魔法をとにかくぶっ放せ
教室を出て5分弱。ネロたちはグラウンドに来ていた。見た目は寮の修練場とほぼ同じ、広さは倍以上に見える。いったいここで何をするのだろう?
「魔法の種類は実に多い。補助魔法、防御魔法、強化魔法、回復魔法。そして攻撃魔法。今回はシンプルに攻撃に特化して評価を行う」
「……評価?」
「自己紹介と言ったろう? さっき君たちは自分を同じクラスの他の生徒に紹介した。今度は学校に自分を紹介する番だ」
リチャード先生はそう言うと収納魔法から人形を2つ取り出した。自立式のそれは1つはリチャード先生の手から離れると一目散に走り出し、もう1つはその場で立ち上がった。
「これは名前をクレイドールと言い、魔力が込められた土人形だ。その特徴は何と言っても飛び抜けて高い防御力。そしてあれは名前をマジックドールと言い、同じく魔力が込められた土人形だ。その特徴は何と言っても飛び抜けて高い魔法防御力。どちらも二級魔導士が本気で攻撃しても一撃では壊れない頑丈な代物だ。今から順番にあいつに向かって一撃で最大威力の攻撃を放ってもらう」
説明を聞きながらネロは離れたところで立ち止まった人形を見ていた。魔法を撃つならあいつが相手になる。距離は15メートルほどあるだろうか。最大威力でと言われたが、それなりに狙いを絞る必要がある。威力と命中の両立。要求値は意外に高い。……難しいな。そんな呟きがどこからか聞こえた気がした。
「クレイドールの方は心配してないが、マジックドールの方だな。ちょっとばかり距離を取ってもらっている。もちろん当てた方が正確で高い数値が出せるが、当たらなくても測定はできる。そこは安心してくれ。測定は2回。近距離と遠距離を選んでもらう。ま、とりあえず思い切りやってみてちょうだい。それじゃあ1回目、アルフレッドから始めてくれ」
名前を呼ばれてアルフレッドが返事をする。若干裏返って聞こえたのは気のせいだろうか? 緊張しているのか動きがぎこちない。
「どちらにする?」
「……遠距離で」
「よし、じゃあ頑張って」
アルフレッドはそう言って杖を取り出した。恐らく撃つのは火属性の攻撃魔法。さて、何を放つつもりか……。
「ファイアバレット!」
アルフレッドは杖を掲げた。杖先から火の玉が6個ほど作られて、順番に人形めがけて発射される。一部風にあおられたかコースを外れてしまったが、3個ほど人形に到達。結構な音と共に土煙が上がった。
中々の威力の攻撃魔法が叩き込まれたように皆には見えた。……やがて煙が晴れる。何事もなかったかのように人形はその場に立っていた。頑丈である。
ピピっと音が聞こえた。視線を向けるとリチャード先生が端末を見ている。あぁ、そうか。これは測定なんだった。
「アルフレッド・トルスタン火属性、スコア198」
おぉ……、という声が漏れた。そのスコアが高いのか低いのかよく分からない。だからその声には感嘆の気持ちと動揺の気持ちが混じっていた。
アルフレッドとしては不満そうである。恐らく全弾当てたかったのだろう。まあ全弾当てればスコアは確実に伸びる。
2回目もすぐに撃ちたそうだったが、まずは1周目。次の生徒が呼ばれた。イシュタル・カサンドラ。長く青い髪の女の子だ。
「遠距離でいきます」
「よし、じゃあ頑張って」
皆の視線がイシュタルに集中していた。残酷だが皆は比較しようとしているのだ。アルフレッドとイシュタルどちらが良いスコアが出るのか。ある意味では2人目が最も注目を浴びると言える。
イシュタルは杖を取り出し、ひとつ息を吐いた。
「魔弾【水】!」
水属性の初歩的な攻撃魔法が放たれた。発動時間としては少し遅めか。そこそこの威力のそれはまっすぐ人形に当たった。視線がリチャード先生に集まる。
「イシュタル・カサンドラ水属性、スコア205」
今度漏れた声は先程よりも小さかった。既に何人かスコアの考察を始めている。魔弾【水】は攻撃魔法としては初歩。それに威力も飛び抜けて高いというよりは平均に近そうに見える。
比べてアルフレッドのファイアバレットは魔弾【水】よりも威力が高そうに見えたが、スコアは下回っている。……半分外しているのが痛かったのだろうか?
測定は2回ある。とは言ってもやはり1回目に大きなスコアを出してみたいと思うのが人の性である。できることなら2回と言わず何回もチャレンジしたい気持ちが皆に芽生えた。
が、そんなことをしていてはいつまで経っても測定が終わらない。リチャード先生はそれを考えてか次々と順番に生徒を呼んでいった。
そしてネロの番になった。
「どちらにする?」
「遠距離で」
「よし、じゃあ頑張って」




