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懐具合の話

村の特産は異世界です


・懐具合の話


 巷で有名な美人秘書、またの名を『冷凍マグロの達人』、秘書Xとは私のことです……


 と言うおバカな紹介はどうでも良いのですけど、今日はちょっと緩いお話をしたいと思います。はい、私の懐具合の話です。どうでもいい、どうでも良いと仰ってくれますか。まあ、その気持ちはわかりますけどね。これもまた、今のIMO研究所を知るためには適当な話題だと思うんですよ。

 ちなみに、私は菅谷総理の私設秘書なんかしていました。しかも下っ端の……と言うことで、給料自体は上場企業の平均ぐらい……年で6の後に0が6つ付くぐらい貰っていたんです。ですので、東京暮らしは結構カツカツだったりしたんですよね。しかも大学時代に貰った奨学金を返していましたから、そちらも生活費を圧迫してくれたんです。


 そしてその事情は、IMO研究所に出向して多少は緩和されました。給料自体は増えていないんですよ。ただですね、生活に掛かっていた費用の諸々、それが格段に減ったことが理由なんです。賃貸費用とか電気ガス水道の光熱費、MHK代とか電話代とか、積み上げると、かなりの金額になってくれるんですよ。しかもですよ、普段の食事が外食……中食もあるんですけど、こちらもお金が結構掛かっていたんです。

 それがですね、こちらに来てから殆ど掛からなくなってくれたんです。もうね、それだけでぐっと楽になってくれたんですよ。形として食費は入れているんですよ。ええ、ただ飯を食らうと給料扱いになってしまいますからね。でもですよ一日千円って……タグ付きの蟹を食べられる費用じゃありませんよね。飛騨牛とか信州プレミアムビーフとか能登の生牡蠣、ノドグロとか寿司とかを食べることが出来るんです。そんなものを食べていますから、お金を使うことが殆ど無くなってしまったんです。


 そしてですね、いよいよこちらに転籍することになったんです。それで給与明細を見たんですけど、思わず脇腹を抓ってしまいました。そして抓った後に、立木さんに確認に行きましたよ。ええ、明細が間違っていないかの確認です。そしたらですね……『足りませんでしたか』なんて言われてしまったんです。

 もうね、月収が1桁上がってくれたんですよ。しかも12月には、ボーナスと言うことで、今まで見たことのない金額が支給されました。がっぽりと税金を払ったんですけど、それでも夢のような金額が銀行口座に振り込まれました。もうね、もっと早く転籍すれば良かったと思ってしまいましたよ。だって、転籍した後でもやっていることは変わらないんだもの。


 そう言うことで、入ってくるお金は潤沢になりました。だったら出ていく方はどうかと言うとですね……使い道が無かったりします。だって、ここに居るとお洒落をするのも限られているんですよね。後はですね、スーツは制服扱いになっているんですよ。だから、IMO研究所から支給なんかしてくれるんです。

 そのスーツなんですけど、老人5が来てからグレードアップなんかしました。あの人たちって、一流テーラーのスーツなんか着てるんですよね。外交官は、見栄も必要と言うのが理由なんだそうです。だから時計も、派手すぎず、なおかつ安っぽくないものを身につける必要があるそうです。当然靴やワイシャツも、一流品が必要なのだそうです。その流れで、ですね。制服扱いになっている私のスーツ、銀座の一流テーラーのものになりました。はい、採寸でお店の方が出張してきてくれました。後はですね、パーティー用のドレスも新調することになったんです。これも業務使用と言うことで、IMO研究所の経費に回ってくれました。そのドレスですけど、セレスさんたちのついでで採寸をして行ってくれました。あの人たちと比べたら、まあついででも仕方がないと思いますよ。


 食費と住居費は払っているんですよ。払っているんですけど、貰った金額と比べると雀の涙でしか無いんです。お陰でお金が貯まる一方と言えば良いのか。残高をオンラインで確認する度にですね、まだ現実のこととは思えない自分がいるんです。


 なんです、IMO研究所の収入は大丈夫なのか、ですか? よくぞ聞いてくれました。またですね、収入源が増えてくれたんです。

 皆さん、国名の長い世界……名前の長い世界のことを覚えていますよね。ええ、つい先日のことですよね。その名前の長い世界なんですけど、MHKで世界に情報をばら撒いたじゃありませんか。しかも、『今日の異世界に行こう!』として、ネット配信なんかもしてしまったんです。その結果ですけど、鴻池さんたちがやってくれました。MHKと協力して、各国に番組を高額で売ってくれたんです。勿論、価格は相手の事情に合わせて設定していますよ。それでもですね、年間契約で4桁億に達したそうです。MHKが3割、鴻池さんのところが3割、そしてIMO研究所が4割と言うのが取り分として決められました。つまりですね、数百億円が新たな収入となったと言うことです。

 もうね、魔王城公開って……有料にする必要が無いと思うんですよ。抽選による招待制で良いんじゃないのかな?


 それはそうとして、鴻池さんが昇進されたそうです。社長直轄のIMO対応特別組織のトップに就任されたそうですよ。そりゃね、あちらの投資金額って、本当に微々たるものなんですよ。そんなもの、とっくの昔に回収を終えているはずなんです。つまり、ここから先は濡れ手に粟と言うことになるんですよ。

 だから鴻池さん、役員待遇になられたそうです。でもですよ、今までって課長待遇だったと思うんですよ。それを考えたら、何階級特進になるんですか? それって、自衛隊とかでもよくある奴ですよね?


「小谷さん、縁起でも無いことを言わないでください。それから、その冗談は笑えないんですよ」


 おや、どうしてこんなところに鴻池さんが。大企業の役員様が、こんなところをぶらついていて良いんですか?


「それも、嫌味だと思いますよ。いえ、確かにここに来る機会は減ることになるんですけどね。ですが、『頑張って現場に出てくれたまえ』なんて社長に肩を叩かれてしまったんです」


 そうですか。つまり、まだまだIMO研究所に足繁く通ってくれるんですね。と言うことは、昇進祝いが必要ですよね。だそうですよ、諸星さん、立木さん。皆まで言うな、ですか。魔王様、10傑衆も招待するんですよね。


「当然、カタリナ王女も招待しますよ」


 そうですか。次は、カタリナ王女の婚姻お披露目になるのですね。それから諸星さん、キョロキョロとしないように。心の棚は、もう撤廃していますよね。


 少し脱線しましたが、IMO研究所の業績はとても堅調です。今の放送権料だけでも莫大なのに、荷造り紐さんの売買代金も分割払いで入ってくるんです。今年は2百億円ぐらいなんですけど、来年は予算化されるのでもっと増えるそうです。それからですね、販路を広げれば更に増収ってことになるんですよね。

 それ以外には、細々としたブーランジェリー王国ツアーの代金と言うのもあります。こちらは、今のところ数億円のレベルで落ち着いています。


 それから、税金以外で出ていくお金ですけど。殆どが皆さんの食費……はい、竜人とかハイエルフとか翼人とか、魔王様たちとかの食費です。こちらはですね、ツアー代金と相殺できるぐらいです。それ以外に衣服費とか間食代、遊興費ぐらいですかね。それも、食費と同じぐらいになっています。みなさん、意外に使わないんですよ。

 温泉旅行、慰安旅行はどうなっている、ですか。それなんですけどね、大規模なのは紐付きになっているんです。はい、IMO研究所のお金を使っていないんです。鴻池さんが動いてくれたんですけど、スポンサーが付けばお金が掛からないんですよ。

 だからお金が掛かるのは、教授連への接待旅行ぐらいですかね。これって、月一で行っても大した金額にならないんですよね。


 ちなみにですね、諸星さんは銀行残高を見ないのだそうです。どうしてって聞いたら、怖くて見ることが出来ないのだそうですよ。だって、諸星さんはIMO研究所のトップなんですからね。一流上場企業の社長ぐらい貰ってもおかしくないんです。つまり、年収数億は軽いと言うことです。ええ、税金もがっぽり払うことになるんですよ。

 それでですね、立木さんが幾ら貰っているのかなんですけど。立木さん、後沢さんのところから派遣されているんですよね。そして最初の契約条件が、時給が1200円なのだそうです。そして大谷村に来たことで、時給を1000円に下げたんだって。どう考えても、非常識に過ぎるよね。ちなみに、昇給は必要無いと言うのが立木さんの主張。それに後沢さんと諸星さんがぶち切れて、『昇給じゃ無いから』と屁理屈を付けて、12月のボーナスで1桁億後半を支給したそうよ。税金で持って行かれても、余裕で手取りが億を超えたんだって。


 この仕打ち……仕打ちって言って良いのかな。立木さんが根負けをして、昇給を受け入れることになりました。金額的には、オルティアさんと諸星さんの間ぐらい。うん、立木さんの功績を考えたら、これでも少ないんじゃないのかな。

 ちなみに立木さんが負けた理由……毎月の給料が、大幅マイナスになるからなんだって。そりゃあ、前年の支給額で所得税とか住民税、健康保険や年金とか決まるからね。時給1000円を積み上げた給料じゃ、住民税も払えないんだって。


 あとね、朽木君とか御衣黄さん、武見さんも沢山貰っています。そう言えば、ゲームの収益もあったわね。それからそれから、コンサルグループの収益もあったんだ。友池さんが、『ぼろ儲け』と笑っていたのが印象的だったわ。

 ほかにも有った気がするんだけど……立木さんに聞かないとわからない部分が大きいしね。いずれにしても、今のところIMO研究所の財政は順調です。




 俺、俺はナイスガイの所長Mさんだよ。うん、ちょっと小谷さんの真似をしてみたんだ。それは良いんだけどね、今日はIMO研究所の運営会議なんかしているんだ。報告者は、経理担当の立木さん。立木さんは、ほかにも研究担当とかエンターテインメント対応とか広報対応とか色々とやって貰ってる。

 人呼んで七つの顔を持つ男……ちょっと古い気がするな。


「まず在籍人員の確認となります。現在下記の通りの人員が在籍しています」


 ・日本人(プロパー):17人

 ・日本人家族(プロパー):2人

 ・アメリカ人(プロパー):4人

 ・英国人:1人

 ・始まりの国(勇者、エルフ、神):4人

 ・魔王様(エルフ):1名

 ・ハイエルフ(パンの国):38人

 ・只人(パンの国):4人

 ・使用人(パンの国):14人

 ・闇エルフ(おかしの国):30人

 ・翼人(おかしの国):40人

 ・竜人:10人

 ・始祖竜(おかしの国):20人

 ・只人(おかしの国):1人

 ・使用人(おかしの国):3人

 ・女神:1人

 ・魔王様:1人

 ・四天王:4人

 ・オーク:80匹

 ・デモン:80匹


「国名の長い世界出現前で355名となっています。ちなみに、オーク及びデモンは魔王様の申告で、ペットと同様の扱いになっています。従って、『住民』に相当するのは195名となります」


 ペットって……あとあと揉めそうな気もするな。それで、構成人員として195名と言うことで良いのかな?


「さらに、王妃様3名、男爵家令嬢2人、使用人17人はそれぞれの国の住人となります。あくまで、上里集落には『一時逗留』の扱いとしています」


 そりゃあ、王妃様が日本人になるのはまずいよな。うん、国民に逃げ出したと思われちゃうのは良くないんだ。


「この時点で、残るは173人と言うことになります。ちなみに始祖竜、闇エルフの扱いも『一時逗留』となります。これで、残るは123名です。おかしの世界の翼人40人、パンの世界のハイエルフ38人も『一時逗留扱い』となります。これは、帰ろうとしたら容易に帰ることが出来るのが理由です。これで、残りは45人となります」


 なんで? ドンドン削っていくと言って良いよな?


「理由は最後に説明します。さてこの45人ですが。俗に言う扶養家族が4人含まれています。具体的には、立木慶子、立木陽佳、コローラル、キャミが該当します。従って、幹部、職員に相当するのは41名と言うことになるわけです。すなわち、IMO研究の労働者数は41名と言うのが登録上の人数と言うことになります」


 登録上の人数……はて?


「なぜこんな分類をしたのかと言うと、給与を誰に対して支払うのかと言うことです。この41名は、IMO研究所職員として納税及び各種社会保障費の支払い義務を負うことになります。実際には、ポトマックコンサル組及び朽木、武見、那須野はゲートを通って通勤しています。従って、28名が大谷村での納税を行うことになります」


 なるほどって、言って良いのかな。そうか、人数が増えると給料とか税金とか面倒になるんだな。


「IMO研究所ですが、資本金が1億円となっています。従って従業員数及び資本金から、企業の分類上『中小企業』となるわけです」


 あ~っと、ウチが大企業と言うのは違うと思うんだよ。だから、中小企業ってのは真っ当だと思うよ。なんです立木さん、従業員が300人を超えると大企業に分類されてしまう。大企業に分類されると、色々と面倒なことになる。ああ、だからオークとか外したんですね。

 でもですよ、税金逃れとかで税務署に睨まれませんか?


「一応税務署とも話をしていますよ。『オークやデモンが人に見えますか?』と聞いてあげたら、素直に『見えない』と言ってくださいました」


 ええっと、面と向かって聞かれたら『見えない』としか答えようがありませんよね。その意味で言ったら、魔王様たちも人には見えない……訳はないか。ええ、納得です。


「住人に関して言えば、おめでたが続いて3名増えました。日本人の父親、アメリカ人の父親を持っていますが、戸籍の扱いとして日本人として扱われます。従って、この時点で集落の住人は358名となります。それにアスカが加わりますから、住人は359名になるわけです」


 うん、増えたなぁと言って良いと思う。


「魔王様関係者は、魔王城に住んでいるからいいのですが。それ以外は、本宅、別宅その1、その2、下の温泉施設に住んでいます。それに加えて自衛隊から派遣された隊員が8名います。つまり、202名分の住居が必要となるわけです。なお13名がゲートを使用して通勤していますので、実際には189名分の住居が必要となるわけです」


 うん、もの凄く増えたと言って良いと思うよ。それで、部屋割りはどうなっているんだ?


「下の温泉施設で雑魚寝しているのは、始祖竜20、翼人20、闇エルフ30の70名となります。残り119名ですが、本宅側に28名……アスカを含めてですが、28名収容されます。従って、残りは91名と言うことになるわけです」


 91人が別館その1とその2ね。ぎりぎりなのがよくわかるよ。


「そして別館その1に73人、その2に18人となるわけです。余裕と言う意味では、少しぐらいなら程度ですね。これ以上は流石に難しいと言うのが正直なところです」


 ああっと、もう少しおかしの国とかに逃がした方が良いのか? だけどなぁ、コロナたちが帰りたがらないんだよ。うん、部屋が狭くてもこっちの方が暮らしやすいらしいんだ。


「それもあって、大谷村との協議を進めました。その結果、もう少し南西ですかね、直線で7km程離れた所の村有地借用と言うことになりました。こちらの方が平地が広いので、住居を作りやすいかと思います。ちなみに道路はありますが、大回りになるので18kmぐらい走る必要があります。ショートカットルートはあるんですが……やめておいた方が良いレベルの道になっています。まあ、直通ゲートを作れば良いだけのことですけどね」


 やめておいた方が良いレベル……すれ違えない道が延々と延びている。確かに、やめておいた方が良さそうですね。ちなみに、温泉はどうなっていますか?


「温泉ですか。湧出量が毎分30リットルだったかな。本宅が80リットル、別館第1が150リットル、第2が240リットルになっています。後ですね、源泉温度が30度ちょっとなので、沸かさないと温泉に入っている気分は難しいと思いますよ。昔の口コミとか見ると、加水加温してもトロっとした良いお湯だったそうです」


 く、詳しいですね。なるほど、絶対に出る質問だと思っていたと言うのですね。ええ、間違っていませんね、それ。


「後は、どこかのホテルを買い取るぐらいですかね。ただ、観光客が増える見込みが出ているんですよ。だから、どこも強気と言えば良いのか、やる気になっているんです。いえ、悪いことじゃないんですけどね。村長も、活気が出てきたと喜んでいますからね。1カ所廃業しそうな所はあったんですよ。でも、今の状況を見て頑張る気になったようです。負債総額を聞いてみたんですけど、余裕で肩代わり出来るレベルだったんですけどねぇ」


 そうかぁ、確かに観光客が増えてるんだよなぁ。中林村長も、そんなことを言っていたよ。だけどさ、ブーランジェリー王国ネタは人数が少ないよね。魔王城の方は、小学生を招待しているだろう。だから、観光客には繋がらないと思うんだけど?


「この季節はスキー客が殆どですね。それ以外の季節は、魔王城が観光資源になっているようです。遠くから見るだけでも、結構見応えがあるからだそうです。この先一般公開を控えていますので、観光客が増えることが期待されています」


 なるほど、遠くから見ても魔王城は立派ですからね。


「後は、白鹿村の方はインバウンド客が増えているようです。異世界の影響もあるのでしょうが、ニセコが流行っている延長線にあるようです。大谷村の方も、ブームの余波が考えられますね」


 なるほど。色々とあるのですね。


「すぐに利用できるのは、休業しているホテルを買い取ることなんですよ。中林村長に、売り物が出ないか気をつけて貰っています。この辺りのホテルなら、もれなく温泉大浴場が付いていますからね」


 村長にですか。でも、やけに協力的ですよね。その辺り、絶対に裏があると思うんですよ。


「諸星さん。大谷村の総合計画を見せて貰っていますよね。それを見ると、村の財政がわかるんです。ちなみに、村税なんですが、5億に届いていなかったんです。地方交付税とかを合わせて、ようやく40億と言うのが今までの村の財政でした。後ほど説明しますが、IMO研究所の法人税が5億。寄付として5億を村に入れているんです。来年はもっと法人税が増えますから、地方交付税の不交付団体になりそうなんですよ」


 ああっ、中林村長が揉み手をしているのが目に浮かぶようだよ。それだったら、色々と便宜を図ってくれてもおかしくないよな。

 でもさ、それだけってことは無いよね。いや、立木さんのことだから、絶対にそれだけとは思えないんだよ。どうやって脅したんですか?


「脅したって……人のことをなんだと思っているんです?」


 だって、全員が脅したことを疑っていないんですよ。ほら、小谷さんだって頷いているでしょう。えっ、友池さんは違うんですか? 脅すのは未熟者、上級者は踊らせると仰ってくれるんですね。なるほど、それは結構深いんですね。

 それで立木さん、どうやって踊らせたんですか?


「だから、人をなんだと思ってくれるんですかね。村長には、住居問題解決のお願いをしただけですよ。まだまだ増えることになりますから、それなりに平地が確保できること。温泉があればなおのこと良いと言うお話をしただけです。『離れていても良いのか』と聞かれましたので、ゲートを作れば距離は問題ないと答えただけです。同じ理由で、道が悪くても問題ないと答えていますよ」


 それを聞く限り、普通のお願いに聞こえますね。なんです友池さん、まだ隠していることがあるだろうと言ってくれますか。


「村長には言っていませんが、都会と言うのは都合が悪いと思っています。いえ、諸星さん、小谷さん、ティアだったら問題はありませんよ。ただ異世界人は、今のところ隔離した方が良いと思っているんです」


 つまり、それを教えていないと。ほら、友池さんが『まだありますよね』と言っていますよ。


「なんで、尋問されないといけないんですか。後は、村長と世間話をしただけです。その中で、最近南の温泉に行くことが多くなったと話しましたけどね。何しろ修善寺、南紀白浜、別府と暖かいところを選んで行っているんです。それにしても、雪の無い所をリクエストされたからとお伝えしただけですよ」


 もしもし、わかってて言っていますよね。立木さんが天然じゃ無いことぐらい、全員が思い知らされているんです。しかも、異世界人を隔離すると言う話はしていないんですよね。それって、暖かいところに住まいを考えていると暗に言っているようなものですよ。


「おや、そう聞こえましたか? そんなつもりは全くなかったんですけどね」


 白々しいと言って良いですか。ほら、全員が頷いているじゃ無いですか。


「そういうことにしておいてください。それから、簡単に財政状況をお知らせします。詳細は、会計事務所と詰めてから決算書類としてお知らせします」


 お金の話は重要ですよね。だって、お金がないと上里集落は運営していけないし。


「ざくっと言うとですね、利益が出すぎていることになります」


 利益が出すぎている……ですか?


「ええ、利益が出すぎていますね。何しろ1年目の収入は、およそ440億円なんです。それに引き換え、支出の方は税前で40億ぐらいなんですよ。従って、ホテルを買い取っても問題ないと言う訳です。ちなみに、博多のドーム球場近くの大型ホテルがあるんですけどね。1000室のホテルが、およそ650億で売却されたんです。どうです、手が届く価格だと思いませんか?」


 ええっと、金額が大きすぎて、ですね。でも、440億ってかなりの売り上げですよね?


「荷造り紐さんが200億円、アメリカ政府から150億円、エンターテインメント部門のゲーム管理費が40億円ブーランジェリー王国関連で20億円、放送権料で10億円、日本政府から補助金並びに停止現象対応で20億円と言うことです。細々とした収入はまだありますが、後は誤差と言うことになりますね」


 結構ゲームの売り上げが大きいんですね。朽木君、本当に売っちゃって良かったの? なに、売却益ががっぽがっぽと言うのは。そうか、しっかり儲けているんだね。

 しかし荷造り紐で200億円って……あれって、原価が殆ど掛かっていないんだよな。俺の手間だって、段ボールに向かって命令すれば終わりなんだよ。多分だけど、倉庫に行ってやれば、倉庫全部が賢い荷造り紐さんになってくれると思うんだ。


「諸星さん、非常識なことを考えないように。ちなみに、来年度からは500億円が10年間にわたって支払われることになっています。値段を下げて販路を拡大すべきか、中々悩ましいところがあるんですよ。今の荷造り紐さんって、高性能すぎるんですよ」


 言われてみれば、荷造り紐さんって有能だよな。あれが世界に出回ったら、戦争の考え方が変わってしまう気もするぞ。うん、確かに販路拡大は慎重にやった方が良さそうだな。

 それから、日本政府からの11億円……結構話題になった奴だよな。おおよその意見は、『安すぎる』と言うものだった気がするぞ。だってアメリカ政府から150億円だったかな。それだけ貰ってるからな。でもさ、こんなもの値段の付けようがないと思うんだよ。手間だけ考えたら、10万円でも……停止現象の方ね。10万円でも良いぐらいなんだよ。高校生拉致事件は……もう一声で100万円で良いのかな。


「諸星さん、ディスカウントは誰のためにもなりませんよ。それから、竜人襲撃に関して、彼等の管理費として月額1000万円が支払われています。停止の協議が来ていませんので、これからも継続して支払われることになります。正確な数値は報告書を見ていただきたいのですが、およそ440億円と言うのが収入の部となります」


 正社員の数を考えたら、もの凄く多いって言って良いんだよな。そうか、もの凄く多いんだな。それで、

出ていく方はどうなっているんだ?


「出ていく方なんですが……寄付とかを除くと40億ぐらいなんですよ。およそその半分が人件費……給与なんですよ。ですから、経費とかは20億ぐらいです。食費、アルコール類、スイーツで9億円ぐらいで、残る大物は始祖竜たちの住居費用、大谷興業への支払いぐらいでしょうか。住民たちの被服費、お小遣いで2億円弱程度を使っています。それでですね、お小遣いなんですがあまり使われていないんですよ」


 お小遣いが使われていない……って、どうして?


「その辺り、外に出ていないからと言うのが大きいですね。通販関係は、お小遣い以外で決済しているんですよ。一番使ったのは、年末のコミケぐらいでしょうか」


 年末のコミケって……ひょっとして、段ボールで同人誌が送られてきた奴のことかな。そうか、あの購入費用が一番大きくなっているんだ。それで良いのかって、言っても良いよな。


「元々、彼等は質素な生活をしていましたからね。身の危険を感じること無く、美味しいものをたらふく食べることが出来る。そこそこの娯楽も提供されている……今のところ、不満を感じる理由が無いのが大きいのでしょうね。誰かが吹き込んでくれるのか、さも無ければ自分たちで気づく時が来るのか、理由はわかりませんが、彼等にも給料を払うことになると思います」


 なんです、誰かが吹き込むと言うのは。そうですか、IMO研究所をかき乱したい勢力がいると言うことですか。でも立木さん、その程度のことは考えているんですよね?


「考えていると言えば良いのか……今のままだと、そこそこの給料を払ってもさほど問題が無いんです。もしも給料を払うことになると、被服費、食費、住居費を給料から払って貰うことになりますからね。相殺すると、さほど出費が変わらないんです」


 あ~っ、そう言うことですか。だから、利益が出すぎていると言うのですね。


「従って、営業利益が400億を超えてくれるわけです。まともに計上すると、法人税だけで100億を超えてくれます。ですから、少しばかり節税を考えることにしたのですが……焼け石に水でした」


 なんです、焼け石に水と言うのは。


「大して効果が無かったと言うことです。先ほども説明しましたが、大谷村に5億円ほど寄付をしたんです。それ以外に、京都に20億円ほど入れたんですけどねぇ。結局、法人税を100億ほど納めることになりました。後はですね、株主への還元と言うことで、後沢氏、堀内氏へ合計で100億円ほど配当を出しています。ああ、諸星さんにも配当が出ていますよ。確か、10億円ぐらいだったかな」


 えっ、俺にそんなに入ってるの!? 俺、そんなお金を使うところが無いんだけど。


「それは、私も同じですよ。要らないと言ったのに、結局給料を上げることになってしまいました。私は、株の配当だけで良かったんですけどねぇ……と言うのは良いのですけど、最終的に純益が200億程度になりました。来年は支出の割に収入が増えますから、もっと利益が出ることになります」


 だったら、もっと給料とか寄付をするとか……そうか、焼け石に水なのか。確か、放送権料が格段に増えるんだったよな?


「そうですね、現時点で売り上げは3倍程度になる予定です。つまり、法人税も3倍程度になると言うことです。大谷村が必死になるのも、それを聞けば理解出来ますよね?」


 はい、よく理解出来ます。でもですよ、大谷村には俺たちを受け入れてくれた恩があるんです。だから、出来るだけのことはしてあげたいなと思っているんですよ。


「まあ、諸星さんらしいと言えば良いのか。ですので、色々と言ってはいますが、大谷村を出ることは今のところないと思いますよ」


 今のところはなんですね。それはそうと、来年の業績は順風満帆なんですね。このまま行くと、かなりの内部留保が積み上がるわけですか。


「それもあって、来年度の活動方針と言うのも考える必要がある訳です」


 来年度の活動計画と言ってくれますか。ただやってることって、京都での研究と異世界の公開関係だけですよね……なぜオルティアさんがビール瓶を振り回してくれるんだ?


「ティア、それは諸星さんには効きませんよ。諸星さんには、精神攻撃が意外に効果的なんです」


 ハートがチキンだからって……そこまで言われないといけませんか? 効果のあるうちに使っているだけって……意外に邪悪になっていると言うのは心外ですね。なんです、どうして王女様コレクターと言う話が出てくるんですか? カタリナ王女に手を出しただろう、これで3人目って。


「活動と言っても、代わり映えがしないのは確かでしょうね。研究に関しては、粛々と続けていくしかないと思っていますよ。出来るなら、私もそちらに軸足を移したいと思っているんですよ」


 でもですよ、研究関連はオルティアさんが統括していますよね。『序列は自分の方が下』って、顔を赤くして言わないで欲しいんですけど。


「落ち着いてきましたから、朽木君にエンターテインメント部門を統括して欲しいんですよ。ええ、役員への昇格と言うことです。ただですねぇ、どう考えても人が少なすぎるんです。使えそうな人材を確保しないと、名ばかり役員になってしまうんです」


 だそうだ朽木君。そうか、心当たりが無いと言ってくれるんだね。意外と、世界が狭かったんだねと言っても良いのかな?


「ぶっ飛んだ奴はいるが、その実気が弱いと言えば良いのか。ここに連れてきて……と言うより、立木さんの相手が出来る奴が思いつかないんだ」


 そうか、立木さんの相手が務まらないと言うのだな。だがな朽木君、それはハードルを上げすぎていないか。それから立木さん、反論は受け付けませんので悪しからず。

 それから朽木君の昇格だけど、うん、承認するのは問題ないよ。ゲームの収益を考えたら、もっと還元しないといけないなぁって思ったんだ。


「ですので、異世界関係のてこ入れを考えています」


 てこ入れって……莫大な放送権料が入ってきますよね。それを考えたら、てこ入れって必要ですか?


「飽きられたら、海外のは一瞬で消えてしまいますよ。ですので、顧客層を拡張しようと考えていると言うことです」


 今でも、裁き切れていませんよね。それなのに、顧客層の拡張って……そもそも、拡張するような領域がありましたっけ?


「本件については、友池相談役から説明していただきます」

「立木さんに振られましたので、私から説明させていただきます」


 友池さんが出てくるって、海外ネタってことだよね? つまり、『今日の異世界に行こう!』を海外展開したことに関係するのかな?


「4月以降も、国内の無料招待を継続すると伺っています。その無料招待枠を拡大し、拡大した部分を海外に振り向けようと言うことです」


 海外に……ですか。それって、収拾の付かないことになりませんか。いくら何でも、ウチじゃ人手が足りていませんよね?


「足りない部分は、古巣に働いて貰うことにします。加えてですね、MHKルートからも各国放送局に打診をして貰います」


 MHKルートもって……『今日の異世界に行こう!』に絡んでくると言うことですか?


「番組枠を拡大しましたが、各地への訪問では埋め切れていませんよね。その部分を、海外の放送局に制作させようと言うことです。日本でやっていることを、その国ならではの作り方でやって貰います。それを拡大した枠で紹介すると言うことですよ。そうすることで、日本の紹介だけよりコンテンツの寿命を延ばすことが出来るだろうと言うことです。ちなみにこれは、鴻池執行役員も認めてくださっています」


 でもですよ、無料招待枠を増やすと収益に影響しますよね?


「100人の無料招待枠ですが。相手が子供だと考えると、1日辺り50万円程度なんです。年間では、多く見積もっても2億円にも到達しないんですよ。『今日の異世界に行こう!』の放映権料を考えたら、番宣費用と考えても良いぐらいです」


 数字で言われると……確かに、そう言うことになるんですね。なるほど、だから鴻池さん……執行役員になっていたんですね。鴻池さんも認めてくれたと言うことですか。

 それで、外務省はどう関わってくるんですか? どう考えても、ウチの下で働くことになってしまいますよね。絶対に嫌がられると思うんですよ。


「諸星さん。物事、持って行き方と言うものがあるんですよ」


 持って行き方ぐらいで、どうにかなるものなのですか? その辺りが、ちょっとわからないと言えば良いのか……


「この話を、各国政府に大使館から持っていくんです。ただし、『無料』と言うのは最初は持ち出しませんよ。相手によっては無料プログラムと言うのを作りますけど、その程度は古巣の予算で賄えるんですよ。日本で3泊ぐらいですかね。そのうち最低1泊を大谷村周辺に泊まって貰うことを考えています。子供たち、そしてその親からはお金は取りません。各国政府がお金を支払う……違いますな、放送局がお金を支払うことになるわけです。異世界ネタで外交活動が出来るんですよ。内々で打診をしたら、古巣は快哉を叫んでくれましたよ」


 嫌がるんじゃ無くて喜んでいるんですか。この程度でと、言ってはいけませんか?


「この程度ではないと言うことです。これまでにない、とても強力な外交手段を手に入れたからと思ってください。何しろ、異世界、魔法は今のところ日本がトップランナーなのですからね」


 そうなんですか。俺に認識が甘かったと言うことなんですね。それで、世界各国から来た子供が、魔王城ほかを訪問することになる訳ですか。それで、映像はMHKが作るんですか?


「少数であれば、各国のクルー受け入れも認めて良いと思います。後は、各国の外交官の同行を認めるぐらいですね」


 後のって、外交をしていることになりますね。なるほど、外務省が喜ぶのも理解出来ますよ。今更ですけど、友池さんたちに来ていただいて良かったと思います……なんです、その微妙な表情は? 苦笑だけじゃないですよね、それって。


「そろそろ本格的に巻き込んであげましょう……と立木さんに言われたからです。多くは作れないが、海外からの招待枠を作ることにする。何が出来るのかを鴻池氏と相談して、古巣と話をすると良いと言われてしまいましたよ。もうですね、官僚の質が低下してしまったと……我が身を省みてしまいました。本当は、古巣の方から打診しなくてはいけないことだったんです」

「IMO研究所と言うのは、それほど胡散臭い組織と言うことです」

「立木さん。そこは、立木さんを怖がっていると言った方が正確ですよ」

「なぜ、こんな温厚な年寄りを怖がってくれるんでしょうねぇ。こうして、様々な方面に気を使って手を差し伸べているのに」


 もしもし、それって本気で言っていますか? ほら、朽木君だって『嘘』と力強く主張していますよ。ええ、俺も『温厚』はないと思うんですよ。


「諸星さん。傷ついたと言って良いですか?」


 言っても良いのですけど、誰も信用してくれないと思いますよ。信用と言うより、まともに受け取ってくれないと言う方が正しいと思います。


「そうですか。愚痴を言っても意味が無さそうなので、次の課題に移りたいと思います。『今日の異世界に行こう!』ですが、キャストの変更を考えないと駄目そうです」


 えっ、なんで、マミちゃん……BLTなのかな。そんな話、全く聞いていないんだけど。なんだ朽木君、言おうと思ってたと言うのは?


「安達マミちゃんに、映画、しかも外国からオファーが来たと言うことだ。ハリウッドなんだが、本人はかなり気持ちが動いているようだ。それからBLTだが、流石にスケジュールが立て込んできているんだよ。降板までは必要無いのだが、代役を考える必要が出てきたんだ」


 マミちゃん、アメリカ映画に出るの? しかも監督の指名って……それって、もの凄く有名な監督じゃないか。うん、俺でも知ってる監督だよ。


「彼女の将来にとって、もの凄く大きな意味を持つのは確かだな。理由が理由だからな、一緒に番組を作ってきた俺たちとしては喜んで送り出すべき所だと思っている」


 そうか、そうだよな。マミちゃん、俳優なんだものな。だったらカンナちゃんは……無理、あっちも売れっ子と言うことか。そうだよなぁ、生放送を毎日やるってのは負担が大きかったと言うことか。

 だったらBLTも含めて、交代を考えないといけない訳か。うん、よくテレビで言ってる、『卒業』って奴だろう。卒業してもIMOファミリーだと思えば良いんだよな。だったら、これからも付き合いを続けていけば良いだけじゃ無いか。


「まあ、そう言うことだな。従って、鴻池氏が後任の選定に入っている。入っているのだが、中々面倒なことになっているそうだ」


 誰もやりたがらない……逆、希望者が多すぎると言うのか。理由には想像が付くけど、一応教えて貰っていいかな?


「番組視聴率の高さ。それに加えて、MCへの注目度の高さが理由だ。後はだな、異世界への憧れってのも理由になっている。だから、もの凄く決めにくい状況になっていると鴻池氏に愚痴られた。超大手とかが、政治力を使ってねじ込んできているらしい」


 その、よくある枕営業とか言うのは? なんです立木さん、なんか俺が間違ったことを言っちゃいましたか?


「決定に際して、一番発言力があるのは誰かと言うことです。諸星さんに、枕営業が通用すると考えていますか?」


 俺が対象なの? そうか、所長だから俺なのか。だったら、立木さんも対象に……そうですよね。はい、失礼なことを言ったことをお詫びいたします。そうですよね、売り込みのあるのって全部お嬢さん以下の歳ですものね。


「いっそのこと、陽佳ちゃんでもと思ったんですけどね。あの子には、ちゃんとした青春……で良いのかな。学生生活を送って貰いたいと思っているんですよ。ですので、起用するとしても大学を卒業してからですね」


 そうか、陽佳ちゃんと言う切り札がいましたね。うん、大学卒業を待つと言う考えには賛同します。毎日夕方を拘束するのは、大学生には可哀想だと思いますから。

 でもですよ、例えば日曜限定にするとか。スペシャルデイとか考えてもいい気がするんですよ。


「朽木君、君の意見はどうなのかな?」

「見た目は合格。後は、カメラの前でどれだけ喋れるかだな」

「その辺りは、慣れの要素も大きいのでしょうね。最初はゲストで出すところから始めましょうか」

「彼女の場合、異世界から帰ってきたストロングポイントがあるから良いだろう」


 では、陽佳ちゃんも候補の一人と言うことで。それで、4月からなんですけど色々と考えないといけないのは確かですよね?


「俺もオーディションに呼ばれているのだが、なんと言えば良いのか、イメージに合わないんだよな。みんな可愛いんだぞ、それを認めるのは吝かでは無いんだ。それに、これから売れていくんだと言う強い意志も感じさせてくれる。くれるんだが、決め手がないと言えば良いのか、誰を選んでも大差が無いと言えば良いのか。そう、決め手が無いんだよ。後はだな、オーディションの後、色々と耳打ちをされたりするんだよ。ホテルのカードキーって、俺にはエルフ闇エルフの恋人がいるんだぞ。あんな子供子供したのが、俺の好みに合うと思ってるのか問いただしたくなった」


 でも、エルフの見た目は中高生……ごめんなさい。朽木君の目が怖いよ。

 しかし朽木君でそれってことは、俺はオーディションに行かない方が良さそうだな。そう言うことなので、立木さんお願いします。


「私に、過労死しろと言っていますか?」


 そっちの方は、俺の強制力でなんとかしますから……ごめんなさい、お願いですから本気で退職すると言わないでください。オーディションはエンターテインメント部門統括の朽木君に任せますので。


「まあ、俺の仕事と言うのは間違っていないな。どこかで妥協するしかないのかとも思ってる」


 うん、主役は異世界だからね。MCは、番組の邪魔をしない人を選んでくれれば良いよ。だから、押さえた演技の出来る人をお願いする、で良いのかな?


「ちなみにだ。安達マミちゃん、BLTの卒業番組を作ることになっている。そこで次のMCに引き継ぐことになる。それとは別に、宴会を開いてくれと言うリクエストがあるんだ。どこで開くべきか、俺としては魔王城こそ相応しいと思っている」


 魔王城ね……俺が苦労するのが見える気がするんだけど。これって、俺の気のせいなのか? そうか、やっぱり気のせいじゃ無いんだな。はいはい、頑張ってものが食べられる程度に掃除をしますよ。


「魔王城公開の邪魔にならない程度に頼むぞ」


 それぐらいは気をつけるけど……綺麗にしすぎると、雰囲気が壊れてしまう。だから、綺麗にしすぎるなと言ってくれるのか。時間ならまだしも、それって結構難易度が高くないか? 所長なら、それぐらい配慮が必要と言ってくれるのだな。

 一つ良いか、それって本当に所長の仕事なのかな?




あくまで噂のレベルです。現実とは思わないように。ちなみに私は、最近低いのが良いのかなぁと思っています。はい、枕の話です。

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