↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
85/109

身も蓋もない解決

村の特産は異世界です


・身も蓋もない解決


 勇者召喚と言うのは、女神にとって基本スキルの一つになっています。なぜ、なぜと聞いてくださいますか。身も蓋もない答えを言うのなら、大人の都合と言う物でしょうか。あの、怒らないでくださいね。このスキルは、女神として生まれたときに自動的に付与されるスキルなんですからね。

 この貧乏くさい世界なのですが、魔王が封印されたお陰で具体的脅威は無くなっています。ですので、今現在勇者を召喚する必要はありません。取り残されたオークとかデモンとかは居ますけど、数から言って脅威になるとも思えませんからね。


 それを考えれば、今更『勇者召喚の儀』を実行する必要は無いわけです。ただですね、お姉様を巻き込むには『勇者召喚の儀』を実行するのが一番確実なんです。だってお姉様は、一度この世界に来ていますからね。つまり、この世界と繋がっていたりするんです。

 魔王を封じたことで、女神の威光は絶対に近いものになっています。魔王封印からの世界の復興。その助けを求めるためと口実を付ければ、勇者召喚の儀を行うことに疑問は持たれません。


 世界を救うためなのです。ですからスカラヘ、新たな勇者召喚の儀を行うのです。


「か、畏まりました」


 うん、素直で良いですね。それから、これは私事ではないのですからね。私は、本気でこの世界を緑豊かな世界に作り替えるつもりなのですよ。この勇者召喚は、そのための一歩だと考えてください。お姉様なら、あちらの世界の英知を持ってきてくださるはずですからね。

 王族の血と女神の恵みがあれば、勇者召喚の儀はさほど難しいことではありません。祭壇に魔法回路を組み上げ、魔道士を集めて祈り……私に対してですよ。その祈りを受けて、私が女神の恩恵を彼等に与えるのです。そうすることで、魔法回路が作動し勇者が召喚されるのです。

 手違い、手違いとは何のことを言っているのです? 召喚の儀は、これまで何度も繰り返されてきた儀式なのですよ。もしも手違いがあったとしても、別人が召喚される程度のことなんです。その場合はですね、その方に知識を頼れば良いだけだと思いませんか? はい、計画として完璧だと思います。あの魔王討伐を考えなくて良いんですから、もうイージーモードだと思うんです。


 頂いたカップ麺はどうした、ですか? こんなところでは食べませんよ。ここに居る皆さんは、本当にひもじい思いをしているんですよ。そのひもじい……はっきり言って飢えた者たちに、カップ麺の馥郁たる香りは毒なんです。分け与えるつもりなんて、これっぽっちも持っていませんので悪しからず。

 レトルトカレー……ですか。あれはですね、匂い的にはもっと凶悪なんです。カップ麺以上の厳重さで、封印なんかしてありますよ。食べる時には、ですね。もっともっと遠くに離れて、更に風の向きを考えて食べています。はい、レトルトカレーの匂いは、彼等にとって猛毒なんですからね。


 それで、順調に儀式は進んでいきます。そりゃあ、もう、彼等も慣れたものですからね。だから、失敗の恐れも少なくなっているんです。ほら、魔術回路の上に転移空間が出現しましたよ。あそこからお姉様が落ちてくれば、召喚の儀は無事終了と言うことになるわけです…………



 なにか、様子がおかしいんですけど



 あなたたち、召喚の術式を間違ってはいませんよね。今まで通り。必死になって書いたので、間違っているはずは無いと言うのですね。だとしたら、どうして転移空間からおどろおどろしいものを感じるのです。気のせいでなければ、雷光が見えた気もするんですよ。そうですか、あなたたちにも雷光が見えたと言うのですね。

 その、今更なんですけど、召喚の儀を中止しませんか。止め方を知らない……そりゃあ、教えていませんものね。しかも儀式自体は最後までやってしまった。つまり、あの……転移空間から何者かが出現すると言うことですね。では女神として命令します。何者が現れても良いよう、警戒態勢をとりなさい。もしもの場合は、魔道士全員で攻撃を加えることを許可します。


 魔道士たちが攻撃態勢を整えたところで、転移空間から何者かの足が現れました。見た目からすると、お姉様の世界の住人のようですね。だとしたら、一体何者が現れると言うのでしょうか。

 固唾を呑んで見守っていたら、ゆっくりと下半身、続いて上半身が現れてくれました。ちなみに上半身が現れたところで、何者かが女性、女性でいいと思うんです。その女性をお姫様抱っこしているのがわかりました。それって、間違えて二人を召喚してしまったと言うことかしら? おかしいわね、この術式のキャパをオーバーしているんだけど。


 ゆっくりと降りてきた人物の顔が現れてくれました……なぜにお年寄り? 召喚の儀は、精力溢れる若者を召喚するものなのですよ。あのようなお年寄り……ちょっとまって、抱かれているのはお姉様ですよね。だとしたら、あのお年寄りって……ごくり

 攻撃するのか、ですか。馬鹿なことを言ってはいけません。ただちにそこに全員平伏すのです。手遅れかもしれないけど、平伏してお迎えするのです。私、私ですか? 勿論私も、平伏させて貰います。ここで対応を間違えると、作ってはいけない敵を沢山作ってしまうのです。そうなったら、この世界などロウソクの焔よりも簡単に吹き消されてしまうのですからねっ!

 いいですか、良いと言うまで全員頭を上げないように。これは、女神としての絶対命令なのですからね。


「さて、ここの責任者は誰なのですか?」


 ここは、スハハトクサイカス王国なのです。ですから、責任者は国王であるスカラヘ……どうして、全員で私を指差してくれるのですか? 女神の神託に従った、もう少し言うと、女神に直接命令された……間違ってはいませんよ、間違ってはいませんけど、少しは空気を読んでくれませんか?

 なんです、空気を読んでも良いことは一つも無いと言うのは。いえ、申し訳ありません。私がこの世界を守る、女神プリムラでございます。はい、女神フローリアンの後任……もう少し踏み込んだ立場を言うのなら、娘と言うのが私になります。


 あっ、頭痛を感じておられますね。はい、私はあなたの娘に当たるわけです。ですので、可能な限り寛大な措置をお願いしたりしちゃって良いですか、色々と許して貰えると嬉しいなって思ったりするんですです。

 それからですね、一つ質問をしても宜しいでしょうか。そのですね、お父様って普通の人間のはずですよね。どうして意識も失わず、一人用の召喚の儀に割り込んでこられたのですか? 愛、娘に対する愛情と言ってくださいますか? いえ、愛情を否定するつもりは無いんですよ。ただですね、その程度で高度な術式に干渉できるとは思えないんです。

 それからもう一つ。私もあなたの娘なんです。出来れば、私にも愛情を注いで頂けたらなぁってお願いしても良いですか? 状況による。ちゃんと事情を話せと言うのですね。では場所を変えて……貧相な身体をしてますが、王女ステリナの接待はいかがでしょうか? そちらは諸星様……もしかして、生ける非常識と言われる諸星様のことでしょうか。王女様コレクター……それでしたら、もう少し肉付きを良くする必要があると思うんです。




 記憶にある深い落とし穴……それに落ち込んでいくとき、私が感じたのは深い絶望です。だって、お父さんと幸せな時を過ごしていたんですよ。それなのに、忘れたい過去の悪夢。異世界召喚に巻き込まれてしまったんです。どうして私ばっかりこんな目に……私は、幸せになってはいけない運命なのでしょうか。

 異世界召喚に巻き込まれ、意識を失うのは前回通りだったと思います。でもちょっと今回違っていたのは、何か暖かいものに包まれていたのを感じたことです。だって前回は、冷たい石の上に転がされていたんですよ。しかも薄暗くて、回りには異様な格好をした人が沢山いたんです。


「もう、大丈夫ですか?」


 これってお父さんの声だよね。どうしてお父さんの声が聞こえるんだろう……そんなことを考えながら、私は目を開いたんです。そうしたら、薄暗い中、私を心配するお父さんの顔を見つけてしまいました。もう、これだけで涙腺が決壊してくれました。決壊してくれましたよ。だって、お父さんが居てくれるんですよ。これ以上心強いことはないと思うんです。

 それで、本当にお父さんなんだよね?


「お父さんで間違っていませんよ。それから、陽佳ちゃんが勇者召喚に巻き込まれたのも間違っていません」


 だったら、どうしてお父さんがここに居るの?


「娘が攫われそうになったんですよ。父親なら、娘を助けるに決まっているじゃありませんか」


 決まってるって……だって、異世界に来たら帰れなくなるんだよ。お母さんだって、お姉さんやお兄さんとも会えなくなってしまうんだよ。もの凄く嬉しいけど、でもお父さんはここに来ちゃいけないと思うんだ……痛い。デコピンをしないで欲しいんだけど。


「場所さえトレース出来れば、諸星さんがゲートを開いてくれますよ。もっとも、そんな真似をしなくても帰ることは出来るんです」


 ほらと促された先を見たら、大勢の人が土下座なんかしていました。でも前の方で土下座をしている人。なにか見覚えがあるんですけど?


「クロアとフィオレンティーナ、それからプリムラの3女神です」

「私とフィオレンティーナは、女神では無くて神の女性形態……いえ、何でもありません。女神と呼んでください」


 どうしてクロアさんとフィオレンティーナさんが、って聞いても良いよね。それからプリムラって、初めて聞く名前なんだけど?


「アンの娘なのだそうですよ」


 アン……アン母さんの娘さんなの? つまり、私の妹ってこと? お父さんって、神様と子供を作りすぎだと思うよ。

 それは良いんだけど、どうしてクロアさんたちが土下座なんかしているの?


「クロア、説明をしてくれますか?」

「私の監督不行き届き……で済ませてはいけませんよね。話すと長くなるので身も蓋もない説明をいたします。義娘プリムラが短慮だったのが理由と言うことになります。陽佳様もご存じだと思いますが、この世界は農業が壊滅しているんです。その壊滅している農業を再興するため、支援して頂ける方を召喚したと言うことです」


 ええ~っと。説明を聞いたんだけど、色々と無理がありすぎると思うのは私の気のせい? そうだよね、気のせいじゃ無いよね。どうして、私が農業指導を出来ると考えたの? 私って、家庭菜園だってやったことが無いんだよ。


「そのレベルの知識も、この世界には無かったと言うことなんですけどね。プリムラ、陽佳を巻き込もうとしましたね。それはなんですか、フィーナと喧嘩をしたのが理由になっていませんか?」


 あっ、二人がばつの悪そうな顔をしているよ。つまりお父さんが、図星を突いたってこと? ねえ、姉妹喧嘩に関係の無い私を巻き込まないでくれるかな。喧嘩では無くて、上位神として下位神に指示を出しただけなの? ふ~ん、そんな言い訳をしてくれるんだ。

 言い訳ではなくて事実。世界を教え導くのは下位神、女神の務めと言ってくれるのね。それでプリムラさんだっけ、フィオレンティーナさんはあんなことを言ってるけど?


「お姉様は、お父様のところでグルメ三昧をされています。しかも、男漁りをしているとも聞いています。それなのに、支援をお願いした私にはカップ麺とレトルトカレーしかくださらなかったのですよ。中間管理職いじめですよね、これ」


 カップ麺とレトルトカレーって……なんの解決にもなってないよね。普通に支援するのなら、肥料とか種とか、すぐに使える小麦とか米とかだよね? レトルトカレーはまだましだけど、カップ麺じゃすぐに賞味期限が来ちゃうじゃ無い。しかも中間管理職って……何を言ってるの?

 本質的な問題から離れている。賞味期限では無くて、後に続かないことが問題……そうよね、こんなもの参考にならないよね。

 それで、私たちは元の世界に帰れるの? クロアさんたちが来てるんだったら、すぐに帰ることが出来るよね? ええっと、どうして揃って顔を逸らしてくれるのかな?


「その、ですね。少しばかり時空間に乱れが生じているんです。ですので、今移動するのはかなり危ないと言えば良いのか……もう少し空間が落ち着くまで待っていただきたいと言うのが答えになるんです」


 どうしてって聞いても良いよね。それ以前に、どうしてお父さんの顔を見ながら言ってくれるの? ええっと、お父さんもどうして顔を逸らしてくれるのかしら。つまり、心当たりがあるってことかしら?


「アンの作った魔道具で、勇者召喚に干渉してしまったから……なんですけどね。少しだけですけど、怒りに我を忘れてしまったと言えば良いのか……」

「我を忘れたぐらいで、管理世界全体に影響を及ぼさないでいただきたいのですけど。それ以前に、普通の方が出来ることではないと思うんです。間違いなく、お母様も焦っておいでだと思いますよ」


 ねえクロアさん、お母様って誰のことなの? 慶子母さんのことじゃないよね?


「申し訳ありません。それは、禁則事項でお話しできないことになっているんです。それからキヨヒコ様、お願いですから名前を口にしないでください」


 つまり、お父さんはわかってるんだ。ええっと、菅谷総理大臣さんも気づいている。ほかにも、大勢気づいている人が居ると言うのね。だったら小谷さんは? 先入観に囚われているから、答えに気づけないでいるのね。うん、それだけでわかった気がするわ。それからクロアさん、名前を出さないから安心して良いよ。

 それで、空間が落ち着くまでって、どれぐらい待てば良いの? どうして、そこで目をそらしてくれるのかな?


「時間軸が、ですね。1日2日のオーダーでは無いからと言うことになるんです。もの凄く短くて年単位、長いと数百年のオーダーになってしまうんです」


 それって、生きては元の世界に帰れないって言ってる? 今のままだと……そう、元の世界に帰れないんだ。お父さん、思いっきり泣くから慰めてね。


「つまり、諸星さんの非常識を期待するしか無いわけですか」

「すみません、お父様の非常識でも難しいと思います。いえ、出来ないとは言いません。言いませんけど、実行したときの影響が大きすぎるんです。無理矢理道をこじ開けたりすると、ですね。空間の乱れが更に大きくなって、一部世界が崩壊する可能性があるんです。ですので、母が反対すると思うんです」


 ぐすっ、ねえ、お父さん。なんで、そこまで壊してくれたの? 娘が攫われた、冷静でいろと言うのは無理な相談。ええっとね、もの凄く嬉しいんだよ。もの凄く嬉しいんだけど、それって問題を更に複雑にしてるよね。冷静になってみたら、解決手段って沢山あるのがわかったんだ。

 うん、普通に召喚されたのだったら、もう解決していたんじゃないのかな? クロアさんだって、私をすぐに帰してくれたよね。だって、間違いなくお父さんに叱られるから。


「すんだことよりこの先のこと……と言うのは、責任逃れではありませんよ。それからクロア、短時間で解決する方法がありますよね?」

「ないのかと聞かれたら、あるにはあると言うのが答えになるんです。でも、それをここで口にして良いのか悩んでいるんです」


 ええっと、良い方法があるんだよね。だったら、どうして教えてくれないのかな? なんです、人手不足が理由と言うのは。高位の神様を追加することで、空間の擾乱を短期間で収束させることが出来ると言うのね。だったら、高位の神様を連れてきて……

 一つ質問。その高位の神様と言う話、どれぐらいの階梯、階梯で良いんだよね。フィオレンティーナさんぐらいじゃないとダメってことなのかな?


「いえ、フローリアンさんぐらいでも大丈夫なんです。でも、ここに居る女神は3柱だけなんです。ほかにも高位の女神はいるのですけど、今現在で言うとすでに擾乱収束の仕事をしているんです」


 だから、人手不足と言うことなのね。それで高位の女神を追加するのって……プリムラさん。控えめだろうとなんだろうと、そこで手を挙げないように。あなたは、お父さんの娘ってことを忘れないように。

 神話の世界では、父親が娘に手を出すのは珍しくない。あのね、これ以上お父さんを異常な世界に連れて行かないように! 一番手っ取り早い方法……否定はしないけど、人として超えてはいけない一線だと思うのよ。自分は人じゃ無いと言うのは却下です。あなたは神様でも、お父さんは人なんですからね。こらそこっ、3人でひそひそ話をしないようにっ!


「でしたら、ですね。キヨヒコ様と私が、数時間姿を消すのを認めて頂けますか?」


 なんでクロアさんと……ええっと、それって、その……カマトトぶるなって。だって、私はまだしたことが無いんだよ。だから、それを口にするのは恥ずかしいのよ。親の生々しい話って、娘には結構辛かったりするんだからね。

 でもさ、そんなことで解決してくれるの? ほら、子供ってそんなに早く成長しないよね……そこでプリムラさんを指差してくれるんだ。はいはい、時間は無視して良いってことなのね。だってさ、お父さん。娘の私としては、まだ受け入れられる方法だと思うよ。


「娘を道具のように扱うのは、私としてはしたくないことなんですよ」


 そこは、その、割り切って貰うしかないと思うよ。ほら、子供って色々な事情で生まれてくるでしょ。肝心なのは、生まれ方では無くて生まれてからだと思うの。クロアさんとは、何度もしていたよね。だったら、今更遠慮することはないと思うよ。私のためでもあるんだからね、クロアさんも可愛がって貰ってきて。

 感謝って……顔を赤くして言わないで貰いたいんだけど。ねえクロアさん、なにか喜んでいない? 二人きりは初めての時以来。不謹慎かも知れないけど、なにか嬉しいと言ってくれるんだ。不謹慎って……う~ん、微妙と言って良い?


 とにかく、先延ばしをしても良いことは何もないんでしょう? 急かして悪いけど、解決に向けて動いてくれるかしら? だからお父さん……何か隠してない? そう、隠していないと言ってくれるのね。だったら、さっさとしてくれるかな。

 それで私たちは……その前に、スカラヘ国王様、はい、以前召喚された勇者ですよ。お久しぶりって……そうね、お久しぶりと言うのは確かだと思うわ。それでね、皆さん解散してくれて良いからね。だって、まだまだ国内が大変なんでしょう? もうちょっと待ってくれれば、色々と支援が届くと思うから。


 それで私たちはどうするのか……って、どうしようか。少しでも綺麗な場所って……女神の間ねぇ。まあ、少しはマシと思って良いのかな。そこで時間を潰しているから、声を掛けるまでは自由にしてくれて良いわよ。え~っと、ステリナさんだっけ、一緒に来てくれると嬉しいかな?


「私、でしょうか?」


 うん、警戒しなくても大丈夫だから。絶対に悪いようにはしないからね。悪いようにしないと言って、悪くなかったことはないと言ってくれるのね。一つ質問、言ってることは間違っていないよ。でも、そんな知識、どこで仕入れたのかしら?


 それから女神の間に全員で移動。プリムラさん、お茶ぐらいは用意できるよね。うん、まともなお茶が無いことぐらいは知ってるから大丈夫。お茶を用意するのは構わない。でも、まずいお茶だけだと寂しいことになると言ってくれるのね。

 そう言うことなので、じゃじゃーんって効果音を口にしてから持っている物を見せました。うん、帰り道でお父さんに買って貰ったスイーツだよ。日持ちがするから、ちょっと多めに買って貰ったんだ。それから、おせんべいも買ってあるからね。クッキーとかチョコとかあるから、おしゃべりしながら時間を潰しましょうか。

 それからステリナさん、遠慮しないで食べてくれて良いのよ。うん、もうちょっと肉を付けた方が良いと思うのよ。だってステリナさん、顔の作りは整っていると思うから。諸星さんに、支援する理由を作ってあげようかと思っているの。だからプリムラさん、カップ麺の供出を忘れないようにしてね。


 はい、お父さんたちが現れたのは翌日のことでした。私思うんだけど、お父さんって結構若かったりする? 疲れて眠っていたから、この時間になったの? クロアさん、その辺りはどうだったのかな?


「激しかった……と言って良いですか?」


 うんありがとう。それ以上はもう良いから。それで、女神様の追加は出来たのかな? 追加は出来た、私の後ろに居るんだね。後ろね……それは良いんだけど、どうして膝を抱えて地面にのの字を書いているのかな? 今度は、金髪じゃ無かったのね。まあ黒髪だけど、もの凄く綺麗と言うのはいつもの通りか。


「私は道具として作られたんですよ。いじけても仕方がないと思いませんか?」


 同情するけど、同情するけど後にしてくれるかな。それで、あなたの名前はなんて言うの?


「ヒスイと申します。陽佳姉様、これからよろしくお願いします」


 ヒスイさんね……名前に由来ってあるのかしら? なに、そのお父さんの黒歴史の一つと言うのは。おばあさまの名前にも関連していると言うのね。うん、深くは突っ込まないから、さっさと仕事をしてくれるかな?


「その前に、お父様に甘えても宜しいでしょうか?」


 10分だけ。10分だけなら許すっ! と言うことなので、ヒスイさんを甘えさせてあげてね、お父さんっ!


 それからの10分、本当にベタベタに甘えてくれました。もうね、ちょっとモラルに厳しいところまで行きかけてくれたの。またファザコン娘が増えてしまった……フィーナさん、そこで私を指差さないように。言われなくても自覚ぐらいはしているんだからね。

 そして10分経過後、名残惜しそうにしてクロアさんたちが消えてくれました。これって、乱れた時空間を直しに行ったんだよね。後は、もう、待つしか無いってことか。


 それからプリムラさん、ちょっとそこで正座してくれるかな。お父さんも戻ってきかたら、ちょっと小言を言おうと思うのよ。なに、お父さん? しっかり反省しているから、適当なところで許してやって欲しい。大丈夫よ、痛めつけたりはしないから。


 はい、それから10分ほど小言を言わせて貰いました。すっきりはしないけど、まあ、多少は溜飲が下がったかな。

 それからお父さん、ちょっと疑問に感じたのだけど、質問をしていい? 良いけど答えられないこともある……ええっと、娘の私にも教えちゃいけないことなの?


 それはそうと、ヒスイさんのこと。クロアさんは、解決が早くなるって言ってたよね。それって、本当のことなの?


「本当かと聞かれたら、本当と言うのが答えになりますね?」


 そう、じゃあ聞き方を変えるね。ほかにも方法があったんじゃないの?


「ええ、ありましたよ。IMO研究所の二人が、問題収拾に関わっていませんでしたからね。あの二人を巻き込めば、すぐに問題は解決していたと思います」


 つまり、お父さんもわかっていたと言うことね。それってさ……そう、ちょっと息抜きがしたかったと言ってくれるのね。後は、可愛い娘は何人居ても良い。妹が欲しいだろうって……そりゃあ、妹って響きは良いと思うよ。でもさ、すでにフィーナさんとかプリムラさんとか居るよね。

 だから、どちらかと言えば欲しいのは弟の方かな。大悟君はどうか、って。言われてみれば、弟のような物だったわね。じゃあ、弟は大悟君で手を打って……いやいや、そんな話じゃ無くてね。私たち、いつ元の世界に帰れるのかな?


「非常食のストックが切れる前、あたりですかね」


 どうしてって聞いても良いよね? なに、その武見さんたちに危機感を覚えさせるためと言うのは。いつまでもお父さんがいると思ってくれるなと言うことなのね。

 でもさぁ、ここって何も娯楽がないんだよ。時間を潰すのって、簡単じゃないと思うんだよ。


「だったら、魔王城の跡地にでも行ってみますか?」


 なんで魔王城って聞いても良いよね。あそこって、根こそぎ大谷村に転移したと思うんだ。


「その確認のような物ですね。後は、オークとかデモンとかが残っていないかの確認もあります。残っていたら、保護をして魔王様に引き渡すことも考えているんです」


 ぽちぽち、それってお父さんがしなくちゃいけないことなの? そんなことは言わない。帰るまでの時間の使い方と言ってくれるんだ。だったら、こっちの農業指導……は、絶対に無理だよね。自分で言ってみて思ったけど、手の付けようがないと思うもの。

 了解。だったら、私と二人で……そう、プリムラさんも着いてくるのね。場所はちゃんとわかってる? だったら、転移の方をお願いするわね。大丈夫、お父さんは私が守るから。




 ラズライティシア様とエリシオンさんが現場に行ってくれたんだけど、結局手がかりを見つけることは出来なかった。空間転移の痕跡はあったんだけど、その先を辿ろうとしたら、めちゃくちゃに壊れていたらしいんだ。なんかさぁ、そんなことを聞かされたら不安にしかならないよね。

 それで翌日、緊急幹部会議を開催することにした。出席者は、俺とセレス、小谷さんにオルティアさん、朽木君、友池さんの6人。そして報告者は、ラズライティシア様、エリシオンさん、インテグラの3人と言うことになる。


「昨日現場に行ったのだが、空間転移……なんらかの召喚魔法が発動したのは確認できた。そこで痕跡を辿ろうとしたのだが、接続空間がめちゃくちゃに壊れていたのだ。そのため辿ることが出来なかったのだが、その代わりシオンが次元窓を開いて探索を継続しようと試みてくれた。その結果なのだが、異空間に行くのを躊躇われるほど安定していなかったとのことだ」

「同じ確認をカングーたちにさせました。結果は、シオンと同じ物だったわ」


 つまり、異世界との接続関係が乱れていると言うのだな。従って、通常手段での救出は難しいと言うことになる訳か。

 それで小谷さん、二人が失踪した影響は出ているのか?


「今のところ、失踪自体が表に出ていません。ですので、現時点での影響は出ていないと言うのが答えになります。ただ、ニュートリノの観測値がバカみたいに上がりましたよね。そちらの影響が出ていると、大芝教授に教えていただきました。どうも、各地の研究施設でパニックが起きているようです」


 今のところ、影響はその程度と言うことだな。些細なと言っていけないのはわかっているが、まだ許容範囲と言うことになるのか。

 それでオルティアさん、今起きている現象に説明が付きますか?


「ゲンジテンデ……現時点で説明できることは無い。それでも言えることは、もの凄く巨大なエネルギーが発生したこと。エネルギーレベルは、大芝教授に確認する必要がある。そのエネルギーに晒されたら、人など原子も残さず蒸発することになる」


 原子も残さずって……最小単位だったと思うんですけど?


「素粒子レベルに分解されると言う意味で言っている。それぐらい巨大なエネルギーが、極狭い範囲で発生している」


 それが、立木さんたちの失踪に関係している……ただ単に、異世界に転移したと言うことじゃないのか?


「それ以上のことはわからない。それでも言えるのは、単なる転移とは現象が異なること。高校1クラスが転移したときでも、これほどのエネルギーは検出されなかった」


 つまり、現時点で何が起きたのかわからないと言うことですね。だとしたら、異世界転移の可能性に賭けてみることにします。今まで使いませんでしたが、俺の強制力で立木さんへの道を作ることにします。


「それなのだが、現時点では反対すると言うのが私の意見。理由は、高次空間への影響が評価できないから。もしもの場合、この世界にも無視し得ない深刻な被害を及ぼす可能性がある」


 深刻な影響……ごくり。それは、どんなことを言っていますか?


「わからない。ただ高次空間のエネルギーが降り注いだら、地上に生き物が居なくなることも考えられる」


 つまり、俺には手が出せないと言うのですね。そんなことはないと言ってくれるんですね。だったら、どうしたらいいんですか?


「大至急、理論検証を行うつもり。その検証が出来たら、コウメイには指示通り強制力を発揮して貰うことを考えている。ただ理論検証を行うためのモデルが、どう頑張っても構築できない。今、アスカと二人で別の理論を立てようとしている」


 それは、時間が掛かると言っているのですね。それまで、俺は待つことしか出来ないと言うわけですか。はい、焦っても駄目なことぐらいはわかっています。強制力が万能じゃ無いことも理解しているつもりですよ。ただ神の力と言われても、肝心なときに役に立たないのが悔しいだけです。


「コーメーよ、それがぬし一人の感情だと思ってくれるな。そして一番心を痛めておるのが、慶子と言うのも忘れるでないぞ。大丈夫などと気休めは言わん。ただな、生きてさえいればキヨヒコならなんとかしてくれる。今は、キヨヒコの無事を信じて待つしかないと思うのだ」


 そうですか。立木さんを信じるしかないと言うのですね。それはそうと、どうしてセレスの顔を見ながら言ってくれるんですか?


「なぜと聞いてくれるのか。ならば答えるのだが、気に入らないからと言うのが答えになる」

「そうね、私も気に入らない」


 ラズライティシア様とエリシオンさん、どうして気に入らないと言う話になるんです。だよなセレス、気に入らないと言われても困ってしまうよな。


「ぬしが理解出来ないと言うのなら、別にそれでも構わんぞ」

「そう。キヨヒコ……とヨウカの二人が無事に帰ってくればそれで良い」


 なんで、そんな研究所内の不和を起こすことを言ってくれますか? 厳しいことを言いたくないのですけど、二人とも今の態度は問題ですよ。セレスに謝罪しないのなら、厳しい処分を下すことになります。


「われとシオンは、正直な気持ちを口にしただけだ。処分したいと言うのなら、勝手に処分すれば良い」

「私も、シアと同じ意見。これだけは、譲ることは出来ないわ」


 つまり、謝罪はしないと言うのですね。仕方がありませんね。二人に対して処分を……慶子さん、大丈夫なんですか?


「夫が留守にしている間に、研究所が内部分裂して貰っては困りますからね。シアさん、シオンさん、夫のことを思ってくれてありがとう。ですが、今回だけは引いて貰えませんか?」

「だがな慶子、流石に今回は問題だと思うぞ」

「夫が帰ってきたときの仕事を増やさないようにしてください。私が言えるのは、それぐらいと言うことです」


 仕事を増やさないためと言ってくれますか。でも、これでちょっと落ち着いた気がしますね。


「そうか、慶子がそこまで言うのなら謝罪をさせて貰う。セレスよ、思わせぶりなことを言ったのを謝罪させて貰う」

「ごめんなさい」


 そうか、二人とも謝ってくれたか。だったら俺も、処分を取り下げることにする。慶子さん、場を納めてくださって感謝します。俺だって、二人を処分なんかしたくないんです。立木さんの消息が不明だから、みんな不安でしょうが無いんですからね。その気持ちが出てしまうのは仕方がないと思います。でも、限度があると思っているんです。


「そうですね。何もわからないと言うのは不安ばかり募ってしまうのは確かだと思います。夫が支えになっていたと言うことですから、少しばかり誇らしく思えてしまいました」


 IMO研究所がやってこられたのは、立木さんの貢献が大きいと思っているんですよ。本当に困ったとき、立木さんにどれだけ助けて貰ったことか。だから、今回のことは全員堪えているんです。


「夫を評価していただき感謝いたします。シアさん、シオンさん、グラさん、落ち着くために本宅に戻りませんか? 諸星さん、家に帰る許可をお願いいたします」


 そうですね、ここに居ても解決策は見つかるとは思えませんしね。わかりました、頭を冷やすためにも今は散会することにします。なにか新しいことがわかったら、再度幹部会議を招集することにします。


「では、私たちは家に帰らせていただきます。ティアさん、ティアさんも一緒に帰りますよね?」

「ソウネ。カエッテオヤツ……帰っておやつを食べることにしましょうか。それに、アスカを交えて色々と考えて見ようと思う」

「それからセレスさん、次は私とお茶でもしながら待っていましょうね。美味しいおやつも買ってあるんですよ」


 ああ、そうすると良いな。では、今は散会と言うことで。それからオルティアさん、普通に喋ることが出来たんですね。

 じゃあ俺たちも帰る……どうしたセレス、顔が真っ青になっているぞ。怖い、怖いって……何のことを言っているんだ?




 『なあ』『ねえ』って被ったな。それで、俺からで良いか? 多分だが、同じことを言いたかったと思うんだ。そうか、俺から先で良いんだな。そのだ、今回の事件、事件と言っていいと思うんだ。いや、事件そのもののことじゃ無いぞ。立木さんが、1週間姿を消してくれたじゃ無いか。その時にだな、俺は酷い後悔をしたんだよ。


「そうね、私も後悔したから」


 その後悔ってのが、積極的に迫らなかったこととは言わないよな。そうか、流石に違うと言ってくれるのだな。悪い、おかしなことを言ってしまったな。

 それでだ、俺の後悔と言うのは『甘え』と言う奴だ。それから、取り返しの付かない状況になりかけていたと言うこともある。ちなみに、立木さんが帰ってこないのは取り返しの付かないことだからな。ただ、そのことは今更言っても仕方が無いだろう? だから俺の言う『取り返しの付かないこと』ってのは、立木さんの話を聞かなかったことだ。立木さん、俺たちに色々と伝えようとしてくれたよな。それを俺たち、忙しすぎると言って先延ばしにしたじゃ無いか。もしも立木さんが帰ってこなかったら、俺たちは貴重な助言を聞き損なったことになるんだぞ。それを考えたら、俺は酷い後悔に襲われたんだ。


「そう、研究のことを言ってくれるのね。正直、私はそれどころじゃ無かったのよ。でも、あなたの言いたいことは理解出来るわ。まさかお父さん、転移魔法を使えるとは思っていなかったもの」


 ああ、あれには俺も驚かされた。ただ驚いたのは、転移をしたことじゃないんだ。転移ぐらい……ぐらいと言ってもいいと思うんだが、転移ぐらいだったらシャルロットさんもしているだろう? ただ立木さんの転移って、数学的で良いのか? オルティアさんたちと理論を構築して、その理論を実現した物なんだよ。

 どう言うことかと言うとだな、俺たちは常識……常識で良いんだよな。魔法の常識に囚われていたと言うことなんだ。立木さんは、その常識がすべてでは無いことを教えてくれたんだよ。魔法って奴は、結果を想像して術式を練り上げることになっているだろう? 立木さんは、結果の間に数学的理論を割り込ませてくれたんだよ。その結果、シャルロットさんたちの転移とは違う方法で転移をすることが出来た。


「結果を想像するだけじゃ無くて、その過程も含めて考える必要があったと言うことね。それで私も色々としてみたのだけど、ちょっと凄いことが出来るようになったわ」


 御衣黄さんも、か。俺もだな、フローリアンさんの魔道具で試してみたんだよ。試してみたら、今までと違うことが出来るようになった。


「MS器官……MR器官と言った方が良いかな。それっぽい物が出来るようになったのよ。形状を真似しようとするんじゃ無くて、なぜこんな形状になったのかから攻めてみたのよ。それで細胞を変形させていったら、それっぽい物の形成に成功してくれたわ。ちなみに、理論構築にはティア母さんの協力を貰ってる」


 そうか、俺は魔力の根源だったか? そのアクセス方法がわかった気がするんだ。こちらもオルティアさんの協力を貰う必要があるんだが、かなり核心に迫れたと思ってる。


「それって、もの凄いことだと思うんだけど? 本当だったら、世界がひっくり返ると思うわよ」


 まず間違いないとは思うのだが……ただ、まだ魔法経由と言うのが問題なんだよ。純粋に理論展開をして、魔法以外の方法でアクセスできて初めて有効活用が出来るんだよ。だってフローリアンさんの魔道具だって、魔力の根源にアクセスしているんだからな。


「なるほど、まだ道半ばってことなのね。そういう意味じゃ、私の方も道半ばだと思うわよ。MR器官を細胞中に形成したとしても、本当に同質の物かの確認方法がまだ見つかっていないのよ。それにMR器官が出来たからと言って、人の寿命を延ばすまでにはまだまだ道のりが長いのよ。そもそも、どうすれば全身の細胞に移植できるのかもわかっていないんだからね」


 その意味言えば、安全性も不明なんだよな。加えて言うのなら、魔力の供給をどうするのかと言う問題もあるわけだ。ああ、まだまだ道半ばと言って良いのだろうな。

 しかしなんだ、こうして見ると俺たちはまだまだ未熟と言うことだな。何しろ忙しさにかまけて、頭を使うことを放棄していたのだからな。


「それ同感。使ってるつもり、フル稼働させているつもりがいつの間にか惰性になっていたのよね。お父さんが姿を消して、そのことを実感させられたわよ」


 ああ、言う通りなんだがな。今話をしていて、ふとおかしな考えが浮かんでしまったんだ。


「武見君も?」


 も、と言うところを見ると、御衣黄さんもと言うことか。


「ええ、今回の事件なんだけど。きっかけは偶然でも、お父さんがコントロールしたって思ってしまったのよ」


 ああ、もっと早く帰ってこられた。俺も同じ考えが浮かんでしまったんだ。




 立木さんお帰りなさい。陽佳ちゃんは落ち着きましたか。そうですか、意外に引きずっていないと言うのですね。それはひとまず安心できたと思います。

 それで、今回のことはどう発表しますか? なるほど、IMO研究所だけのことだから、定例会で発表すると言うのですね。そう言えば、定例会は来週開催でしたね。でしたら、それで十分だと思いますよ。


 今回のことで、色々と俺の知らないこと、気づかなかったことが出てきたんです。まさか俺は、セレスがゼッタイシン様だなんて思ってもいませんでした。それ以上に驚いたのは、誰も……小谷さんは違うか、小谷さん以外誰も驚かなかったことなんです。それはなんです、全員知っていて黙っていたと言うことですか?

 なるほど、強制力で黙らされていたと言うことですか。それはなんです、菅谷総理も同じなのですか? そうですか、菅谷総理も同じなんですね。だとしたら、本当に俺と小谷さんだけが気づかなかったことになるのですか。自分の奥さんのことなのに、それに初めての女性のことなのに、お恥ずかしいとしか言いようがありませんでした。多分ですけど、セレスも気づいて欲しかったんでしょうね。ええ、今更隠しても意味が無いのはわかっていると思うんです。だってクロアさんとかフィオレンティーナさん……そう言えば、ヒスイさんも加わりましたね。彼女たちが顔を出しているんだから、セレスがゼッタイシンと言われても今更と言うのも理解出来るんです。


 それでですね、実はセレスが開き直ってくれたんです。ええ、もう一人娘を産むと言い出したんですよ。つまり、もう一人女神様が増えることになるんです……警戒しましたね、警戒してくれましたね。セレスは、今度の娘はアリッサと名前を付けるそうですよ。立木さん、心当たりがありますよね? ええ、立木さんの黒歴史から持ってきたと言っていましたから。

 これで、立木さんの女神コレクターの実績が積み上がると言うことです。いつとは言いませんけど、まあ、覚悟だけはしておいてください。それからですね、娘を立木さんに任せるんです。なので藍香さんは俺に……なんだセレス。これからアリッサを作ると言うのか。いや、俺は立木さんと重要な話をしているんだよ。夫婦の話はだな、もう少し後でも構わないと思うんだ。だって、夜はまだまだ長いんだからな。だったら、藍香さんのことを出すなと言ってくれるんだな。わかった、ほかにも立木さんに言いたいことがあるんだ。それを言ってから、家に戻ることにしようか。


「それで、私に言いたいことと言うのはなんですか?」


 いえ、今回のことなんですけどね。立木さん、実はもっと早く戻ってこられましたよね? 理由の説明が必要ですか?


「いえ、説明の必要はありませんよ」


 そうですか、俺の考えたとおりと言うことですね。それからこれは疑問なんですけど、今回の事件のことを予想していましたか? 立木さんって、昨年農協に農産物増産のお願いしているんです。市場に出せない分は、すべてIMO研究所で買い上げる……でしたか。これって、貧乏くさい世界のことを予想してのことですよね?


「魔帝国支援にも役に立ったと思うのですけどね。まあ、可能性の一つぐらいには考えていたと言うのが答えになります」


 可能性の一つ、ですか。かなり可能性が高いと思っていませんでしたか? 世界が滅びていなければ、支援する未来があると思っていたと言うのですね。その意味で言えば、立木さんの予想が当たっていたと言うことですね。だとしたらですね、俺とかルーテシアの世界とも繋がることがありますかね。

 ええ、セレスの正体がばれた以上、交流を邪魔する理由がなくなったと思うんです。そうですか、俺の考えを肯定してくれるんですね。なるほど、そこまで気がついたのが偉いと言ってくれるんですね。ちょっと偉そうに言いますけど、俺だって成長させて貰ったんです。だからですね、藍香さんを俺に……だからセレスっ、実力行使は止めてくれっ!




黒歴史って、色々とありますよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。