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好事魔多し

村の特産は異世界です


・好事魔多し


 みなさぁ~ん、『好事魔多し』と言う慣用句をご存じですよね。そうです、『調子がよいときほど、邪魔をされたりミスをしたりして痛い目にあうもので、気を付けるべきだということ』なんですよ、普通はね。

 ただここIMO研究所では、違った意味で捉えられていたり寸です。『好事魔多し』と書いたら、普通は『こうじまおおし』って読みますよね。それをですね、ここでは『すきごとまおおし』なぁんて読んだりするんですよ。そう、大体予想が付きますよね。ええ、あっちの方面のことを言っていたりします。


 諸星さんなんですけど、奧さん5人が妊娠されたことはご存じですよね。ええ、王妃様3人とポルテさん、そしてヴェルファイアさんの5人です。妊娠された方、そしてその周辺は大喜びしてくれました。本当に、お祭り騒ぎと言っていいぐらい大騒ぎをしたんですよ。

 その一方でですね、残された奥さんたちの表情が冴えなかったんです。特にアルカナさんとかイセッタさんなんかが暗かったんですよ。どうやら、妊娠に乗り遅れたようなんです。それだけなら、別に問題になることは無いはずなんですよ。遅れて妊娠すれば良いだけのことですからね。

 つまりどう言うことかと言うとですね、諸星さんの夜のお相手、その人数が減ってしまったのが問題なのだそうです。だからセレスさんから、妊娠することにストップが掛かってしまったんですよ。


 それでどうなったか、ですか。奥さんの追加なんかあったりしました。それがですね、闇エルフからアギアさん、ヴァーソさんのお二人。そして翼人からはノアさんが奧さんに加わりました。都合3人の奧さんが追加されたと言うことです。これで16人……中々凄い数になったと思いますよ。

 ええっと、闇エルフのアイゴさんですか? アイゴさんなんですけど、今現在立木さんに迫っていたりします。でもさぁ、どう言う心境の変化なんだろう。アイゴさん、立木さんのことを怖がっていたと思うんだよね。


 ちなみに立木さん。セフィーロさんが滑り込んだのは話したっけ? まだ聞いていない、いつの間にか奧さんに加わっていたのよ。それがですね、セフィーロさん。立木さんのフェティシズムにマッチしたみたいなの。胸かって? 違う違う、立木さんのフェティシズムは巨乳じゃ無いのよ。意外、意外と言っていいのかな、立木さんは『足』が好きなんだって。しかもその情報、慶子さんが教えてくれたんだって。

 いやさぁ、一人例外はあるけど、確かに他の人って全員綺麗な足をしていると思うんだよね。それなのに、今更足が決め手で奧さんを増やすのかなって気がするんですよ。


「シズカよ、ぬしは命が要らないと申すのだな?」


 なぜラズライティシア様がここに? それに、私は何も言っていませんよ。どうして、命が要らないと言う話になるんです?


「ならば問うのだが、足が綺麗では無い一人と言うのは誰のことを言っておるのだ?」


 いえ、特に誰と言うことは無いんですけど……気になります? 気になりますよねぇ……あっ、立木さんめっけ! ほらラズライティシア様、立木さんが呼んでいますよ。


「……命拾いをしたな」


 嫌ですね、私がラズライティシア様の悪口なんか言うはずが無いですよ。ただ私は、嘘が苦手なだけなんです。


 その色恋沙汰の話……もうちょっと生臭いって言った方が良いのかな。男女の関係なんですけどね。やっぱり一番ホットなのは、藍香ちゃんの動向と言うことになります。

 だって藍香ちゃん、立木さん一家と同居することになったのよ。その辺り、慶子さんの強い希望があったのが理由です。いやぁ、流石の立木さんも、慶子さんには弱かったんだなぁって。はい、しっかりと感心させて貰いました。


 だけどさぁ、せっかく一戸建てを借りたんだよね。それなのに、こんなに短期間で引っ越しなんかして良かったのかしら。なに、その、広すぎて掃除が大変と言うのは。庭も広いので、手入れをすることが出来ない。それから、広すぎて結構寒いと言ってくれるんだ。

 私から言わせて貰うと、それが雪国の民家と言う物なのよ。それから夏になったら、風通しが良くて結構涼しかったりするんだな。


 2ヶ月近く生活をして、藍香ちゃん姉弟がギブアップをしてくれました。最初はぐずっていた大悟君も、現実を前にギブアップしたそうです。

 大悟君がぐずった理由。今更だけど、立木さんとの同居が理由になっています。もうね、お姉さんをどうやって監視すれば良いのかってかなり本気で心配なんかしていたんだよ。でも蓋を開けてみたら、立木さんと藍香ちゃんがすれ違っていたりします。まあ二人とも、かなり忙しくなってくれたからね。


 ちなみに、藍香ちゃんには新しいマネージャーさんがつきました。光岡さんの伝手……で良いのかな。大卒2年目の女性……愛想には欠けるけど結構綺麗だったりするんだよね。


「愛想が悪くて申し訳ありません」


 ええっと朝倉さん、聞こえてたの?


「はい、しっかりと。いえ、謝っていただかなくても結構です。一応自覚なんかしていますので。それでも一応プロですから、お仕事モードに切り替えることも出来るんです」


 お仕事モード……お仕事モードって、あれのことかな。そう、あれのことなのね。もしかして朝倉さんって、二重人格だったりする? 違う、あれは演技と言ってくれるんだ。そうか、演技なのかぁ。やっぱり世界が違うのかしら。


「ところで小谷さん、私もこちらに住み込もうと思っているんです。これは、立木さんにお願いをすれば良いんでしょうか?」


 ええっと朝倉さん、こちらに住み込むつもりなの? いいの、ここってもの凄い田舎なんだけど。それに今は良いけど、冬になったら雪に閉ざされてしまうのよ?


「藍香さんがここを離れない以上仕方が無いのかと。それに、転移ゲートで虎ノ門と繋がっていますよね。でしたら、都内に住んでいるのとさほど違いはないと思います」


 虎ノ門と繋がってるゲート……ああ、ポトマックコンサルのオフィスね。確かに、あそこまで徒歩30秒だもんね。都内に住んでるのと違いは無いわ、うん。


「そう言うことです。ところで立木さん……最近お見かけしませんけど。どうされているのですか?」


 忙しく京都や奈良に行ってるわよ。多分だけど、家に居づらいからってのもあると思うけどね。取りあえず、京都や奈良は仕事だからね。


「そうですか、藍香さんを避けられていると言うことなのですね」


 有り体に言えばそう言うこと。藍香ちゃん、ますます綺麗になったしね。


「藍香さんが綺麗になった……ですが、立木家にはエリシオンさん、フローリアンさん、セフィーロさんがおいでですよね? それから、ラズライティシア様もおいでになるのかと」


 それを持ち出されると、確かにそうなんだけどね。でも、誰が一番積極的かと言ったら、間違いなく藍香ちゃんなのよ。

 ところで、どうしてラズライティシア様を追加したの?


「そこは、深く追求しないでください。それはそれとして、藍香さんにも目があると言うことなのですね」


 もしもし、立木さんは避けているんだけど。ええっと、逃げられなくなるのを恐れている。そうか、逃げられなくなる可能性があると言うことか。


「女としての私は、藍香さんの味方なんです。ただマネージャーとしての私は、今の関係を続けて貰いたいと思っています」


 つまり、マネージャーとしての朝倉さんは、藍香ちゃんの思いが叶わない方が良いと思ってるんだ。それって、スキャンダルになることを言ってる?


「作品性が理由です。今の藍香さんは、満たされない思いを希望と言う形で歌にしています。もしも思いが叶って満たされてしまったら、歌の傾向が変わってしまう恐れがあるんです」


 それって、胸が熱くなるような思いのことを言ってる? うん、藍香ちゃんの歌から感じる思いのこと。


「その思いのことを言っています。幸せな家庭で育たれた藍香さんが、ご両親の死でどん底を味わうことになりました。そしてそのどん底から、立木さんが救い上げてくださったんです。そこで藍香さんは、立木さんに恋をされたのだと思います。これで立木さんがせめて30歳若ければ……なんて思ってしまいますね」


 立木さんが30歳若かったら……ねぇ。年齢的にはそうかもしれないけど、今の立木さんとは違うと思うわよ。今の立木さんは、これまで生きてきた経験が作り上げたものだと思うから。


「……仰るとおりなのでしょうね。だとしたら、無い物ねだりになるわけですか。それもまた、藍香さんの歌に生きてくるのでしょうね。ですので、今の関係を続けていただきたいと思っているんです」


 なるほどね。歌手としての藍香ちゃんを考えたら、朝倉さんの言うとおりなんでしょうね。でも、藍香ちゃんはそれで良いのかな?


「相手は、奧さんの居る男性なんですよ。しかも、夫婦仲は良好なんですよね。だとしたら、その思いなんですけど普通は実らない物なんです。普通はですよ。ただ問題は、IMO研究所ではその普通が通用しないことだと思います。大人の関係で逃げていますけど、オルティア様と言う例外が問題になってくるんです」


 オルティアさんね……確かに、彼女以外は全員異世界人なんだよね。しかも実年齢……数百歳とか数千歳だし。オルティアさんに手を出さなかったら、言い訳が立ったのは間違いないと思うわ。


「それもまた、藍香さんの作品に生きてくると思います」


 なるほどねぇ、ところで個人的な話を聞いて良い?


「個人的な話、でしょうか?」


 うん、個人的な話。朝倉さんなんだけど、個人的にお付き合いしている人とか居なかったの? 上里集落にこもって、しかもマネージャーなんかしていたら出会いが限られてくると思うのよ。


「それでしたら、今までなかったと言うのがお答えになります。私が変わっているのかも知れませんが、あまりそう言う気持ちになったことが無いんです。それからお断りしておきますが、女性が趣味と言うこともありませんよ。それからハイエルフの男性は、私にしてみればプロモーション対象でしかありません」


 プロモーション対象って……鴻池さんみたいなことを言ってくれるのね。それって、安全弁として言ってる?


「美しい姿をされているのは確かだと思います。ただ、私にとってはそれだけなんです」


 そうか、それだけと言ってくれるんだ。了解、お仕事頑張ってねと言っておくわ。

 それからだけど、今日は立木さんが帰って来るみたいなの。だからと言うことも無いんだけど、朝倉さんの歓迎会を開くからね。天気も良いから、お庭でパーティーになると思うよ。


「パーティーですか。それは楽しみと言わせていただきます。住まいのお願いは、その時にすれば良いんですね」


 多分だけど、歓迎されると思うわよ。うん、藍香ちゃんの監視役としてね。




 なぁんて会話を小谷さんとしたんですけど、私、色々と嘘なんか吐いていたりします。お前は誰か、ですか。そうですね、改めて自己紹介をさせていただきます。私は朝倉円香、一応大卒2年目の女性だったりします。左目の泣きぼくろがチャーミングポイントの美女……スタイルも見た目も悪くないと思っています。

 なぜIMO研究所に加わったかと言うとですね、敷島藍香さんのマネージャーをするためなんです。ちなみに光岡さんに誘われたからと言うのが理由になっています。


 ちなみに光岡さんとは付き合いが長かったりします。実はですね、高校の頃に光岡さんにお世話になったことがあるんです。はい、アイドルなんかしてたりしたんですよ、まったく売れませんでしたけど。だから藍香さん……彼女はアイドルじゃ無いんですけどね、藍香さんのマネージャーに抜擢されて喜んでいたりするんです。だって彼女、本当に才能に溢れていると思うんです。詩と曲の両方を作れるのは珍しくないんですけど、彼女が歌うと情景が浮かんでくれるんです。まるで魔法のような……IMO研究所だからじゃないですよ。魔法に掛かったように引き込まれてしまうんです。

 それからですね、藍香さんは男性の趣味も良いと思いますよ。つまり、私の吐いた嘘と言うのは男性の趣味のことなんです。



 イケおじが揃っているんですよ、ここって



 はぁはぁ、ちょっと興奮してしまいましたね。ここは少し冷静に、ですね。

 涎をふけ……ですか。だって、目移りしてしまうんですよ。


 ちなみに私の一押しは、ポトマック5のリーダーをされている友池さんですね。もう、ダンディーと言えば良いのか、紳士と言えば良いのか。たまらないって言って良いですか? 他の方、他の方ですか? 勿論最高と言わせていただきます。若い男では、あの深みって出せないと思うんですよ。

 だったら立木さんはどうかと聞いてくれますか。そうですね、悪くはないと思いますよ。ただ見た目で言えば、普通のおじさんなんですよ。その点がちょっとマイナスかなって思っています。それに藍香さんの思い人ですからね、そういった目で見ないことにしているんです。


 それで今夜は、そうですか、私の歓迎会をしてくれるんですね。ただ小谷さん、それって小谷さんがしてくれるわけじゃ無いですよね。はい、IMO研究所の方々の宴会好きは知っていますよ。だって『今日の異世界に行こう!』で、何度もネタとして放送しているぐらいですからね。

 でも、今夜のはもう少し内輪の宴会ですよね。だとしたら、誰が世話をしてくださるんですか? 小谷さんが企画してくれるんですか?



 そこで目をそらさないようにっ!



 ちゃんと慶子さん……失礼ですけど、慶子さんと言うのは? そうですか、立木さんの奥様なのですね。なんです、その菩薩様のような方と言うのは。それからセレスさんの天敵と言うのもよくわからないんですけど。

 その天敵の方に、宴会を押しつけて良いんですか? なるほど、慶子さんから立木さんに指令が飛ぶ訳ですね。つまり、慶子さんを味方に付けておくのが肝要なのだと。小谷さん、貴重な情報ありがとうございます。


 それで今夜の宴会……ガーデンパーティと言え、ですか。そりゃあ、お庭に集まってますけど……失礼しました。アスカさんと立木さんがバーベキューを取り仕切ってくださるのですね。なんです、友池さんたちもバーベキューは得意なのですか。

 あのぉ、どうしてお年寄りの方がアクティブなのでしょう。朽木さん、異論は受け付けませんので宜しくお願いします。


「俺は、司会をやってるんだよっ!」


 大宴会ではないのですから、司会は必要無いと思うんですよ。これって、ホームパーティーですよね。ちょっと参加人数が多くなっているのは忘れるとして。

 それはそうと、友池さんお手伝いすることがありますか? そうですか、焼けた肉を運べば良いんですね。BBQソースが光って、とても美味しそうに見えると思います。


 ちなみにガーデンパーティーの参加者は、立木さん以下朽木さん、光岡さん、白船さん、ジャックさん、グレゴリーさん、シャルロットさん、ポトマックコンサルの5人組、同じくポトマックコンサルの若手5人……小谷さんもいらしたのですね? いえ、別に含むところはありませんよ。

 それから春夏秋冬(フォーシーズンズ)は、お子様なので帰宅しました。そして一番大切なこと、藍香さんご姉弟も参加されています。はい、それ以外の女性は見ないことにしているんです。


 ところで、あの精力的に見えるお年寄りは? そうですか、本山名誉教授さんなんですね。色々と精神的疲労が溜まったので、発散するために京都から来た。学者の皆さんも、大変と言うことですか。いえ、舌なめずりなんかしていませんよ、ええ。

 私が何を飲むか……ですか。私は、そのビールをお願いします。ですが、立木さんにビールサーバーを任せて宜しいのでしょうか? 年寄りは裏方に回るもの……いえいえ、立木さんはまだ現役だと思いますよ。

 それから立木さん、一つお願いがあるのですけど宜しいでしょうか? その、住まいのことなんですけど。そうですか、慶子さんから聞かされておいでなのですね。部屋なら余っているので別に構わない。いえ、そう仰っていただけて幸いです。出来れば、藍香さんの隣の部屋をお願いいたします。では私は、他の方にも挨拶をして参ります。


 大悟さん、杏香さん、初めまして朝倉円香と申します。はい、このたび藍香さんのマネージャーを仰せつかりました。『お姉ちゃんを宜しくお願いします』ですか。精一杯もり立てていきたいと思っているんですよ。

 それはそうと、杏香さんは小学校6年生になったんですよね。アイドルとか興味はありませんか? そう、興味はあると言ってくれるんですね。でしたらですね、私の方から光岡さんに言っておきますけど。そうですか、宜しくお願いしますと言ってくれるんですね。杏香ちゃん可愛いですから、すぐに人気者になれると思いますよ。

 それで大悟さんは? なるほど、学者になることを夢見られているのですね。IMO研究所には素敵な学者さんが揃っていると仰るのですね。もしかして……今お見えになったお二方のことを言っているんですか? アスカさん、オルティアさんも素敵なんですね。ええわかりますよ。皆さん、どこかオーラが違いますからね。それに憧れた……でしたら、勉強を頑張らないといけないと思います。

 ところで大悟さん、もうハイエルフに手を出されたのですか? そうですか、清いお付き合いをしていると仰りますか。だそうですけど……なにさん、そうですか、モコさんと仰るのですね。モコさん、そこの所はどうなっているのですか?


「高校生になるのを待っているんです」


 なるほど、高校生になるまで我慢をされると。中々立派ですねと言って差し上げたいところですね。ただ18歳未満に手を出すと、日本では犯罪になりますからね……長野は大丈夫なのか。だったら、合意があれば16歳になれば大丈夫ですよ。ああ、だから高校生と言うことなんですね。

 それから大悟さん、顔を赤くして可愛らしいと言わせて貰います。ちなみにモコさん、可愛らしい顔をされていますけど、実年齢はヒイヒイヒイおばあさんと言うのをお忘れ無く。余計なことを言うな、いえ、年長者として必要な忠告をして差し上げただけですよ。


 いいですよね、この微妙な空気と言うのは。私思うんですけど、現実って結構残酷だったりするんですよね。だから男性諸氏、ハイエルフとかの年齢差を考えたら、私たちの年齢差なんて誤差のようなものですよ。

 いえ、だからなんだとは言いませんけど。


 それから藍香さん、これから宜しくお願いいたします。嫌ですね、ここで仕事の話なんかしませんよ。取りあえず、今は仕事の話は忘れて楽しむことにしましょう。

 それはそうと、慶子さんを味方に付けてますか? まだ、まだでしたら、早く味方に付けた方が良いですよ。弟さんたちは懐いている……だから逆にやりにくくなったのですか。つい、お母さんと言ってしまいそうになる。これは忠告ですけど、親子になったら壁が高くなってしまいますからね。いえ、なんの忠告とは言いませんけど。

 それから別の忠告ですけど、立木さんのお手伝いをされてはいかがでしょうか。はい、色々な藍香さんを見て貰うのも大切だと思うんです。


 それはそうと、ビールもつまみも美味しいと思います。でも、ちょっと東京で飲むビールと味が違う気が……なんです、白鹿クラフトと言うのですね。つまり、地ビールと言うことですか。美味しいバーベキューをしながら、こうして美味しいビールを飲む。とても贅沢な気持ちになれると思います。

 それから肉は……大谷野豚ってなんです? 大谷村の特産なんですね。そのソーセージとか生ハム……はい、とっても美味しいと思います。牛は……高山から飛騨牛を仕入れているんですね。なにか、もの凄く贅沢をしている気がするんですけど、それって私の気のせいでしょうか?


 それから、そこで炭を熾しているおじさんは? なるほど、知り合いの居酒屋さんなんですね。休みと言ったら拉致された……その割に、嬉しそうに火を熾していますよね? 家族もろとも招待された、異世界に行かせて貰えるから嬉しい。

 なるほど、喜んでおられると言うことですか。それからですね、その美味しそうに焼けてるのは……タラバガニですか。それを頂いても良いですか? はい、ちゃんと食べやすくしてくださるんですね。つかぬ事を伺いますが、お店はどちらでされているのですか? なるほど、川崎なんですね。でしたら、近くに行った時に寄らせていただきます。


「毛蟹もありますけど、持って行かれますか?」


 喜んでと言わせて貰います。冷えてきたからビールから日本酒に切り替えようかな……あれっ、なんか急に暖かくなってきた。


「魔法で温めている。だから心配する必要は無い」


 ええっと、エリシオンさんですよね。エルフの大魔法使いの。初めまして朝倉円香と申します。はい、敷島藍香さんのマネージャーをさせて貰っています。マネージャーとは何をするのか……ですか。そうですね、芸能活動ってわかりますか? そうですか、わからないのですね。藍香さんの仕事がやりやすくなるよう、色々とお手伝いをするお仕事なんです。

 やっぱりよくわからないのですね。まあ、お手伝いだと思っていただければ結構です。それからですね、あのおじさんの焼いてるタラバガニが美味しいですよ。


 さてさて、暖かくなったからビールのお代わりにするかな。立木さん、お代わりをお願いしても良いですか? 種類はどうする、ですか。そうですね、もう少しコクのあるのをお願いします。

 それから一つ質問なんですけど、ここではこんなパーティーをよく開かれるのですか? 第一第二に行けば、毎日似たようなことをしているのですね。あっ、椅子をありがとうございます。


「昔、アイドルをされていたそうですね」


 それって、光岡さんに聞かれました? いえ、別に隠しているつもりは無いんですよ。ただ威張れるほどの実績が無いだけです。泡沫……にもなれなかったのかな? 女の子5人のユニットだったんですけど、最終的には空中分解してしまったんです。

 やり直しをするつもり……流石に、この歳でアイドルはないと思いますよ。いえ、この年齢でもアイドルをしている方もいるんですけどね。ただ、その方たちは実績を積まれた方なんです。この歳でアイドルデビューは流石に厳しいと思うんです。


「いえいえ、朝倉さんはお綺麗……だとアイドル向けじゃないのかな。お綺麗だと思いますよ。それに、歌も中々お上手だと思うんです。そうですね、歌に雰囲気があると思うんです。ですから、アイドルには向いてなかったのかも知れませんね」


 アイドルには向いていなかった……今思うと、確かにそうなのかも知れませんね。アイドルをやっていて……ステージに立っていて、何か違うと思うこともありましたから。それから歌ですけど、藍香さんには敵いませんから。正直、歌には自信が有ったんですよ。でも彼女の歌を聴いて、私程度では駄目と言うのがよくわかったんです。才能って言っていいと思うんです。私には、才能が無かったと思うんですよ。

 だから今は、裏方として藍香さんを支えようかなと思っているんです……って、なんでこんな話をしているんでしょうね。夜、外でお酒を飲んでいるのがいけないのかな。それとも、立木さんが聞いてくれたからかな?


 なんです、心臓に悪いことを言わないようにと言うのは。雰囲気があってとても綺麗だった。だから、胸がドキドキしたと言ってくれるんですか? あのですね、それは藍香さんに言ってあげて欲しいんですよ。身の安全の為それは言わない……ちゃんと藍香さんの魅力は感じてくれているんですね。


 ああっ、なんか気持ちいいなぁ……


 で、気がついたらベッドで寝ていました。はい、知らない天井が目に入ってきたんです。ただですね、誰かが隣で寝ていたと言うことはありませんでした。それが少しだけ残念なんて気がしたりしています。いえ、もしも立木さんだったりしたら後が怖いんですけどね。

 それは良いんですけど、私を脱がしてくれたのは誰なんでしょうね。気にすると怖いので、気にしないことにしておきましょう。


 部屋を出てみたら、どうやらホテルの一室だった……違うのですか、立木さんのお宅なんですか。ホテルみたいと言ってはいけませんか?

 それで下に降りていったら、とっても良い匂いがしてくれました。お味噌汁……で良いのかな。記憶に残っている、小さな頃の朝食と言う感じですね。

 それはそうとして、昨夜はご迷惑をおかけしました。ぺこり


「年若い女の子、しかもあなたのような綺麗な子が酔い潰れるのは感心しませんよ」


 その辺りは、仰るとおりとしか言いようがありません。それでですね、どなたが私を運んでくださったのでしょうか。そうですか、立木さんが運んでくださったのですね。それで私を脱がせてくれたのは……そうですか、慶子さんが脱がせてくれたのですね。いえ、別に残念とか思っていませんので。

 それはそうと、他の方たちはもうお出かけになったのですか?


「大悟君と杏香ちゃんは学校に行きましたよ。主人が学校まで車で送って行きました。他の……かすみちゃんはまだ寝てるのかな。かすみちゃんも、昨夜は酔い潰れてくれましたからね。オルティアさん、アスカさんも朝は遅いし……シアさんたちも朝が遅いんです。藍香ちゃんは、そろそろ起きてくる頃合いですね」


 そうですか、これでも早起きになってしまったんですね。ええ、ちょっと意外と言わせていただきます。はい、お味噌汁とご飯で問題ありません。納豆……はなくても良いかな。卵焼きは大好きです。それからほうれん草のおひたし、温めた豆腐……なにか、旅館の朝食を思い出しますね。


「だったら、何か焼き魚を用意した方が良いのかしら?」


 いえ、そこまでしていただかなくても結構です。遠慮では無くてですね、ご飯を食べ過ぎてしまう恐れがあるからです。なんです、マネージャーは体力勝負と言うのは。間違ってはいませんけど、まだ未婚なので太るのはどうかと思うんです。

 気にするほど太っていない。むしろ痩せてる方……そう言えば、昨夜お世話になったんでしたね。その辺りは、微妙な乙女心と思っていただければ幸いです。それはそうと、ご飯、美味しいですね。


「こちらはお水が良いですからね。後は、ガス釜で炊いてるのも美味しい理由だと思いますよ」


 その、炊きたてのご飯を食べた記憶があまりなくて。だからじゃないですけど、とっても美味しいと思います。なんか、お母さんって気がするぐらいです。


「お母さんですか。別におばあさんでも構わないんですけど。こちらに来て、急に娘が増えてしまいましたよ」


 藍香さんもそのうちの一人なんですか? そうですか、娘の一人と言ってくださるんですね。でも慶子さん、藍香さんが『愛人にして欲しい』と言っているのは知っているんですよね? そうですか、知っているんですね。なんです、その二番煎じと言うのは。


「かすみちゃん。御衣黄さんも同じようなことを言っているんですよ。二人とも若くて美人なのに、どうして主人のようなお年寄りが良いんでしょうね」


 その辺りは、私からはなんとも。でも、年齢はあまり関係ないのかなぁって思ったりするんです。


「あの人も良い年なんですから、もう少し世間体に気を使った方がいいと思うんですよ。ネッ友から、色々と主人の悪口を教えて貰っているんです。鈍感力も大切だと思うんですけど、息子が苦労しないか心配で」


 息子さん……いらしたんですか? なるほど、東京で大手銀行に勤められていると。ハイエルフが怖いので、ここには近寄らないようにしている。その、怖いと言うのはどう言うことですか?


「女性の目つきがが怖い……それで意味はわかりますよね」


 なるほど、その方面で怖いのですか。失礼ですが、ご子息は独身なのでしょうか。ガールフレンドはいる。ただ、結婚の話は聞こえてこないのですね。今時は、そんなものだと諦めているんですか。

 それで……おはようございます。昨夜はご迷惑をおかけしました。


 立木さんが帰ってこられました。でも、どうして車で送って行くんでしょうね。学校までだったら、転移ゲートを使えば簡単ですよね。


「少しでも、普通と言われる生活を送って貰うため、程度のことだと思ってください。どうせ帰りは、村役場から転移ゲートを使いますからね」


 なるほど、それはそうとして良い香りですね。いえ、別に催促をしたわけじゃありませんよ。最近コーヒーを飲むようになったんです。

 それから藍香さんおはようございます。ええ、そろそろ出てくる頃合いだと思っていましたよ。はい、お化粧も綺麗に出来ていると思います。今日はですね、お昼過ぎに東京に移動します。そこで安達さんの事務所で渡米の打ち合わせを行うことになります。予定は1ヶ月ぐらいですね。藍香さんの出演シーンを纏めて撮るそうですよ。後はスタジオで歌を収録する予定です。


 行きたくないと言わないようにっ!


 ほら、立木さんも『完成が楽しみ』と言っていますよ。だからと言って、急にやる気を出されても。明日渡米するわけじゃないのですからね。

 立木さんは……これから、研究所に行かれるのですね。色々と頭の中を整理する……また、何か凄いことをしようとかしていませんか? 一体……おはようございます。皆さんお揃いなんですね。


「うむ、なぜか同じような時間に目が覚めてしまうのだ」

「おばばのくせに起きるのが遅いと思う」

「シオンよ、年齢だけで言えばぬしは2番目であろう?」

「たぶん、アンの方が上。パナメーラも上だと思う」

「いずれにしても、キヨヒコより1桁は上のはずだ」

「おばばは2桁上」


 朝からいきなりこれですか。それからインテグラさんおはようございます。お子さんは順調なんですか?


「そうね、すくすくと育ってくれてるわ」


 そこでお腹を触るところは、妊婦さんに共通した物なのでしょうね。この姿だけを見ていると、アメリカで人間を躍り食いした人とは思えませんね。

 ああっと、沢山人……女性が降りてきた。慶子さん、朝食の準備は大丈夫ですか。宜しければ、お手伝いいたしますけど。はい、一応母に仕込まれましたので大丈夫です。


「じゃあ、お願いしようかしら」


 それから藍香さん、私を睨まないように。別に、点数稼ぎをしているわけじゃありませんからね。それに睨むぐらいだったら、あなたもお手伝いをすれば良いんですよ。




 ええと、敷島大悟です。お久しぶりと言って良いですよね。なんです、お姉ちゃんを期待していたんですか。残念でした、お姉ちゃんは色惚け……ごほん、色々と忙しいんですよ。だからと言うことはありませんけど、妹の杏香を連れてきました……なぜ、そこで親指を立ててくれるんですか?


 以前、大谷村に転居したことはお話ししたと思います。ええ、立派な庭付き一戸建てのことです。どの付くほどの田舎と言うのは忘れるとして、今まで経験したことの無い一戸建てライフを経験することになりました。

 ただですね、すぐに挫折することになりました。それを考えると、お父さん、お母さんは苦労していたのだなと、今更ながらに思い出させて貰いました。もっと親孝行をすれば良かった……『孝行をしたい時には親はなし』でしたか。そのことを、しっかりと思い知らせて貰いました。


 川崎のアパート……お金がないくせに片付いていなかったんですよ。狭いから仕方がないと思っていたんですけど、お姉ちゃん……だけじゃないんですけどね、お姉ちゃんに生活能力が欠けていたのが理由と言うのがよくわかりました。

 まあ、女子大生をしていていきなりですからね。準備時間が無かったのも同情するところだと思いますけど。


 前置きが長くなりましたが、姉弟3人での一戸建てライフ。始めて2ヶ月でギブアップすることになりました。色々と不安……全面的にお姉ちゃんになんですけど、不安があったのですけど立木さんのお世話になることを決めました。はい、ちょうど新しい家……家で良いのかな。なんかホテルって気もするんですけど。立木さんたちが新しい家に引っ越したのをきっかけに、俺たちも新居に引っ越すことになりました。

 聞いた話だと、立木おじさんが渋ったみたいです。まあ、あの姉ちゃんのことを考えると、立木おじさんが渋るのは理解出来ますよね。ええ、俺だって文句を言えないと思っていましたから。でも立木おばさんの一言で、俺たち姉弟の引っ越しが決まりました。立木おじさん、おばさんには弱かったんですね。それって、大勢奧さんが居ることも理由なんですか?


「でも、引っ越しできて良かったよ」


 そうだな杏香、その意見には俺も賛成だよ。だってさ、炊事洗濯お買い物から解放されたんだ。ご近所さん……白船さんとかジャックさん、グレゴリーさんって男の人も増えたしね。休みの時なんか、色々と相手をしてくれるんだよ。


「ただ女の人は、全員個性的すぎると思う」


 そうか、そうなのか。そう言われてみれば……確かに個性的だな。一番常識的なはずの小谷さんだって、持ち芸が冷凍マグロなんだからな。

 後は……オルティアさんとかアスカさん、御衣黄さん。全員格好良いんだけど、なんか雲の上の人って感じがするんだよ……違う、そう言う意味じゃ無いと言ってくれるのか?


「今挙げた全員、女の子らしいことが壊滅しているの。だから今は、ジャックさんとかグレゴリーさんのところの側仕え? 側仕えで良いんだよね。その人たちに、色々と教えて貰ってるの。うん、男爵家の御令嬢だっけ? その人たちは、普通のことを聞いてもわからないから対象外にしてる」


 だったらだな、立木のおばさんを頼れば良いんじゃないのか? そうか、優しくはしてくれる。ただ、話題が微妙に合わないと言ってくれるのか。まあ立木おばさん、杏香を『孫』と言って憚らないからな。おばあちゃんと孫か……話題が合うのも怖い気がするな。


「それでも、高校生ぐらいの話題なら出来るんだよ。でも、私にはわからないことが多すぎるの。だから、側仕えの人たちの方が話がしやすくなってる。それから、おばさんのことは大好きだから」


 俺も、おばさんのことは大好きだぞ。なんかなぁ、もの凄く優しくしてくれるんだよ。おばあちゃんが居たら、こんななのかなぁって思っちゃったよ。それはそうと、俺たちにもおじいさんおばあさんが居たはずだよな?

 ああ、気にしちゃいけないことと言うのはわかってる。おじいさん、おばあさんに頼れたら、あんな暮らしをしなくてもすんだんだからな。ただ、あの苦しみがあったお陰で、今の生活があるのも確かなんだよ。


「それはわかるけど……学校が嫌いになったんだよ。今は……なんか、もの凄く遠慮されてる気がする」


 杏香もか、俺も似たようなことを感じるんだよ。なんか、少しよそよそしいと言えば良いのか。それで、立木おじさんに相談してみたんだよ。そうしたらだな、『クラス全員を招待してみたらどうか?』って言われたんだ。考えて見たら、全員で20人ぐらいしか居ないんだよ。全員招待をしても大したことがないんだよなぁ。


「私も招待して良いのかな?」


 良いんじゃないのか。ここって、大勢人が集まるのが日常だし。そうだな、もっと打ち解ける努力も必要なんだよな。


「お兄ちゃんに一つ忠告。ハイエルフの『女性』を巻き込まないように」


 なぜ、そこで女性を強調してくれる? そうか、モコさんのことを言ってくれるんだな。仕方が無いじゃ無いか、モコさんってもの凄く可愛いんだぞ。春陽ちゃんと比べて……いや、そう言うのって比べるものじゃないと思うぞ。


 改めて思ったことなんだけど、ここって本当に凄い所なんだ。何のこと……いや、いる人たちが本当に凄いと思うんだ。ほら、時々ご近所さんとガーデンパーティーなんかするんだよ。その時に集まる人たち、元外交官の人たちらしいんだけど。なんかさぁ、理想の男性と言って良いのかな。雑誌とかに出てくるような格好いい人が多いんだよ。

 あと、たまぁに顔を出すアメリカ人……アスカさんのお父さん。そうか、あの熊のような人って、アスカさんのお父さんなんだ。その人とか見てると、なんか世界が広がったような気がするんだ。俺に、『ダラスに遊びに来い』なんて誘ってくれるんだ。ちなみに俺、そこまで英語は話せないからな。ラズライティシア様が、翻訳魔法を掛けてくれたんだよ。なんか、この魔法があれば英語の勉強が要らなくなった気がするぞ。


「お姉ちゃんのマネージャーの人、どう思う?」


 朝倉さんのことか。うん、とっても綺麗な人だと思う。でもあの人、アイドルデビューしたことがあるんだってな。ただ、全く売れなかったらしいんだ。

 朝倉さんが来てくれて、少し安心できたかなぁって思うんだ。だって、あの人がいたら、お姉ちゃんの暴走を止めることが出来ると思うんだ。


「そうかなぁ、裏で背中を押しそうな気がするよ。だって円香さん、友池おじさんたちを見る目が危ないもの」


 そうなのか? 危ない目をして友池おじさんたちを見ているのか? もしかして、姉ちゃんと似たような趣味をしている? それって、もの凄く危ないよな。


 それはそうと、姉ちゃんが危ないことを除けば、引っ越しして良かったと思ってる。やっぱりさぁ、帰ってきたときに人がいるのって嬉しいんだよ。それに、みんな優しくしてくれるしな。第一とか第二に遊びに行けば、ハイエルフとか翼人とか、面白い人たちが揃っているんだよ。


「魔王様たちも優しくしてくれるよ。あと、オークさんとかデモンさんたちも、面白くて好き」


 そう言えば、杏香はハイエルフのお姉さんたちとダンスとかしてるよな。あれって、教えて貰っているのか?


「うん、優しく教えてくれるよ。ただ、流石について行くのは難しいと思う。私、ブキじゃないし、身体だって固くないんだよ。でも、あの人たちの動きって……はっきり言って無理。もう、生き物として違ってると思う」


 生き物として違ってる……俺の目から見ても、あの動きは異常だと思うぞ。だから生き物として違ってると言うのは、確かにそうなんだろうな。しかも男の人も、もの凄く格好良いんだよな。


「それは良いんだけど、お兄ちゃん、ちゃんと勉強をしてる?」


 妹よ。それを言ってくれるな。ああ、勉強をしているぞ。しているのは確かなんだがな。立木おじさんからも、しっかり見聞を広めて勉強しなさいって言われてるしな。だけど、周りの人たち、頭が良すぎるんだよ。後は、教えるのが下手と言うのもあるのかな。オルティアさん、アスカさん、御衣黄さん、小谷さん……熱が入ってくると言ってることが理解出来なくなる。


「陽佳姉さんとか頼った方が良いと思う。後は、立木おばさん、立木おじさんが教え上手だと思うよ」


 陽佳姉さん、最近アルバイトが忙しいみたいなんだよ。それからおじさんおばさんには、もう教えて貰ってる。特におばさん、なんか教え方がうまいんだよな。やっぱり、学校の先生をしていたのが理由なんだろうか。


「おばさん、学習塾……個別指導だっけ? そこで働いていたこともあるんだって」


 そうか、おばさんも色々と苦労をしていたんだ。だからかな、おじさんがおばさんに頭が上がらないのって。


「でもおじさん、沢山の女の人に手を出してるよね?」


 だから、余計に頭が上がらないんじゃないのか? ああ、それが普通じゃないのは俺にだってわかるんだぞ。ただ、男として尊敬するんだがな……ごめん杏香、そんな目で俺のことを見ないで欲しいんだ。


「ちょっと軽蔑した。だからお兄ちゃん、お兄ちゃん相手に防犯ブザーを使わせないでね」


 俺相手に防犯ブザーって……こんな田舎で、防犯ブザーが役に立つのか?


「立木おじさんが特別製だって言ってくれたの」


 立木おじさんが特別製って……なんか怖いな、それ。


「大したことは無いって言ってたよ。IMO研究所で売り出す前の試作品を、私用に改造してくれたんだって。使い方なんだけど、紐を引っ張っても良いし私が逃げたいって願っても良いんだって。これが動くと、私の周囲1mぐらいなのかな。その範囲にあるものが、IMO研究所に転移するらしいの」


 転移した先で、不審者が袋叩きに遭うってことか。やっぱり怖いって言って良いか、それ? 防犯ブザーとは違うものに思えるんだがな。これがIMO研究所標準と言っていた。本当なのか、それって。



ログインの方法が変わって、昨夜は更新できませんでした。認証コードが送られてこないし、送られてきた認証コードを入れてもダメだったりしたんですよ。なので、昨日の分をこの時間に更新したりしています。

今日の分は、また時間を変えて更新します。

ちなみに登場人物……と言うかお店ですけど、参考にしたところはありますよ。最近行けてないのですが、とっても美味しいお店です。ただまあ、ちょっとお高いのですけどね(それでも、良心的な値付けをされています)

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