優先順位は間違っていない
村の特産は異世界です
・優先順位は間違っていない
白船君がね、笑いながら教えてくれたんだ。うん、失礼って意見は却下するよ。それからだけど、ネタにするのは可哀想と言うのも却下だね。だってこの話、一瞬で上里集落の中に広がったんだ。それで耳年増……で良いのかな? 翼人たちが、興味津々と言う体で質問なんかしていたんだ。
それを考えると、彼等が溶け込む一助になっているんじゃないのかな。それでも可哀想だったのは、買い出しに行ったシャルロットと白船君。いやね、流石に薄墨さんに行けとは言えなかったんだ。だってさ、大人のおもちゃなんだよ。売ってる店だって、かなりいかがわしいお店だったりするんだ。でもさ、だったら白船君だけでお店に入れば良いのにね。そこで興味を持つから、回りから好奇の目を向けられたりするんだよ。だから、シャルロットの自業自得と言う所かな。
それから言っておくけど、うちは使わないからね。セレスだって、『道具まで使うのは許して』って言っているんだよ。でも、どうして『道具まで』って話になるのかな? 僕、子供だからわからないんだ……
誰だ、気持ち悪いと言った奴はっ!
それはそうとして、2人を迎えた翌日に魔王樹の森を始末しました。スピアーノはどうした、かかい? うん、セレスを交えてしっかりとわからせてあげたよ。もうね、パナメーラさんの繰り返しと言って良いかな。実はあれよりも酷くて、最後は泡を吹いて失神してくれたよ。
パナメーラさんがね、『二番煎じは許さないっ!』ってな具合で、思いっきり気合いを込めて圧をかけてくれたんだ。でも立木さん、手を出さなくて良かったんですか? 手を出さないと、女神コレクターの沽券に関わると思うんですよ。
そうですか、そんな沽券はどうでも良いと言ってくれますか。どうでもいい、まあ否定はしませんけどね。俺だって、今回は王女様コレクターを封印しましたから。だって彼女、もうしっかり開発済みなんですよね。
誰だっ、処女厨って言った奴はっ!
それで魔王樹の森の始末だけど、ケンゴー君が張り切って地図を書いてくれました。もうね、怨念が篭もりまくっていたと言えば良いのか、『教皇絶対に許すまじ!』ってのが滲み出ていたんだ。だから俺も、その気持ちに応えることにしたんだよ。
なんだ、人が死ぬのは嫌じゃないのかってのは。うん、嫌と言うのは変わっていないよ。だけど立木さんに言われたよね? 俺が知らないところで起きることだって。魔王樹の森を送り返したとして、確実に人が死ぬってことはないと思うんだ。だってあの森、言う程のことはなかったと思うから。だって即死魔法だったかな、立木さんも平気そうにしていたんだ。ラズライティシア様たちが驚いていたけどね。
あの化け物を人として扱うなっ!
どこかからおかしな声が聞こえてきたな。それはそれとして、その程度のものだったと言うことだよ。だからと言って、安全だなんて言うつもりはないよ。でも用心して掛かれば、即死ってこともないと思うんだ。
それで、その中で一番枝振りの良い木を研究所の玄関脇に移植したんだ。ただ即死魔法だったかな、お客さんに向けられたら危険が危ないだろう? だから、即死魔法を放とうとしたら『枯らす』って脅しを掛けておいたんだよ。正確に言うと、脅しじゃないんだけどね。うん、確実に実行するつもりだから。
それからエクステラさんにお願いされたことも実行しておいたよ。何のことかと言うと、送り返す魔王樹の森への細工のこと。うん、帰ってから1ヶ月後に悪意を浄化する命令を仕込んでおいたんだよ。だから1ヶ月耐えきれば、魔王樹は普通の木に戻ることになるんだ。ただね、悪意を沢山受けたら復活するんだけどね。その辺り、自ら蒔いた種と言うことになるわけだよ。
これで、大規模転移事件は収束したことになるわけだ。そして事件が収束すれば、わかってるよね、お約束の記者会見が開かれました。
もうね、飽きが出ていると言って良いかな。質問も回答も、かなりおざなりのものになっていたと思うんだ。
それから上杉さんに調べて貰ったことが一つ。わかるよね、杣木謙吾と言う人の存在確認って奴。昭和からの記録を調べて、特定失踪者候補に杣木謙吾と言う人がいたそうだよ。ただそれも、今から60年ほど前のこと。つまり時間的跳躍が無い限り、彼の言っていた『コピー』と言うのが正しそうと言うことだね。
それを教えられた杣木君……ケンゴー君って言った方が良いかな。さみしそうに笑ってなんかいたね。やっぱりさ、自分がコピー品ってのが辛かったんだと思うよ。そしてもう一つ、彼が相手にした魔王もコピー品と言うこと。そのことも、同じぐらい悲しかったみたいだね。
ちなみに、7月の定例会見は波乱もなく無事終了。それで凄いと思ったのは、例の検討がばれていないことかな。藤康さん情報だと、各省庁ともかなりの緊張感に包まれているみたいなんだ。それを嗅ぎつけられないことに、大したものだと感心させて貰ったんだ。
それから後沢だけど、立木さんの話に大いに驚いていたね。ただインサイダーになるからと、表だって動きは見せないと約束してくれたよ。勿論、発表に備えて準備はするとは言っていた。だからかな、堀内氏と2人で研究所に篭もってくれたよ。お金を引っ張るだけじゃなく、自分たちがどう立ち回るべきなのか。その結論として、移動革命の着手から始めることにしてくれたよ。どう言うことかと言うと、村営バスのすべてを転移ゲートで代替することにしたってこと。それを、IMO研究所が主体で先行手配するんだよ。
そのために大谷興業を使って、転移ゲートを収めるバス停を作っていきました。村レベルだからね、たった17カ所しかバス停がなかったんだよ。せっかくだからと言うことで、バス停の数を倍プッシュ……IMO研究所から寄贈することで整理を付けたんだ。ただね、転移ゲートを収容する建物なんだけど、その維持管理は村の責任と言うことにしました。
「諸星さん。白鹿村から、どうしたら転移ゲートを作って貰えるかと相談されました」
と言うお願い……だよな。お願いが中林村長さんからされました。まあね、白鹿村にも御世話になっているのは確かなんだよね。だからと言うことで、大盤振る舞いをさせて貰うことにしたんだ。うん、40カ所にバス停型転移ゲートを作ることにしました。利用条件は同じ。ゲートを収容する建物を、村で管理して貰うことで手を打ったんだ。
それだけが理由じゃない……大きな理由だとは思うけどね。両村から名誉村民賞が授与されたりしました。ちなみにこの交渉は、全部小谷さんに任せたんだ。だってさ、地元に恩を売る……もとい、顔を売っておく必要があるからね。うん、来年の衆議院議員選挙のことを考えてる。でもなぁ、今小谷さんに出て行かれるのもきついかなとも思ってる。だってさ、あの冷凍マグロ芸って貴重だと思うんだ。
冷凍マグロって言うなっ!
おや、そこに反応してくれたんだね。でもさ、この前の宴会でも冷凍マグロになっていたよね。藤康さんたちが呆れていたのを知っているんだよ。だって藤康さんたち、菅谷総理の秘書をしていた小谷さんを知っていたんだ。『その時とは別人』なぁんて、驚いてくれたからね。
ところで立木さん、ここの所大人しくと言うか、品行方正に仕事していましたよね。なんです、その、皆まで言うなと言うのは。もうすぐ総理発表があるから、今のうちに遊ぶ必要があると言ってくれますか。
「と言うことで、もう一度海の幸尽くしをすることにしました」
なるほど、今度は伊勢志摩なんですね。今度は、社会見学はしないことにする……いえ、あれはあれで面白かったと思うんですよ。あっ、頭を悩ましてくれましたね。なるほど、計画に入っていなかったのだと。でもですよ、ビゴたちに違ったものも見せてあげたいんです。はい、建前で言っていますよ。
「自動車工場は前回見せましたからね。だとしたら、次は何を見せたら良いのか……繊維関係はなぁ、殆ど日本に工場が残っていないんですよ。この時期京都は嫌になるほど暑いから避けたいし……観光客も嫌になるほどいるんですよ。だとしたら、四菱重工の工場でも考えて見るか。あそこだったら、まだ大学の同期が残っていたと思うし……」
この歳になっても、同期の方が働かれているんですか? それはそれで、凄いと言って良いですか。なんです、高齢化社会だから、定年延長が進んでいると言うのは。いえ、俺も市会議員をしていましたからね。それぐらいのことは知っているんですよ。
「犬山で明治村の見学、そして四菱重工の見学を入れますかね。鳥羽に大きなホテルが確保してありますから、そこでのんびりと2泊と洒落込みましょう」
少し腰を落ち着けるんですね。いえ、良いと思いますよ、そう言うプランは。
それで伊勢志摩に行くんだったら、伊勢神宮はどうします。勿論、セレスたちのことを知ってて言ってますです、はい。
「では、二日目は伊勢神宮参拝を計画しましょうかね。ああっ、神宮庁に話を通しておかないといけないな」
うちって、色々と神様関係に目を付けられていますからね。ええ、それが必要なことと言うのは理解していますよ。その辺り、段取魔の立木さんにお願いをいたします。ええっと、違うんですか?
「こう言った時こそ、鴻池さんを利用してあげるんですよ。前回の日間賀島では、彼に声を掛けませんでしたよね。それもあって、結構落ち込んでいたりしたんです」
そうですか、落ち込んでいたりしたんですね。それでですね。うちの娘2人が参加しても良いですか? 後は、孫も2人いるんですけど。はい、駄目と言っても乱入してくるのが見えていると言ってくださいますか。親として否定したいところですけど、否定できない自分が怖いですね。ちなみに立木さんにとっては、嫁と娘ですよね。
後は、藍香ちゃんたちは……そうですか、春夏秋冬も含めて全員参加と言ってくれるんですか。中々豪勢な旅行になりそうですね、それ。
なんです、『今日の異世界に行こう』ファミリー全員集合と言うのは、つまり、マミちゃんやBLTも参加する手はずになっているのだと。マミちゃん主演映画の監督も、プロモーションを兼ねて日本に来ているんですか。
「諸星さん。ジェイムズ・クロフォードをご存じですか?」
ジェイムズ・クロフォードって、マミちゃんの映画の相手役ですよね。もの凄く格好良い男優さんと言うのは知っていますよ。と言うか、世界的セレブですよね、その人って。
「映画のプロモーションで来日されるそうです。どうやら、IMO研究所大宴会のことを聞きつけてくれたようですね。鴻池さんから、参加させて良いかの問い合わせを受けましたよ」
一応来るものは拒まずと言うのがIMO研究所のスタンスです。そのスタンスに従えば、断る理由はないのですけどね。そうですか、世界的スターも参加するのかぁ。なんか凄いと言って良いですか?
「来るものは拒まず……ですか。お気持ちはわかりますが、それでも限度と言うものがありますよね?」
そりゃあ、限度ってあると思いますよ。でも、世界的映画俳優さんが参加されるんですよね。それを考えたら、限度を気にする相手っているんですか?
「まあ、色々と。ちなみに、これは非公式に貰った菅谷総理のスケジュール表だったりします」
ひょっとして菅谷総理が来たいと。でもですよ、あまり一企業に肩入れするのは問題だと思うんです。しかも、この後例の発表が控えていたりしますよね……なんです、この鳥羽で静養と言うのは。菅谷総理、休暇で鳥羽を訪れると言うことですか?
「ちなみに朝日さんたちの情報なんですけど、合衆国大統領、英国首相、ロシア大統領、中国国家主席もサマーバケーションを取られるようですよ。ええ、全く同じ日程で、しかも我々の慰安旅行に重なる形で」
なんです、その豪華メンバー勢揃いと言うのは。これって、間違いなくサミットを超えていますよね。首脳会談ですか、鳥羽で首脳会談をするんですかっ!
「あくまで、バカンスなのだそうですよ」
そんな言い訳が通用するとでも? あまりにも恣意的、見え見えの日程ですよね。
「今更、その説明が必要ですか? それから、それで良いのかと私に聞かないでください。私だって、しっかりと呆れていたりするんですからね」
つまりなんです? この人たちが、俺たちの宴会に交じるとか言っています? いやぁ、セキュリティのことを考えても、流石にあり得ないと思うんですよ。間違いなく、テロのターゲットになりますよね、これって。
「非常識な諸星さんを呆れさせるほど、非常識な集まりと言うことです。なんで、世界の首脳のフットワークがこんなに軽いんでしょうね。もっと、こう、もったいづけるものだと思うんですよ」
ああっ、立木さんが頭を抱えてる。立木さんが頭を抱えるぐらいだから、かつて無い非常識ってことになるわけですか。なんです立木さん、自分を基準にしないようにと言ってくれるんですね。はい、却下とお答えなんかしたりします。
「ですので、私たちは2日目の伊勢神宮参拝にいけません。そこでキョロキョロしても、IMO研究所所長が逃げられるわけが無いでしょう。逃げられるものなら、私だって逃げたいぐらいなんですよ。米英だけじゃなくて、どうして中露まで来てくれるんでしょう。なんで、こんなことになるのかなぁ……」
なんで、でしょうね。一応理由はわかっている……わかってるんですか?
「私たちが検討に入っている時、有原さんたちがお使いに出ていましたよね。恐らく何かしていることに感づいてくれたのでしょうね。だから、首脳自ら直談判に来ると言うことです。それがわかっているから、菅谷総理も私たちを巻き込むことを考えたわけです」
つまり、有原さんたちの勇み足が理由なんですね。勇み足と言うのは可哀想。特区構想には、必要な調整だったと言ってくれるわけですか。
「それに何かを感じたのでしょうね。後沢氏のところに、日本のメガキャリア2社が面会を申し入れているようですよ。ここで、アメリカ大統領の実績が効いてくるわけです。あの技術が開放されれば、自分たちの仕事がなくなることに感づいたと言うことです。従って、コロモ自動車からも『工場見学に来ない?』ってお誘いがあったりするんです。古巣中の古巣から、間違いなく恨まれることになりそうなんですよ」
その辺りは、立木さんに適当な立場を与えなかった報いと言うことで。
「一応、社外取締役と言う餌をぶら下げてはくれたんです。だから、少しだけ心苦しいと言えば良いのか。もうちょっと、本気で声を掛けて欲しかったんですけどねぇ。まあ、しっかり後の祭りなんですけど」
後の祭りで片付けてくれますか。なんです、企業年金を当てにしなくても良くなったと言うのは。そりゃあ、立木さんもしっかり貰っているのはわかっているんですよ。
「知り合いが沢山残っていますから、無くなったら困るのは確かなんですよ。でも、その程度でしかなかったりもするんです。よしっ、取りあえず気にしないでおこうっ!」
そんなことで良いのですかと、取りあえず聞いておきます。まあ、立木さんがここにいるのがすべてと言うのはわかっているんです。
その意味では、古巣に感謝する必要があるのかな。立木さんが来てくれたお陰で助かってるから。うん、俺も気にしないことにしておきます。
「取りあえず、IMO研究所が民間企業であるのは間違いないんです。従って、招待すらしていない首脳の相手をするつもりはないんです。無いんですけど、絶対に逃げ切れないと思うんですよ。目的地を変えて、首脳たちをブッチしてやりたくなったんですけどねぇ」
そんなことをしたら、間違いなく菅谷総理からクレームが入りますね。それ以前に、色々なところから釘を刺される気がしますよ。
それで、スケジュールはどうなっているんですか? なるほど、お盆前の平日を狙うのですか。お盆前の平日なら、相手に掛ける迷惑も軽くなると言う訳ですか。了解です。ところで、どこまで連れて行く予定ですか?
「出し惜しみはしない……と言うより、仲間外れにはしないつもりですよ。ですので、増えた闇エルフ20人も連れて行きます。魔王プレオプラスさんたちも招待する予定になっています。流石に、オークやデモンは呼びませんけどね」
オークとデモンですか、彼等を呼ぶのは流石に問題が大きそうですね。それでケンゴー君たちは? 仲間外れにするのは可哀想。今は、しっかり集落に馴染んでいるのですね。
それからもう一つ質問です。多分気づいていると思いますが……と言うより無視していますが、物陰から覗いている女神様はどうします? ここまで来たら、手を出してあげてはどうかと思うんです。慶子さん、女神様相手だったら気にしていませんよね?
「それはそれで、精神的にきついと言っちゃいけませんか?」
自業自得とお答えさせていただきます。もう一つ伺いますが、今回慶子さんたちはどうされるんですか? 修学旅行第2弾。各国首脳が来るところには行きたくないと言っていたんですね。
それで、修学旅行はどちらに? 暑いから東北……平泉とか遠野に行ってくるんですね。それはそれで、のんびり出来そうで良いと言っちゃいけませんか。はい、俺には『のんびり』が無理と言うのは自覚しているので大丈夫です。
そして8月頭の何もない平日。俺たちIMO研究所はバスを連ねて伊勢志摩観光に出発。規模的には、年末のバス6台と1台プラスになりました。その辺り、微妙に人数が増えてるからなんだよね。それでも、総勢で200人を超える大集団だから、途中で目立って……途中がなかったか。
流石に200人を超えると、お昼を食べるのも一苦労になってくれるんだ。しかも普通に走ると、8時間の行程となるんだよね。そこで一つ、IMO研究所ならではの方法をとりました。つまり、明治村の駐車場までゲートを開くことにしたんだ。それもあって、立木さんが先乗りをして先方と調整なんかしてくれました。そしてIMO研究所を出るところと、駐車場に到着したところでテレビカメラのお出迎え。これも、この先の特区発表の布石になるそうだよ。
それはそうとして藤康さん、IMO研究所の慰安旅行にようこそ。でも、こんな集まりに参加して良かったんですか?
「一応視察を兼ねていると思ってください。今回は出しませんが、一応特区の中で用いる交通網の候補には入っているんです。実際に利用してみて、凄まじい技術だと感心させていただきました」
そうですか。奧さんはどう思われましたか? なるほど、最後の最後で歴史的事業に関われたと喜んでおられるのですね。そう仰って頂いて安心させていただきました。ところで一つ伺いますが、ハイエルフとか翼人の女性は別枠とか思いませんか? そうですか、思わないと言ってくださるのですね。はい、その点はよく理解させていただきました。
「ただですね、久しぶり……なのでしょうか。主人が心から笑っているのを見させて貰いました。やっぱり初めてなのかな。だから、立木さんには感謝なんかしているんです」
そうですか。その意味で言えば、立木さんも中学生の乗りになっていたと思いますよ。やっぱり、古くからの知り合いと言うのは特別なものなのですかね。
では、観光を楽しんでください。俺は、ほかにも挨拶に回るんです。
ところでビゴ、身体も大きくなったのかな。まあ1年も経てば、それなりに成長する時期だからな。なんだ、顔を出さないからいけないと言うのは。顔を出していれば、身体の成長で驚くことはないと言ってくれるのか。
それはだな、しっかりした奧さんがいる弊害と言う奴だな。ああ、俺が顔を出さなくても立派に王国が運営されているからだよ。
「こんなことを言うのは心苦しいのですが……顔を出さなくてもではなく、顔を出さないからだと思います」
つまり、俺は『邪魔』と言っているのか? なんです立木さん、答えられない問いかけをするのはハラスメントと言うのは。きっかけは、ビゴの方から作ったんですよ。
「では、私が代わりに答えて差し上げます。その通りと言うことです。はい、この話はこれで終わりです」
ええっと、なんか俺に冷たくありませんか? 元々俺、挨拶回りをしていただけですよ。だったら、さっさと挨拶回りを進めろ。殆ど全員、明治村に入場したので残っているのは俺の周りだけ……
「スケジュールの問題が出ないうちに、さっさと中に入ってください」
やっぱり、俺にきつくありませんか? 移動のアレンジを全部自分がしている。この後は、鳥羽に行ってホテルの駐車場での待機があるんですか。いえ、大変と言うのはわかるんですけど。それって、立木さんの仕事なんですか? 立木さん、副所長をしていますよね?
「副所長なんて、雑用係と同義なんですよ。だから、こう言った細かい、そして面倒な仕事をしているわけです。後はですね、教授連を迎えに行かないといけないんですよ」
そこそこ暑くなっていますから、お歳を考えた方がいいと思うんですよ。いえ、代わるなんて言いませんよ。俺には無理ってことはわかっていますからね。
「とにかく、さっさと中に入ってください。バラバラになられると、統制が乱れて仕方が無いんです」
異世界人を集めておいて、統制が取れると考えるのは甘すぎると言ってあげます。
「一番統制を乱しているのが諸星さんと言うのを忘れないように。異世界人の方は、上から指示を出せば大人しく従ってくれるんですよ」
そうですか。俺が一番統制を乱しているのだと。お、俺は、IMO研究所の所長なんだからなっ! IMO研究所では、俺が法なんだよ……ごめんなさいごめんなさい。お願いですから、見捨てていかないでください。はい、ちゃんとみんなについて行きますから。
明治村ではすき焼き……牛鍋なんですね。違いは、牛鍋は牛鍋。文明開化のときには、牛鍋と言った。はい、牛鍋ですね牛鍋。その牛鍋を食べてから、アーリーチェックインをするため、バスに乗り込んで鳥羽に移動。チェックインはまだ、希望者を水族館に連れて行くんですね。
一つ良いですか? その希望者って、意味の無い選別だと思いますよ。間違いなくですね、全員希望してくれるはずですから。そうですか、至急先方と調整するんですね。いえ、段取魔の立木さんには珍しい読み違いと言えば良いのか。はい、とっくの昔に手配がしてあるものだと思いましたよ。
それはそうと、忙しそうと言って良いですか? 日程を繰り上げてくれた人たちがいる……人たちなんですね、日程を繰り上げてくれたのは。
ああっ、ホテルの方も大慌てだよ。しかし、なんで国旗が5つも飾られてるの。もしかして、全員が日程を繰り上げてくれたのですか?
「一日でも早く転移ゲートを使いたかったんでしょうね。なんと言えば良いのか、好奇心旺盛で片付けてはいけないと思うんですよ」
はい、片付けてはいけませんね。なるほど、立木さんの手配に漏れが出た理由がわかりました。だとしたら、ここから先の引率はどうします? そうですか、こう言うときの白船君なんですね。ちなみに小谷さんは? なるほど、こちら側に残るのですね。将来への布石と考えれば、間違いなく必要なことだと思います。
それで、俺たちは? 最初に菅谷総理をお出迎え。まあ、仕方が無いんでしょうね。
「総理は、完全にプライベートのはずなんです。しかも、IMO研究所慰安旅行に招待もしていないんですけどね。どうして、私たちが迎えないといけないのか。つくづく、疑問に感じたりしているんですよ」
それは、各国首脳も同じですよね。ああっ、どこかで見たような人たちが忙しく走り回ってる。あれって、外務省の……友池さん、お久しぶりです。
「諸星さん。父が御世話になっています。ところで、今からでも転職可能ですか?」
流石に、今からと言うのは問題ありませんか? 振り回されるより、振り回す方になりたい。以前よりも酷くなったと言ってくださいますか。
それはそうと、後ろに行列が出来ていますよ。その方たちは……転職希望、転職希望なんですね。
大丈夫か外務省っ!
こんなところで使いたいパターンじゃなかった。仕事を投げ出す人を採用するつもりはありませんからね。
ところで、また慌ただしくなったんですけど。国旗の動きを見ると、次は中国ですか? ちなみにこの順番は? 距離順、距離順なんですか。転移ゲートを使うと、距離って関係ないですよね。
そんなことを言っていたら、テレビで何度も見たおじさん……国家主席なんだけどね。とっても嬉しそうな顔をしてゲートを潜ってきてくれました。ところで、俺がなんで背中を押されるの? しかもセレスも一緒って……なんで?
「IMO研究の所長だからです」
だから友池さん、それってちっとも理由になっていませんからね。それはそうと、ニーハオで良かったですか?
SPなのかな、SPに囲まれてガチガチに緊張して中国家主席さんと握手、そしてハグ。なんです、中国はIMO研究所を歓迎すると言うのは。ここは日本ですから、歓迎するのは俺たちの方ですよね? 違う、移転をしたければいつでも相談に乗る。もの凄く広い土地を用意してくれるんですか。
すみません。次がお見えになったようなので……なにを握らせてくれたんです。電話番号……普通、綺麗な女性が握らせてくれるものですよね、それって。
そして次は、そうですか、ロシア大統領なんですね。スシロー……違う、ダブロー パジャーラヴァチ。ようこそいらっしゃいましたなんですね。そして握手からハグ……力が強いと言っちゃダメかな。それで、広い宮殿が用意してあるって……寒いのは大谷村と同じと言ってくださいますか。
いえですね、まだまだ日本でやることがありますから。すみません、次の方が見えたみたいなんです。
それで、次は英国首相……アリシアさんと言うことですか。ウエルカムで良いのかな。いえ、『オヒサシブリ』って、無理して日本語で言ってくれなくても良いですよ。お約束だから、ロンドン郊外に土地を用意した……ええ、お約束ですよね。
それで、大トリはアメリカ大統領ですか。半年前に来てるから、あまり久しぶりって気がしないんですよね。しかも散々飲み食いして帰ってくれたし。ですから、フロリダに豪邸を用意した……庶民の俺が、それを喜ぶと思っているんですか?
なんか疲れたんだけど……そろそろ立木さん、代わってくれないかな。お~い、立木さぁんっ……いえ良いです。お邪魔して申し訳ありませんでした。
なんで俺が謝ったかと言うと、スーツを着た人たち。うんSPじゃない人たちが立木さんを囲んでいたんだよ。あれって、あちら側の実務部隊だよね。立木さん、思いっきり嫌そうな顔をしているよ。ああっ、藤康さんたちが呼び寄せられた。
それで俺はお役御免と言うことで……なんです友池さん、『そうは問屋が卸さない』と言うのは。俺たち、慰安旅行に来ている民間人なんですけど。
「今回のスポンサーなんですけど、日本政府と言うのをご存じないんですか?」
ぽちぽち、なんです、それ。D’sエージェンシーに圧力を掛けた。圧力を掛けてくれたんですかっ!
「だから諦めて、ゲストを迎えてください。ちなみに、これもテレビカメラで撮っているんです」
それで、これからどうすれば。なるほど、中広間で各国首脳とお茶を飲みながら懇談……俺、胃薬飲んだ方が良いのかな。
ところで立木さんが無事ってことはありませんよね?
「無事の定義がわかりませんが……これから教授陣を呼びに行かれるそうですよ。なんでも、逃げないように首根っこを捕まえてくるとかなんとか。エリシオンさんを連れていくみたいですから、かなりの強硬手段を執られるのではありませんか?」
もしかして石化とか時間停止とか……良いのかなぁ、相手は日本の頭脳なんだけど。
「そう言うことですので、諸星さん、セレスさん、中にどうぞ。それからセレスさん、ゼッタイシン様モードでも良いんですよ」
出し惜しみではありませんが、それは夫婦だけの楽しみなんです。上位神に出て貰いたいのなら、立木さんにお願いすれば……俺が呼べば良いのかな。相手は娘とか孫なんだし。と言うことで4人とも、大人しく出てきてくれるかな?
「宴会だけ出席するつもりだったんですよ」
違うよね。宴会から明日の朝までいるつもりだよね。だから、そこで恥ずかしがらないように。いや、2人とも娘と言うのは確かなんだけどね。でもさ、君たちしっかり大人だよね。
「それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいんですよ」
でも、一言も否定していないよね。否定する理由がない……明日の夜も期待している。さっき恥ずかしがってたの、俺の気のせいなのかな?
それからフローリアンさんとパナメーラは……今回も修学旅行組。そうか、あっちの方が良いというのか。これを見たら、逃げたと言っても良いのかな? なんだ、その、慶子さんを護衛する意味もあると言うのは。今回も、陽佳ちゃんが付いて行ってるんだろう? だったら、護衛の必要性も薄いと思うんだ。
「諸星さん。皆さんがお待ちです」
ええっと、お腹が痛くなったって言っちゃダメ? そう言う嘘は感心しない……そりゃあ、俺って病気を超越しているからね。でもさぁ、なんか胃が痛くなった気がするんだよ。これも、俺の気のせいってことなのかな?
中広間で『楽しく』お話をしてから、貸し切り風呂で裸の付き合い。総理とはこの間したばっかりなんだけど、この絵面ってもの凄くない? この5カ国の首脳が、貸し切り風呂で裸の付き合いをするって……それから、全員水着着用だからね。だからセレスも、水着を着て仲間に入っていたりするんです。
それからそこのカメラ、セレスのアップを撮るんじゃないっ! これは、俺のものなんだからなっ! 強制力を行使する前に、さっさとズームアウトをするように。
しかしなぁ、俺の神経がどんどん磨り減っていく気がするんだよ。しかもなんだ、5カ国揃って『魔法技術推進に協力する』ってのは。優秀な科学者を選抜して派遣する……すみません、その話は立木さんとして貰えませんか?
「諸星君。逃げられるとでも思っているのかね?」
逃げられないんですか? 逃げても良いんですよね? 『逃げちゃダメだ』なんて、絶対に唱えませんからね。
そしてその夜の宴会なんだけど。各国SPに埋め尽くされた中、大宴会場だけは異世界を作っていました。うん、参加者が異世界人ってのもあるんだけどね、ここだけノリがIMO研究所だったんだよ。だから、異世界……通路とかホテルの外とかは考えないことにした。
それで特別ゲストなんだけどね、大芝教授とか宇梶教授、本山名誉教授に香川教授と川端教授、藤原教授とフルメンバーが揃ってくれました。ただこのうち5人の立木さんを見る目が、とてつもなく冷たかったりしたんだ。
なんです本山さん。そうですか、『行かない』と言ったのに、気がついたらホテルに来ていたと言うのですね。なるほど、その事情は大芝さんたちも同じだったんですね。こんな窮屈な場所に来たくなかった……皆さんにためになる言葉を贈りたいと思うんです。はい、予想しましたね。予想してくれましたね。そうです、『死なば諸共』って奴です。道連れって、多い方が良いと思いませんか?
それで唯一の例外藤原教授は……顔色が良くないのですけど。大丈夫ですか?
「これが大丈夫に見えますか? 私なんて、世界的に見れば何の実績も無い教授なんですよ」
そのですね、何事も経験と言えば良いのか。実績の方は、これから詰んでいただくと言うことで。順番が逆……ま、まあ、恨むのなら立木さんを恨んでください。
それで宴会を始めるんだけど……朽木君、大丈夫かな?
「い、いつもの通りにやれとの上司命令が来たのだが……いいのか、本当にいつも通りで良いのか? 国際問題になっても知らないぞ。だから、いざと言う時は『無かったことにする』ってのは怖すぎるんだがなっ!」
ああ、朽木君が思いっきりびびってるよ。そりゃあ、5カ国首脳が顔を揃えているんだからね。しかもみんな、キラキラとした目でステージの方を見ていたりするんだよ。拷問だよね、こんな環境で宴会の司会をするのは拷問だと思うよ。でもね、エンターテインメント部門の役員として、ここは宴会を取り仕切る必要があるんだよ。
でも立木さん、『良いからやれ』って。それって、はっきり言ってパワハラだと思うんだよ。ほら、天真爛漫な春夏秋冬だって、しっかりびびっていたりするんだよ。わかったからさぁ、いざと言う時には『本当になかったこと』にするからさ。うん、骨は拾ってあげるからさ。
「無かったことって、そっちかよっ!」
少し元気が出たかな。うん、頑張ってと言ってあげよう。
「もうここまで来たら自棄だっ! お待ちかねの大宴会だぞっ。今日は伊勢志摩の海の幸と、伊賀牛とか山の幸も揃っているからな。しかもなんと、ライブキッチンでできたてほやほやを味わうことが出来るんだからな。良いか、みんな楽しめぇっ!」
おっ、ついに開き直ってくれたか。うんうん、それで良いんだよ朽木君。相変わらずと言って良いのか、異世界組は元気が良いねぇ。
「よぉし、せっかくの大宴会だぁ。まずは諸星御大からありがたいお言葉を頂くぞぉっ!」
おいっ、ここの所俺って無視されてたよな。今まで無視しておいて、ここで俺の出番を、しかも最初に作ってくれるのか? 報復か、これは俺に対する報復なのか? 報復するのだったら、立木さんにするのが筋じゃないのか?
だぁかぁらぁ、みんなで拍手なんかするなよな。いつもだったら、ブーイングで迎えてくれるよな。なんだ、そのキラキラした目って奴は。楽しんでるよな、俺が苦しむのを楽しんでるよなっ! あっ、小谷さんが突き飛ばしてくれた。
「本日はお日柄も良く。IMO研究所で所長などしている諸星と申しますっ」
ああっ、こんなところでする挨拶って、愛読書『いつも安心挨拶集』に乗ってるはずが無いじゃ無いか。ええっと、こう言うときは、こう言うときは……ダメだ、何も浮かばない。浮かぶのは必殺技だけだ……必殺技。
立木さぁん、へるぷぅ~
うん、これが必殺技。こう言うときはさ、年配の経験者に任せるのがいいと思うんだ。
「私を呼びましたね。呼び出してしまいましたね。日本政府の皆さん、本当に大丈夫ですか? まあ相当の覚悟をしておいてください。悪いことは言いません。止めるのなら今のうちですからね」
ええっと、友池さんたちの表情が強ばってるんだけど。立木さんの脅しって、冗談ですまないときがあるんだよな。でも、もう俺にもどうしようもないんだよ。だって、俺自身逃げ出した口なんだから。
「やれと言われた以上、挨拶をすることにします。挨拶をすると思ったかこのヤロー。しちめんどくさい挨拶は、IMO研究所じゃ空気を読まない行為なんだよ。だからお前ら、回りを気にせず精一杯愉しんでくれ。IMO研究所は、局地戦最強なんだからな。いざとなったら、シアとシオンが色々と止めてくれるぞ。いいかぁ、今日は無礼講で楽しんでくれっ! 苦情はみんな聞き流してやるからなぁ!」
……いいのか、こんなことを言っちゃって。だけど、もの凄く盛り上がってるぞ。なんで各国首脳の皆さんも手を叩いて喜んでいるんだ? おかしいよな、絶対におかしいと思うんだよ。でも何よりおかしいのは、間違いなく立木さんのテンションだと思うんだ。なんかおかしなスイッチが入っちゃったのか?
「よぉし、最初はプロの芸を見せて貰おうか。お待たせ超売れっ子BLTのステージだぁっ!」
おおっ、ここでBLTが出るのか? いや、出られるのか? この空気の中で……ああっ、バツを作ってるよ。うん、その気持ち良く理解出来るよ、うん。
「こらぁっ、お前らプロだろうっ。敵前逃亡はシベリア送りだからなっ!」
そこでロシア大統領さん。ええっと、プルシチノフさんでしたか。親指を立てたりしないように。にやりと笑ったりして、冗談には見えないんですよ。
「仕方ない、天真爛漫春夏秋冬……そうか、ダメか。駄目と言ってくれるのか。可愛い子たちをシベリア送りにするのは可哀想だな。しかたない、立木さん例の隠し芸をしてみるか? だめ、今日はコンプライアンスが特に厳しくなる。素敵なレディの前で、あんな下品な芸はできないと言ってくれるのだな。それは良いんだけど、どうするんだ、これ?」
「仕方ありませんね。藍香ちゃん『無理ですっ!』って被せたら逃げられるとでも思っていましたか。慶子には、目を瞑って貰う約束『やりますっ!』……じゃあ藍香ちゃん。みんなを魅了してあげてください」
おおっ、藍香ちゃんが没入モードに入ったぞ。でも良いんですか、あんな約束をしちゃって。
「でしたら、諸星さんお得意の爆笑芸をしてくださいますか?」
俺の爆笑芸……会場を氷点下にしろと言っています? 俺の芸って、みんな真面目な顔で見てくれるんです。俺、笑わせようと思ってやってるんですよ。いつも偉そうに『爆笑』と言っている……ごめんなさい、あれは見栄で言っているんです。
「立木さん。約束しましたからね。皆さん、私の歌を聴いてくださいねっ!」
ああっ、藍香ちゃんが燃えてるよ。でも音楽が……友池さんたちがバックバンドになるんですね。合わせて練習なんかしていましたっけ?
「オリジナル曲は最後に回します。ですので、初めはメジャーな曲から行きますね。立木さんのために歌いますから聴いていてください。最初の曲は『恋に落ちて』っ」
恋は盲目って言って良いですか。いえ、この状況で堂々と『立木さんのために歌います』なんて言えるのが凄いと思うんです。しかも思いっきり心がこもってるし……しかし藍香ちゃん、相変わらず凄いと思うよ。うん、ぐんぐん引き込まれて行っちゃうんだ。
でも、これって大宴会だよな。良いのか、誰も料理に手を伸ばしていないんだけど。ええ、空気を変えないとダメと言うのは確かです。そうですか、この後は武見君に振るんですね。大丈夫かな、武見君。
あっ、曲調が変わった。それで、朝倉さんもステージに立つんだね。ええ、彼女がアイドルをしていたのは教えて貰いましたよ。でも、美女2人がステージに立つと、アイドルとは違った意味で映えてくれますね。
おおっ、緊張が解けたのかな。春夏秋冬もステージに上がったよ。うん、これで雰囲気が更に明るくなってくれたね。ああっ、大統領たちが身体をスイングさせてるよ。ところで誰だっ、大統領や国家主席たちにサイリウムを渡したのは。
それで、そうか、ポトマック5の演奏がメインになるんだね。ビートルズとかクィーン……イーグルスとか、うん洋楽なんだね。これで、通常の宴会モードに戻ってくれるのかな。
それで、藍香ちゃん……まさか、これからいなくなるとか言いませんよね。宴会が終わった後なら文句を言いません……言いたいんだけど言いませんから、宴会が終わるまでここにいてください。
「諸星さん。藍香ちゃんもちゃんとわかっていますよ」
ちゃんとわかってる……ってのは? 内緒、内緒なんですか。いえ、空気を変えてくれたんです。文句なんか言いませんよ。言えるはずがないと思います。
ポトマック5の演奏が終わったところで、ようやくBLTの登場ですか。これで、普段の宴会モードに戻ることが出来るんですよね。
それで疑問に感じたんですけど、どうしてハイエルフを出さなかったんですか? 彼等だったら、首脳とか来ていてもびびりませんよね。そうですか、ここはこちら側で乗りきる必要があったと言ってくれるんですね。それでですね、もしも藍香ちゃんが歌ってくれなかったら、その時はどうするつもりだったんですか?
「彼女が歌ってくれるって信じていましたからね」
信じていた……なんか重いって言って良いですか? それとも、切り札を信じていたのかな。藍香ちゃん、立木さんのことになると周りが見えなくなるから。
伊勢志摩、良いんですよ。ただ車だと、四日市周辺が大渋滞したりします。




