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いざ帝都へ


「それで話って?」

「まあそう急かすんじゃないよ。……お前たちは同い年、今全員12歳じゃったな」

「うん、そうだよ。それで儀式を僕たち受けてきたんだよね」

「左様。そしてお前たちはそこで自分の内なる魔力マナが何であるかを知った。今ならばまるで生まれてからずっと知っていたかのように扱えるはずじゃ。例えば先程の飛行魔法のようにな」


 ネロたちは長老の話を真剣に聞いていた。確かに不思議だったのだ。飛行魔法はあんなに簡単ですぐに扱えるようになった。それまで使えなかったのが嘘のようである。それほど簡単ならそれ以前に使うことも容易いはずだ。……だが、実際は使うことは出来なかった。その理由をどうやら長老は知っているようである。


「それが【知る】ということじゃ」

「……どういうこと?」

「知っているからこそできるということじゃよ。知らないものは何をなすこともできん。例え何でもできる空前絶後の天才であっても……な」

「……なるほど?」

「わしはの、お前たちにもっともっと物事を知って欲しいと思うのじゃ。世界は広い。世の中は知らないことであふれておる。それらに触れ合い、理解することで我々は成長しておる。お前たちは可能性のかたまりじゃ。そしてわしはお前たちのためにとある環境を用意した」


 そこまで言って長老はどこからか小冊子を取り出した。そこには綺麗な建物が映っていた。村では見たことがない。恐らくかつて話していた大陸の学校というやつだろう。ネロはしばらくその小冊子の表紙絵に釘付けになった。


「第二帝都魔法学校。魔法を学び、知り、理解しようとする人々が集う学びやじゃ。ここへ行けば今よりもずっと深く物事を知ることができるようになるじゃろう」

「……第二?」

「……そこは気にせんでいい。確かに第一帝都魔法学校もあるにはあるが、わしはこちらの方がお前たちのためになると思っておる」


 長老は澄ました表情である。何ひとつやましいことがないと言いたげだが、ネロは長老がこの表情をする時決まって何かを隠していることを知っている。それが分かるのもまた知るということなのだろう。ネロはなんだかおかしくなって吹き出しそうになった。


 別に長老は何かを騙そうとしている訳じゃない。第二帝都魔法学校である理由は、大方金が足りないとか、必要な手続きを忘れていたとかそういうしょうもない話だろう。

 それに元々大陸の学校に行くのは決定事項だったのだ。それが第二帝都魔法学校という場所だと言うことが分かっただけである。

 それならば別に気にすることはない。違いが分からないのに悩む必要なんてないのだ。行けば知れる。ならば素直に行くのが吉だろう。


「どうせ大陸の学校には行くことになるんだろ? なら第一でも第二でもどっちでもいいや」

「ネロらしいね。……ま、僕も同感だけど」

「私もそうね」

「ほっほ、お前たち話が早いな。……今更行かないと言い出したらどうしようかと思っておったが、心配なかったのぉ。入学式は四の月にある。そこまでは少し日がある。よってわしからお前たちにひとつ知恵を教えよう。年寄りの知恵は役立つものだ。ありがたく受け取っておけ」


 長老はそう言うとどこからか紙切れを数枚取り出した。見慣れた汚い字で何やら魔法について書かれているようだ。どうやらこれを教えてくれるらしい。ネロはこの字を見慣れている。だから比較的丁寧に書かれた一番最初の4文字を読み取ることができた。


「……収納魔法?」

「これ、先に内容を見るんじゃない。……まあ、良い。お前たちはこの収納魔法をこれから3日の間に使いこなしてもらう」

「……3日?」

「なんで3日なの? 四の月までだったらまだ一週間くらいあるぜ?」

「それは簡単じゃ。3日後帝都行きの連絡飛行船が村に来る。お前たちはそれに乗って帝都に行くのじゃ」


 長老は澄ました表情である。どうやらこれもまた隠していたようだ。連絡飛行船など聞いたことも見たこともない。ただ分かっていることは3日経てば自分たちは村を出るのだということ。長老の話を聞くことも難しくなるだろう。ならば心して聞かねばならない。ネロたちは真剣な表情で長老の説明を聞き始めた。


 そうして3日が経った。結果として長老の話は本当であった。見たことないほど大きくそれはそれは立派な飛行船が村にやって来たのである。

 こうなれば後は乗るしかない。母親がくれた山盛りのパンを収納魔法にしまいこみネロは乗り込んだ。縁の赤い黒いローブ。自分の翼に合った服だ。期待もあるのだろう。そう思うとどこか嬉しい。

 もちろんエレク、マーサも同じである。それぞれ新しい服や装飾に身を包んでいる。それぞれがそれぞれを思いにこりと笑った。さあ、出発の時間だ。


 こうしてネロたちの物語は始まったのだ。


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