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使い分けろ


 パチパチと手を叩く音がした。振り返るとキダルが小さく頷きながら拍手をしていた。口元は笑っていない。真剣な表情だ。少しだけ空気がひりつくのをネロは感じていた。


「……すごいね。今の中級魔法だよね?」

「あぁ、……まあそうだな」

「正直驚いたよ。だってネロは召喚魔法の契約を知らなかったんだよね? だから魔法に対する理解はそこまで高くないと思ってたんだ。……まさか中級魔法をもう既に1つ習得していたとは」


 それを聞いてキダルが真剣な表情だった理由が何となく分かった。要するにキダルはネロのことを見くびっていたのだ。初歩的なことを教えれば済む存在。最初の認識は大方そんなところだろう。


「そういうことなら話は変わるな。……ネロってこれ見たことあるかい?」


 キダルは収納魔法に手を突っ込むとあるものを取り出しネロに手渡した。手首にはめるものだろうか。ダイヤル式の操作盤が見える。当然見覚えは全くない。


「……知らない」

「それじゃあ説明するね。これは複数の魔物を取り扱う魔物使いが使う道具。アダプトリングだよ」

「複数?」

「そう、複数。魔導士の戦闘スタイルは大きく4つあることはネロも知ってるね? それは当然魔物にも適用される。例えばスパちゃんは魔法が得意な魔物なんだ」


 スパちゃんは得意気に胸を張った。確かにスパちゃんは先程キダルのカオスレイを魔障壁で完璧に防いでいる。魔法が得意ということを疑う余地はない。


「さて、話はここから。魔法が得意な魔物もいれば、剣の扱いが得意な魔物もいる」


 言いながらキダルはローブの袖をまくる。筋肉質な腕が見えた。体を鍛えているのか? なんて関係ない疑問が浮かんで消えた。手首にはアダプトリング。どうやらキダルの魔物はスパちゃんだけではないらしい。

 ダイヤルを捻る。スパちゃんが光に包まれて消えた。その代わりに剣を持ったドクロが現れた。見た目はワイトに近い。だが、ワイトは剣を持たない。剣を持つとなるとボーンナイトが候補になるが、ボーンナイトはもっと小さい。あれは……、誰だ?


「ボーンジェネラルのジェネちゃんだよ」


 ボーンジェネラル。ワイト種が杖ではなく剣を持つように進化したのがボーンナイトであると言われている。ボーンジェネラルはそこからさらに上位の存在に進化した魔物。そう考えていいだろう。

 上位の魔物はいくつかネロも知っている。記憶に新しいところで言うとロージアのツバサことエンシェントウィングがそれだ。見た感じエンシェントウィングと同格、……いや少しこちらが上か?


「……すげぇな。こんな魔物見たことないや」

「ははっ、ありがとう。でも残念ながらジェネちゃんはこの寮で最も強い魔物じゃないよ」


 さらっとすごいことが聞こえた。こんなに威圧感すら感じる魔物が最も強い魔物でないとはどういうことだろうか。想像すらできない。最も強い魔物はいったい……?


「一度僕が帝都第二魔法学校の魔物使いでで一番強いんじゃないかって思い上がった時があってね」

「まあ、こんなすごい魔物がいるなら俺でもそう思うかも」

「ふふ、ありがとうね。でも全然歯が立たなかったよ」

「……それは、誰?」

「ロージアさんだよ。彼女のエンシェントウィングは本来魔法が得意な魔物になるんだけど、普通にジェネちゃんが剣で負けたからね。あの人本当えげつないよ」


 聞きながらネロは眉をひそめた。話の内容は理解できる。キダルは学校内で一番強いと思ったことがある。理由は簡単目の前のボーンジェネラルだ。この威圧感ならそう思っても仕方ない。

 だが、寮長のロージアはそれを上回ったという。これも理解できる。二級魔導士と準級魔導士ではやはり大きな差があるのだろう。やはり寮長と言ったところか。


 分からないのは次だ。本来魔法が得意なエンシェントウィングが、剣を使ってボーンジェネラルを圧倒した。……どうやって? そもそもエンシェントウィングってあの魔物だよね? 剣を使っている姿が想像つかない。


「さて、話を戻そう。一部例外はあれど、基本的に魔物ごとに固有で得意な戦闘スタイルがあるんだ。だからまずは戦闘スタイルごとに魔物を揃えることから始めると魔物使いとして強くなれるよ」


 ……なるほど、例外か。まあ準級魔導士ともなれば色々規格外でも理解はできなくもない。俺は多分普通の人だろうから例外のパターンは考えない方が良さそうだな。

 ええと、魔物には固有の戦闘スタイルがあると。だからそれに対応して魔物を揃えていく。……うん、理解できる。要は魔法で戦うのが得意な魔物、剣で戦うのが得意な魔物、拳で戦うのが得意な魔物を召喚して契約するってことだな。……それじゃあ。


「クロは何が得意な魔物になるんだ?」

「バッドバットはどちらかというと魔法が得意な魔物。だから魔法の戦いはクロに任せるとして、……そうだな。ひとまず次は剣が得意そうな魔物を召喚してみるのをお勧めするよ。ちなみに今誰か候補いたりするのかい?」


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