界がある。いくら自然回復するとはいえ、威力の高い魔法はそれだけ魔力消費量が多い。どうしたって連発はしにくくなる。

 そういう意味ではそこそこの威力で連発できるというのは強みになるのだ。ワダマンドは水属性の初級魔法ウォーターエッジでスコア298を記録している。この点においてワダマンドはマーサに明確に劣るとは言えないだろう。


「今記録上ワダマンドは連発できる魔法でスコア298を記録した魔導士になる。魔物との戦いの多くは連戦になることを踏まえれば、これは君の立派な長所だ」


 はっきりと褒められたワダマンドはニヤツキを抑えれずにいた。先程大袈裟に嘆いていたとは思えない。まあ理解はできる。なにせ一切のよどみなく自分の嘆きをフォローされたのだ。気持ち悪いほどに。その引っかかりは潰しておくべきだ。ネロはひとり手を挙げた。


「質問があるんだが」

「……言ってみろ」

「それじゃあなぜこの測定を? 連発できるかなんて最初に言ってなかった。最大威力を一撃でって指定した理由は何?」


 ネロは思ったことを素直にぶつけてみた。それが理解できなかったのだ。別にマーサだって連発できる攻撃魔法が無いわけじゃない。一撃でと言われたからそうしただけだ。そこははっきりしておかなくてはいけない。

 そんなネロの質問をリチャード先生はまっすぐ聞き、ニヤリと笑った。それは面白いものを見つけた表情にネロには見えた。


「良い質問だ。まずその質問に答える前に、防御の仕組みについて説明しなければならん」


 そう言うとリチャード先生は杖を軽く上に挙げた。マジックバリアが現れる。見た目ではそう変わらないが、先程マーサのエナジーボムを軽く防いでいたあたり防御力は相当なものなのだろう。


魔障壁マジックバリア。魔法由来のダメージを防ぐ補助魔法だ。ただし防ぐことができるのは魔法由来のもののみ。物理由来のダメージはあまり防げない」


 続けてリチャード先生はまた杖を軽く上に挙げた。マジックバリアに似たバリアが作られる。色が違うため多分に別物なのだろう。話の流れからすれば、物理由来のダメージを防ぐものなのだろうか?


「こちらはちょっと珍しいかな。障壁バリア。物理由来のダメージを防ぐ。魔法由来のダメージは全く防ぐことができない。それ故にあまり使われることがない。大抵マジックバリアを強固にしている魔導士が多いな。……さて、この2つの補助魔法だが、大きな注意点がひとつ。ダメージが高すぎると壊れてしまう、という点だ」


 リチャード先生は近くにいるクレイドールにバリアをかけた。何をするんだろう。ネロは首を傾げた。リチャード先生は収納魔法から取り出した剣を構えた。


「……トライスラッシュ」


 剣が青白く光る。リチャード先生はそれを思い切り振りかぶった。青白い光は剣先を追いかけるようにブレた。まるで3本の剣のように。

 轟音と共にクレイドールに斬撃が叩き込まれる。せっかく張ったバリアも意味をなしていない。物理由来のダメージを防ぐ補助魔法は限界を超えてしまったようだ。

 

「とまあこんな風にダメージのキャパシティを超えるとバリアは意味をなさなくなる。防御を固めてくる魔物に対して高威力の攻撃手段で防御ごと叩き潰すのもひとつの有効な手だ」


 

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