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新しいパターン

村の特産は異世界です


・新しいパターン


 この戦いが厳しい物……もっと言えば、勝ち目が薄いことぐらいは理解しているつもりだ。ただ義務感、義務感って言って良いのか。この世界に召喚されてこれまで、過ごしてきた時間が俺を戦いに駆り立ててくれている。それに俺の女……王女なんだながな、こんな俺に尽くしてくれるんだよ……まあ最初は酷かったんだけどな。今、今か? 俺のテクニックにメロメロになっているぞ。それもまあ、なんだ、戦う理由になっているな。

 なんだ、ちゃんと責任をとれと言うのは。王女にここまでしたのだから、最後まで責任をとるのが男と言ってくれるのか。なるほど、それを責任と言ってくれるのだな。


 だがな、お前は少しだけ考え違いをしているぞ。俺がお前のことを手放すと思っているのか? なんのために、ここまで仕込んだと思っているんだ?


「ケンゴー、それってテラにベタ惚れってことでしょ?」


 それは違うぞニロ、俺にベタ惚れなのはエクステラの方なんだぞ。そのことを間違えるのは、お前だって許さないんだからな。なんだ、どうしてニヤついてくれるんだ?


「だったら、どうして今日は道具を使わないのかな? ケンゴー、いっつも道具を使ってテラを責め立てているよね?」


 あ、明日が決戦だから、あまり体力を消耗したくないだけだ。そ、それ以上の意味など存在しない。だから、どうして二人してニヤついてくれるんだ?


「随分とケンゴーも素直になったと思うよ。尤も、それ以上にテラが素直になったんだけどね」

「わ、私には道が残されていないからです。それに、犬にだって愛着が湧いてもおかしくありませんっ!」

「だってさケンゴー、やっぱり首輪がいるんじゃ無いのかな? 多分だけど、テラも期待していると思うんだ」


 首輪、して欲しいのか? お前、れっきとした王女様だよな。なんでこんな変態に……俺のせいと言ってくれるのか。確かに、色々と道具を使ったのは間違っていないんだが。

 なんだ、それだけで十分変態と言うのは。仕方が無いだろう、お前随分と反抗的だったじゃないか。


「それで、結局どうするの? 首輪とか道具、使うの使わないの?」


 俺は、体力を温存すると言ったつもりなんだがな。だから、今日は3人で肌を合わせる程度にしておこうと思っている。大丈夫だ、帰ってきたら新しく考案した道具も使うつもりだからな。


「ケンゴー、帰ってきたらって言うの、死亡フラグって知ってる?」

「だったら、私たちもケンゴー用の道具を持ってこないとね。いっつも私たちばっかりって、はっきり言って不公平だと思うのよ」


 死亡フラグってのはなんだ。それからエクステラ、その時は返り討ちにしてやると言っておこう。それよりも、明日に備えて今日はこのまま眠るんだからな。ああ、このまま眠るんだよ。


「本当に眠れるの?」


 その辺りはだな、悪いが眠りに落ちる魔法を掛けてくれないか。ああ、ちょっと目が冴えてしまってるんだ。だぁかぁら、しないんだって……こらエクステラ、咥えるんじゃないっ!




 眠りの魔法って、構えられると掛かりにくいのよね。だからテラ、手伝ってくれてありがとう。でも、ケンゴーったら結構可愛い反応をしてくれたよね。ケンゴーって、結構気が弱かったりするの、知ってる? そうか、知っているんだ。


「気が弱くて、すぐに調子に乗るところがありますね。自慢の道具にしても、私の顔色を伺いながら使っていたんですよ」


 それ、私の時も同じだった。ちょっと演技をしてあげたら、だんだんと要求がエスカレートしてくれたもの。あと、自分の物に自信が無いみたいね。まあ、それだから道具に頼っているんだけど。女心がわかっていないと言うのは同感。大きければ良いって言うの、間違いなく男の勘違いなんだから。

 ねえテラ、私たちって生き残れると思ってる? だって、敵は魔王樹と元勇者3人……だけじゃなかったわね。ケンゴーも確かに強いけど、元勇者だって同じぐらい強いはずでしょ。しかも元勇者、魔王樹の力も貰ってるんだよ。


「私は、生き残るつもりよ。どんなことをしても、生き残るつもりでいますのよ」


 どんなことをしても……ねぇ。それって、私たちを見捨ててもってことかしら?


「ニロ、私を馬鹿にしているのですか? そもそも、あなたたちを見捨てて逃げた先に、何が残っているのです。当代の勇者を失い、あなたやパンヤ、クーガを失ったら、私たちに魔王樹に抗う力は残っていないんですよ。少しだけ死ぬ時期が遅くなることを、生き残ると言わないと思います」


 そりゃあ、そうか。でもね、今までこの世界って残ってるでしょ。だから、あなたの寿命分ぐらいならもつんじゃないのかな? まあ、持ったらいいなぐらいでもあるんだけど。


「だったらニロ、あなたは私たちを見捨てて逃げ出しますか?」


 私? そうね、その時の気分次第かな。だって、私は最後まで付き合う義理はないんだもの。パンヤやクーガみたいな、義務感も持っていないしね。


「だったら身代わりの護符、それが最後の1枚になったところで逃げてくれる? 私たちの世界を残すためには、誰かが生き残って戦いを伝える必要があるのよ」


 その役目、別に私じゃなくても良いんでしょ。その程度のことなら、テラでも問題は無いと思うんだ。そう、王女として逃げるわけにはいかないと言ってくれるんだ。だったらさあ、私が先に死んだらテラが、あなたが先に死んだら私が逃げると言うのはどう? だって、誰かが戦いを伝える必要があるんだよね?


「私は空を飛べますが、転移魔法を使うことが出来ないんですよ。そして戦いの場から逃げ出すためには、転移魔法に頼るしか方法が無いんです。つまり、あなたが逃げるしか方法がないのではなくて?」


 だったらさぁ、私が最後の力であなたを飛ばしてあげるわよ。とにかくさ、どっちが逃げるのか決めるのは止めておきましょう。逃げられる方が逃げる……と言うことで良いじゃない。

 それから、私たちは『今』からどうする? 多分だけど、パンヤたちは燃えていると思うんだ。そう、大人しく寝ると言ってくれるのね。あなたは私が眠りの魔法を掛ければ良いんだけどね。だったら、私はどうすればいいのかな? 少しぐらい疲れさせてくれてもいいと思うんだ。道具を使うのか、ねぇ……あなたたちの道具って、ちょっと凄すぎるから遠慮しておこうかな。




 魔王樹の森の攻略、つまり魔王樹滅殺は2つの戦力が割り当てられることになっている。そのうちの一つが、直接魔王樹を叩く俺たち5人と言うことになる。そしてもう一つの戦力は、魔王樹の森周辺に配置された聖騎士団だ。ローリーズ聖国、女神スピアーノを奉る宗教国家が保有する最強の魔法騎士団と言うのがその正体だ。

 その聖騎士団が、生け贄を連れて森を囲むように五カ所に配置される。その役割は、魔王樹の森から魔物があふれ出さないように結界を張ること。そしてもう一つは、俺たちが持つ護符……魔王樹の持つ即死魔法への対策となる護符に力を供給することだ。その力の素が、連れてこられた生け贄と言うことになる。つまりどう言うことかと言うと、生け贄の命を使って即死魔法に対抗するわけだ。

 酷いことには違いないが、俺たちが負ければ更に多くの命が失われることになる。だから、きれい事など言ってはいられないと言うことだ。


 さてさて、クーガとパンヤ、昨夜はしっかりやりまくったか? なんだ、同じことを聞くにしても品がないと言うのは。こんなもの、上品に聞いても意味があるのか? そもそもお前たちって、上品って言うようなタマだったか?


「これでも、俺たちは族長なんだぞ」


 獣人族がお上品と言うのは初耳なんだがな。お前、いきなり俺を殺しに来てくれだろう? お上品だったら、最初は挨拶から入るものだよな。


「それは、相手によるとしか言い様がないっ」


 つまり俺は、挨拶をする価値もないと思われたわけだ。なあ、これから俺たちが決死の戦いに出るのを忘れてないよな。それなのに、仲間を下げてどうするつもりだ?

 この程度のことを気にする相手じゃない。間違ってはいないんだろうが、それで良いのかと聞いてやる。だから、それで良いなんて開き直ってくれるなってんだ。


 それはそうと、覚悟は出来ているんだろうな。教皇が、俺たちを森の真ん中まで飛ばすからな。どうして俺やニロじゃないのかって、間違いなくそれは愚問だと思うぞ。

 そうか、覚悟は出来ていると言うんだな。俺か、そんな覚悟が出来ると思ってるのか? だがな、今更逃げられないのはわかっているんだよ。そして逃げたとしても、面倒が追いかけてくるのがわかっているんだよ。しかもその面倒って奴は、時間とともに更に厄介になるってのもな。だからこんなもの、開き直るしかないんだよ。と言っても、本当に開き直れているのかも疑わしいんだがな。


 まあ、そんなことだ。なんだ、安心したと言うのは。俺は、安心できるようなことを言った覚えはないぞ。なんだ、いつもと変わらないから安心したってのは。ちょっとイミフなんだがな。

 それはそうと、お待たせしましたタン教皇。それで、俺たちは……そうか、その模様……魔方陣で良いのか? その真ん中に立てば良いんだな。ああ、覚悟なんか出来てないぞ。だがな、諦めは付いているんだ。だから、もったい付けずにさっさと飛ばしてくれ。


 それからみんな、お互いのパートナーから離れるんじゃないぞ。転移直後から殺し合いに入るんだからな。

 じゃあ教皇様、ちょっくら行ってくるのでお願いするわ。




 6月も後半になると、日本は梅雨と言う鬱陶しい季節になる。なんです上村さん、農業には恵みの雨と言ってくれますか。ここで雨が少ないと、稲作に影響が出るんですね。そりゃあそうかもしれませんけど、俺って農業しているわけじゃないんです。だから雨って……しかもどんよりした天気が続くのって、あまり気分の良いものじゃないんですよ。


「でしたら、梅雨のない北海道にでも遊びに行かれてはどうですか?」


 北海道ですか。そう言われてみれば、まだ北海道には行っていませんでしたね。そうか、広い大地に美味しい海の幸やら山の幸。うん、北海道に遊びに行くのも良いかもしれませんね。

 と言うことなので立木さん、懇親旅行に北海道なんてどうですか? ほら、俺たちって、距離って概念がありませんよね。なんです、結構忙しいと言ってくれますか。だから行くのなら、有志を募って行って欲しいと言うのですね。ええっと、立木さんは行かれないのですか?


「これでも、本当に忙しかったりするんですよ。本山にも、少し京都に詰めて欲しいと言われるぐらいなんです」


 本山先生って……例の治験関係ですか。色々と結果が出てきたので、次のステージを考えなくちゃいけない。後は、海外対応をサボっていられなくなりそう……と言うことですか。いえ、仕事を優先するのは間違っていませんよ。でもですよ、たまには息抜きをしても良いんじゃないのかなぁって思ったりするんです。


「巻くところと緩めるところを間違えないのが大人なんですよ。そして今は、巻くところと言うことです。まあ、お待ちなさい」


 そこでスマホを見た立木さん、『日程は?』と俺に聞いてくれた。こういう所が、本当に当てになるんだよな。愛してる、立木さん……なぜ冷や汗が出るんだ? それから日程ですけど、2泊程度で結構です。時期は、いつでもと言うのか、明日からでも大丈夫だったりしますです。


「リゾートホテル、温泉宿、料理自慢の宿と色々とあるのですが。どう言ったのがお好みですか?」


 温泉宿ってのは、いつものIMO研究所の旅行だよな。そして料理自慢と言うのも、素敵に思えるけどハードルが高いのかもしれない。それに俺と奧さんだったら、リゾートと言うのも素敵に思えるんだ。

 と言うことなので、リゾートホテルをお願いします。あっ、それでも温泉があったりすると嬉しかったりします。


「あんまり北海道って行っていないんですよ。だからお勧めと言われてもなぁ……洞爺湖にしておくか。それで、奧さん全員と言うことで良いんですね?」


 仲間外れにすると可哀想だと思うんですよ。そうなると、奧さんが16人……ええっと、16人ですよね。そうなると、部屋が大変ってことになりますか? ですよね、かなり大変になるんですよね。


「大きなホテルで8室……かぁ。鴻池さんに任せたくなったな。やっぱり、そうした方がいい気がしてきましたよ」


 そうしましょうそうしましょうと言った立木さん、Webを見るのを止めて鴻池さんに直電。はい、ご迷惑をおかけしています。流石は立木さん、うまい具合に鴻池さんに押しつけてくれましたね。ええ、話している声が漏れ聞こえてくるんです。

 いえ、言いませんよ。そんなことは。


「ホテルの手配を鴻池さんが引き取ってくれました。ただし、どこかのテレビカメラが入るのをご容赦願います」


 テレビカメラ、ですか。限度を考えてくれれば許容しても良いですね。まあ、いざとなったら強制力を働かせるから大丈夫でしょう。

 ところで京都の方ですけど、大丈夫なんですか?


「大丈夫の意味が難しいのですけど。まあ、なんとかなっていると言うのが答えですね。ただ魔道具の治験調整の影響が、かすみちゃん、武見君に出ているのが気になりますね。それもあって、本山と話をする必要があると言うことです」


 そうですか、治療用魔道具ってとっても重大な意味を持っていますものね。


「ちなみにですね、自衛隊にも治験をお願いしたりしています。あちらの方が、多少縛りが緩くなると言うメリットがあるんですよ」


 いつの間に、と聞いても良いですよね。そうですか、聞いても良いけど報告書が俺の机の上にあるんですね。なんです、幹部会議でも話題にしていると言うのは。ええっと、記憶にないと言っても良いですか?

 あっ、頭を抱えてくれましたね。この手の話になると、頭の中を風がヒューヒューと吹き抜けていくんですよ。


「今更問題にしてもいけないんでしょうね。でしたら口頭で説明しますが、現在自衛隊には料金プランを2つ提示しています。本体補償金を100万として、月額100万円で使い放題とするものです。ただし魔力充填にかかる費用……送料なんですけど、それは自衛隊持ちにしています。もう少し正確に言うと、虎ノ門経由でここまで運んで貰うことになっています」


 月額100万円で使い放題ですか。結構高いって言っても良いですか?


「高いと思うのであれば、もう少し割安……なのかな。一見割安に思えるプランもありますよ。そちらは本体保証料が同じく100万円で、魔力充填ごとに20万円頂くと言うものです。使用頻度が低ければ、こちらの方が運用費用が安くなります」


 つまり、自衛隊はそちらを利用すると。確かに、こっちのプランなら使わない限りお金が掛かりませんからね。だったら、お試しにはちょうどいいと思うんですよ。


「そう言うことです。お試しと言う意味で言えば、魔力充填の都度割高でもお金を支払う方が壁が低くなるんです。ただ予算で動く自衛隊ですから、来年度は月額定額での使い放題を選択するのではありませんかね」


 そう言えば、自衛隊は予算で動いていましたね。はい、料金プランの意味は理解しました。それはそうと、災害出動時はどうするんですか? オープニングフェスで実績を作りましたよね?


「そちらは、政府の予備費で支払って貰うことにしましょう。諸星さんも繰り返し言っていることですが、IMO研究所は営利団体なんです。従って、ただ働きはしないと言うのが原則となります。まあ、大幅にディスカウントして提供することになるのでしょうね」


 それで、魔道具ってどれだけ準備が出来たんでしたっけ?


「これも報告書にあるんですけどね。本部の倉庫に、1万個が積み上がっていますよ。取りあえず治療用魔道具の製作は停止して、今は緊急脱出装置の製造に取りかかっています」


 こっちの子機は、転移距離でランク付けしてあるんですよね。10mで10万円、100mで100万円、1kmで1千万円でしたね。今は、最長どこまで許容したんでしたっけ?


「今は、最長1000kmです。そのまま値付けすると100億になるのですが、5億にディスカウントしています。それから、親機ですけど、子機数が1で100万円、10で5百万円、20で8百万円にしてあります。ちなみに、親機に対する魔力充填は、出張料込みで1回50万円にしています」


 高いと言っていいのか安いと言っていいのか。中々微妙な値段と言って良いですか?


「そう言う値付けをしたと言うことです。それから民生用に、格安レンタルも計画しているんです。使用1回当たりでお金を貰うことを考えています」


 民生用……ですか。これって、どう言ったときに使用するんです?


「使用方法ですけど、例えば地下作業用、坑道と言うのが考えられますね。実のところ、杏香ちゃんに渡してある非常ブザーを転用したものなんです。携帯者が危険を感じた場合、意識喪失した場合、自発的に作動させた場合に親機まで転移するものです。実のところ、消防庁から問い合わせが入っていたりするんですよ」


 消防庁から……? なぜと言って良いですか。


「地震等で建物の下敷きになった場合、この緊急脱出装置さえ渡せれば救出できるからです。後は、火事等で高層ビルに取り残された場合の救出にも使えます」


 なるほど、人命救助に役立てることが出来るんですね。ちなみにですけど、こちらの値付けはどうなっているんです?


「現在先方と協議中と言うことです。使用目的が目的ですから、自衛隊に提供するものよりも低価格にするのは確かだと思いますよ。それとも、しっかり高値を付けた方が良いですか?」


 いえ、入手しやすい価格でお願いします。目的は、災害救助用なんですよね?


「災害救助用ですよ。これもまた、IMO研究所の社会貢献と言うことになるわけです」


 そうなると、ですね。海外への提供はどう考えますか? 災害救助用なんですよね?


「それが結構悩ましくて、ですね。海外の場合、悪用を防ぐのが難しくなってくれるんです。ですので、消防とかの海外派遣で持っていって貰うぐらいですかね。まあ、一回使い切りにしますから、心配しすぎなのかも知れませんけどね」


 物が物だけに、悪用を避ける必要があるんですよね。ええ、わかっていますよ。世の中が善人だけじゃないってことは。そしてそう言う奴らが、とんでもない使い方をしてくれることも。

 でもその悪用が、思いも知らない使い方を開拓してくれますよね?


「その可能性を否定するつもりはありませんよ。ただこの魔道具でできることは、2地点間で人や物を移動させるだけなんです。絶対安全に脱出出来るのなら、諜報活動も捗ることでしょうね。逆に、忍び込むのにも利用できると思います。GPSタグと一緒に親機を運んでおけば、いつでもこっそりと忍び込めますからね」


 なるほど、悪用しようと思ったら幾らでも方法があると言うことですか。


「それから、荷造り紐さんと組み合わせて使う方法もありますね。荷造り紐さんなら、もの凄く狭いところにも入っていけるでしょう。そして目的地に着いたところで、転移を起動すれば良いんです。災害救助用と考えれば、かなり使い勝手が良くなると思います」


 なるほど、アイディアが色々と出てくると言うことですか。間違いなく、俺たちが想像もしていなかった使い方を考えてくれると思いますよ。


「と言うことで、こちらは今月の定例報告で取り上げることにします。使い方のコンペティションをしても良いのかも知れませんね」


 コンペをするんですか。その場合の商品はどうします? やっぱりお金ですか? 流石に、現物貸与は問題がありますよね。


「提案による。と言うのが答えになりますね。まあ、やってみて考えることにしましょうか」


 面白そうと言っても良いですか。あとですね、優秀者をIMO研究所に誘うと言うのはどうでしょう。ここって、突飛な考えを持った人が必要ですよね。


「それを否定するつもりはありませんよ。ただ疑問なのは、なぜ私をじっと見てくれるんです?」


 別に、立木さんに含むところはありませんよ。ええ、どこにも含むところなんかありませんから。




 転移したのは良いのだが、なぜいきなり戦闘にならないんだ。しかもここ、青空が見えるし、綺麗な花が咲いているじゃないか。これが本当に、魔王樹の森の中なのか? 教皇様が飛ばしてくれたんだから、間違っていることはないと思うのだが。


「どうやら、間違いではないようだぞ。あっちの方から、もの凄く恐ろしい気配が近付いてくる」


 そうかクーガ、ここで間違っていなかったと言うことか。だとしたら、ここで迎え撃つことにしようか。ああ、ここだったら、おかしな罠とか無さそうだしな。


「相手の方が圧倒的に有利なんだろう? だとしたら、どこに行っても罠なんか無いと思うぞ」


 だったら言い換えるのだが、ここの方が戦いやすそうだろう。だから、ここで戦うことにしよう。


「まあ、森の真ん中なんだから、どこで戦っても同じと言うのは間違ってないな」


 それはそうと、魔王樹が見えないんだが。魔王樹の森だったら、馬鹿でかい魔王樹が見えるはずだよな。


「今頃気づいたのか? これはな、聖女様の結界の中なんだよ。聖女ミレーニア様と言えば理解出来るか?」


 聖女ミレーニア……は良いんだが、お前は何者だ?


「俺か、俺はカイロンってんだ。何年か前には、勇者カイロンとか名乗っていたぞ」


 つまり、俺の先代様と言うことか。それはそうとして、エクステラ、どうかしたのか?


「聖女ミレーニア様……魔王樹を封印するためにその身を捧げたと言い伝えられています。それなのに、どうしてここにその結界があるのですっ!」

「どうしてって言われてもだなぁ、その花畑の真ん中に墓標があるだろう。それが聖女ミレーニア様の墓ってことだよ。聖女様はよぉ、屍になっても世界を守ろうとしているってことだ」

「それにしても、どうして魔王樹の森の中で無事でいられるのですっ!」

「質問の多い女だな……んっ?」


 なんだ、エクステラの顔に何か見覚えがあるのか? なんだ、『そんなはずはない』と言うのは。


「お前、まさかエクステラと言う名じゃないだろうな?」

「そのまさかですけど、それがどうかいたしまして?」


 おい、カイロンの表情が急に険しくなったぞ。エクステラ、お前何かしたのか?


「こんな男、初めて見ましたわ。ただ勇者カイロンの名前を思い出しましたの。確か、20年ほど前に行方不明になった勇者のはずですわ」

「そのカイロンで合ってるさ。そして俺は、魔王樹と戦うために仲間と一緒に試練の旅に出た。その仲間の一人が、王女エクステラだった」


 ち、ちょっと待て。どうしてそこでエクステラの名前が出るんだ? お前の驚き方を見たら、ただの同姓同名ってことは無いんだよな。


「ちなみに俺は、異世界から召喚されたんだよ。そしてあちらの世界での名前を、杣木謙吾と言うんだ」


 おい、今、なんて言った。杣木謙吾って言ったよな。なんで、俺と同じ名前をしているんだ? しかも仲間にエクステラがいるって……お前、何を言っているんだ。なんだ、何がおかしいんだっ!


「ははははっ、これが傑作じゃなくてなんだって言うんだ。そうか、お前は俺なのか。やつらは俺とエクステラのコピーを作ってくれたのか。いや、この俺自体コピーなのかもしれないな。ひょっとして、エクステラって王女様も作り物なのかもしれないぞ。そうか、奴らはそこまで外道だったのかっ!」


 おい笑うな。俺にとっちゃ、笑い事じゃないんだぞっ。


「まあ怒るな。と言っても、お前が怒る理由もよくわかるんだがな。そうか、あの野郎ども、そこまで腐ったことをしてくれたのか。お~いっ、クロスランド、サーブラウ、お遊びは終わりだ。さっさとこいつらを殺して……殺さなくても良いのかな」

「そうだな、何も知らないまま死ぬのは可哀想だろう」

「おいカイロンのコピー品、お前はそもそも魔王樹がどんな存在か知っているのか?」


 お、お前ら、何を言っているんだ。魔王樹ってのは、世界を滅ぼす悪に決まってるだろう。この世界に悪意を振りまき、混沌と殺戮を振りまく魔王じゃないのか。


「ああ、それは間違っていない。ただ、魔王樹はどうしてできたと思ってる?」


 魔王樹がどうして出来た……なぜ生まれたのかと言うのか?


「まあ、そう言うことだな。魔王樹ってのは、この世界の悪意が凝縮したものなんだよ。そして振りまいている悪意にしても、この世界から集めた物なんだよ。だからだ、ここにある魔王樹を滅しても新しい魔王樹が生まれるんだなぁ。ただまあ、もう手出しが出来ないぐらいに成長しているんだがな」


 サーブラウだったか、お前は何を言っているんだ。


「この世界の真実って奴だ。まさかお前、あの教皇が清廉潔白な聖者だと思っているのか?」

「あの教皇ってのが、諸悪の根源の一人なんだぞ。聖邪ってのはな表裏一体の存在なんだよ。聖職者って顔をしていても、裏を返せば魔王樹以上に邪悪な存在ってことだ」

「おいおいクロスランド、一気に情報を与えたら消化しきれないだろう。特にこいつは俺のコピー品なんだぞ。自慢じゃないが、俺はあまり賢くないんだよ」

「カイロン、そこは『馬鹿』と言って良いと思うぞ」

「馬鹿はないと思うんだがな、馬鹿は」

「事実だ、諦めろ」


 ちょっと待て、お前らで和んでんじゃないんだよ。カイロンって言ったよな。お前、確か20年前の勇者とか言っていなかったか。だったらなんで、俺と変わらない見た目をしているんだよ。


「そりゃあお前、俺たちは魔王樹によって魔王化しているからだよ。本当の肉体なんか、とっくの昔に朽ち果ててるはずだ。特にクロスランドとサーブラウなんか、土に帰ってるんじゃないのか」

「そりゃ、まあ、100年も前のことだからな」

「ちなみに俺は、200年ぐらい前だったな」

「ってことだ。ところで、お前たち5人で全部なのか? 聖女様の準備は出来なかったってことか?」


 聖女だと。そんな話は聞いていないぞ。エクステラ、お前は何か知っているか?


「当代の聖女はまだ生まれていないと聞いています」


 だよな、聖女いるんだったら、俺たちと一緒に来てるよな。


「つまり、ミレーニアのコピーが作れなかったってことか。そうか、ここの結界が生きてるから出来ないんだな」

「つまり先代の聖女様は、教皇の悪事を知っていたと言うことだな」

「ああ、自分を教皇に利用できないようにしたんだからな」


 お、お前ら、何を言っているだっ!


「ケンゴー、気を確かにもって。こいつら、口から出任せを言っている可能性もあるんですよ」

「まあエクステラのコピーなら、そう言っても無理もないんだが。だから俺のコピー、お前にだけわかるエクステラのほくろの位置を教えてやる。例えばだ、右の乳房の下、ちょうど垂れて隠れる部分に小さいのが一つある」


 そ、そんな当てずっぽうを信用すると思っているのか?


「次だが、左の脇の下にちょっと大きめのが一つ。そうか、まだ信用できないか。だったら、毛を剃ったらわかるんだが、右側のあそこ近くにほくろがあるぞ。おおっ、どうやらお前も毛を剃ったみたいだな。はははっ、流石は俺、同じことをしているんだな。だったら、道具なんかも使ってるのか?」

「ケンゴー、こいつらの言葉に耳を貸してはいけませんっ! 私たちの心を読んでいる可能性もあるんですよっ!」

「おっ、流石は賢い王女様だな。うんうん、そう考えればすべての辻褄が合うんだよな。偉い偉い、都合の良い理由を思いついてくれたわけだ」


 エクステラ、お前を信じて良いんだよな。信じて良いのなら、俺を騙そうとしたこいつらを殺して魔王樹を滅してやる。


「なるほど、今度は少し性格を矯正したわけだ。自分を棚に上げるわけじゃないが、随分と甘ちゃんに調整してくれたものだな」

「殺る気になっているところで悪いんだが、場所を変えることにするぞ。ここはな、ミレーニアが命を賭けて作ってくれた楽園なんだよ。お前らの血で汚しては、せっかくの楽園が消えちまうんだよ」


 それを聞かされた、外に出ようと考えると思うか。ここで戦うことが、お前らにとって有利ってことだろう。


「まあ、俺ならそう考えるな。だったらだ、逆に考えて見たらどうだ? お前の性格を知っていて、わざとここで戦うように仕向けたと。ここを穢せば、聖女ミレーニアの結界が消えるからな」

「ケンゴー、こいつらの言葉に耳を貸してはいけません。彼等は、言葉であなたを惑わせようとしているだけです!」

「まっ、どうせ俺たちが勝つのはわかっているんだがな。だから、どっちにとって貰っても困らないんだよ」


 その余裕、すぐに吠え面に変えてやる。


 静謐の世界っ!


 これで、お前らの邪悪な力は使えなくなるんだよ。ああ、別名破邪の結界って奴だ。


「いいのか、結界に結界を重ねて。そんなことをするとだな、聖女の結界の効果が消えるんだぞ」


 お、俺の結界は、すべての邪を防ぐんだよっ! だから、聖女の結界なんて必要無いんだ。


「そうか、そう思いたいのは理解した。ただな、ちょっとだけ現実に目を向けてみろや。ほら、お花畑が消えていっただろう?」


 そ、それがどうしたっ!


「ケンゴー、あれを見てっ!」

「おっ、気づいたね。中々感心だね……なにちゃんなのかな?」


 ニロ、何を言っている。あれって……なんで魔王樹が2本あるんだっ!


「そうか、お前には2本見えるのか。だがな、誰が魔王樹が1本だと言ったんだ? 魔王樹はだな、この世界の悪意を集めて成長していくんだよ。だとしたらだ、悪意に満ちた世界なら魔王樹が増えてもおかしくないと思わないのか?」

「攻撃しないから、ちょっとだけ振り返ってみろ」


 クーガ、パンヤ、俺がこいつらを押さえてやる。だからお前ら、後ろを確認してくれっ!


「ケンゴーっ、魔王樹が沢山生えてるぞっ!」

「でも大きさが小さいんじゃないのっ!」

「そりゃあお前ら、株別れした奴はまだ若木なんだよ。だから、始まりの樹に比べれば小さくても仕方が無いだろうよ」

「そして魔王樹の悪意には、この程度の結界じゃ役に立たないんだよ」


 な、なんで俺の結界が破られるんだ。エクステラ、相手は木だ。インフェルノ(業火の魔法)で焼き払ってやれっ!


「私たちも無事じゃすまないわよ」


 このままだったら、どのみち無事じゃすまないだろう。だから、少しでもマシな方法を考えるしかないんだよ。

 それからクーガ、パンヤ、こいつらを押さえるぞ。ニロ、エクステラを守ってくれっ!


「ほうほう、たかが獣人で俺たちを押さえると言ってくれるのか?」

「その前に、結界が無くなれば即死魔法の餌食になるんだぞ?」

「身代わりの護符が、一体いつまで持ってくれるんだろうな?」


 護符がなくなる前に、魔王樹を焼き払えば良いだけのことだ。エクステラ、特大のインフェルノをお見舞いしてやれっ!


「簡単に言ってくれますわね。でしたら、5分だけ時間を稼いでくれますか?」


 たった、5分で良いんだな。よぉし、クーガ、パンヤ、まずこの3人を始末するぞ。ああ、俺たちなら、何も難しくはないはずだっ!




 鴻池さんが頑張ってくれたので、2泊3日の豪華北海道ツアーが成立してくれた。うん、富良野でラベンダー畑を見てから、小樽に行って寿司三昧するってプランだよ。富良野ではジンギスカンを楽しんで、小樽ではお寿司、その後函館に行ってから帰ってくるんだ。

 ジンギスカン、お寿司、ウニにいくら、岩牡蠣とかもあるんだって。もうね、海の幸三昧って言えば良いのか……ちがう、マトンもあると言ってくれるんだね。とにかく、北海道の幸がこれでもかってほど詰まっているんだよ。


 ただね、自分でも思うんだけど。奥さんの数が多すぎたかな? うん、今回は全員揃ったから16人なんだよ。移動は基本的に空間移動なんだけど、観光で回るときにはマイクロバスを使うことにしたんだ。

 だからかなテレビ局のクルー……そのクルーの俺を見る目が冷たかったんだ。なんか、ちょっと苛立っていると言って良いのか、ノリが悪いようにも見えるんだ。でもさ、奥さんが多いことは最初からわかっていたよね。あと、この企画は君たちが組んでくれたんだよ。


 そうか、企画を組んだのは自分たちじゃない。自分たちは、下請けだと言ってくれるんだ。だとしてもだ、取材対象にそんな目を向けるのは感心できないよ。なんだい、その、『男として許せない』『このやるせない気持ちをどうしてくれる』ってのは。

 いや、なんだ、それはだな。うん、男の甲斐性って奴なんだよ。言っておくけど、不倫とかじゃないからね。正妻はセレスなんだけど、全部セレスの公認なんだよ。それどころか、もう少し増やした方が良いと言ってくれるぐらいなんだなぁ、これが。


 血の涙……憎しみで人が殺せたらと言ってくれるんだ。でもね、俺って色々と超越しているんだよ。だから、憎しみぐらいで殺せたら、逆に凄いと言ってあげようか。


 ラベンダーの盛りは、7月から8月なんだって。つまりどう言うことかと言うとだな、6月の終わりは早咲きのラベンダーが咲きかけた所と言うことだ。普段が山の中にいるせいか、地平線まで山のない景色と言うだけで新鮮なんだよ。だから、花が盛りじゃない程度で落ち込むことはないと言ってあげよう。それに咲きかけの花も綺麗だと思うんだよ。

 負け惜しみ、負け惜しみと言ってくれるのかな。だけど、この時期に来たら、こうなることぐらいわかってるよね。本当に悔しかったら、俺の能力を使って満開にしているよ。いいのか、ここ一面を満開にしても。だろう、それをすると色々なところに迷惑を掛けるだろう? だからやらないよ、うん、この小さな一角ぐらいを満開にする程度で。


 ちょっと咲いてくれるかな


 ほら、不自然にここだけ満開になっただろう。これを全部にしたりすると、お祭りとか出来なくなっちゃうんだ。だから俺を挑発しないように。テレビの取れ高ってねぇ、君たちって本当に自分さえ良ければいい人たちなんだね。

 俺は、これでも常識人なんだ。だからしないよ、そう言う迷惑になることは。だから、この一角も元に戻しておくからね。うん、元に戻ってくれるかな。まあ、そう言うことだよ。


 それで、空間転移で小樽へと移動。ここは運河沿いの倉庫を歩いて、ガラス細工とかオルゴールとかを物色……だって王妃様たちが、是非ともお土産にしたいとねだってくれたんだ。だったらさ、好きなだけ買ってあげるのが夫としての務めだろう?

 それに王妃様だから、普通の人との金銭感覚も違うんだ……ステリナ、遠慮は必要無いんだからね。


「こんなものを買って帰っても、王宮に飾るところが無いんです」


 ああっと……うん、取りあえず買って帰ってから考えないか。立木さんと相談をして、もうちょっとスハハトクサイカス王国の支援を手厚くするからさ。あそこは陽佳ちゃんも行っていたところだから、立木さんだって反対はしないと思うんだ。プリムラだったかな、彼女が恵みを与えることになっているんだろう? うん彼女、立木さんの娘だから。

 すみません、買った物はこちらに送って貰えますか。はい、領収書は諸星孝明でお願いします。なんです、カードの限度額を超えているんですか。ええっと、そう言う時は……もしもし立木さん、ヘルプをお願いします。


「私は、皆さんのお父さんじゃないんですけど……」


 すみませんねぇ。ええ、本当に申し訳ないと思っているんですよ。はい、立て替えていただいた分はお返しいたしますから……給料から天引きにする。天引きにしても誤差程度……俺って、一体幾ら貰ってるんですか?

 なんです、アメリカの有名プロ選手よりは少ないと言うのは。世界には、もっともっとお金を貰っている人は沢山いるんですか。


「配送までやっておきますから、諸星さんたちは次に行っても良いですよ。それからカード会社に連絡をすれば、限度額は増やせますからね……仕方が無い、やっておくか」


 本当に、本当に、あい済みません。この埋め合わせは、体力のバフ辺りで……いらない。寿命を縮めたくないと言ってくれるんですね。だったら、寿命を延ばす方向で……それも余計。人間は、自然が一番と行ってくれるのですか。


 それって、魔法を使える人の言うことですか?


 いえ、ちょっと突っ込みたくなっただけですよ。深い意味なんて、特に考えていませんから。


 支払いと発送を立木さんに任せ、次は夕食のためにお寿司屋さんへ。個室でベテランの職人さんが握ってくれると言う、贅沢三昧をさせて貰いました。ただここでの問題は、生のお魚になれていない王妃様たち。特にカタリナとかステリナは、まだ奥さんに加わって日が浅いんだ。それもあって、生のお魚はまだまだ苦手にしてるんだ。

 それはそうと、アギアとヴァーソは生のお魚は大丈夫なのかな? そうか、元々生食をしていたと言うのだね。それは、お刺身みたいにして……違う、料理をしないで食べることが多かった。特に暗殺のために身を潜めているときには、料理なんかする余裕がなかったと言うのだね。

 うん、どんどん食べてくれるかな。それから、茶碗蒸しとか炙りとか、穴子とか蟹も美味しいと思うよ。


「いえ、集落で美味しいものを食べているので、ご心配なく」


 そうか、山岡さんたちが頑張ってくれてるからね。違う、大谷村のおばさんたちが、美味しいものを沢山作ってくれるのか。孫の嫁に来てくれないか……もしもし、そんな話まで出ているのか?


「お言葉は嬉しいのですけど、私たちとは寿命が違いすぎるんです。ですので、お断りさせていただいているんです」


 だよなぁ、その意味で言えば、立木さんのところもそうなんだよな。みんな、どうして驚いた顔をしているんだ。立木さん、ああ見えても普通の人なんだよ。平均寿命まで、20年も残っていないんだけどな。

 なんだセレス、あと千年ぐらい生きそうな気がすると言うのは。そう言われると、そんな気がしてきた……ぶるぶる、あの人は普通のおじさん。やっていることは変だけど、あくまで人間の範疇にいる人なんだからね。


「立木様は管理世界の秩序を混乱させた実績があるんです。あそこまで混乱させるのに、馬鹿げたエネルギーが必要になるんですよ。そんなエネルギー、フローリアンさんの恩恵では引っ張り出せないはずなんです。しかも上位神が総出で収拾するって、どうすればそんな真似ができるのでしょう?」


 あ、あれのことか? エリシオンさんをして、出ていくのが躊躇われたって話だったよな。

 いやいや、あれは偶然が重なっただけだろう。だって立木さん、普段から疲れたってぼやいているぐらいだからね。俺、マッサージを受けて恍惚の表情を浮かべる立木さんを知っているし。


「あなたの言う通り……と言うのはわかっているんです。わかっているんですけど、それでも信じられないと言えば良いのか。だから怖くて、強制力を使うことが出来ないんです。ええ、クロアが使用したのは聞いていますよ。でも、本当に強制力が有効だったのか……最近疑問を感じるようになったんです」


 だったら、アリッサに強制力を使わせてみたらどうだ? 立木さん、このままだったら姉妹両方に手を出すことはないと思うんだ。


「飛んで火に入る夏の虫……と言う言葉をご存じですよね。ただの口実にされる気がしてしまうのは考えすぎなのでしょうか?」


 考えすぎ……だと思うんだけどな。それに、そうなっても困らないって言っちゃいけないか?


「確かに困りませんね」


 だろう。娘2人が同じ人と言うのを忘れれば良いんだからな。うん、アリッサに強制力を使わせてみよう。

 なんだルーテシア、目的がずれていると言うのは。俺に、話の整合性を求めるのは間違っているのは今更だと思うんだ……開き直るな。うん、開き直っているんだよ。



生もの、美味しいんですけど。まあ、札幌からちょっと行った運河エリアは、観光客価格になっていますね。

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