29.もぐもぐもぐ。
ふかふかの羽毛ぶとんに顔を埋めること数分。
移動で疲れていたのか、私の意識は物の見事に刈り取られていった。
窓から聞こえる風のそよぐ音が心地いい。
コンコンッ、コンコンッ……
ドアをノックする音が聞こえる。
なぁに、ニートに急ぐ用事などない。
二度寝だ、二度寝。
コンコンコンッ。
コココンコンッ。
ガチャッ……
「マコト、失礼するぞ。」
透き通るような女性の声が聞こえる。
ゆさゆさと体が揺すられる。
「んぁ・・・」
じゅるりとよだれをすすって、体を起こす。
「マコト、昼食の支度ができたが、起きられるか。」
ぼやける視界をこすって、前を眺めるとそこには金髪の美少女が。
「あ、えっと……。」
周りを見渡すと知らない天井。
というか、ここは自宅じゃない。
そうだ、領主のお屋敷にきて、お昼まで待っているうちに
眠ってしまったんだ。
「えっと、リース。おはようございます。」
「おはよう。昼食だが、食べられそうか。」
食事、と聞くと
クゥ、と私のお腹がなった。
子供ともなると腹の虫も可愛いものだ。
「うん、その様子だと問題なさそうだな。」
とリースは破顔した。
キリッとした印象のあった彼女だが、笑うととても可愛らしい。
顔をさっと洗ったあと、リースの案内を受けて食堂へと向かった。
長いテーブルの上には、シミひとつないテーブルクロスが敷かれている。
絵に描いたような貴族の家ですな。
前菜、スープ、メインディッシュ、そしてデザート……
次々と運ばれてくる料理を平らげる。
テーブルマナーは全然詳しくない。
とりあえず外側のカトラリーから使えばいい。
それが私の知っている唯一のマナーだ。
異世界だし、子供だし、無礼講だ。
食べるのに夢中でどんな会話をしたのか、あまり覚えていない。
マキタはニコニコしながら、料理を頬張る私を見ていた。
美味しかったし、残すのは申し訳ないので食べきったが、
この体にフルコースは多かった。
おかげでお腹はぽんぽんに張っている。
「お口にあったようで何より。」
「ごちそうさまでした。しばらく動けそうにありません。」
「ゆっくりするといい。私は少しお先に失礼するよ。」
食後の紅茶を飲み終えたマキタは、自室へ戻っていった。
リースに聞いたところによると、王都への道が閉ざされた関係で、
なにかと調整が大変だそうだ。
迂回経路の検討や、岩の破壊も含めて、色々な方法を模索しているらしい。
なるほど、私の魔法もその方法のひとつというわけだ。
他にも方法があるなら、少しは気負わずに挑める。
そういえば、物を圧縮したり、浮かせたりするときは、
重さを気にしたことはなかった。
実際、どのくらいまでいけるんだろうか。
あとで試してみるとしよう。
夕食までの腹ごなしにちょうどいいしね。




