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いるにはいるんだが

 

 剣が使える魔物の候補、……候補か。今手持ちですぐに召喚できる魔物といえばワイトとゴブリン、それにスライムだな。闇属性の魔物はワイトだけ。……あ、ヴァンパイアロードもいるか。まああれは長く召喚できないから無しだな。


「……まあ、いないな」

「いないのに考えたの? 今候補に何かいるのかと思って期待したのに」

「いや、いるにはいるんだけど。……あまり長いこと召喚しておけないからってロージアに言われてる魔物だから」


 キダルはネロの言葉を聞きながら数度頷いた。表情は読めないがなんとなく、……楽しそうに見える。ワクワクしてるようにも見える。変なスイッチを押してしまったのかもしれない。

 キダルはにっこり笑ってネロに近づくと何かを握らせた。手を開くとそこには水晶の入れ物がある。どう見ても前に召喚に使ったものと同じものに見える。……え、これ召喚しろって言ってるのか?


「アダプトリングがあるんだから召喚時間が多少短くなっても大丈夫。すぐにクロに切り替えれば問題なしさ」


 キダルはそれが当然のような口調だ。魔力消費が激しい魔物を召喚したとして、すぐに消費が穏やかな魔物に切り替えれば問題ない。その理屈はまあ分かる。

 ただその言葉だけで話を進めるのは危険だ。ネロはまだ召喚魔法について詳しくないのだ。


「ええと、召喚魔法は召喚の時も召喚時も魔力マナを消費するんだよな?」

「そうだよ? それがどうかした?」


 キダルはぽかんと口を開けた。それがどうかしたかと言いたげな顔だ。魔力マナが有限であることはネロも知っている。消費のペースが速かろうが遅かろうがいずれは尽きてしまう。

 消費した魔力マナはどうやって回復しているのか。ネロはそれを心配しているのだ。それを知らなければ魔力マナを無闇に減らすことはしたくない。


「あぁ、そんなこと?」

「大事だろ? 魔力マナが尽きていいことなんてないからな」

「まあそれもそうか。ええと、どこから説明しようか……。とりあえず魔力マナの回復についてかな。これは簡単。休めば次第に回復するんだ」

「休む……?」

「そう、休む。寝るのはもちろん、ゴロゴロ寝転がってるだけでも結構回復する。なんだったら水分を摂るだけでも割と回復するし、深呼吸ひとつでもちょっとずつ回復するよ」


 思っているよりも遥かに魔力マナの回復は簡単なようだ。程度の差こそあれ休んでいれば回復してくれるという。回復についてはキダルの説明でなんとなく分かった。あとは召喚魔法に使う魔力マナについてだな。


「えっと、魔物によって使われる魔力マナの量が変わるのは知ってる?」

「あぁ、何となく」

「低級の魔物なら召喚したとしてもほとんど消費しないんだよ。なんだったら呼吸するだけで消費分は取り戻せるよ」

「え、そんなに少ないのか?」

「まあ中級魔法とかをドカドカ撃ってたらさすがに魔力マナは尽きちゃうけど、それは別に魔物使いに限った話じゃないだろ?」


 なるほど、確かにその通りである。消費が激しいのなら魔物を召喚し続けるなんて話はあり得ないし、魔物使いという戦闘スタイル自体成立しないだろう。魔力マナの使いすぎに対してどうやらビビりすぎていたようだ。

 そしてその話から考えるに、召喚している魔物を切り替えれば、ガッツリ魔力マナを消費したとしてもすぐに取り戻せるというのは本当なのだろう。


「そういうことなら召喚してみようかな」

「やったね! 僕は是非ともその候補を見てみたいや。だってロージアさんがそう言うんだろ? それはさすがにスルーできないって」

「……本当に問題ない?」

「うん、本当。話聞く限り割と楽しみ。僕はロージアさんの見立てを信頼してるからヤバいやつなのは確定してるしね」


 ……これは後に引けなくなっちゃったな。実際持ってるのに嘘でしたとは言いたくない。それに確かにヴァンパイアロードは俺も見たい。どう考えても剣得意だろうし、ここで召喚しちゃうのは決して無しじゃない。

 ……よし、してみよっか。


 ネロは周りを確認してから収納魔法に手を突っ込み、綺麗な黒い羽根を取り出して水晶の入れ物に入れた。入り口が埋まる。もう取り消せない。やるしかない。


「……召喚」

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