サミットじゃないっ!
村の特産は異世界です
・サミットじゃないっ!
路傍に捨てられた道祖神の片割れです。いえ、今日だけはさっさと冷凍マグロになろうと思ったんです。だからね、而の付く銘柄酒とか赤いザクとか……しっかり確保してどんぶりで飲んでいたんですよ。それなのに、どうして菅谷総理が隣にいるんです? しかもその隣にギブソン大統領もいるし……ええっとアリシアさん、私にどんぶりを差し出さないように。それでプルシチノフ大統領……日本酒じゃアルコール度数が低すぎません? だから周主席、そこで強そうな酒を差し出さないでください。それって、白酒ですよね。そうですか、アルコール度数が60度以上あると言ってくださるのですね。
それで、白酒でカンペイ……なぜ、この面子に私がいるんです? IMO研究所の酒飲み代表……日本代表でもあると言ってくださいますか。
ぜんぜん嬉しくない代表だけどっ!
いえ、飲みますよ。飲ませていただきますけど。なるほど、飲み干したら杯をひっくり返して空になったのを見せるんですか。これでもう良いんですよね……カンペイは1回じゃ終わらない。次はギブソン大統領が発声する……いえ、飲みますよ、飲みますからね。カンペイ
それで次は、プルシチノフ大統領の発声ですか。いえ、断ったりしませんよ。ですのでカンペイっ! それはそうと、この杯ですけど、もう少し大きいのにしませんか? ほら、そこに良さげなコップがあると思うんです。それからアリシアさん、逃げるのは許しませんからね。ほらほら皆さん、コップに波波波と注いでくださいね。
と言うことでカンペイっ!
いやあ、皆さんいい飲みっぷりですね。では、お代わりをしてカンペイの続きを……もしもし、どうして皆さん逃げてくれるのですか? 私なんて、小柄で可愛い女の子なんですよ。そこで女の子と言うな、ですか。それはそれ、これはこれと言うことです。
ああっ、SPの人たちが近付いてきた。私、私は危険人物なんかじゃありませんよ。ただ、お酒が入ると調子が出るだけなんです。
「素朴な田舎の女性だと思っていたのだが……こんなところで武勇伝を作るとはな」
今でも、素朴な……違いますね。今では素敵なレディに成長したと思っているんです。勿論、だぁれも認めちゃくれないんですけどね。ええ、しっかりとIMO研究所に毒されましたからぁ~
「エクシブ君だったかな、彼女を引き取ってはくれないか? そうか、無理と言ってくれるのだね。引き取りはしないが、潰すことは難しくないと言ってくれるのか。だとしたら、君に任せても良いだろうか。それで、それはすり鉢……どんぶりよりも大きいのだな。なになに、そこに一升瓶から酒を……私は、ウワバミを秘書に持っていたのか」
ウワバミジャアリマセン……可愛らしい女の子なんですぅ、可愛らしい……可愛らしい……
初めまして菅谷総理大臣。なぜ子供がって、俺……私は、敷島藍香の弟の大悟と言います。はい、姉がIMO研究所で御世話になっている関係で呼んで貰えました。それでですね、小谷さんはこちらで引き取りますのでご安心を。
ちなみにですね、隅っこの方に小谷コーナーがあるんです。別名冷凍マグロ置き場と言う奴です。小谷さんの冷凍マグロ芸……芸なのかな。そう言うことにしておくのですけど、冷凍マグロ芸は恒例になっているんです。ただ真ん中に転がしておくと邪魔なので、隅っこに専用スペースを作ることにしているんです。隅っこに転がしておけば、蹴飛ばされることもありませんからね。
そう言うことなので、ご迷惑をお掛けいたしました。
それで小谷さんを引き取って……なぜかお姫様抱っこなんかしたんだけど。俺、意外に鍛えられたのかな。それは良いんだけど、お姫様抱っこをして大宴会場の隅っこに搬送しました。そこに転がしておけば、後はどうにかなる……実績があるから大丈夫だろう。しかし、思いっきりお酒臭いな、この人は。
それでお酒を飲めない俺は、ブーランジェリー王国の貴族様に合流。ビゴさんとビスタさん。年齢的に未成年なので、まだお酒は飲まないことにしているんだって。ビゴさんは俺より1つ年上で、ビスタさんは、そうか杏香より1つ年下なんだ。お二人の関係は……そうですか、許嫁なんですね。
それで……ステージに魔王様が上りましたね。それから大人っぽい女性が……なんです、ビゴさんの側室なんですか。ところで側室って……第二夫人のようなもの。跡取りを確実に作るために、奧さんを沢山持つ必要があるんですか。ええ、男として羨ましいと思いますよ。でも、それなりの立場があるからなんですよね。
なんです、希望するのなら縁組みをしてくれると言うのは。いっそのこと、お見合いをするのはどうかと聞いてくれるんですか。いえ、俺、こっちでやりたいことがあるんです。だから……あの、あれって大丈夫なんですか? なんか、結構いかがわしいことになっているんですけど。こんなところで下着姿……ビキニアーマーって言うんですか。
「くっ殺、ですか。姉様から送っていただいた教習本に載っていたものです。昨年も……と言うより、魔王城のアトラクションにも採用されていると聞いていますよ」
良いのかなぁ、魔王城公開って健全なアトラクションって聞かされているんだけど。
「大きなお友達用と伺っています。そう言えば、もう一人姫騎士の方が追加されたと伺っているんですけど……」
もう一人姫騎士って……あっ、別の女性が登場した。それであの人って姫騎士なんですか? あれって、セフィーロさんですよね。なんか、もっと危なくなった気がするんだけど。なんで、あんなに着てるものの布が少ないんだ? おっ、良いのか、あんなことをして。胸がぶるんぶるんって……ごほん。すみません、ちょっと冷静さを失ってしまいました。
だけどあの人って、記憶が正しければ立木さんのエルフコレクションの一人だよな。それなのに良いのか、あんなことをしちゃって。いや、綺麗だよ、頬を染めたところなんかとっても綺麗だとは思うんだ。その、モコさんとは比べものにならない程色っぽくてイヤらしくて……ええっと、モコさん聞こえてた?
「高校に入るのを待つのを止めたって、言っても良いですか?」
モコさん、その笑顔って怖いんだけど。笑顔じゃない、ただ顔が引き攣っているだけ。その方がもっと怖いんだけどっ!
騒がしくてすみません、ビゴさん、出来たら助けていただきたいのですけど。なんです、自業自得と言うのは。彼女がいるのに、ほかの女性に鼻の下を伸ばすのが悪い。どうして、こんなときに正論を言ってくれるんですか。正論を言われても、ちっとも役に立たないんですけどぉっ!
しかし、まあ、なんだ。混沌を絵に描いたような宴会だな。その意味で言えば、IMO研究所らしいと言えるのかもしれないな。しかしあの涼真が、やけっぱちになっているぞ。まあ、この面子……主に外交関係なのだが。この面子の前に出さされたら、開き直るしかないのは確かだな。
それはそうと本山先生。随分ご機嫌が斜めのように見えますね。見えるのではなくご機嫌は斜め……山に逃げ込んだのに、立木さんに捕まってしまったと言いますか。しかも気がついたら、いつの間にかここに来ていた。何が起きたのかわからなくて怖いんですね。
ええっとですね。本山先生、石……なのかな。なにか違うものにされて連れて来られたんです。それをエリシオンさんかな……ラズライティシア様の方だったかな。蘇生してくれたと言うことです。
ちなみに大芝教授たちも、同じようにして連れて来られていましたよ。聞いたところによると、大芝教授たちは神岡の地下坑道に逃げ込んでいたそうです。
藤原教授、藤原教授ですか。アイゴさんが抱えてたのを見ています。ぐったりしていたから、拉致されてきたんじゃありませんかね。とにかく皆さん、有無を言わさず連行されたと言うことです。はい、立木さんが黒幕と言うのは今更だと思いますよ。文句なら、立木さんにお願いします。
俺が落ち着いている……その辺りは慣れと言って良いと思いますよ。俺もIMO研究所にそこそこいますからね。多少のことでは驚かない耐性がついたと言うことです。それにいちいち驚いていたら、IMO研究所ではやっていけませんよ。
「次は、IMO研究所の誇る非常識男。武見和志の登場だぁっ!」
聞いてないと言っちゃダメか? そうか、言っても意味が無いんだな。それで、芸の無い俺に何をさせようと言うんだ? いつものプレゼン、魔道具でもプレゼンでも良いと言ってくれるのか。
御衣黄さん、魔道具って持ってきていたか? なるほど、護身用に持ってきているのだな。一つ聞いて良いか、どうして『護身用』になっているんだ?
「私が美人でスタイルも良いからだけど?」
おっ、おおうっ。否定はしないぞ、否定はしないけど……いやまあ、なんだ。うん護身用の道具は必要だな。
それはそうとして、ステージに上がれば良いんだよな。落ち着いている……まあ、開き直りなら出来ていると言っておこう。それに、一応考えていることがあるんだよ。
それで、これが毎度おなじみ魔道具と言うことになる。あれから色々と使い方を研究したので、出来ることが増えているんだよ。例えば空間転移なのだが、これは立木さんにやり方を教えて貰った。まあ、シャルロットさんもやってるんだが。こうして、藍香ちゃんの隣に転移なんかも出来るんだよ。
それで腰を抱いて転移……なぜ出来ない。誰だぁ、人の魔法に干渉した奴はっ!
「私ですけど、それがどうかしましたか?」
立木さん、せっかく藍香ちゃんを攫って逃げようと思ったのに。邪魔をするのは反則と言わせて貰います。
「彼女を手に入れたかったら、私を超えて行きなさい……それから、諸星さんは対象外です」
ノリがおかしいと言ってはいけないのか? なるほど、宴会だからのノリと言ってくれるのだな。
それで、魔法の使いこなしで立木さんを超えてみろと。あれからだな、俺だって色々と考えて見たんだよ。だから、空間転移だって違う方法も考えているんだよ、こんな風に……なぜ、邪魔を出来るんだっ!
「その程度のこと、予想が出来ていないと思ったのですか? まだまだ未熟と言ってあげましょう。と言うことなので、ステージに戻ってくださいね」
ああっ、知らない方法でステージに戻されてしまった。それから立木さん、見せつけるように藍香ちゃんの腰を抱き寄せないように。それから藍香ちゃん、それは俺のダメージが大きいんだよ。それとは別に、なぜ術式を読むことが出来ないんだ?
そうか、ITエンジニアはセキュリティのことを考えていると言うのだな。だから、ちゃんと見えないように細工をしていると言ってくれますか。仕方が無い、今日の所は俺の負けにしておこう。それは良いのだが、なぜ今ので受けたりするんだ? なんだその、アニメの魔法使い同士の戦いに見えたと言うのは。そうでなければ、親に挨拶に行くシチュエーション……の魔法版。少なくとも俺は、そんなつもりはなかったのだがな。
まあいい、魔法の紹介に戻ることにするか。言っておくが、現実逃避なんかじゃないからな。
それで高次空間からエネルギーを持ってくる検討なのだが。亀の歩みではあるが、進んでいると言っておく。ただ接続が安定しないので、まだまだ危なくて使えないと言うのが答えになる。これが安定するようになったら、世界はエネルギー革命を迎えることになるだろう。
それからこちらはオルティアさんの持ち分なのだが、高次空間への干渉も制御できるようになった。まだ直接操作をしているのか、間接的に操作をしているのかの切り分けが出来ていない。直接操作の確証が取れたら、こちらも新しい理論が確立したことになるわけだ。
以上で、俺の出し物になるわけだ……なぜブーイングを受けなくちゃいけないんだ? つまらない、ちゃんと芸をして見せろ……お、俺はだな、研究者であって芸人じゃないんだぞっ!
「最初の出し物は評価したんだぞ。だけど後のでぶち壊してくれたんだよ。ああ、和志に期待した俺がバカだった。それはそうと、そろそろIMO研究所のノリに戻ってきたな。と言うことでだ、待たせたなハイエルフ、闇エルフたち。そう、お前らの出番だぞぉっ!」
悪かったな。俺は芸人じゃないんだよ。最初のだって、芸のつもりでやっていなかったんだがな。
それそうと、どうやら涼真の奴も緊張が解けたみたいだな。それでハイエルフと闇エルフ……前よりすごみが増してないか? それでその動きは……京劇から持ってきたのか。いや、国家主席が来ているのは知っているぞ。ただな、予定に入っていなかったよな。なんで、わかっていたかのように準備が出来ているんだ?
なるほど、立木さんの指示と言うのだな。映像を見て面白そうだった……つまり、お前らのお気に召したと言うことか。
それから御衣黄さん、ちょっと目が怖いと言って良いか? 理由は……まあ、聞かなくてもわかるのだけどな。いや、だから教えてくれなくて良いんだよっ! わかってるよ、藍香ちゃんがデレてることぐらい。俺だって気に入らないんだからなっ!
立木さん。俺の所なんかに来て良かったんですか? 今は藍香ちゃん……それはこの後と言ってくださいますか。そうですか、この後なんですね。それで、俺に何か用があるんですか? はい、ちょっとやさぐれていたりしますよ。
何が気に入らないって、この魚がもの凄く美味しいんですよ。カマスって、知ってはいましたけどこんなに美味しい魚だったんですね。それ以外に伊勢エビとかアワビとかさざえ……ぶりも美味しいと思います。肉ももの凄く美味しいですよね……あと、ウナギも美味しかったりするんです。
「だとしたら、気に入らないと言うことはないと思うのですが?」
いえ、藍香ちゃんのことが気に入らないんです。それなのに、魚がこんなに美味しく感じられて……それが気に入らないと言うことです。ただまあ、これで立木さんから『寝取る』目標が出来たと考えることにしますよ。
「寝ませんよ……と言うのは良いのですけど。ちょっと諸星さんのお耳に入れておきたい話があるんです」
寝ないのですか? それはそれで、藍香ちゃんが可哀想と言って良いですか? それに、武見君だって寝取ることに目標を変えたと思うんですよ。
ええっと、真面目な話をしたい。宴会なのに、真面目な話をするんですか?
「では、夢のある話と言い換えることにします」
ほほう、夢のある話と言ってくださいますか。それで、どんな『夢』のある話なんですか? ひょっとして、藍香ちゃんと朝倉さんの二人を纏めて相手にすると言うことでしょうか?
「朝倉さんは、友池さんの領分です。それは良いのですが、先ほど4カ国のスタッフ……正確には、同行した科学者の方たちとお話をした……捕まったと言った方が良いかな。ええ、あの微妙にうざい団体のことを言っています。そこで出た話の一つが、魔法技術を宇宙開発に使えないかと言うことです」
魔法技術を宇宙開発に……ですか? 俺の知る限り、魔法って地面にへばりついていたと思うんです。せいぜい飛行魔法、ですか。空を飛ぶ程度だったと思うんですけど?
「別に、魔法で宇宙まで飛んで行けとは言っていませんよ。そうですね、諸星さんも国際宇宙ステーションをご存じですよね。そこに人を送り込むのに、お金を掛けてロケットを飛ばすわけです。そして宇宙ステーションにいた人を、ロケットに乗せて連れて帰ってくるわけです」
なるほど、そう言うことですか。そこまで言われれば、俺にも何を言いたいのか理解出来ましたよ。国際宇宙ステーションとの往復を転移の魔道具でやろうと言うのですね。ええ、それなら打ち上げに対するリスクが解消するのは確かですね。リスクが無くなれば……簡単に行けるのなら頻繁に人が移動できると言うわけですか。もしかして、俺も宇宙に行ったり出来ますかね。
「諸星さんなら自力で行ってしまいそう……と言うのはおいておきますが。連れて行けと主張されても良いと思いますよ。ただそのためには、転移ターゲット……を持っていかなくても良かったか。シオンとかシアに頼めば良いだけでしたね。それでターゲットを置けば、簡単に往復が出来るようになります」
確かに、ロケットでターゲットを持っていく必要もありませんね。でも、ロケット技術が衰退したりしませんか?
「その心配は要らないと思いますよ。ただロケットのターゲットが変わるだけのことなんです。人を宇宙空間の決まった場所に運ぶことではなく、その拠点を作る方に目的が変わると言うことです。そして一度拠点が出来れば、物資の搬送は空間転移を利用すれば良いだけになるわけです。将来大規模宇宙ステーションが作られれば、宇宙旅行も現実のものとなってくれると思いますよ」
それ、もの凄く良いですね。だとしたら、特区の中で検討すると言うのはどうでしょうか。そうですか、目玉の一つとして考えていると言うのですね。そうなると、ターゲットさえ置いてくれば火星に行くのも難しくないわけですか。いいですね、もの凄く夢があると思いますよ。うんうん、真面目に夢があって良いと思いますっ!
ああ、楽しい話を聞いたから、お魚がますます美味しく感じられるようになりました。そっかぁ、IMO研究所は宇宙にも進出するんですね。宇宙、宇宙って本当に夢がありますよね。
「ちなみに、マーカーさえ置けば海の中にだって行くことは出来ますよ。それからですね、地中深くなら先ほど大芝と宇梶を拉致しに行ってきました」
それって、例の施設に潜り込んだと言うことですか。こうして見ると、空間転移って使い勝手が良さそうですね。しかも、使い道が色々とありそうだし。
「まあ、そう言うことです。今回各国は、政治向きの人間より学者……なのかな、たちの悪い者たちを連れてきてくれましたよ」
たちが悪いと言ってくれますか。ちなみに、どう言った意味で言っていますか?
「興味が先に立って、周りが見えなくなる手合いのことを言っています。彼等に魔道具を渡したら、何をしでかすのか怖いぐらいと言えばわかりますか?」
そうですか、相手もこちらを研究していると言うことですね。でも、そんな人間の統制って、誰が取ることになるんですか? いえ、誰と言うのはわかっていて言っていますよ。ええ、俺の前で、とっても嫌そうにしている人のことを言っています。
「色々と道筋を作ったんです。そろそろ、引退させて貰ってもいいと思うんですよ」
そうですか、そろそろ引退したいのだと。ところで立木さん、強制力を使って良いですか? ちょっと楽しくお仕事をしたくなるって強制力のことです。
それとも、残る報酬として女神様を追加しましょうか? 立木さんが望むのなら、もう一人ぐらい子供を作っても良いのかなって思っているんですよ。はい、ゼッタイシン様とですよ。
「子供を、面白半分に作るものではありませんよ。まあ、その時にはありがたく頂いておきますけど」
それでこそ立木さん、それでこそ女神様コレクターと言わせていただきます。それはそうと、相当酔っていますか? 普段の立木さんなら、絶対にそんなことを言いませんよね。
「まさかとは思いますが、私が素面に見えましたか? こんなふいんき……ええっと雰囲気は飲まないとやっていられませんよ。そろそろ飛びそうなので、部屋に戻ってベッドに入って寝るつもりです」
そうですか、身体のためにもお酒はほどほどにした方が良いと言っておきます。それはそうと、娘たちが待ち構えているとも言っておきます。飲んでいようとなんだろうと、娘たちには関係ありませんからね。アルコールを抜くことなんて、上位神にしてみれば難しいことじゃないんですよ。それとも、俺がアルコールを抜いて差し上げましょうか?
「諸星さん。立木さんを介抱するのは私の権利なんです」
藍香ちゃん……そうか、立木さんを介抱するんだね。それはなにかな、気づいたら裸で隣に寝ているって奴をやろうとしているのかな。藍香ちゃんだけならいい手だと思うけど、競争が厳しいと言ってあげるよ。今夜は、絶対に二人きりにはなれないからね。
「それならそれで、交じれば良いだけだと思いませんか? 一度壁を越えてしまえば、次からは壁は気にならなくなるんです。はい、立木さんにとっての壁のことを言っていますよ。私はですね、大悟も応援してくれてるんです」
「諸星さん。アルコールを抜いて貰っていいですか? いえ、ちょっと空間転移でどこか知らないところに行こうかなと。せっかくだから、平泉に転移をすると言うのもありかと思えてきたんです」
ほほう、それを聞いて親切にアルコールを抜いてあげると思いますか? いえね、立木さんが追い詰められるのって、意外に楽しいのに気づいたんですよ。せっかくだから、御衣黄さんにも声を掛けてあげようかと思ったりしました。
ほら、御衣黄さんが嬉しそうに近付いてきましたよ。もうね、そろそろ年貢を納めた方がいいと思うんですよ。
「この歳で腹上死なんかしたら、末代まで笑いものになりそうな気がするんです」
神様が揃っているのに、腹上死が出来ると思っているんですか? 立木さん、甘いと言って差し上げます。いやぁ、素敵な女性ばかり、羨ましいと言って差し上げますよ。
「そうですか、私を見捨ててくれるんですね。でしたら諸星さん。各国首脳のお相手をお願いしますよ」
えっ、どうしてそんな話になるんです? 副所長が脱落する……残るのは、所長しか居ないと言ってくれるんですね。
「ほら、菅谷総理が手招きをしていますよ」
俺、あの中に入っていくのは嫌なんだけど。だって、お昼も胃が痛くなりながら相手をしたんだよ。しかも水着を着て温泉にも入ったりして。もう良いよね、逃げても良いと思うんだよ。なんです、IMO研究所として逃げるわけにはいかないと言うのは。
「お酒で飛びそうな私はこれで脱落するわけです。小谷さんは冷凍マグロになっていますから、諸星さん。後は宜しくお願いしますよ」
ひょっとして、俺って予定通りの行動をしちゃったんですか? そうですか、まだまだ若いと言ってくれるんですね。だったら立木さん、俺と変わってくれませんか。だから藍香ちゃん、氷点下の眼差しを向けないで欲しいんだよ。御衣黄さんと揃って氷点下だと、本気で凍えてしまいそうなんだ。
しかし思うんだけど、立木さんって思いっきり酒に強くないか。だって、『そろそろ飛ぶ』って言っていたんだよ。そのくせ、俺に代わって各国首脳の相手までしてくれたんだ。お陰で藍香ちゃんたちの機嫌が最悪になったんだけど、これはIMO研究所として仕方の無いことなんだよ。
なんだい、俺の評価がこれ以上無いほど下がったと言うのは。こう言うときに、格好良いところを見せるのが所長としての必須条件。逆境から逃げて下のものに押しつけるのは、印象が最悪と言ってくれるのか。
「立木さんへの好感度は更に上がったと言わせて貰います」
藍香ちゃんたちを袖にしたのに、なのか? そうか、最後に頼れるところを見せてくれたからなんだね。でもさ、それってあばたもえくぼと言う奴じゃないのか?
「諸星さん。この状況で、立木さんと諸星さん。どちらが格好良いと思いますか?」
御衣黄さんまで参戦してきた……しかも、思いっきり当たりがきついし。だったらだな、俺が堂々と参戦して立木さんと代わってこようじゃないか。その時になって惚れ直しても遅いんだからなっ! いや、遅くはないんだけど。
と言うことなので立木さん。身代わりになりに来ましたよ。菅谷先生……呆れているように見えるのですが、俺の気のせいですかね?
「君は、私にどう答えて欲しいのかね。まさかとは思うが、嘘を吐けと言っているのかな?」
ええっと、それはどんな意味で言っています? そのものズバリ……見たまんまと言ってくださいますか。
「そこで勉強をすると言うのなら止めはしないのだがね」
勉強、ですか。俺って、一応IMO研究所のトップなんですよ。IMO研究所の最終意思決定者でもあるんです。今更勉強なんて……いえ、そのちょっと見栄を張ってしまいました。もしかして、科学的な話をしていたんですか?
「言っておくが、私も文系なんだよ。だから、科学の深い話に付いていけるはずがないと思わないか?」
そりゃあ、そうなんでしょうけど。それはそうと、立木さんって酔いが回っていたはずですよね。しかも酔い覚ましも掛けていないので、かなり酩酊状態になっていると思うんですけど。
「コウメイよ。キヨヒコにはわれが付いているのを忘れておらんか?」
「ちなみに、私も付いてる」
ラズライティシア様とエリシオンさん……そうか、二人が控えていたんですね。なるほど、二人が酔い覚ましの魔法を掛けたと言うことか……だったら俺、あっちの方で大人しく飲んでいることにします。もうですね、冷たい視線を向けられるのに慣れちゃったりしているんです。後はですね、おかしな快感を感じるようになったと言えば良いのか。
だから、変態と言わないように。多少の自覚はあるんですから。
「それはそうと、横で話でも聞いていたらどうですか? 割と面白い話をしているつもりですから」
面白い話……この面子を前にして、ですか? そうですか、錚々たる面子を前に面白い話が出来るんですね。
「面白い話と言うのが気に入らなければ、興味深い話と言い換えても良いですよ。先ほど宇宙開発のことをお話ししましたよね。それも含めて、転移の魔道具の商談をしたいと言われたんです。勿論、軍事転用出来るものに関しては、日本政府を通すことにしましたよ。それ以外に、要人の移動用に幾つか融通する話も出ています」
それって、普通に商談ですよね。それが興味深いことなんですか?
「そうですね、これだけなら単なる商談でしかありませんね。提供の代償なんですけど、実は国境の開放と言うのものがあります。IMO研究所関係者に対して、VISA免除……それだけではなく、パスポートの免除が行われると言うことです。必要なのは、関係者の事前登録ぐらいです。それをすることで、少なくとも米英ロ中にフリーパスで入国できます」
ええっと、そんなことをして良いんですか? 入国管理って、国家にとって安全保障上の重要な機能だと思うんですけど。興味深いとか面白いと言うより、大丈夫なのかと疑問を感じてしまいましたよ。
「こうして言葉にすると不安を感じてしまいますよね。ですが、これは現状を追認するものでしか無いのですよ。転移魔法を使える者は、国境に縛られないんです。ただし、これは移動のことを言っているわけです。法的には、立派な違法行為ですからね。ただ諸星さん、2度ほどアメリカに行っていますね。いずれも、国境を正規の手段では越えていないんですよ」
言われてみれば……最初の停止現象では、依頼を受けて連邦議会前に転移をしたな。うん、入国審査とか全くしてないよ。2回目も……大統領はいたけど、出入国の手続きなんかしていなかったな。
それを指摘されれば、確かに現状を追認したってことになるわけだ。それが、IMO研究所関係者に与えられる特権と言うことですか? でもそれって、説明されたとおり現状を追認しただけに思えるんですよ。
「現状を追認し、それを公式に表明することに意味があるわけです。これまでは、国境と言う形で出入国の管理を行うことが出来ました。ただ移動手段は、地図上を連続的に移動する必要があったわけです。それが転移魔法を使うと、移動は地図上で離散的なものになるんです。今までのような国境管理では、出入国を管理できないことになったわけですよ」
ええっと、ちょっと待ってくださいね。意味を考えてみますから……
確かに、転移魔法を使われたらゲートや塀で管理することは出来ないんですけど……でも、移動自体は転移検出装置で検出できますよね。だから、秘密裏に移動することは出来ないと思うんですよ。立木さんが開発した方法にしても、感度を上げれば検出できると教えてくれましたよね。
「仰るとおり、転移自体は検出できましたね。でも検出できるだけで、転移自体は止めることは出来ないんです。それに世界の至る所で転移をされたら、検出すること自体意味が無くなってしまいます。さて諸星さん、空間転移と言うのは画期的技術に違いありません。その一方で、とても危険な技術と言うのも理解されていますよね? 空間転移を使えば、要人暗殺も簡単にできてしまうわけです。ヒアリングの場でインテグラが言ったことでもあるのですが、人混みに紛れて魔法を発動することでテロも行えてしまうわけです。斯様に空間転移を使えば、とても効率的にテロが行えるわけです。検出できたとしても、テロ行為が起きた後でしかありませんよね?」
つまり、検出できるだけではダメと言うことですか。だとしたら、空間転移技術の拡散は、世界に混乱を引き起こすことになりますよね。そうなると、今進めている話も、問題が大きくなりませんか?
管理された空間転移は問題が無い。問題は、野良の空間転移と言ってくれますか。だとしたら、転移の魔道具って配布できないですよね。緊急脱出用にしても、親機ごと盗まれる可能性もあるわけです。災害救助用なんて、はっきり言って管理できないと思うんですよ。
「使い勝手は落ちますけど、魔道具の場合はワンタイムにすることも出来ますね。ただですね、私と武見君の絡みを覚えておいでですか?」
立木さんと武見君の絡み……絡みって、いやいや意味が違ってるから想像しないように。それはそうと、それって、武見君がネタを披露した時のことを言っているのですか? 本人はネタとは思っていなかった、どさくさに紛れて藍香ちゃんを攫っていこうとしていた。確かにそうなんだが、あの時のことを言っているんだよな。だとしたら……立木さん、武見君の転移を邪魔しましたよね。もしかして、そのことを言っているんですか?
「新しい技術、特に画期的な技術が開発された場合、悪用を防ぐ方法を考える必要があると言うことです。往々にして悪用対策を人任せにする人もいるんですけどね。いくら何でも無責任だと思いますので、掛けられる網ぐらいは掛けておこうかと思ったんです」
それで、あんなことを。そうですか、ラズライティシア様やエリシオンさんの協力があったんですね。
ちなみに、それが興味深いことなんですか? この話には続きがある、各国で抱えている魔法使い……魔法使いって言いますか。それを、日本に派遣する話が纏まったと言うんですね。良いんですか、それって殆ど国家機密ですよね?
「ええ、国家機密で間違いないですよ。その国家機密が、日本に集結すると言うことです。どうです、興味深い話だと思いませんか?」
それを素直に受け取れば、ですけど。あいにく、俺はそこまで素直な性格をしていないんです。それから言わせて貰いますけど、俺以上に立木さんは素直な性格をしていませんよね? 駆け引きの出来ない技術者って……それって、笑い処にもなっていないんですよ。
「そんな話をしていた、と言うことです。ですので、例の話にはこの4カ国が全面的に協力してくれることになりました」
まあ、それこそ利権にありつけるからですよね。そりゃあ、損得勘定で動いてくれた方が安心できますけどね。でもその統制って、誰が取ることになるんですか。
俺を指差さないようにっ!
最強の恩恵持ち……自分は恩恵の使えない普通の人と言ってくれるんですね。ねえ立木さん、立木さんって娘たちの強制力が役に立っていませんよね。アリッサの強制力、口実に使っただけに思えるんです。多分ですけど、セレスの強制力も役に立たない気がするんです。
上位神の強制力の役に立たない人が、普通の人を語ってくれるんですか?
「魔道具が無ければ、魔法も使えない普通の人ですけど?」
その魔道具を、誰よりも使いこなしていますよね。その時点で、普通の人と言う前提が崩れていると思うんです。ですので、全体の統制は立木さんで。リポートトゥ俺にすれば組織として健全だと思いますよ。
「お前らぁ~夜はまだまだ長いぞぉっ!」
ああ、朽木君が壊れてる……と言うより、完全に普段の調子を取り戻したな。朽木君が言うとおり、まだまだ夜は長いと思うんです。なんです菅谷総理……そろそろ身の危険を感じるようになったんですか。周主席とかプルシチノフ大統領も同じと言ってくださいますか。それからアリシア首相、交じりたいと言わないように。それをするとですね、間違いなく国際問題になりますよ。自分は独り身……だから、国際問題にはならない。いやいや、それって間違いなく詭弁だと思うんです。
なんです、オルティアさんとご一緒したいと言うのは。立木さん、俺が許すので東北に避難してください。このままだと、とんでもないことになりそうな気がするんですよ。ですから、邪魔をすると国際問題にすると脅さないようにっ!
色々と目と耳を塞いだ翌朝、朝食会場に立木さん登場。うん、しっかりと疲れていますね。それで立木さん、東北に避難されたんですよね?
「慶子に追い返されました」
ええっと、追い返されたんですか? なるほど、立木さんが来ると女神2人が盛ることになるからですか。ええ、落ち着いた女子会旅が壊れてしまいますね。
それで、追い返された昨夜は……記憶が飛んでいる。記憶を封印したと言うことですね。つまり藍香ちゃんに手を出したのだと? ひょっとして、アリシア首相にも手を出されたとか?
「コウメイよ、われとシオンがキヨヒコを守ったぞ」
そうですか、お二人が立木さんを守ったんですね。ところで、娘2人がお邪魔なんかしませんでしたか? いえ、その気満々ってのを知っているんですよ。そうですか、娘たちも協力して立木さんを守ったんですね。立木さん、お若いと言って差し上げます。
それで今日の予定なんですけど。各国首脳は昨日来ちゃいましたよね。そうですか、この後みんなで伊勢神宮に行くことになったんですか。それで首脳陣は……SPに囲まれておかげ横丁を散策してから内宮外宮を回る予定。それで、俺たちはどうするんです。もしかして、また各国首脳を接待しなくちゃいけないとか?
「まさかですね。なんのために外務省の職員や友池さんたちがいると思っているんですか?」
なるほど、うちにも外交のプロが揃っていましたね。ええ、昨夜しっかりと時間を使ったんです。仕事できているわけじゃないんですから、俺たちも楽しませて貰うことにしましょう。
それでですね、この団体って……人数が多すぎませんか? いくら何でも、この数で観光って無理があると思うんですよ。ほら、修学旅行だって、こんな数で移動することはないと思うんです。
「それぐらいのことは考えてある……と言うのが答えになるんですけどね。ちなみに、私の世代では、中学の時は1学年400人超えでした」
少子化の今を考えると、隔世の感があると言うことですか。多分ですけど、その時の先生たちは苦労したんでしょうね。それはそうとして、どう分割するんですか?
「種族ごとに引率を着けることにしました。ハイエルフ、闇エルフ、翼人、竜人ですので4人用意すれば良いだけなんです。翼人には白船君、ハイエルフには武見君、闇エルフには朽木君、竜人には……どうしましょうね。私が引率することにしましょう。それ以外を、諸星さんにお願いすることにします」
それ以外って……王妃様とか魔王様とかのことを言っていますか。まあ人数的に大したことがないから、妥当なところなんでしょうね。ただ観光地の知識って、どう頑張っても立木さんには敵いませんよね。その辺りの配慮があれば……そうですか、それも手を打たれているんですね。地元の観光協会に話が通っていると言うことですか。それでガイドが付いてくれることになっているんですね。
ええ、グッドと言わせて貰います。では、早速伊勢神宮の駐車場に移動しましょうっ! 赤福……結構楽しみにしていたりするんですよ。
ズイイズイイで……いえ、カンペイなんですけど




