一般公開を始めて
村の特産は異世界です
・一般公開を始めて
お前は誰、と聞いてくれますか。それなんですけど、この耳と肌の色を見てわかりませんか? そうですか、種族では無く私自身のことを聞いてくれているのですね。それは失礼しましたと謝罪させていただきます。
それで誰なのかと改めて問うてくださいますか。では名乗らせていただきます。はい、闇エルフのリーダーをしているアイゴと申します。エルフのくせに胸が大きい……ええっとですね、私たちは『闇エルフ』であって『ハイエルフ』では無いんです。ですので、別の種族の特徴を持ちだしていただきたくないと思います。
それで私がなぜ出てきたのかと言うことなのですが。本当は、表に出るつもりは無かったんですよ。何しろ私たちは、裏の世界に生きてきたんです。ですので、表舞台に立つ資格などないと思っていました。ですがコウメイ様に仕えることで、こうして表舞台に立つことが許されたわけです。
なんです、コウメイ様の妻にならないのかと言うのですか? それはですね、畏れ多いと言わせていただきます。それにですね、私たちは一度コウメイ様の御命を狙ったこともあるのです。ですので、ご寵愛を願うことは不敬を通り越して大罪だと思っているんですよ。
それで本音は? と聞いてくださるのですね。
なんか怖いんですよ、あそこ
いえ、コウメイ様はとても優しくしてくださいますよ。ただですね、セレス様とかルーテシア様。はい、とてもお綺麗なお二人なんですけど。そのお二人が、なにか懇願するような視線を私に向けてくれるんです。事情、事情ですか。それらしいのは聞いているんです。ええ、王妃様3人が妊娠された……そう言えば、ポルテさんも妊娠されましたね。なんです、ヴェルファイアさんも妊娠した……やけに妊娠が連続したのですね。
それは良いのですけど、多くの奥様が妊娠されたことが理由なんです。
わかりにくい。そうですか、わかりにくいのですね。でしたらはっきり言わせて貰うことにします。
身体が持たないと思います
ええ、コウメイ様は優しいんですよ。これを否定するつもりは全くありません。それにこの集落に来る前は、ご奉仕するつもりでいたのも確かなんです。でもですよ、ご満足頂くためには数で挑むしか無いって、どう言うことですか? しかも毎晩毎晩って……コウメイ様って、本当に人間なのでしょうか? それを聞かされたらですね、妻の一人に加えていただくのは躊躇しますよね。いえ、私たち闇エルフにとって、名誉なことと言うのは間違ってはいません。そのために、この身を差し出す……と言うのであれば、喜んで犠牲になる覚悟は出来ているんです。いえ、出来ていたんです。でもルーテシア様の表情を見て、怖じ気づいたと言えば良いのか。
それにですね、この集落での闇エルフの扱いは思っていた以上に良いんですよ。と言うより、夢のようと言って良いぐらいだと思うんです。
でしたら、これ以上を望むのは贅沢だと思いませんか? それにガーラが、朽木様のご寵愛を受けることに成功したんです。それを考えたら、これ以上無理をする必要はないと思うんですよ。いえ、武見様は素敵だと思います。ですので、武見様のご寵愛を受けることは計画に入っています。だったら立木様はどうか……ですか? コウメイ様とは別の意味で恐ろしい方だと思います。ですので、私たちには少しばかり荷が重いと思っているんです。ええ、避けているとお答えさせていただきます。
ちなみにですね、私たちの序列……序列で良いのですよね。集落の中で一番下……除くオークとデモンなんですけど。一番下と言うのが現実となっています。ただこの序列なんですけど、翼人が勝手に付け始めたものだそうです。彼女たち、自分たちが一番上のつもりで序列を作ったんですよ。でもその序列、トップにいるのが竜人の方たちなんです。
どう言うことかと言うとですね、翼人たちの思惑が外れたと言うことです。もうね、ざまぁって思ってしまいました。
ええっと、話が回り道をしてしまいましたね。どう言うことかと言うと、私たちは今の境遇に満足をしていると言うことです。もうね、命の心配や迫害の心配をすることなく、毎日屋根の下でお風呂に入って美味しいものを食べられるんですよ。どうして、これ以上を望む必要があるのでしょうか?
だからですけど、私たちにとっての課題は『追い出されないようにする』ことなんです。いえ、役立たずと言われて追い出されることが無いのもわかっているんですけどね。ただですね、ただ飯を食らい続けられるほど、私たちも図々しくは無いと言うことです。ですので、名前の長い国、でしたか。諜報とか拉致とか、もうですね、活躍の場がきたと思いましたよ。
ただですね。集落の方針は、落ち着いた生活……ってなんですか? まあ、そんな疑問もあるんですけどね。とにかく平穏な生活でしたら、外敵への備えが必要になると思うんです。そのために必要なのは情報……ですよね。でしたら、私たちの出番って思ったんですよ。思ったんですけど、こちらの世界では役に立たないのが現実でした。
それならそれで、別の道を探す必要がありますよね。それでですね、立木様に相談などしてみたんです。ええ、相談するときは怖かったんですよ。でも立木様、名前の長い国のときには、私たちを信用して仕事をさせてくださったんです。だから怖いと言う気持ちを抑え込んで……だって、私たちの常識から外れたことばかりしてくださる方なんです。と言うのは良いのですけど、仕事をしたいと相談をさせて頂いたんです。
「手先は器用ですか?」
と質問されてしまいました。ええっと、自慢ではないのですけど、私たちは結構手先が器用だったりします。なんです、どこかに似た設定があると言うのは。ひょっとして、あのアニメのことを言っていたりしますか? 嫌ですね、私たちは物作りの匠とかじゃありませんよ。ただ生業として、手先が不器用だと生きていけなかっただけのことなんです。だって暗器でしたか、個人個人に合った物じゃ無いといけないんです。誰かが作ってくれると言うのは、はっきり言って甘えなんですよ。
ですので、答えは『当然です』と言うことになります。その結果……その結果ですよね。はい、天職を得たと思っていますよ。つまりですね、魔道具の製作……術式除くと言うのを仕事として貰ったんです。いえ、私たちだって魔法は使えますよ。ですので、魔道具に術式を書き込むことだって無理と言うつもりは無いんです。
「それは、将来の課題と言うことで考えてください」
なぁんて立木さんに言われてしまったんですよ。だったら、大人しく受け入れるしかないと思いませんか? 自己主張は必要ですけど、しすぎるのは命取りと言うのはこれまでの経験で学んでいたりするんです。
「その代わりと言ってはなんなのですが、アクセサリーを作るつもりはありませんか?」
アクセサリーって、なんですか? はい、御貴族様が衣装に付けている宝石類、のような物ですか。それを、私たちに作れと言うのですね? 違う、命令では無く聞いているだけ。無理をさせるつもりは無いと仰ってくださるのですね。
ただですね、私たちにとって立木様は仕えるべきご主人様の一人なんです。ですので、私たちの気持ちよりも立木様のお気持ちの方が大切なんです。
「まず、その考え方から変えることにしましょうか。とは言え、急に言っても難しいのでしょうね。ではアイゴさん、あなたたちにはIMO研究所のオリジナルグッズを作って貰いましょう。材料は銀辺りが良いのでしょうね。材料を支給しますので、自由に……と言っても難しいわけですか。でしたら、ブローチとかペンダント、ネックレスに付けるトップでよかったかな。それを作ってみてください。情報は……大谷村から指導できそうな人を連れて来ることにします」
ところでそのアクセサリーですけど、魔道具にすると言うことはないのですよね。それから、武器として使用するとか……そうですか、ただ単に飾りのためだけなんですね。はい、確かに承りました。
「後は、そうですね。市場調査に連れて行くことにしましょうか。こちらは、陽佳ちゃんを頼ることにしますよ。ええ、あなたたちには交代で奈良に行って貰うことにしましょう」
私たちを、村の外に出して頂けるのですか? しかも、陽佳様……勇者様のところに行かせてくださるのだと。立木様、私たち何をすればご恩に報いることが出来るのでしょうか? 夜伽でしたら、好みに合う者を連れていって頂いて結構です。
「あ~っ、流石に体力的に問題があるんですよ。ですので、謹んで遠慮……違いますね、余計なことを考えなくても良いと言って差し上げます」
体力的な問題……でしょうか。ですが、『絶倫』と言う風の噂が聞こえてきているのです。それは諸星様のこと、いえ、諸星様が人間離れしているのは承知しています。人間離れをしていないので、『絶倫』と言わせていただきました。
ラズライティシア様、エリシオン様、セフィーロ様が不満を溜めておられません……申し訳ありません。私たちのような不浄な者が身に合わないことを口にしてしまいました。
「それもまた、極端な話なのですが。でしたら朽木君、彼はガーラさんを抱いています。彼と私の違いが、年齢的なものと思ってくれないのですか?」
いえ、思えないのですが。ですが、立木様が気にされる必要はありません。私たちは、裏の世界に生きてきた者です。日の当たる場所は相応しく……立木様。無理をされる必要は、いえ、お気に召すままとお答えいたします。
テレビを見ていると、連日異世界の一般公開のことが出ています。もうね、今まで溜めていたものが吹き出したと言えば良いのか、もの凄い取り上げ方になっているんです。その余波がですね、交流センターにも及んでいるんです。だからですね、藤原先生が目の回るような忙しさだと零されていました。ええ、例のおでん屋さんでくだを巻かれたんです。
だからですね、GWには集落に戻らずお手伝いなんかしています。だって県庁内の仮設センター、お客さんがひっきりなしに訪れてくれるんです。もうね、猫の手も借りたいぐらいなんですよ。魔王様のところから、オークさんでも借りてこようかしら。
そんなことを考えていたら、なぜかお父さんが登場。それは良いんだけど、お父さん……ええっと、誰さんだっけ。そう、アイゴさんね、アイゴさんにも手を出したの? もう、諸星さんのことを論っていられないと思うんだけど?
酷い誤解……誤解と言ってくれるんだ。だけどアイゴさん、お父さんの胸に顔を埋めているよ。しかも、うっとりとした顔なんかしてくれてるし。お父さんも腰を抱いているんだから、苦しい言い訳って理解してるよね?
「転移するのに必要だったからなんですけどね。まあ、勘違いを利用させて貰いましたけど」
そう、勘違い……アイゴさんの勘違いを利用したと言ってくれるんだ。ふ~ん、勘違いねぇ。ねえアイゴさん、その点はどうなの? そう、そのつもりだったのね。ほら、アイゴさんもそう言ってるよ。
「陽佳ちゃんにお願いがあって連れてきたんですけどね。ただですね、少しばかり……かなり私たちとは違う常識を彼女が持っていたと言うことです」
お父さん。言い訳はそれだけ? うん、ちょっと軽蔑なんかしているんだ。そう、まだ誤解と言ってくれるんだね。お母さんに言いつけて……もあまり意味が無いのか。お姉さんに言いつけた方が効果的かな?
「言いつけても構いませんけど、その前に話を聞いて貰えませんか? 陽佳ちゃんに、彼女を預けたいんです。具体的にお願いしたいのは、常識の矯正……と言ってもわかりにくいか。そうですね、こちらの常識を身につけさせたいんですよ」
ふ~ん、でもさ、だったらいい加減腰に回した手を離したらどうなの? アイゴさん、息が上がり始めているんけど。
そう、それで……ごめん、前言撤回。アイゴさんを支えてあげて。ねえお父さん、一体何をしてくれたのかな?
「誓って何もしていませんよ。アイゴさん、そのソファーに座っていてください」
そこでお姫様抱っこは良くないと思うよ。ほら、アイゴさんがすっかりその気になってるし。ねえお父さん、それってわざと?
「繰り返しますけど、誓ってわざとじゃありません」
そう、まだ違うと言い張ってくれるのね。それで、どう言い訳をしてくれるのかな? あっ、藤原先生っ!
「立木さん、こんなところにいたんですね……どうしてお父様が? いえ、そんなことは良いんですけど。新しい要員を連れてきてくださったのですね。もう、忙しくて手が回らなかったんですよ」
感謝しますと言って藤原先生、アイゴさんを引っ張っていってくれました。アイゴさん、しっかりと歩いていたよね。だとしたら、腰が抜けたのって……演技?
「きっとそうなんでしょうね……あれはあれで、翼人のフェロモンに匹敵する攻撃だと思いますよ」
でも、お父さんには効かないんだよね。それはそれで、変って言ってあげて良いかな。
それで、私にアイゴさんを預けるって言ったよね。事情を教えて貰っていいかな?
「きっかけは、闇エルフに仕事を与えることだったんですよ。具体的には、魔道具製作工程の一部を担って貰うんですけどね。ただそれだけだと人手が余るので、IMO研究所グッズを作って貰うことを考えたんです」
グッズ作りを仕事にする……疑問なんだけど、そもそも仕事を与える必要があるの? なるほど、ただ飯ぐらいは肩身が狭いからなんだ。だとしたら、私もただ飯ぐらいなんだけど?
「私の娘……大学卒業前の娘が何を言っているんです?」
まだ扶養家族と言ってくれるんだ。それで、グッズを作ることと、さっきの話にどんな関係が?
「グッズと言っても、彼女たちにはグッズの概念が理解出来ないんです。だから、勉強のためにあなたに闇エルフを預けようと思ったんです。交流センターの手伝いもさせられるので、一石二鳥と考えたんですよ」
確かに、闇エルフってまだ公開されていなかった……こともないのか。確か、紅白でダンスバトルなんかしていたわね。でも、ハイエルフに比べれば、認知度が低いのも確かだと思う。うん、交流センターに来て貰うのは、悪くないアイディアだと思うわよ。
「そのことをアイゴさんに話をしたら、なぜか『どうすればご恩に報いることができるのか』と言い出してくれたんです。しかも、夜伽まで持ち出してくれました」
う~ん、その辺の話の飛躍が理解出来ないんだけど。お父さん、別に途中を飛ばしていないんだよね。そうか、飛ばしていないんだ。それで、夜伽をさせることにしたのね?
「当然断りましたよ。そうしたらですね、不浄な自分たちがなどと言い出してくれたんです。仕方が無いので、強制的にここに連れてきたと言うことです」
やっぱり、私には理解出来ないよ。説明を端折っていないんだよね。なるほど、だから常識の矯正って話になるのね。それは理解したけど、あれってかなり演技が入っていると思うのよ。そう、お父さんも演技を感じていたのね。なんて言うのかな、獲物を見つけたって感じかな。うん、セフィーロさんからも似たものを感じたから。
でも、アイゴさんって諸星さんを狙っていたんじゃ無かったっけ? なんで、お父さんに乗り換えたんだろう?
「それは本人に聞いてみないとわからないのですが……諸星さんねぇ」
あっ、なんか心当たりがあるように見えるよ。そう、心当たりらしきものがあるんだ。それで? そう、娘に話すには差し障りがあると言ってくれるのね。なんかさぁ、想像が付くと言っていいかな。うん、これでも色々と耳年増にはなったんだ。
「成長を喜ぶべきか、はたまたその方向を憂うべきか……なかなか難しいところがありますね」
この歳の女の子は、こんなものだと思ってくれれば良いよ。それで、グッズなんだけどどんなものを考えているの?
「手作りアクセサリーを考えています。ただそれだけだと売りが弱いので、制作者の生写真を付けて販売しようかなと思っているんです」
お父さん……あくどいって言って良い? それって、間違いなく大きなお友達を狙ってるよね。そうか、やっぱりそうなんだ。可愛らしいアクセサリーだけだったら、余所との差別化は難しいのはわかるけど。
デザインとかお値段とか……後は、誰が売り子になるのかも大きいと思うよ。後は、販売方法も考えないといけないしね。
「随分、しっかりしたコメントが出来るようになりましたね。だったら、陽佳ちゃんに任せた方が良いのかな?」
もしもし、いきなりなんてことを言ってくれるの? 私にグッズを任せる……正気の沙汰だとは思えないんだけど?
「アクセサリーのターゲットを考えただけですよ。こんなもの、おじいさんが考えちゃいけないんですよ。なんだったら、春夏秋冬のメンバーも巻き込んで良いですよ」
なんかさぁ、思いつきで言ってない? 違う、ノリで言っている。それって、思いつきとどこが違うのかな? グッズ販売なんて、熟慮しても碌なことはないって……お金が絡むんだからさぁ、もう少し慎重になっても良いと思うのよ。
「普通はそう、と言ってあげますよ。ただですね、IMO研究所の財政は、遊びを許容できるぐらいに潤沢なんです。極端な話、4月の売り上げだけで年間経費を払ってお釣りが来るんですよ」
だからって、無駄遣いは……無駄遣いじゃ無くて投資と言ってくれるの。後は、異世界人の職業開発……ええ、屁理屈を付け合ったらお父さんに敵いませんよ。
それで、私は何をすれば良いの? そう、アイゴさんを連れ回せば良いのね。そうね、東向き商店街だったらアクセサリーショップもあったと思うし。ええっと、居酒屋さんでのアルバイトも可。大阪まで遊びに行っても良いって言ってくれるんだ。だったら、お友達に紹介して良いの? 構わない、どんどん紹介して欲しいとまで言ってくれるんだ。
「なので、陽佳ちゃんに家族カードを渡しておきますね」
なのでが繋がっていないと言うのは言っても無駄? そう、何かをするには先立つものが必要と言ってくれるのね。これでも、一応アルバイト代も入ってるんだけどな。友達と一緒に旅行に行っても良い。その時に、差し支えがなければアイゴさんたちを連れて行って欲しいと言うのね。お金が沢山いるのは間違っていないんだけどさぁ……学生のうちに、そんな贅沢をしても良いのかしら?
必要なこと。これも仕事のうちと言ってくれるんだ。異世界人を社会に適合させる……藤原先生にも話を通しておくって……なんか、だんだん大げさになってきた気がするけど、それって私の気のせいじゃないよね。
「気のせいと言うことにしておいてください。それから、私はこれで帰ることにします。アイゴさんを回収しておいてくださいね」
連れて帰らないの? それをすると、泥沼に嵌まることになる。捕食されたくないので、危なくなる前に帰ると言ってくれるんだ。
了解。ただ、アイゴさんとはちゃんと話をした方が良いと思うよ。ちゃんと話をしても、通じるとは思えないと言ってくれるのね。敢えて誤解をして迫ってくると言うんだ。そうね、さっきの見てたらその可能性も高そうね……違うか、間違いなくそうしてきそうな気がするわ。だったら了解、こっちでなんとかしてみるわ。
それで、お父さんはこの後どうするの? 逃げる……そう、逃げるのね。結構意外と言って良いかな?
はいはぁい、謎の美人秘書……飽きた。別のバージョンを用意しろと言ってくれるのね。だったら将来の総理大臣、謎の美女Xです。
大きく出たと言ってくれますか。だって、別バージョンを要求してくれたでしょ。だから、総理大臣ってのを持ち出してあげたんだけど?
なんです、今の菅谷総理の立場を羨ましく思えるか、ですか? 散々IMO研究所に振り回されているのを見て、本当にやりたいのかと言ってくれますか。でもですよ、私が総理大臣になる頃には、諸星さんはまだしも、立木さんは現役じゃないと思うんです。故人になっている可能性の方が高いぐらいですからね。だったら、まだましかなぁって思っていたりするんです、はい。
本当にそうか?
なんで、疑問を持ってくれるんです? ラズライティシア様とかシオンさんが、立木さんの老化を止める可能性があるって……いやいや、立木さんが受け入れないでしょ。受け入れないよね。受け入れないで、お願い。
い、いや、さっさと死ねなんて思っていませんよ。ただ、妖怪とか怪物とかになって欲しくないだけです。世代交代って、必要だと思うんですよ。
それはそうと、魔王城並びにブーランジェリー王国の一般公開は、取りあえず大成功と言って良いと思います。まだ公開3日目が終わった所なんですけど、今のところお客さんからは高評価を得ているんです。やっぱりさ、テレビで見るのと実物は印象が変わるんだよね。特に魔王城、多くの命を最近まで奪ってきた場所なんだよ。だからかな、かなりのオブジェを偽物で置き換えても、やっぱり空気が違っているのよね。
そして魔王城からブーランジェリー王国に移動。そこでワイバーンのお出迎えを受けたら、嫌でも異世界と言うのを思い知らされるのよ。オプションでワイバーンツアーと言うのもあるんだけど、もうね、迫力満点と言っていいと思うんだ。
そしてエルフの森に作られたシアター。そこで美形のハイエルフたちの公演が、一日3回行われています。元々の民族的な踊りとか、こっちの世界から取り入れた激しいダンスが公開されてるのよ。公演のパンフレットなんか、飛ぶように売れているのよね。薄いので2千円、特装版で5千円なんだけど、すぐに増刷しないと在庫切れになりそうな勢いなの。それからお断りしておきますが、無料版の案内もあったりするのよ。ただこの無料版、種類が10種類ぐらいあるんだよね。その10種類セットに、千円の値付けがされていました。もうね、鴻池さんやり過ぎって言ってあげるわ。
「ですが、無料版は案内のWebページに電子データを掲載していますよ」
そうですか、だから拝金主義じゃ無いと言ってくれるんですね。それって、間違いなく立木さん対策だよね。
「立木さん対策と言うより、集客用と言う方が正しいですね。パンフレットがあることで、見に行きたいと言う気持ちを盛り上げると言えば良いのか。まあ、そんなところですよ」
まあ、そう言うことにしておきましょうかね。
それはそれで、後はグルメ……あまり美味しくない屋台がブーランジェリー王国で展開されていたりします。ただね、あまり美味しくない方がリアルで良いって評判になってるのよ。だから、こっちから食材を持ち込む真似はしませんでした。
それに加えて、魔獣料理と言うのも提供されています。一緒に魔獣の剥製が展示されているのは、ちょうど撮影スポットになっていたりします。
そう言えば、観光地巡りとかあったりするのよね。ちなみに乗り物は、乗り心地のあまり良くない馬車。ただ、追加料金を払えば豪華な馬車もあったりするのよ。こっちの乗り心地は、こちらの技術を持ち込んで別物になっていたりします。
お城、お城ね。ヨーロッパのお城は『過去』なんだけど。王国のお城は『現在』なんだよね。だから、見た感じ受ける印象はかなり違ったものになっているの。魔法の灯りとかもあるから、見せるだけでも結構評判が良かったりするんだ。
それで大成功とも言える一般公開なんだけどね、裏では色々と分析なんかしています。当然お客さんの評価は分析対象になっていますよ。何が受けて何が受けなかったか。受けた出し物と受けなかった出し物の分析。そしてどう改善していったら良いのかの検討。鴻池さんのところで、チームを作って分析に励んでくれています。
アトラクションの評価とは別に、受け入れ人員の評価も行っています。現時点で、受け入れ人員は1日で1万人強なんだよね。これをもっと拡大できないのかが検討課題に挙がっているわけ。これはね、収益拡大と言う意味に加え、殆ど当たらないと言われる入場券にも絡んでくるのよ。
ちなみに、現時点で3ヶ月先まで抽選が終わっているんです。その抽選なんですけど、最高倍率がなんと1千倍……ちょっとやそっとキャパシティを増やしても、根本的な解決にはならないってこと。だからと言って、キャパシティを増やさないと言う訳にもいかないのよ。
そのために必要なのは、まずアトラクションの処理能力の分析。今の魔王城とブーランジェリー王国だと、増やせて倍と言うのが分析結果になっているわ。これだけでも、日本でトップクラスの集客になるんだけどね。
これにおかしの国、名前の長い国、これからの国を加えると、単純計算で5倍になるのよ。実際にはゲート設置箇所とかの問題もあるから、5万~8万程度と言うのが鴻池さんのところでの見積もり。年間最大3千万人弱って……日本最大のテーマパークになっちゃうのよ。流石にさぁ、色々と無理があるって話になっているわね。
今の倍、1日平均2万人だとしても、年間7百万人を超えてくれるのよ。この集客を超えられるのって……千葉と大阪にあるテーマパークだけなの。もうね、凄すぎるとしか言い様がないのよね。
ただ凄すぎるだけですませられない事情と言うのが沢山あるのよね。1日平均2万人、ピークで3万人を集客したとするじゃない。その人たちが、どうやって大谷村まで来るのかと言うことが問題になるわけ。公共交通機関? 近くを走ってる大糸線なんだけど、2両編成の列車が忘れたような間隔で走っているのよ。そう言うこともあって、周辺自治体が共同してJRと話を始めていたりするわ。南大谷までの直通特急増発って話も出てたりするのよ。
それから、大谷村役場に沢山の建築申請が出ていたりします。人が集まるんだから、お金が動くことになるのよね。だから、集まってくる人向けの商売と言うのが始まるわけです。例えばJRだけど、駅改良って話が出てきています。ただね、駅ビルを作るってのはやり過ぎだと思うのよ。言っちゃ悪いけど、1日2万人って首都圏の郊外駅のレベルでしか無いんだからね。
それ以外でも、宿泊客増を見込んだ宿泊施設……リゾートホテルね。その開発申請とかも出ています。ほかには、ショッピングモール的な話もあったりするんですよ。飲食店? 数えるのが嫌になるぐらい申請が出てるわね。もうね、バブルって言っていいと思うのよ。後が怖いと思うのは間違ってる?
今のは村の変化を言っているけど、それとは別にIMO研究所の住居環境が改善なんかされたりしました。その辺り、雪が溶けたのが大きいんだけどね。当初予定していた、第二近くの空き地には、第2のクローンが出現しました。なぜ出現したなんて言い方をするとですね、諸星さんが魔法で作ってくれたからと言うことです。
ここに第二と同じ建物を
なんて命令をしたらあら不思議。本当に同じ建物が建ってくれたのよ。ただね、第二って部屋数が13しか無いんだよね。そこで問題となったのは、誰が入居するのかと言うこと。最初は諸星さんって話があったんだけど、現時点で奧さんが13人いるのよね。その中に王妃様が5人いるってことは、その3倍はお付きの人がいることになるわけ。つまり、お付きの人を含めて28人関係者がいるのよ。諸星さんが一人で寝ることが無くても、18室は必要になるわけ。つまり、部屋数が足りないことになるのよね。で、結局どうなったかと言うと、ファンタスティックフォーの三人が入居することになりました。資材管理をしているぼたんさんも、クローン第二への転居をしました。
これで、本宅側3軒が空き家になったと言うことです。そして同じ方法で、道を挟んだ反対側にも第二と同じ建物を作りました。こちらには、白船君と私たちが転居しました。ちなみに比較的に部屋に余裕があるんですけど……だからと言って、藍香ちゃんの転居は勘弁して欲しいかな。ええっと、立木さんがいない家には興味が無い。そうですか、いえ、今更のことでしたね。
そうなると、残るのは諸星さん、立木さん関係者になるんです。こちらは人数が多いので、第二のクローンでは不足しているんですよね。と言うことで、南にある比較的平坦な場所に立木さん関係者の家が作られることになりました。こちらはね、大谷村にあるホテルを参考にしたりしています。
客室数18室の小さなホテル……部屋数が多いと大変だと思うのよね。あと、それだけ『家族』を増やすつもりなのかな。例えば……いえ、誰とは言いませんけど。
それで新たに作られた家は、別宅その5と命名されました。別宅3と4は、別宅2近くに作られたクローンを指しています。そして別宅その5には、立木さん夫妻、陽佳ちゃん、アスカさん、御衣黄さんのオリジナルメンバーに加えて、ラズライティシア様、エリシオンさん、インテグラさん、オルティアさん、フローリアンさん、セフィーロさんが住むことになったわけです。それで敷島姉弟は?
「ここからだと、通学が大変……慶子、いや、なんだ、後でゆっくり話さないか?」
流石の立木さんも、慶子さんには弱いんですね。つまりなんですか、敷島姉弟も同居することになる訳ですね。そうですか、男の子の世話をしたいんですね。多分ですけど、大悟君も喜んでくれると思いますよ。
ちなみに小さなホテルと言うことで、お風呂が結構充実していたりするんです。ただ源泉の湧出量が少なくて温度が低いそうなので、加水加温するそうですよ。立木さん、源泉掛け流しじゃ無くても良かったんですか?
「その程度のことなら、第一に行けば良いだけですよね。さも無ければ、第二の露天風呂」
まあ、転移ゲートを使えば歩いて数分ですからね。確かに、自宅のお風呂に拘る必要がないのは仰るとおりです。ところで白船君、なんで立木さんの方を見ているんですか? なんです、今までの家の方が落ち着くと言うのは。そりゃあ、本宅側のモデルルームは、立木家の敷地に移転しますけどね。
ひょっとして、私たちを避けたりしていませんか? なんです、立木さんの家に近い方が、色々と恩恵があると言うのは。それは、おやつとかおやつとかおやつとかと言っていませんか? そうですか、おやつとかのことを言っているわけですね。言われてみれば……いやいや、せっかくクローンを立てたんですからね。なんです、始祖竜たちを住まわせれば良いと言うのは。雑魚寝は可哀想……確かに、雑魚寝は可哀想ね。
それからファンタスティック・フォーの3人。あなたたちも何か言いたいことがあるのかしら? そう、今の住まいに愛着が湧いていると言うのね。良いのよ、立木さん家の近くが良いと言っても。そう、立木さん家の近くが良いのね。あのさ、せっかく作ったクローンはどうするの? 翼人を住まわせれば良い……第1にも翼人がいるから、近い方が何かと便利。そうね、これで下の温泉施設は闇エルフだけになってくれるのよね。
少し予定とは違ってしまいましたが、これで本宅側の住人の引っ越しは完了しました。そうなると、残るのは諸星さん宅と資材倉庫と仮設事務所と言うことになります。そのうち仮設事務所は、研究所棟が稼働したので撤去可能となったわけです。
そして残る倉庫なんですけど、もう少し交通の便が良い場所に作られることになりました。どうせ転移ゲートを使うんだから、集落近くに作る必要は無いと言うのがその理由。そう言うこともあって、食材倉庫は国道沿いに移転となりました。ちなみに、移転と同時に倉庫の規模も拡張しました。人数が増えたので、在庫量を増やす必要が出来たからと言うことです。
これで本宅敷地の整理が終わったことになる訳です。その状態で、諸星さんの家は少しだけ移動。どう言うことかと言うと、広ぉ~い本宅を作るためのスペースを作ったと言うことです。そこにですね、始まりの6LDKは残して、ほかの奥さん用に立木家より少し大きい建物を持ってきました。王妃様の側仕えは相部屋ですから、これで13室埋まることになる訳です。残り10室……まあ、しばらくは持つことでしょう。
ちなみに、湯殿の拡張は無しで、新しい建物のお風呂も利用することになりましたとさ。いやね、私も温泉は大好きですよ。それでも疑問なのは、どうしてみんなお風呂に拘ってくれるのかと言うこと。
それからですね、少しだけど大谷村の雇用に貢献なんかしています。どう言うことかと言うと、温泉と建物の管理が必要になったと言うことです。元々第一、第二の管理も必要だったんだけどね。こっちは、自衛隊員が頑張ってくれてたの。それを全部取り上げて、新しい建物と一緒に大谷村に管理を一任……湯守とかもお願いしたと言うこと。
後は、そうね、建物の清掃とかもお願いしたわね。食事はどうするのかと聞かれたんだけど、それは今ペンディング中。ただ後から来た翼人とか始祖竜とか、その人たち用の賄いも必要なんだよね。自衛隊員を増員……なんか違う気もするけど、自衛隊員の増員もしくは村から調理師を派遣して貰うことで検討しています。
とまあ、住居はひとまず落ち着いたかな。後は、闇エルフ30人……もとい29人をどこに収容するのかを考えないとね。なんで一人減らした……うん、ガーラさんは朽木君のところに住み込むことになったの。もうね、ほかのメンバーから羨望を集めたみたいね。だって朽木君の家、港区のタワマン最上階なんだよ。どんだけセレブって言ってもいいと思うんだ。
ちなみに同居人として、パッソさんとカプチーノさんがいたりします。ただ都会慣れしていない3人なので、今のところお出かけは不可なんだって。都会慣れ……と言うより、はっきり言って田舎者だからね。長い耳と言う特徴を隠しても、色々と危ないと言うのは理解出来るんだ。だから外出は、朽木君が戻ってきたときだけと言う制限が付いています。
まあ、住居関係はこんなものかな。ところで立木さん、さっきからみんなに声を掛けていますけど。どうかしたんですか?
「いえね、引越祝いで内輪のパーティーを開こうかなと。急に決めたので、みなさんの予定を伺っているところなんです」
なるほど、そう言えば引っ越しもようやく落ち着きましたね。それで、何時に集まれば良いんですか……どうして、驚いた顔をしてくれるんです?
「え、ええっと、そう言えば小谷さんもご近所さんでしたね」
まさかとは思いますけど、私のことを忘れていたとは言いませんよね。なんです、その『まさか』と言うのは。そうですか、忘れられていましたか。ねえ立木さん、暴れても良いですか?
「美味しい一升瓶を用意するので勘弁して貰えませんかね?」
う~ん、それっていつものことですよね。それで勘弁して貰おうと言うのはちょっと甘いんじゃありませんかね。
「そうですか、ではレア酒でも供出しますかね。ええ、青森とか山形とか秋田とかの有名銘柄を入手したんですよ」
ええっと、それって『あれ』のことですか。そうですか、『あれ』を入手したんですね。そっか、そこまで誠意を見せてくれたのなら許して差し上げても良いのかなと思えてきました。
それで、料理の方はどうなっているんですか? 薄墨さんが、美味しいところを仕入れてきてくれた。それを村の奥さんたちが、美味しく料理してくれるんですね。なるほど、珍味も手配してあるんですか。昔ながらの梅干しもある……それって、本当に日本酒が進むんですよ。福岡直送の明太子、青森のねぶた漬け……岩手の海宝漬け……私に酒を飲めと言っている品揃えだと思いますよ。いえ、ありがたく頂きますよ。
ところで立木さん、誰かの視線を感じるんですけど……これって気のせいですか? 気のせいじゃ無い、ただ気にしない方が良い。つまり、あの人が見てると言うことですね。はい、わかりました。気にしないことにしておきましょう。あの人が参加すると、いきなり人数が倍増してくれますもんね。
ところで、朽木君たちとかは呼んでないんですか? そうですか、光岡さんたちも呼んでるんですね。中々グッドと言わせて貰います。えっ、鴻池さんも参加される。あそこって、そんなに収容能力ってありましたっけ?
「季節が良くなりましたからね。天気も良いことですから、庭も開放しようと思っているんですよ」
ガーデンパーティーですか。なんです、アスカさんがバーベキューをしてくれる。まさかとは思いますけど、タッドさんが来るとかありませんよね? 昨日から泊まり込んでいる……バーベキューに腕まくりをしている。友池さんたちも参加……なんか、大宴会になっていませんか? これで、内輪なんですか?
「内輪ですけど、何か疑問でも? 上司のホームパーティーに、部下が来るのは珍しくありませんよね」
なんか、昭和的と言っても良いですか。言っても良いが、招待を取りやめると言ってくれますか。いえ、気のせいと言うことにしておいてください。
それはそうとして、ここまで参加者を広げておいて、『あの人』は誘わないのですか? なるほど、あの人は部下では無くて上司でしたね。はい、事情は理解出来ました。じゃあ、今日は早上がりにして楽しむことにしましょうか。
ダークエルフのスタイルが良いのは、この世界(どの世界?)の常識ですっ!




