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魔法都市

村の特産は異世界です


・魔法都市


 ねえ武見君、ちょっと生々しい愚痴を聞いて貰っていいかな。そう、絶対に拒否と言ってくれるのね。でもね、ここから逃げられるとでも思っているの? 空間転移をすれば逃げることができる……それって、お父さんに一度阻まれているよね。ひょっとして、私相手なら逃げられると思っていたの?

 ええ、甘すぎると言ってあげるわ。それから、魔道具だったら私も使い方の試行錯誤をしているのよ。それで色々と出来るようになったんだけど、問題はお父さんには通用しないことなの。だから使い方が間違っているのか、貴方で実験してみることにしたのよ。大丈夫、天井のシミを数えていたら全部終わるから。


「そ、そんなことを言われて逃げないと……なぜ身体が動かないんだっ!」


 疑問? とっても簡単なことよ。そう、ちょっと脳からの神経伝達を邪魔してみたの。これもね、病気治療の一環として研究した中身に入っていたのよ。うん、そっちは邪魔じゃないわよ。おかしくなった伝達機構を直す方のことなの。それでね、その伝達機構を細工すると……あら、逞しいのね。


「ま、まて、これは流石に問題だろうっ!」


 そうね、問題だと思うわよ。それでも、意思をコントロールしていないから。ただ身体的反応として、ちょっとギンギンになっただけのことよ。これもね、うまく使えばEDの治療に使えるものなの。


「さ、流石にこれは問題すぎる。だ、だから……転移も出来ないのはどうしてだっ!」


 それは、お父さん相手に一度通った道だと思うのよ。空間転移の阻害は、お父さんのところでかなり検討しているみたいよ。ええ、これから転移の魔道具を販売する話になってるでしょ。だとしたら、悪用対策って必要だと思うのよ。だからこれは、その検討から出てきた阻害方法と言うこと。

 でも意外ね、武見君だったら対策が終わっていると思ったのよ。でも、こうして転移まで封じられたと言うことは、そちらの検討はなおざりにされていたと言うことね。そう、細胞分析に集中していたと言ってくれるのね。立派だと褒めてあげるけど、ちょっと隙が大きすぎたかな。そんなことじゃ、お父さんから藍香ちゃんを奪い取ることは出来ないと思うわよ。私としては、武見君には頑張って貰いたいと思っているのよ。


 そう、私の言いたいことが理解出来たかしら。理解出来た、利害は一致しているはずだと言ってくれるのね。それが理解出来たのなら、拘束を解いてあげることにするわね。でも、そのギンギンになったもの……どうするつもりなのかしら?

 なるほど、素数を数えることにするんだ。意外に古典的な方法と言って良いかしら? 貴方が希望するのなら、私が……冗談よ。カプチーノさんを拉致しておいたから始末して貰ったら? それとも、やっぱり私の方が……逃げてくれたか。ちょっと残念って気もするわね。


 しかし武見君も逃げてしまったか……せっかくだから、慶子母さんのところに行ってくるかな。慶子母さん、なが餅が好きって言っていたと思うし。うん、しっかり買い込んで冷凍庫に入れてあるんだ。だけど、どうして伊勢志摩の甘いものって、アンコ系が多いのかしら。

 と言うことで……意味がわからない。いえ、単なる話の取りかかりだから気にしないで。慶子母さん、お茶をしに来ました。でも、少し出遅れたみたいね。ところでそれって、ゆで卵? 岩手銘菓のカモメの卵と言うんですね。後は……プリンもあるんだ。私はですね……そうですか、冷凍庫で見つけてくれたんですね。はい、慶子母さんが好きだと言っていたのを覚えていたんです。


 ところで陽佳ちゃん、東北旅行はどうだった? そう、奈良以上に田舎だと言ってくれるんだ。そりゃあ、田舎に行ったんだから田舎と言うのは当たり前だと思うわよ。お堂の中に金ぴかのお堂があった……って、なに?


「中尊寺の金色堂のことね。雨ざらしにはできないので、保護の為に作ったって聞いてるわ」


 風情も何もないと言っちゃいけませんか? 言っても良いが、仕方の無いことなんですね。ええ、文化財の保存と考えたら、仕方が無いのは間違っていないんでしょうね。

 それで修学旅行第二弾はどうでした?


「そこは女子旅と言ってくれませんか?」


 でしたら、女子旅はどうでしたかと聞き直します。


「楽しかったと思うわよ。とっても落ち着いていたと思うし……陽佳ちゃんが、わんこそばを200杯食べたのには驚いたけど」

「フローリアンさんとパナメーラさんも同じぐらい食べたと思うわよ」


 わんこそば200杯ですか。それって、お蕎麦で何人前になるんですか? 15杯でかけそば1人前……つまり、かけそば13人前ぐらい食べたと言うことなのね。陽佳ちゃんって、随分と大食いだったのね? その割に胸……ごめんなさい、私に殺気を向けないで。


「大きくても、武器になっていませんよね?」


 ええっと、そこで虐めないで欲しいんだけどな。ええ、結局鳥羽でも逃げられましたよ。それから慶子母さん、そこで現実を見た方が良いと言わないで欲しいんだけど。わかっていますよ、藍香ちゃんより有利なのは、私が年上ってことだけなのは。


「普通、若い方が有利じゃないの?」


 普通はね、普通は若い方が有利と言うのは間違っていないわよ。でもね陽佳ちゃん、オルティアさんのことを……いえ、別に呼んでいませんので。参戦してこなくても……そう言う訳にはいかないと言ってくれますか。


「ジョセイトシテノミリョクデショウリシタ」


 オルティアさん、普通に話せますよね。なんで、そんな片言日本語を使うんです。個性を際立たせるため……それって、今必要なことですか?


「先が無いからとは言いたくない」


 やっぱりわかっているんですよね。陽佳ちゃん、そう言うことだから。私や藍香ちゃんは、まだ20代……私の残り時間は少ないけど。取りあえず、まだ20代なのよ。藍香ちゃんはわからないけど、これでも結婚願望をもっているのよ。そのことをお父さんも知っている……駄目な理由ばっかり思い浮かぶわぁ~


「藍香さん、愛人にしてとしか言っていませんよね。あと慶子母さんのことを、絶対にお母さんって呼んでないし。大悟君たちは『お母さん』って呼ぶようになったのにね」


 その違いがあるのはわかってる。それでもお父さん……って言っておくけど、お父さんの考え方とは違ってるわけ。お父さんには、お父さん的な『普通の幸せ』があるわけなのよ。藍香ちゃんにも、普通の幸せを願っていると思うわよ、お父さん。


「でもさ、藍香さんってしっかり芸能人だよね。なんか、IMO研究所でのお茶くみが天職って聞いた気もするけど……それはそれとして、中国でも人気が出ちゃったのよ。お父さんの考える、普通の幸せって無理なんじゃないのかな?」


 中国で人気……それって、大宴会が理由なんだろうなぁ~あそこで最初に歌えるのって、実はもの凄いことだと思うんだ。だって、プロのBLTだって『無理』って逃げたぐらいなの。幾らお父さんが餌を……餌……画餅だったんだけど、餌をぶら下げたからと言って歌える場所じゃないと思うわ。それで、歌が相変わらず凄かったのよ。度胸とは違うんだけどね、ただ周りが見えなくなっただけなんだけど、映像で見ているだけじゃそんなことわからないよね。だから人気が出るのも当然って言えば当然だと思う。


「そうなると、ますます普通の幸せからは遠ざかっていくのね。うん、人生って難しいと思うわ」


 他人事のように言ってるけど、陽佳ちゃんも例外じゃないからね。一応聞いてあげるけど、『良いなぁ』って思ってる人っているのかしら? おっ、顔を赤くしてくれたわね。つまり、いるってことね。お父さんって言わない限り、危なくないから言ったんさい。


「お父さんはお父さんだから。私は、その、武見さんって格好良いなぁって思ってる」


 うん、もの凄く真っ当なセンスに感心させて貰ったわ。武見君は、見た目も含めて間違いなく優良物件だからね。ただね、今は目が藍香ちゃんに向いちゃってるのよ。カプチーノさんは障害にはならないけど、藍香ちゃんと勝負しないといけないのよ。

 結構厳しい勝負って、理解してる?


「だったら、お父さんに協力して貰えばいいのよね?」


 ねえ慶子母さん、怖いって言って良いかしら。そう、慶子母さんも怖いと思ったんだ。ええ、陽佳ちゃんの言ってることは間違ってないわよ。その方法が一番効果的なのは確かだけど……それがすぐに出るのがやっぱり怖いと思うんだけど。

 それからね、お父さんはしばらく忙しくなるから。今回の伊勢志摩旅行で、日程の早回しが決まったのよ。ちょっとね、大げさな話になっちゃったのよ。




 日程の前倒し。伊勢志摩旅行のことを考えたら、そうなるのも理解出来ますけどね。ええ、マジックシティ構想を発表することをいっています。だってさ、あそこで米英中露の首脳と話が付いちゃったんだもの。だったらさ、国内の反発なんて怖くないと思ってもおかしくないでしょ。

 しかもあの宴会って、『今日の異世界に行こう!』で使われたりしたんだって。小さなお子様に、あの宴会を見せて良いのかと言う疑問はよくわかるわよ。MHKもね、その辺りのことはちゃんと理解してるから。だから、当たり障りのない部分……ステージ系を中心に放送してくれたわ。だからと言うことも無いんだけど、藍香ちゃんの人気が爆発なんかしています。なんかさぁ、藍香ちゃんの求める幸せから全力疾走で遠ざかってる気がするのよね。


 一応各国首脳は帰国したのよ。そこでゲートを撤去しなかったの。そこまで言えばわかるよね。今回の首相会見、そこに4カ国首脳が出席してくれたのよ。それは良いんだけど、本当は良くないんだけどね、良いんだけど、どうして会見の場を武道館にしてくれるのかな? そりゃあね、各国から報道陣が1万人近く集まったのは確かなんだけどさ。こんな人数が集まれるのって……今ならそこそこあったか。だからと言って、ドームは流石にないでしょ。

 それでお盆明けの8月後半の平日……冷房をガンガンに効かせた武道館でマジックシティ……そう、タイトルは魔法都市構想発表なのね。その魔法都市に関する発表が行われることになりました。政府からは関係閣僚が出席して、長野県知事、大町市市長、白鹿村村長、大谷村村長が行政側として出席することになりました。

 そして来賓として、ギブソンアメリカ大統領、アリシア英国首相、プルシチノフロシア大統領、周中国国家主席が出席されました。産業界からは、経団連会長とかコロモ自動車会長とか、JR各社、航空会社、医師会会長も出席していたわね。

 そしてIMO研究所からは、諸星所長……当然だよね。それから立木副所長、オルティア副所長、朽木役員、ポトマック5の皆さんが出席しました。しかもですよ、私も列席者に加えて貰ったんです。藤康さんたち? 当然壇上に並んでいますよ。


「日本国総理大臣菅谷道徳です。本日は、日本が新たな一歩を踏み出す発表を行う栄誉を得たことを誇りに思います」


 そこで詰めかけた報道陣に対して、ゆっくりと視線を送る菅谷総理。流石は激動の日本の舵取りをされているだけのことはあると思います。


「意味の無い前置きをするつもりはありません。閣議において、魔法特区設置の決定を行いました。すでに特区構想自体は半年以上前に発表されていたものでもあります。従って、判断が遅いと言うご批判は甘受するものでもあります。本日ここに、魔法特区構想……すなわち『魔法都市』構築発表を行うことといたします」


 プロジェクションマッピングで、長野県の地図が映し出されました。そこから大町市から大谷村までのエリアが、ピックアップされて、『魔法都市』の文字がオーバーラップ。うん、政府発表とは思えないエンターテインメント性だと思うわよ。


「これまでは、IMO研究所周辺と言う狭い地域で特筆すべき技術が公開されてきました。その技術を見た皆さんは、新しい時代が訪れることを期待されたのではないでしょうか。この私自身、新しい時代に立ち会う期待を抱いていたのです。しかしながら、大きすぎる、そして急すぎる変化は社会に混乱を巻き起こすものでもあります。特区実現まで時間が掛かったのは、技術の熟成を待つことと同時に、社会が追いついてくることも必要だったわけです。そして機が熟したと判断し、こうして特区設置を行うこととなりました。それを米英中露各国首脳に出席いただき発表する機会を作らせていただきました。先日の伊勢志摩魔法サミット……敢えて、魔法サミットと言わせて貰います。そこで各国首脳には構想について説明させていただきました。その結果ですが、全面的な支持を頂いたとお答えいたします」


 それで、各国首脳から挨拶なんですね。最初は、アリシアさんなんですか。その辺り、最初に異世界に触れたからと言うのが大きいのかしら。


「サイショニアイサツスルメイヨヲイタダイタコトニカンシャシマス」


 ここまでは日本語で。そこからは同時通訳が付いてくれるのね。なるほど、魔法都市は英国作家の小説で有名になっている。ただ日本で実現するのは、もっと近代的なものになると言ってくれますか。その特区構想に賛同する意味で、ロンドン近郊に衛星都市を造ることを決定した。日本との間に転移ゲートを作り、国境を開放することにする。最初に挨拶する特権で、ほかの3カ国も同じことをすると伝えることになる。

 いやぁ、もの凄いことになってくれたのね。それで次は、プルシチノフロシア大統領のご挨拶、ご挨拶。なんで私を名指しにしてくれるのかな。ロシアの男として、飲み負けしたままで終わるわけにはいかない。モスクワ近郊に作った衛星都市で、オタリとの再戦を希望する……ねえ、それって挨拶で言うことなのかしら?

 そして次は、周主席なのね。それで主席は、酒席の話は先にプルシチノフロシア大統領に取られちゃったよね。だったら……そう、藍香ちゃんのことを持ち出してくれるんだ。北京に衛星都市を造り、常設ステージを作ることになる。そのステージへのハイエルフ、闇エルフ、アイカの出演を熱望すると言ってくれるんだ。

 それで最後はギブソン大統領。衛星都市は西海岸に造ってくれるのね。オレンジカウンティ……ってよくわからないんだけど、そこに衛星都市が造られるんだ。目玉は? 常設ステージ構想をチャイナに先に言われた。だから、大規模病院を設立する。そこで魔法技術を大いに活用すると言ってくれるんだ。


 うん、ここまで4カ国が前向きなことを言ってくれたら、日本で反対意見は言いにくくなるよね。そうか、外務省……例のタスクフォースかな。それを狙ったと考えて良いんだよね。

 それで、実施主体となるIMO研究所所長の挨拶。まあ、挨拶だけなら諸星さんでも大丈夫でしょう。それに、異世界案件では諸星さんが顔と言うのは間違っていないからね。


「ただいまご紹介に与りましたIMO研究所を代表している諸星孝明と申します。実務的な発表は副所長に任せることとして、この世界と異世界を繋ぐものとしての抱負を述べさせて貰います」


 最初はね、『悪名高い』ってのを副所長の枕詞に付けるって話もあったのよ。流石に問題でしょうと言う意見が立木さん以外から出たので、普通の紹介になったんだけどね。

 それで諸星さん。魔法技術展開が社会に貢献する期待を事例を挙げて説明しました。うん、今日は落ち着いていて良かったと思うよ。そして落ち着いて話をすると、諸星さんって結構格好良かったりするんだよね。それから諸星さんって、見た目年齢的には20代半ばなのよ。『年寄ばっかり』って批判を躱す効果も期待されたんだよね。


 諸星さんの挨拶が終われば、次は立木さんの出番と言うことになります。立木さん、『藤康さんだよね』って最後まで抵抗したんだけど、菅谷総理からも『お前がやれ』って言われてしまったのよね。それでも不平を漏らしていたんだけど、諦めて演壇に登場と言うことになりました。

 それは良いんだけど、どうして隣にラズライティシア様を立たせるの? 映像的には、エリシオンさんとかセフィーロさんの方がいいと思うんだけど……はっ、滝のような冷や汗が背中にっ!


「若輩者……と言うには歳を取り過ぎていますが、私が魔法都市について発表させて貰います。まず対象地域ですが、長野県大町市、白鹿村、大谷村の3地区となります。当初IMO研究所のある大谷村だけと言う意見も有りましたが、規模拡大が必要との意見を採用し大町市まで対象地域としました」


 その裏には、平地が少ないってのもあったのよね。移動の問題が無くても、施設を作るには平地がある方が都合が良いのよ。だから大谷村、白鹿村だけじゃ完結できなかったのよね。後は、移動のデモだから、それなりに距離が必要と言うのも確かだったの。


「魔法都市で最初に提供する機能は、空間転移技術を用いた移動となります。こちらに関しては、すでに魔王城公開等で公開された技術でもあります。そして日常生活に利用する意味で、バス移動を代行するものとして、先行して大谷村、白鹿村に転移ゲートを設置いたしました。これで、運転手不足に悩むことなく、そして天候に左右されない移動が実現されました。しかも既存の公共交通とは違い、運行ダイヤと言う概念が存在していません。移動したい時に転移ゲートまで出向き、そこで数歩歩くことで目的地まで移動が完結することになります。では、実際の運用を映像でご覧頂くことにいたします」


 これって、おじいさんおばあさんたちから大好評を博しているんだよね。ちなみに追加のバス停……バス停なのかな。そのゲートを村役場とか小学校、中学校にも作ったの。通学路の寄り道って楽しみ……なんて、元々無かったからね。それを忘れれば事故の恐れもなくなるから、画期的って村議会でも騒ぎになってくれたのよ。そしてその事情は、お隣白鹿村でも同じだったわ。当たり前だけど、診療機関にもゲートを作ってあるわよ。

 だから両方の村で、次はどこを繋ごうかって話題になってるの。流石に、全部IMO研究所に持ってくれとは言わないみたいだね。バスの維持費を考えたら、格安と言うのも理由なんだろうね。後はバスの運転手って思いっきり人手不足になってるから、そっちの面でもありがたいみたいだよ。


「JRにもご協力頂き、各駅間を空間転移ゲートで接続することとします。こちらはJRの業務として運営していただくので、現行と同じ料金体系になるものと思われます。当たり前ですが、こちらにもダイヤに相当するものはありません。移動したい時に駅に行き、目的地まで歩いて移動していただくことになります。ゲートを工夫しますので、シニアカーの移動も問題ありません。以上が、ローカル交通機関に対する施策となります」


 ダイヤが無いって、今までの不便さを一気に解消してくれるんだよね。だってさ、大糸線って7時台の次が12時近くになるんだよ。便利に利用するってことにはならないと思うのよ。アクセスポイント、つまり空間転移ゲートのことなんだけどね。近くにあれば、自家用車も必要無いぐらいだと思うわ。


「そして次が遠距離移動となります。こちらは拠点駅、具体的には信濃大町、白鹿、南大谷駅ですが、そこに長距離ゲートを設置いたします。具体的移動対象は、東京駅、新宿駅、大宮駅、横浜駅、長野駅、松本駅となります。今後需要を見て、接続対象を増やすことを計画しています。予めお断りしておきますが、今挙げた拠点間の直接接続は行いません。それから、第二陣として名古屋、大阪、京都への接続も計画しています。特区と言う性質上、先に挙げた3駅がハブ駅となり、それ以外の駅がスポーク対象となるわけです」


 当然出る話なんだけど、やっぱり具体的に示されるとインパクトがあるのよね。だいたいさぁ、ドローカルの駅が大きく描かれて、東京とか新宿がその他と同じ扱いになるプレゼンテーションって普通はないよね。でもこと魔法と言う意味では、中心はIMO研究所のある大谷村なのよ。


「次にさらなる長距離移動ですが、国内航空2社に協力をいただき、空港のようなものを設置いたします。対象接続地は、北から札幌、函館、青森、仙台、広島、博多、鹿児島、沖縄となります。こちらも、需要に応じて接続先を増やす計画となっています。空間転移ゲートの性質上、こちらも運行ダイヤは存在しません。歩いてゲートを越えていただく限り、利用時間に制限を設けない予定でいます。ただし、空港内のカートを利用される場合はその限りではありませんので悪しからず」


 空間転移って、移動時間が掛からないのが最大の売りなのよね。だから転移ゲートが作られたところだと、特区を経由するのが時間的に最短になってくれるのよね。


「そして最後が、国際接続と言うことになります。今回4カ国から首脳の方がお見えになっています。それが大きな理由なのですが、中華人民共和国に2カ所、北京と上海にゲートが設置されます。そしてロシアには、モスクワとサンクトペテルブルクにゲートが設置され、英国にはロンドンにゲートが設置されます。アメリカにはワシントンD.C.、ニューヨーク、ロサンゼルス、オースチンにゲートが設置されることになります。EU内にゲートが無いのは、まあ、その辺りは察してくださいと言うことになります」


 ああっ、言っちゃったよ。うん、立木さんって根に持つタイプだからね。これでこのニュース、しかも意味ありげな発表をしたから、あちらが大騒ぎになるのは間違いないよね。


「さて、こちらが人の移動に関する大枠となります。次に人では無い物流と言うことになります。それに関しては、特区内に大規模物流センターを設置いたします。そして日本各地、並びに先に挙げた国々との間に物流ラインを構築します。従って、輸入対応の検疫施設も設置されることになるわけです。そして特区内の物流は、先ほどの転移ゲートが活用されることになります。具体的には専用ゲートが作られ、目的に応じたカートが走行することになります」


 輸送量にも関係するけど、これってこれまでの物流網を破壊する威力があるんだよね。長距離移動を自動化した車両で賄えるのなら、ドライバーの問題が無くなってくれるのよ。しかも移動時間が大幅減だし、コストだって激減することになるのよね。

 だからさ、コロモ自動車の会長まで顔を出していると言うこと。運輸大手も関係者が大勢出席しているわね。


「さて、今までは人、物の移動に関して説明いたしました。ただ、これだけだと特区は人、物が素通りするだけの場所になってしまいます。それでは、特区を作る意味がないことになるわけです。従って、特区を魅力的なものにする施策が必要となります。その施策の第一として、IMO研究所が主体となって総合大学を設立いたします。そこに各国から優秀な研究者を招請する計画となっています。これについては、すでに賛同頂いた4カ国から派遣していただくことが内定しています。なお学長として、IMO研究所副所長であるオルティア・ノイエクラッセを据えることが内定しています」


 これってさぁ、明言していないけど魔法を中心とした国際学術組織を作るってことよね。オルティアさんがIMO研究所に参加したのって、今となってはこのためとも思えちゃうわね。だって彼女の知名度って、半端ないのがわかってるから。


「そして大学に併設する形で、総合病院も設立されます。特区と言う特性を生かし、医療スタッフに異世界人……具体的には翼人、ハイエルフ、闇エルフが勤務することになります。これは、慢性的な医療スタッフ不足に対応する目的もあります。そして病院では、従来の医療技術並びに京都で研究している幹細胞、魔道具を用いた治療を並行して行っていきます。それから医療スタッフですが、賛同して頂いた各国からの派遣も予定しています」


 思うんだけど、これって国境を廃した国際都市を造ることになってるよね。あまり凄いことをすると、国内展開が難しくなる気がするのよ。まあ、あの人たちだったら、それぐらいのことは十分想定していると思うけどね。

 でもさ、翼人とかハイエルフとか人手不足になったりしない? そうか、パンの国とかおかしの国とかで捜索するのね。名前の長い国にも、ハイエルフっていたわね。闇エルフは……今現在50人を超えている。全体的に、もう一桁増やしたいところだと思うわよ。だけどね、産めよ増やせよ地に満ちよって言ってるわけじゃないのよ。


「それ以外の企業誘致に関しては、魔法技術の優先使用権を餌に行うことになっています。こちらは、まあ、早い者勝ちと言わせていただきます」


 山縣さん情報だと、薬品メーカーが興味津々らしいのよね。ぶっ飛んだ大学が出来ちゃうから、ほかにも色々と手を挙げそうなところがいると思うのよ。

 防衛産業……それは、今回対象外にするみたいよ。うん、武器輸出の3原則を理由にしているみたい。


「以上簡単ではありますが、特区魔法都市についてIMO研究所副所長立木が説明させていただきました。なお特区として試行する以上、この結果は日本全国に展開することを計画しています。各地に様々なニーズがある物と思われます。その中には、我々が考えていなかったような用途があるのではないでしょうか。今回魔法都市を実質的に運営していくIMO研究所として、想像もしていない提案を歓迎いたします。そして提案を評価し、次の地域を選定することを考えています。提案によっては、国を飛び越えることも十分に考えられます。ただ待っているだけでは、順番は中々巡ってはきません。地域で市で県で、皆さん知恵を絞ってはいただけないでしょうか。勿論、大学レベルと言う小規模の提案も歓迎いたします」


 こうやって、地域間の競争を煽ってくれるのよね。でも、これって反対意見を封じ込める対策にもなっているそうなのよ。米英露中が顔を合わせたことで、外に出られるって脅しにもなっているんだって。反対意見を言うにしても、前向きの反対をしろと言うのがタスクフォースの総意らしいわ。


「ただいま、地域間の競争を煽るようなことを発言いたしました。ただ私たちは、優劣を付けようとは考えていません。そして同じ考えを持つ地域であれば、連携して提案していただきたいと思っています。そして無いとは思いますが、足を引っ張る動きに対して、つまり妨害工作に類する物については断固たる対処を行います。菅谷総理を前にして言うことではありませんが、私たちは国会議員に対しても遠慮はいたしません。妨害工作に対する対処は、出し惜しみをしないことを宣言いたします」


 あっ、ラズライティシア様の隣にエリシオンさんが転移してきた。それから、身重のインテグラさんも現れてくれたわ。それは良いけど、こうして直接的な脅しを掛けてくれるのね。出し惜しみをしないって意味なら、確かに出し惜しみをしていないわね。


「最後に、魔法都市特区検討のメンバーを紹介いたします。まず藤康智義氏です。氏は経済産業省出身で、検討委員会のリーダーを務めてくれました。私が最も信頼する男の一人でもあります」


 おおうっ、そこまで藤康さんを持ち上げますか。この検討、藤康さんを連れてきた菅谷総理のファインプレーってのは確かなんだけどね。


「次に國枝省吾氏です。氏は国土交通省出身で、交通計画に精通された方でもあります。人、物のロジスティクス検討に氏の卓越した知見を生かしてくださいました」


 いやぁ、持ち上げるねぇ。ぜぇんぶ、立木さんに蹂躙された人たちなんだけどね。


「次に紹介するのが、厚生労働省出身の山縣寅次郎氏です。実際に医師免許を持つ氏は、魔道具を使用した治療に新たな価値を見いだしてくださいました。それが新たに設立される総合病院で生かされることになると信じております」


 そして次は、科学関係ってことね。


「田口トモロウ氏は、文部科学省出身となります。魔法分析で活躍した素粒子観測施設、重力波観測施設に関わられてきた方でもあります。東の大学との連携に、大いに貢献してくださっています」


 こうして見ると、参加した人すべてに大きな意味があると言うことね。藤康さんが一本釣りをしてきたって言うけど、その辺り流石って言って良いのかな。


「源田藤一郎氏は、財務省出身となります。当たり前ですが、何をするにもお金を考える必要がある訳です。そして魔法都市は、日本国の財政に大きな影響を与えることが期待されているわけです。従って、財政面での評価も、大きな意味を持つことになるわけです」


 何をするにも、財務省を押さえておくのって大切よね。うん、これ以上は言わないけど。


「そして最後に、総務省出身の河野健一氏です。この特区構想は、地方創生に大いに関係してくるものです。そのため、氏の知見が大いに生かされたものとなっています。はっきりと申し上げますが、今回の対象地域は人口減少地域です。雪、山と言った自然の魅力は、観光地としては良いのですが、人口を増やす力にはなってくれませんでした。今回の特区は、それを打開することも目的とされています。では紹介した全員、立ち上がって並んでくれますか」


 こうして見ると、経歴的には錚々たるメンバーが揃っているんだよね。でもさ、立木さんを含めて絵面的には高齢者の集まりにもなるわけよ。でもさ、これを利用して煽るって、絶対に性格が悪いと思うわ。


「この検討メンバーには、IMO研究所から友池実篤氏にも参加して頂いています。大使として活躍された氏、及びその他メンバーには、各国との調整を行っていただきました。今回4カ国から首脳にご出席頂いたのも、その成果と言って良いかと思います。ですので友池さん、有原さん、立花さん、御門さん、朝日さんも前に出てきてください」


 これで、立木さんを含めて年寄12人が勢揃い。う~ん、結構地味な絵面になってるわね。朝倉さん好みの絵面ってのは忘れることとして。


「さて私を含めて12名が並んだわけです。自分で言うのもなんですが、棺桶に片足を突っ込んだような年寄が揃っていますね。さてこの絵面を見て、皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか。そうですね、一番好意的なもの、半ば私たちの期待も篭もったものなら『経験の裏付けを持った優秀な人材が命を賭けてまとめ上げた』……流石に言いすぎですかね。まあ、そんなことを考えてくださる方もおいでかも知れません。その一方で、老害がしゃしゃり出てきたと考えられる方も大勢おいでなのではないでしょうか」


 ああっ、立木さんが嫌味を言ってる。絶対に、マスコミって『老害』って意見を欲しがってると思うんだ。これで先手を打ったことになるのかな。


「ここに集まった12人は、そのいずれの考えも否定はいたしません。熟練者と言う自負はありますが、その一方で老害と言う自覚もある……藤康、抗議は受け付けませんので悪しからず。老害と言う自覚も持っているんです。それを認めた上で、『若い皆さんならどうされますか?』と言う問いかけをさせていただきます。日本と言う国は、現在様々な問題を抱えているのはご存じかと思います。その問題に対して、どのように向き合いどう変えていくのか。捻くれた年寄らしく、老害がと思われた方たちに問いかけをしたいと思っているんです。その答えですが、これから地域ごとの検討が行われるかと思います。その検討に積極的に参加され、私たちに突きつけていただきたいと思っているんです。予めお断りいたしますが、私たちは体力の無い年寄の集まりです。今回体力の限界に挑み、10徹と言う限界を突きつけられた年寄です。出来れば、わかりやすい検討を持ってきていただければ幸いです。その際には、5徹程度なら議論にお付き合いできると思っているんです」


 逆に今の若い人で、5徹なんかできるのかな。体力はあっても、精神的に持たないと思うんだ。後はさ、だから精神論はって言う批判が予想できるわね。


「とまあ、精神論的なことを申し上げてしまいました。これもまた、老害と言われる所以なのかと思います。それでも申し上げたいのは、不満を感じるなと言うことではありません。そこから一歩踏み出して、だったらどうすれば良いのか考えていただきたいのです。予めお断りしておきますが、私たちは公平性など微塵も考えていません。従って、不公平と言う不満は無視させていただきます。考えてもみてください。このような大きな取り組みが、すべての方に公平に果実を与えられることなんか有り得ません。記者会見でいつも主張させて頂いていることですが、自分ならどう考えどう行動するのか。この会見を聞かれている方にも、同じ言葉を贈らせていただきたいと思っています。それでは、私からの発表を終わらせていただきます。なお詳細については、事務方……ええ、前に並んでいる年寄連中のことを言っています。事務方が作成した資料を配付いたします」


 いやぁ、如何にも立木さんらしい発表の仕方だわ。これでもかって言う程、ツッコミ側に対して釘を刺しまくってくれてるんだもの。さてさて、マスコミはどう報道してくれるのかな? 後は、国会議員の皆さん。今回は与野党関係ないんだよね。なんて言って騒ぎ立ててくれるのかが楽しみだわ。

 だってこの発表、4カ国のトップも出席しているんだよ。馬鹿な批判なんかしたら、『だったらうちの国に来るか?』って間違いなく言ってくれると思うんだ。




 しかしなんだ、いつも思うんだけど立木さん怖い。いや、先のない年寄って、まだ66だったっけ? まだまだ先があると思うんですよ。だから無敵の人とは違いますよね。違うと言ってください。

 それは良いんだけど、発表の反響はもの凄かったと思うんだ。もうね、マスコミ各社が大谷村、白鹿村を徹底的に取材なんかしてくれたんだ。ただね、幾ら取材をしても、あるのは空間転移のバス停だけなんだよ。それでも、もの凄いことのようにニュースやバラエティ番組で伝えてくれたんだ。

 いやさぁ、空間転移だったら魔王城公開で散々見せていると思うんだ。


「諸星さん。日常生活で使われているところにポイントがあるんです」


 小谷さん。そう言うことなのか? なるほど、アトラクションではなく、日常生活に空間転移が使われているのが重要と言うのだね。だから、各市町村から視察申し込みが殺到しているんだ。確かに、こう言った住民の足って、維持するのが難しくなってきているからね。バス停の数って、日本全国でどれぐらいあるんだろう。


「ググレカスってスラング、知っていますか? と言うのは良いんですけど、少し前で140万カ所あったそうです。ただ路線廃止が続いていますから、今はもっと少なくなっていると思いますよ」


 つまりなんだ。バス停型空間転移ゲートは、そんなに沢山の需要があるんだね。鉄道の駅は約1万……廃線とかあるので、その数も減っていると言うんだね。でもさ、保線をしなくても良いんだよね。しかも、列車と違って殆ど設備投資だけで終わってくれるし。つまりだな、駅と言う形で移動を提供する限り、空間転移ゲートの需要が大量にあるわけだ。

 それを全部うちから提供するとなると……値付けにもよるけど、もの凄い売り上げになってくれるんだね。


「その値付けが難しいんですけどね。バス路線みたいな近距離対応は、かなり値段を下げる必要があると思いますよ」


 それって、初期投資自体が難しいからと言うんだね。でもさ、それぐらいのことって立木さんたちが考えているよね。なるほど、国が補助金を出すことを考えれば良いのか。複数年で考えれば、予算規模もさほど大きくならなくてもすむんだね。


「予算はそうですけど、それ以前の問題があるのに気づいていますか?」


 それ以前の問題って……なに?


「誰が、空間転移ゲートの魔道具を作るのかと言うことです。今なんですけど、素材の加工は闇エルフがしています。そして術式書き込みは翼人がしているんですよ。1日100個作っても、年間で作れるのは休みも含めて2万個程度なんです。しかもこの数、医療用魔道具まで含んでいるんです」


 2万個って、もの凄い数に思えるんだ。思えるんだけど、バス停の数を聞いちゃったからなぁ。しかも医療用魔道具を含むって……数が絶対に不足するよね。しかも将来的には、世界に展開するんだよな。だとしたら、魔道具作成用人員が圧倒的に足りない訳か。

 でもさ、それぐらいのことなら立木さんが考えてるよね? だったら、心配はいらないと思うんだよ。もしもし、どうしてこめかみを押さえてくれるのかな?


「いえ、ちょっと目眩と頭痛がしただけです。前にも言いましたけど、立木さんは賞味期限切れが近いんですよ。耐用年数って言った方が良いのかな。それはそれとして、いつまでも頼ることが出来ないと言うことです。私が指摘したようなことなんですけどね、諸星さんも気にして貰いたいと言うことです」


 ええっと、だな。善処しますと言えば良いのか、俺は発展途上なんだよ。


「まさかとは思いますけど、放っておけば発展すると思っていませんか? 前に、お勉強のことを言いましたよね。諸星さん、お勉強なんですけどしていますか?」


 面と向かってしているかと言われるとだな。流石にしていないと言うつもりはないぞ。


「具体的には?」


 それはだな、立木さんがしていることをじっくりと観察していると言うことだ。だから、そこで深すぎるため息を吐かないで貰いたいんだ。


「ケンゴー君も当てにならないみたいだしなぁ。ニロさんだけど、彼女も検討に巻き込んだ方が良いのかしら。でも、あの子って結構移り気だし」


 彼等は、まだ戦力と考えない方がいいと思うんだ。こちらの世界にも適合していないだろう? 長い目で見てあげる必要もあるんじゃないのかな。


「それは確かなんですけどね。ああっ、魔法都市なんてぶち上げちゃったから、忙しくなるのが見えてるんだよなぁ~」


 でもさ、まだエリアが広くないと思うんだ。大町市にはバス停が300近くある。それぐらいだったら、魔道具もさほど苦労しなくて用意できるよね。どちらかと言うと、魔道具を収容する建物の方が難しいと思うんだよ。流石にさ、大谷興業だけには任せられないだろう?

 だから……ええっと立木さん、戻られたんですね。それで東京の方は……取りあえずこれを見ろ。なんです、空間転移型バス停ゲート発注仕様書と言うのは。


「そのものズバリ、空間転移ゲートを収容するバス停の仕様書です。入札を掛けてですね、1カ所当たり百万、2百万、3百万の3種類を用意することとなりました。これをですね、1カ所平均50万円で設置することになります。そこに転移の魔道具2式を設置すれば、バス停のできあがりと言うことになります」


 そうですか、もうそこまで進んでいたんですか。俺と小谷さんは、遅れていたと言うことですね。


「駅仕様も纏まっていますし、空港用ゲートの仕様書も出来ていますよ。空港用ゲートの設置は、メガキャリア2社が手分けをして設置することになっています。今更ですけど、すべて報告書に載せてありますからね」


 そ、そうですか。小谷さん知ってたか? そうか、怖くて見ていなかったと言うのだな。奇遇だな、俺も全く一緒なんだよ。

 それで、転移ゲートの制作の方は? それも報告書に入っているんですね。そのですね、市でも公共工事の発注をしていたのは認めます。ただですね、1年生議員の俺が関わることはなかったんですよ。そうですか、1年生議員じゃなくても市会議員はルーチンで行われる入札には関わらないのですね。仕様書を見るのは、住民監査の時ぐらい。


「所長の仕事でないのは確かなのですけどね。興味があるのなら、報告書ぐらい見てほしいと言うのは贅沢な望みなのでしょうか?」


 全くもって、仰るとおりと答えさせていただきます。ところで立木さん、肩でもお揉みしましょうか? 気持ち悪いので止めてほしい。そうですか、気持ち悪いと仰ってくれるんですね。俺もそうじゃないかなぁ、なんて思っていたんですよ。



特定の地方のことを貶めているつもりはありません。とっても良いところだと思いますよ……と、なんとか桟橋から湖に飛び込みます。

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