居酒屋談義とか
村の特産は異世界です
・居酒屋談義とか
セレスとも話をしていたんだけど、行こうと思ってていけてなかった場所があるんだ。そう、陽佳ちゃんがアルバイトをしている居酒屋さん。立木さんとオルティアさんとの出会いの場でもあるお店のこと。そこに陽佳ちゃんを冷やかしに行こうと思ったんだけどね……
なんで立木さんが行列に並んでいるんです。しかも一緒にいるのがラズライティシア様って……なんです、陽佳ちゃん以外に、エリシオンさんもアルバイトで入っていると言うのは。もしもし、アイゴさんまでアルバイトで入っているんですか? あそこって、そんなに広いお店でしたっけ? 後ろの行列って、もしかして彼女たち目当てと言うことなの?
「世の中、そんなものなんですよ」
そんなもので片付けて良いことですか? そうですか、気にしてもしょうがないと言うのですね。しかし4時から飲むのかぁ……集落にいれば珍しくは無いんですけどね。こうして町中で昼のみをするのは、なんか悪い大人になった気分がするんです。
なんです、狙って悪いことが出来るから大人と言うのは。いえね、否定はしませんよ、否定は。
「非日常を楽しむのも大人と言うことです」
非日常と言ってくれますか。IMO研究所にいると、これが日常に思えてしまうのは気のせいですか? そうですか、気のせいにしておくのが吉と言ってくれるのですね。はい、そう言うことにしておきましょう。
「お飲み物はなんになさいますか?」
陽佳ちゃん、板に付いていると言って良いかな? 始めて1ヶ月以上経過したから、仕事にも慣れたと言ってくれるんだね。
じゃあ、なんにしようかな……立木さん、何かお勧めはありますか?
「私は、ハート島のビールから始めるのがルーチンになっていますね」
そうですか、でしたら俺もそのルーチンに従うことにします。セレスはどうする? そうか、最初は俺に合わせてくれるんだな。だったら陽佳ちゃん、ハート島のビールを4つお願いするよ。
「それでキモ焼きとお刺身の盛り合わせを持ってくれば良いのね?」
「おでんは、別に頼みますからね」
それもルーチンなんですか。ほかのメニューは、そうですか、壁に貼ってある紙から選べば良いんですね。初めてくるお店だから、何を頼めが良いのかわからなくてワクワクしますね。
それでおでんを選ぶ……俺はですね、おでんと言えば玉子とこんにゃくなんですよ。それからどうしようかな……飛竜頭ってなんですか? がんもどき……揚げ物なんですね。じゃあそれもお願いします。それでセレスは?
「私は大根としょうが天とお豆腐をお願いします」
大根って……大人だね。それで立木さんは?
「大根、焼き豆腐、それからタケノコですかね」
「われは、キヨヒコと同じ物を頼む。それから、玉子も追加してくれ」
これで、全員の注文は終わったわけですね。それから立木さん、どこに電話をしているんですか?
「藤原教授に電話をしています。ここで落ち合うのは無理ですから、もう少し商店街を近鉄奈良駅に向かったところにある居酒屋さんで待ち合わせをしようかなと」
つまりなんです。居酒屋のはしごをしようと言うのですね。いいですね、悪い大人になった気分がしますよ。それはそうと、乾杯といきますか?
「何に乾杯しますか?」
GWのお仕事ご苦労さんと言うのはどうですか? いや、本当に大変だったと思いますよ。
「陽佳ちゃんたちが仕事をしていますからね。ここは、悪い大人の夜遊びと言うのはどうです? それから、乾杯は一度で無ければいけないことはありませんからね」
なるほど、だったら一度目はGWご苦労様と言うことで。そう言えば、引っ越しご苦労様と言うのがありましたね。
取りあえず……1回目の乾杯をっ!
かんぱぁあい!
いやあ、明るいうちに飲むビールって、やっぱり美味しいですよね。それでこちらがおでん……そう言えば、集落でおでんって食べていませんね。ところで立木さん、静岡おでん、ご存じですよね?
「勿論知っていますよ。それどころか、わざわざおでんのために静岡まで遊びに行ったこともあるぐらいです」
やっぱりですか。それでこそ立木さんと言わせて貰います。
「黒はんぺんなんて、ほかでは食べることがありませんからね。味が濃いめなので、お酒には合うと思うんですよ」
立木さぁん、そんなことだから成人病のデパートになるんですよ。なぁんて、無粋なことを言わせて貰います。でもおでん、美味しいですよね。
と言うことなので陽佳ちゃん、日本酒……どれがお勧めですか?
「ティアは、風の森を気に入ったようですよ」
そうですか、だったら風の森を。そう言えばMHKの谷川さん。風の森の時だけ、お代わりをしていましたね。なるほど、これが立木さんとオルティアさんの馴れ初めのお酒ね。それから立木さん、異論は認めないので悪しからず。しっかりと手を出されていますよね。
いやぁ、なんか楽しいなぁ。いっつもやり込められてるから、こうして反撃できると気分が良いんですよ。
「諸星さん。ほかのお客さんもいるんですから、あまり羽目を外さないでくださいね」
陽佳ちゃん、それは野暮……ごめんなさい。そこで殺気を飛ばさないでくれるかな。うん、ちょっとボリュームを落とすからさ。
それはそうと、セレスは大人しいんだな。
「ラズライティシア様も大人しくされていますよ。それは良いのですけど、こうしてのんびりとお酒を楽しむ……集落にいると、意外に出来ていないことなんです」
そうか、そう言われると集落の時はいつも大宴会だったな。だったら、これからこう言う機会を作ることにするかな。と言うことなので立木さん、次は川崎のお店ですか?
「早速催促してくださいましたか。そうですね、この時期は……何がいいのかな。まあマスターに見繕って貰うことにしますよ」
よぉし、これで次の居酒屋探訪が決まったな。それで川崎の居酒屋と言うと、朽木君と武見君と出会ったんですよね。ああ、あの時は御衣黄さんと一緒だったわけですか。だとしたら、今度はどなたを……すみませんラズライティシア様。別に、ラズライティシア様をダメと言っているつもりはないのですよ。
「かすみを呼ぶことを反対はしないぞ。後はそうだな、セフィーロでも誘ってやるか。あやつも、うまいものをあまり食べたことが無いはずだからな」
だったら俺は……ルーテシアも誘ってやるかな。エルフ尽くし……なんか、豪勢で良いですね。と言うことで、善童鬼をお願いします。
「後、ポテトサラダと……諸星さんに串カツを」
串カツ、串カツですか。それって、『二度漬け禁止』って奴のことですか?
「ソースは別に出ますから、別に二度漬け禁止と言うことは無いのですけどね。まあ、関西地方で好んで食べられているものと言うのは確かだと思いますよ」
とんかつじゃ無くて串を刺しているのがポイントと言うことですね。なんです、串揚げになると具材が沢山選べるんですか? それも美味しそうに聞こえますね。
「だったら、本山でも誘って大阪で飲みますか。ええ、スポンサー様を接待しろと言っておきますよ」
いや、本山先生って忙しいんですよね? 金策に駆けずり回るよりはずっとマシ。それに、本山先生も色々と溜まっているはずと言ってくださいますか。ええ、反対はしませんよ。そのでぃーぷな世界と言うのも味わってみたいんです。
「だとしたら、上品じゃない方が良さそうですね。だったら新世界辺りが目的に合うのか……」
その辺り、全くわからないのでお任せしますとしか言いようがありませんです、はい。
それでですね、ちょっと難しい話、良いですか?
「悪酔いしない話であれば、ですね」
いえいえ、政治的な話をするつもりはありませんよ。酔っ払ってそんな話をしたら、一瞬で悪酔いしてしまいますからね。いえね、立木さん、いつぐらいにセレスの正体に気づいていたんですか?
「いつ……と言われても困りますね。何しろ、初めから違和感は持っていましたからね。はっきりと理解したのは、そうですね、燕温泉辺りでしょうか」
燕温泉って、立木さんがクロアと温泉で青姦した……クロアが登場したときのことですよね。なるほど、あの時だったんですか。
「クロアさんのことを、最初はセレスさんだと思いましたからね。空気と言えば良いんでしょうね。発している空気がとても似ていたんですよ」
つまり、セレスだと思って手を出したのだと?
「強制力を使われたと言っておきます。普通の人間の私では、上位神の強制力に抗うことは出来ないんですよ」
普通はそうなんでしょうね。まあ、クロアとセレスは別人だからとやかく言っても仕方が無いんですけど。
「立木様、本当に強制力に抗うことが出来ないのですか?」
なんだセレス、立木さんは『変わっていても』普通の人間なんだぞ。以前だけど、俺が強制力で心臓の治療をしたぐらいなんだ。
「そうですか。強制力が有効なんですね」
良いことを聞きましたって……あのなセレス、なんか悪い顔をしていると言うのは言っちゃいけないことか? なんだ、その、『一途な女の子の味方』と言うのは。いやな、そう言ったことは双方合意の元の方がいいと思うんだよ……良いじゃ無くて、双方合意の元じゃないと駄目だからな。
なんだ、その『ちょっと歯止めをなくすだけ』と言うのは。ちなみに、どっちの歯止めのことを言っているんだ? 藍香ちゃん……まだ理性的と言ってくれるのだな。うん、却下と言っておこうか。
大体2時間ほどお酒を飲んで、河岸を変えることになりました。ここから先は、藤原先生も交えての2次会と言うことになるんだ。場所は……スーパーの2階にあるお店。なんか、下の看板だけど、あれって似顔絵? そうか似顔絵なんだね。
広さ的には、こっちの方がスペースに余裕があるといって良いのかな。うん、女将さん、似顔絵にそっくりの顔をしているよ。それでこちらは、なるほどこちらも奈良のお酒が揃っているんですね。じゃあ最初は春鹿をお願いします。それから……菜っ葉と薄揚げの炊いたのですか。中々美味しそうに思えますね。
それで藤原先生は? いきなり日本酒、みむろ杉……ほほう、大神神社近くの酒蔵なんですか。流石は日本酒発祥の地、色々と銘酒が揃っているんですね。
取りあえず乾杯。文化交流会館の順調な滑り出しに乾杯と言うことですね。では、
かんぱぁあい!
いやいや、藤原先生には本当にお世話になっていると思っているんですよ。いえ、奈良を選んだのは立木さんですから。そうですか、観光客が増えているんですね。でも、文化交流会館……さほどキャパシティが無かったと思うんですよ。
なるほど、それだけ注目を集めたと言うことですか。奈良に来れば、エリシオンさんに会える。最近はダークエルフ……失礼、彼女たちは『闇エルフ』って自分たちのことを言っているんです。ですから、闇エルフと言ってあげてください。闇エルフを英訳するとダークエルフ……いえ、『ダークエルフ』はそれ自体で固有名詞なんですよ。
別にこだわりがある訳じゃ無いんですよ
それはそうとして、闇エルフも評判になっているんですね。商店街をぶらついているのが良いと言ってくれますか。
「それでこそ、文化の出会う町の面目躍如と言うことです。あとはですね、居酒屋でアルバイトしているのも大きいですね」
その辺りは、陽佳ちゃんのファインプレーと言うことで。元々は、立木さんにドッキリを仕掛けるためだったようですよ。
「そのドッキリなんですけど。また、新しい世界と繋がったと伺っています。一度ですね、フィールドワークに伺ってみたいのですが、宜しいでしょうか?」
これからの国ですね。あそこはなぁ、本当に色々な物が壊滅しているんですよ。ですので、食べるものとかもかなり苦労すると思いますよ。そうですか、それでこそフィールドワークを行う理由になると言ってくださるのですね。ええ、でしたら案内人を付けることにしましょうかね。
ところで藤原先生、闇エルフなんてどう思います? いえね、ハイエルフでも構いませんよ。勿論、翼人もオッケーです。
家庭不和を起こしたくない。立木さんをご覧なさい。エルフコレクターなんて言われているぐらいですよ。後はですね、女神コレクターとも言われているんです。それでも家庭崩壊もしないで、夫婦仲睦まじく過ごしているんですよ。だから藤原先生も、その気になれば大丈夫だと言わせて貰います。
「IMO研究所の非常識に付き合わせないで欲しいんですよ」
そうですか、IMO研究所の非常識と言ってくれますか。ところでこれは男同士の話なんですけど、彼女たちは魅力的だと思いませんか? 迫られたりしたら、本当に断ることが出来ますか?
いえ、皆まで言わなくても結構です。藤原先生のお気持ちはちゃんと理解出来ましたからね。どうです、ブーランジェリー王国の風習を取り入れてみると言うのは。ええ、複数女性との関係を言っていますよ。研究対象の文化に飛び込んでこそ、理解が進むものではありませんか?
「文化の比較は、軸足をしっかりしないと駄目なものなんですよ。ですので、そちらの習慣は諸星さんにお任せします」
そうですか……だったら仕方が無いですね。それで、俺に質問って、なんです?
「4つの国から王女様……今は王妃様ですね。王妃様を迎えられておいでですよね。それぞれの世界の違いを感じることが出来ましたか?」
それぞれの世界の違いって……女性としてって意味じゃありませんよね。文化的な違い、で、良いんですか? 違いねぇ……セレス、何か感じたか?
「細かな所を見れば、違いはあると思いますよ。ただ、皆さんの行動原理はそっくりだと思います」
行動原理……って? そうか、俺を手に入れるために色々と考えたと言うことか。それはなんだ、強い者の庇護下に入ることを言っているんだな。そういう意味では、全員同じ行動をしてくれてるな。
後は……そうだな、みんな美人と言うのが不思議な気もするぞ。王女様って言っても、見た目に不自由……ラズライティシア様、そこで俺を攻撃しないでください。別に、ラズライティシア様のことを言ってるわけじゃ無いんですからね。
みんな個性はありますけど、美人と言って良い見た目をしていると思いますよ。痩せ過ぎのステリナ王女だって、造形自体はしっかり美人だと思いますしね。せっせと肉付きを良くしようとしているので、すぐに見た目は極上になってくれるんじゃ無いですか?
「そのお話を伺うと、何かに仕組まれたような……と思えてしまいますね」
と藤原先生が言っているのだが、セレス、仕組んだ覚えはあるのか? そうか、特に仕組んだつもりは無いと言ってくれるんだな。それに、仕組んだって言われてもなぁ。俺と出会ったのは偶然だと思うんだよ。
「それって、本当に偶然なのでしょうか?」
疑いだしたらきりがないと思うのだが、俺は偶然だと思っているぞ。何かを仕組むためだったら、一体何を仕組んでいることになるんだ? そのことに、全く想像が付かないんだよ。
それはそうと立木さん、ラズライティシア様とイチャイチャしないでください。一応ここは人前なんですからね。いえ、悪いとは言いませんけどね。それはそうと、その魚の焼いたのはいつの間に注文されたんですか? そうですか、随分前に注文していたと言うのですね。美味しそうですね、それ。
それから味噌の付いたのは、生麩の田楽。それもおいしそうと言っちゃいけませんか? だったら注文すれば良い。仰るとーりですねぇ、はい。
それで藤原先生。文化交流会館は、確か仮住まいだったと思います。それで、本館はどこに作られる予定なんですか? なんです、奈良公園の中……良いんですか、そんなところに作っちゃったりして。
「アクセスを考えると、あそこが一番良いんですよ。具体的には、東大寺の表参道の反対側辺りですね。そこに、地下2階、地上2階の建物を作ることになりました」
「ちなみに、IMO研究所から寄付なんかしたりします。展示関係は地下と1階で、2階は研修センターと言う名の宿泊施設だったりします」
いつの間にと言っても良いですか。そうですか、言っても良いけど、計画書は俺の手元にあるはずなんですね。ええ、全く読んでいませんでした。ええっと、口頭でも報告している。全く覚えがないんですけど……いえ、深く突っ込むと俺が傷つくので辞めておきます。
それで、2階の研修センターのターゲットは? なるほど、闇エルフとかハイエルフとかの活動拠点にするのですね。ええ、確保したマンションじゃ手狭と言うのは確かですからね。それで竣工は、なるほど1年後が目処なんですね。問題は、掘ったときに遺跡が出ないか……遺跡が出ると何が起こるんですか?
「もれなく、調査と言うのが付いてくるんです。そして調査が終わるまで、工事着手が出来ないんですよ」
ええっと、だったら場所を変えた方が良くありませんか? ほら、商店街の中に、ちょくちょくシャッターが降りっぱの所がありましたよね。そういった所を改装して文化センターにすると言うのは?
「いっそのこと、奈良町にすると言うのも一つの手段ではあるんですよね。ええ、奈良町家を利用するのもいいと思うんです。ただですねぇ、知事と市長が張り切っているみたいなんですよ」
その辺りどうなんです?
「立木さんの仰るとおりなんですよ。もう、立派な入れ物を作るんだって……舞い上がっていると言って良いと思いますよ」
そうですか、降って湧いた幸運と言ってくれるのですね。なんです、その名誉県民とか名誉市民とか言うのは。
「諸星さんに授与しようと言う話も出ているんです。奈良の発展に尽力してくださった……そのお礼と言うより、知事、市長の点数稼ぎですね。その意味で言ったら、うちの大学から名誉博士号を送るとも言っていましたよ」
ええっと、ですね。それって、立木さんの方が良くありませんか? なんです、その自分は下っ端と言うのは。この話なんですけど、全部立木さんが纏めてくれましたよね? それで下っ端と言ってくれますか?
「諸星所長の下で動いているんです。従って、下っ端と言うのは間違っていませんよ」
ぺーぺーの社員じゃないんですよ。流石に副所長を下っ端と言っちゃダメでしょう。
そんなことより……おやっ、陽佳ちゃんたち登場。お店の方は良かったのかな?
「アルバイトの引き継ぎが来たんです。教育大の男の子たちが遅番で入ってくれてるんです」
そうか、俺たちが理由じゃ無いんだな。それで、陽佳ちゃんたちのお腹の具合は? なるほど、まだ食べていないのか。まあ、まだ7時だと思えばおかしくは無いのだな。
それで陽佳ちゃんたちは、何を食べるのかな?
「サラダと煮卵、肉豆腐とピザとだし巻き玉子、かな。後は、喉が渇いたからビールで……で良いんだよね?」
「ヨーカに任せる」
「私は、何を食べても美味しいですから」
そうか、なんか急に場が華やかになった気がするぞ。それからラズライティシア様、いちいち俺を攻撃しないでください。当てこすっているわけじゃ無くて、間違いなく場が賑やかになりましたよね?
「それまでが、大人の雰囲気だったですからね」
ですよね、立木さん。だから、どうして俺を攻撃するんですか。立木さんだって、同じことを言っていると思うんだがな。ええ、俺には全くダメージはありませんけど。
じゃあ、取りあえず乾杯と言うことで。うん、今回はお仕事お疲れ様と言うことにしておこう。
それで陽佳ちゃんに質問だけど、エリシオンさんとアイゴさん、ちゃんとアルバイトは出来てるかな?
「意外にシオンさんがブキ……って言って良いかな?」
「それは、お店が狭いのがいけない。後は、お客さんが嫌らしい目で見るのも良くない」
「まあね、シオンさんは美人でスタイルも良いから。それに、意外に警戒心が欠けてるのよね。その点、アイゴさんはしっかり警戒しているんだよ」
なるほど、それで、そうか、身についた習慣と言ってくれるのだな。エリシオンさんと違って弱いので、ちょっとした油断が命取りになると言ってくれるんだ。
「そもそも、この数百年、普通に人と接したことが無かった」
数百年もって……嘘だよね?
「殺し合いをしていた。だから、何一つとして嘘を言っていない。普通に人と触れあいをしたのは……もう記憶にないぐらい昔だと思う。もう少し正確に言うと、人とふれあったことはある。ただ、油断をすると一服盛られることになる。事実、何度も襲撃された」
ああっ、余計なことを聞いてごめんなさい。
それでアイゴさん、奈良に来てみてどう思った?
「集落と比べて、圧倒的に暖かいと思いました。食べ物は……集落の方が豪華と言う気もします。ただ、こちらの方が色々と刺激が多いと思います。商店街、で、良いんですよね。目新しい物ばかりでした。それから立木様、かんざしを作っても良いでしょうか?」
なぜ、かんざしを? それはそうと、その辺りはどうなんですか?
「別に構わないのですが……なぜ、かんざしが出てきたんですか?」
「陽佳さんと一緒にテレビを見たからです。そのドラマの中で、かんざしを暗殺に使うシーンが出てきました。アクセサリー、で良いのですよね。そのアクセサリーが武器になるのが気に入ったんです」
かんざしを使った暗殺……って? もしかして、必殺シリーズとか? そうか、必殺シリーズなんだね。それって、大学生の女の子が見るような番組なのかな?
「でもカスミ姉さん、高床健さんとか鶴田浩一さんとかが好きみたいですよ」
御衣黄さんって……ふけ専? どっちが卵でどっちが鶏なんだろう……と言うのは良いけど。そもそも、その情報って必要かなって気もするんだよ。
ああ、人の趣味に口を挟んじゃいけないんだよな。
「かんざしを悪いとは言いません。ただかんざしはニーズが少ないので、かんざし『も』と言うことにしてください。それよりも、女性向け……じゃなくて良いのかな。大きなお友達に受けそうな物を作ってくれませんかね」
そうそう、やっぱり大きなお友達ってマーケットが大きいんだよね。お子様向け? あちらもマーケットが大きいのは認めるよ。でも、購買単価が低いからね。一品物だと売りにくいと思うんだ。
「それなんだけど、デザインを春夏秋冬にお願いして良いかな?」
なんでフォーシーズンズ? そうか、若い女の子の好みを聞こうと言うのだね。うん、了解。と言うことで、立木さんお願いします。
「すでに、話を通してありますよ。まあ、のんびりと待っていてくださいと言う所ですね」
「りょーかい。だってさ、アイゴさん」
「ありがとうございます。それで立木様、私はいつ夜伽をすれば宜しいのでしょうか?」
ええっと、アイゴさんが立木さんに? いつの間にって聞いて良いよな。立木さん、ますますエルフコレクターに磨きが掛かってきましたね。
「いつの間にも何もありませんよ。まったく……陽佳ちゃん、ちゃんと常識を指導してくれたのですよね?」
「指導しようとした……と言うより、色々と言い聞かせたんだよ。でもね、シオンさんとの違いはって聞かれちゃったのよ。うん、シオンさんを例外にするのなら、自分も例外にして良いはずって言われたの。ごめんお父さん、私には無理だったわ」
「なぜ、一番偉い諸星さんの所に行かないんでしょうね。セレスさんだって、大いに奨励していると思うんですよ」
なんで、そこで俺が出てきます? 最初に会ったときは、確かに身体で奉仕と言う話はでましたよ。ただ、それからは出ていなかったと思うんです。
それはそうとして、そこでどうしてセレスの名前が出るんです?
「5人も妊娠して、戦力不足になったからと言うのがお答えになります。ですので、闇エルフの方も仲間に加えたいと思っているんです」
その戦力不足って……なに?
「妻として、夫を満足させて差し上げられないのは問題だと思っているんです。ただ私一人では無理なので、仲間を増やす必要があると言うことです」
数で挑むって……なんか嫌って言って良いか? 言っても良いけど、事実は変わらないと言ってくれるんだ。
だったらさぁ、藍『却下です』って被せてくれたな。
「私は、一途な女性の味方と言ったはずです。我が君の場合は、『一途』の定義があてはまりません」
そこまれ言われなくちゃいけないことか? そうか、複数の女性を妻にした時点で『一途』は破綻していると言うのだな。ああ、これ以上触れると立ち直れそうに無いから言わないことにするよ。
「アイゴさんとは言いませんけど、闇エルフから2、3人仲間に加わってはいただけませんか?」
「セレスさん、始祖竜には声を掛けていますか? 後は、増えた翼人の方とか。ヴェルファイアさんが妊娠したので、彼女たちもその気になるのではありませんか? アイゴ『無理です』って被せてくれましたか。仕方が無い、武見君を差し出すことにするか」
ええっと、そんなことをして良いのかって、聞いても良い? すでにハイエルフに手を出している。朽木君と同じにするのなら、闇エルフに手を出しても良いはずだ。なんかさぁ、もの凄い屁理屈に聞こえるのは気のせい?
「屁理屈でも何でも押し通す……」
「武見様のところには、別の者を派遣いたします」
だってさ、立木さん。今更一人増えたところで大差はないと思うんだ。うん、エリシオンさんとかセフィーロさんに手を出した時点で言い訳は効かないと思うんだよ。
「陽佳ちゃんに軽蔑されたくないんですけどね……」
「大丈夫よお父さん。お母さんを敵に回さない限り、私はお父さんの味方だから」
「どう、解釈した物ですかねぇ……」
これだけ困った立木さんを見るのは初めてかな。うん、なんか楽しいお酒に思えてきたよ。それからラズライティシア様、エリシオンさん、ただ聞いているだけなんですか?
「聞いているだけか言われてもだなぁ」
「私も救われた一人。そしてキヨヒコを愛している一人」
普通はですね、嫉妬とか取り分とか……そうですか、愛されているのがわかるので嫉妬を感じたことはないと言ってくれるんですね。はい、ご馳走様と言わせて貰います。
「私も言いたいことがあるんですよ。そのですね、エリシオン様に散々惚気を聞かされたんです。陽佳さんもそうですけど、被害者その2と言っていいと思うんですよ」
「惚気では無い、私の言っているのは単なる事実」
「エリシオン様の中ではそうなのでしょうね。それは置いておくのですけど、諸星様とは評判が正反対なんです。どう言うことかと言うとですね、立木様はとても優しく愛してくださると言うことです。それを、これでもかと言うほど聞かされてしまったんです。立木様、陽佳様から色々と言われたのですけど、エリシオン様のお話が決め手になっているんですよ。そう言うことなので、いつ夜伽をすれば宜しいですか?」
エリシオンさんの惚気の直撃を受けた……なにか、それを理由にしている気がするんだがな。それは良いのだけど、もしかして俺って評判が悪い? なんだその、数で当たらないといけないと言うのは。それが毎晩続くから、人数を集めないと身体が持たないと言うのは。それからセレス、どうして俺から目をそらしてくれるんだ?
「私は、コーメー様を愛しています。天に誓って……天って誰かと言うのは取りあえず忘れてください。天に誓って、嘘偽りの無い気持ちです。ただですね、私にだって限界と言うものがあるんです。それは、ルーテシアさんだって同じと言わせて貰います」
お、俺はだな、奥さんたちをちゃんと満足させようと……そうか、そこにすれ違いがあったと言うことなのか。だったらだな。もう少し控えた方が良いんだよな?
「ご主人様に我慢を強いるのは妻として失格だと思っているんです」
「ですので、アギア、ヴァーソを送り込むことを考えています。それでご容赦願えないでしょうか?」
なんか、人身御供を差し出すように聞こえるんだけど。そこまでは言っていない。ただ、似たようなところがあると言ってくれるのだね。集落の代表に女を差し出すのは、比較的自分たちの常識に合っている。守って貰っている以上、別に不思議じゃ無いと言ってくれるのだね。
なあ、そこに俺の意思は……セレス、どうして身を乗り出してくれるんだ?
「どうしてと言われましても……今日も散々説明をしていますよね?」
それはそうなのだが……立木さん、どうして出ていこうとするんですか?
「陽佳ちゃんの教育に悪い……これ以上耳年増にするのは問題だと思ったからです。ですので、お店を変えようかなと。ええ、藤原先生を接待するんですよ」
で、でしたら、アイゴさんも回収していってくださいよ。このままだと、俺の評判が、ですね。ああ奧さん、騒いで申し訳ありません。なんです、異世界人のバイトを雇いたいと言うのは。いえ、希望者が殺到すると思うんですけど。どんな女性が良いですか?
そうですか、食器を壊さない子が良いんですね。了解しました……あれっ、立木さんたちがいなくなっている。もしかして転移をしたっ!
「先ほど、ドアを開けて出て行かれましたよ」
そう、そうか、俺が気づいていなかっただけなのか。それからアイゴさん、2人程度で抑えて貰えるかな? うん、今更残っていないとは思うけど、俺にも世間体と言うのがあるんだよ。
お前は誰、と聞いてくれますか。それなんですけど、この耳と肌の色を見てわかりませんか? そうですか、種族では無く私自身のことを聞いてくれているのですね。それは失礼しましたと謝罪させていただきます。
それで誰なのかと改めて問うてくださいますか。では名乗らせていただきます。はい、闇エルフのサブリーダーをしているアギアと申します。エルフのくせに胸が大きい……ええっとですね、私たちは『闇エルフ』であって『ハイエルフ』では無いんです。ですので、別の種族の特徴を持ちだしていただきたくないと思います。
なにか、最近似たようなやりとりをした記憶がある。そう言われましても、私には身に覚えがないんですよ。
それはそうと、どうして出てきたと聞いてくださるのですね。それなんですけど、リーダーのアイゴ、そうです、あのアイゴからなんですけど、諸星様の夜伽をするようにと申しつけられたんです。はい、私とヴァーソの2人にです。
はい、とても名誉なことだと思います。だって諸星様は、この集落のリーダーをされている方なんです。しかも、神に等しき力をお持ちなんです。ですので、普通はもの凄く名誉なことのはずなんです。
でもですよ、本当に名誉なことなら、なぜアイゴが私たちに譲ってくれるのでしょう。だってアイゴ、あちら……おかしの世界では、諸星様にご奉仕する気が満々だったんですよ。それなのに、なぜナンバー2の私に夜伽を命ずるのでしょう。アイゴ、確か相手はいなかったはずなんです。
なんです、立木様に言い寄っていると言うのは。立木様って、あのご老人ですよね。なんか、得体の知れないご老人だと思ったんです。はい、ラズライティシア様とかエリシオン様、セフィーロ様の3エルフと、竜人のリーダーであるインテグラ様を娶られているのは存じています。だからこそ、逆に得体が知れないと思いませんか? しかもなんです、女神様を2柱も娶っていると言うのは。それって、本当に人間の所業なんでしょうか?
でもですよ、立木様は諸星様の部下に当たる方ですよね。そりゃあ、立木様が色々と取り仕切ってくださっているのは確かなんですけどね。でもですよ、リーダーが諸星様を避けるのって有り得ませんよね。だからですけど、理由なんて物を調べてみたんです。調べてみたんですよ……はい、耳の長いよしみでルーテシア様にお話を伺ってみたんです。
「そうか、君がコウメイの奧さんに加わると言うのだね」
いえ、その前の段階なんですけど。なぜかリーダーのアイゴが、立木様の方に行ってしまったんです。どこにその理由があるのかなぁ、なんて疑問に感じたんですよ。
「アイゴがかい。そんなことより、君がどう思うかの方が重要だと思うんだよ」
名誉なこととは思いますよ。ただですね、アイゴが逃げた理由が気になっただけなんです。
「世の中には、相性と言うものがあるのだよ。後はだね、ひょんなきっかけと言うのもあったりするんだ。だから、細かなことを気にするのはお勧めしないよ。それからだけど、君一人なのかな?」
なぜ私一人と聞いてくださるのです。いえ、普通は一人だと思うんですよ。なんです、翼人、竜人は2人と言うのは。ハイエルフも2人……だから闇エルフも2人いてもおかしくないと言うのですね。
「別に、2人に限る必要は無いよ。そうだね、コウメイなら3人でも4人でも問題ないと思うんだよ。5人ほど妊娠しているからね、5人加わってくれても問題はないと思うんだ。闇エルフの立場を高めるためにも、大勢送り込んでくるのも悪い話じゃないと思うんだよ」
なぜ大判振る舞い? いえ、普通疑問に感じますよね。それから、発情している翼人もいたと思うんです。ヴェルファイア様が妊娠したのでしたら、翼人から補充があってもおかしくありませんよね。
そうですか、翼人にも声を掛けられているんですね。あちらから申し入れがあるのでは無く、声を掛けられているのだと。
一つ良いですか。もしかして、なにか切実な理由とかありませんか? あっ、目が泳いでる。ルーテシア様、何か隠しておられませんか? 別に隠しているつもりは無い。私たち闇エルフのことを考えて声を掛けてくださっている。
怪しいなぁ
いえ、私たちって裏の世界で生きてきたじゃ無いですか。ですので、危機察知能力に長けていないと生き延びられないんです。その培ってきた勘がですね、何かあると騒ぎ立ててくれるんですよ。何か良くないことがある……それを知ったアイゴが、何も知らない私たちにババを押しつけた。
ルーテシア様の反応を見て、その勘が確信に変わりつつあったりするんです。もしかして、諸星様の性癖……性癖で良いのかな。ものすごく危ないとか言うことはありませんよね?
「それなら、ゼッタイシン様に誓って無いと言ってあげるよ」
ゼッタイシン様に誓って……ですか。それって、セレス様に誓ってと言うことですよね。途端に胡散臭くなるのは私の気のせいでしょうか? 気のせいにしておいて欲しい……やっぱり気のせいじゃ無いんですねっ!
だったらですね、ヴァーソとエヴォーラに順送りすることにって、なぜ私の手首を捕まれるんですか? いえ、そんなに力を込めなくてもいいと思うんですよ。 なぜ、ここにセンティア様が? アルカナ様、イセッタ様、笑顔が怖いんですけど。ああっ、ヴァーソもこっちに来たのね……
「ナニヲオソレルヒツヨウガアルノデスカ」
ええっとヴァーソ、なんかふいんき、あれっ、変換できない。雰囲気がおかしくない? なぜ隣でエリザベス様が笑ってるのかしら?
「ベツニオカシクアリマセンヨ」
いやいや、絶対におかしいって。なんかさぁ、話し方が『棒』になってるんだけど? エリザベス様、気のせいと言ってくださるんですね。つまり、気のせいじゃ無いと言うことですか。
それからですね、全力で魔法障壁なんか作っていたりします。はい、強制力、でしたか。強制力対策と言う奴です。エリザベス様の能力が強制力って知っているんですよ。これもですね、身を守るために身につけた技能だったりするんですよ。
「でしたら、私が命じて差し上げましょう」
なぜセレス様まで……セレス様の命令って、この世界において最優先される命令じゃ無いですか。どうして、そこまでして私を巻き込もうとするんですっ! なんです、余計な詮索をするのが悪いと言うのは。自分の身を守るためのことなんですよ。気にしない方がおかしいと思いませんか?
「ですけど、私たち全員危ない目に遭っていませんよ。ほら、皆さん普通に見えますよね?」
それなんですけど、皆さんから切実なものを感じるのは気のせいでしょうか。それから、そんな力があるのならなぜアイゴに使わないんですか?
「つまり、問答無用と言うことですね」
どうして、皆さん事情を説明してくださらないんですか。余計に怖くなったと言ってはいけませんか……
コンバンガタノシミダナァ
「なに、ちょっと過ぎるだけのことなんだよ」
カワイガッテクダサルノデスネ。デシタラ、ナニモイウコトハアリマセン。
「ねえセレス、流石に可哀想な気がしてきたよ」
「大丈夫です。これはただの冗談ですから」
はっ、私は今何をしていたんです。もしかして、強制力とかを働かせていたのですか。ひょっとして、もう一晩経ってしまったとか。
違う、さほど時間は経っていないと言うのですね。本当ですか……いえ、身体に違和感が無いので本当なのでしょうね。
「実は、耳寄りな対策を教えて頂いたんです」
耳寄りな対策、ですか。でも、簡単にできるような対策で、あの方に効果があるのでしょうか?
「立木様のアドバイス……と言われたら信用する気になりませんか?
立木様って、あの立木様ですよね。どうして殿方が女性のことを……違う、男性心理のことを教えてくださったと言うのですね。それで、どのような対策をしようと言うのですか?
「その前に、ラズライティシア様が行った翼人への教育をご存じですか?」
一応は……と申し上げておきます。なんです、それと似たようなことをすると言うのは。なるほど、要は優越感と征服感を感じさせれば良いと言うのですね。そのための演技……我慢しなければ良いと仰ってくださるわけですか。
確かに、諸星様は単純そう……ごほんごほん。今のは忘れて頂けると幸いです。なるほど、効果的な対策に思えてきました。
いえ、だからと言って妻の一人になることを認めたわけじゃありませんよ。なんです、秘密を知った以上逃がすわけにはいかないと言うのは。今度こそ、本気で強制力を働かせる……ごめんなさいと言っても駄目なんでしょうね。
ええ、ここまで来たら覚悟を決めましたよ。命までは取られることは無い……それを信じてついていくことにいたします。
自棄になっているように見える。どうして自棄にならないと思えるんですか? 今更だと思うんですよ。
ハーレムは必然です。まだ、戦力不足だったりします。
ちなみに今回のお店、とっても良いところですよ。




