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日常

村の特産は異世界です


・日常


 不思議に思われるかも知れませんが、今まで部屋に炬燵は出していませんでした。ええ、特に理由はないんですよ。ただ、ちょっと面倒かなと思っただけなんです。それでですね一念発起と言うこともありませんが、炬燵を出すことにしたんです。ちょっと大きめの、6人ぐらいは入れそうな奴。どうしてそんなに大きいのと聞いてくれますか。これはですね、宴会用と言うことです。

 ありがとう、薄墨さんと言っておきます。


「俺は、ミミックに捕まってしまったっ!」


 そう叫んだのはエクシブさん。訓練で身体を冷やした後に、早速炬燵にご招待したんです。そうしたらですね、根が生えたように動かなくなってくれました。ミミック……そう言えば、食われているようにも見えますね。そこにミカンを置いたらですね、貪るように食べてくれたんです。良いですよね、炬燵にミカンと言うのは。そうですか、お酒があればもっと嬉しいと言ってくれるのですね。ただですね、まだ時間が早いので少しだけ我慢をしてくれればいいなと。

 それからもう一つ。しませんよ、ここでは。


 なんてことを言っていたら、なぜかラズライティシア様、インテグラさん、エリシオンさんが襲撃してきました。どうして、こんなに情報が早いのかしら?


「うむ、ボタンが教えてくれたのだ。それからだな、ケイコに言ったら、おやつを持たせてくれたぞ」


 おやつですか。それでおやつは、ほほう、それは甘栗と言う奴ですね。しかも大袋と言うのは、慶子さんもよく理解されておいでですね。後は、柿の種、チーズ鱈……だんだんつまみっぽくなってきましたね。なるほど、ビーフジャーキーもあるんですか。


「それだけじゃない。アイスクリームも持たせてくれた」


 ナイスです慶子さん。炬燵に入って、ぬくぬくしながら食べるアイスは美味しいんですよね。しかもなんです、高級アイスじゃありませんか。早速スプーンを持ってきましょう。後は、熱いお茶も必要ですね。ポットポットと……

 ところでお三方がこちらと言うことは、立木さんのお宅には誰がいるんですか? そうですか、オルティアさんとアスカさんがおいでなんですね。陽佳ちゃんは……奈良に遊びに行っているんですか。例のお友達の所に行っているんですね。


 せっかくですから、ちょっと軽めの話題を振らせて貰っていいですか。はい、お三方は沖縄旅行に行っていましたよね。どうでした、立木さん抜きの三人だけの旅行と言うのは。


「三人だけと言われてもだな。MHKのスタッフが大勢いたのだぞ。だから、あまりのんびり出来なかったと言うのが正直なところだな」

「観光は面白かった……でも、体験は面倒だった」

「番組……ええっとなんだっけ」


 『今日の異世界に行こう!』ですね。


「そうそうそれ。その一環だから、触れあいだっけ、それが必要なのよね。まあ、面倒と言えば面倒なんだけど、もの凄く歓迎してくれたのは悪くないと思う。正直、嬉しいって気もしたわ」


 結構意外なお答えですね。そうですか、嬉しかったんですね。


「グラは、泡盛を飲めて喜んでいただけ」

「別に、お酒で喜んでいたわけじゃ無いわよ。それからシオン、どうして私がグラなのかしら?」

「愛称が無いと文句を言っていたのはあなた。おばばがシア、私がシオン。二人とも、名前の最後から持ってきている。だからあなたはグラなの」


 グラですか。どこかの絵本で見たような気が……それはそうとして、甘栗食べませんか?


「なるほど甘栗か。ではシズカに、新しい魔法を見せてやろう!」


 甘栗と魔法が繋がらない気がしますけど。一体、どんな魔法なのですか?


「うむ、甘栗を綺麗に剥く魔法と言う奴だ。百聞は一見にしかずと言うからな、実演をしてやろうでは無いか」


 そうですね、それが一番手っ取り早いと思いますよ。それで、甘栗を手のひらの上に置いて……ほほう、ぱかっと綺麗に割れてくれましたね。しかも渋皮は、割れた皮にくっついている。中々面白い魔法だと思いますよ。でも、どうしてこんな魔法を作る気になったのですか?


「生活魔法と言う奴だ。目の前に甘栗があった、ただそれだけのことだぞ。まあ、甘栗を剥くと手が汚れると言うのもあるな。ちなみにだ、ミカンを綺麗に剥く魔法も開発済みだ」

「おばばは、うまく甘栗を剥けないブキだから」

「シオン、ぬしはわれに恨みでもあるのか? 何故シアではなく、おばばとわれを呼ぶのだ?」

「親しさからの悪口……軽口だと思ってくれれば良い。あと、ブキは否定しないのね」

「今、はっきりと悪口と言ったな?」

「単なる言い間違い。細かなことに気にしていると、目の周りの小じわが増えることになる。それから、その程度のことなら私にも出来る」


 うん、甘栗を綺麗に剥いてくれるのは良いのよ。でもね、袋ごと全部剥くのは違っていると思うのよ。これだったらね、初めから『剥いちゃいました』って言うのを買ってくればいいだけだからね。


「初めから剥いてあるのが売られている。つまり、需要があるからと言うこと」


 そりゃあ、そうなんだけどね。ちまちまと剥きながら食べると言うのも、炬燵の醍醐味と言う奴なのよ。まあ、こっちの方が食べやすいのは確かだけどね。それからエクシブさん、待ってましたとばかりにドカ食いするのは止めてね。

 それで、旅行に行って印象に残ったことってありましたか?


「海がとっても綺麗だったわね」

「お水がしょっぱかった。でも、上から見たらとっても綺麗だと思ったわ」


 なるほど、やっぱり海が来ましたか。ところで、皆さん水着を着たんですか?


「水着とな。そう言えば、白船がスク水とやらを用意しておったな。シオンなど、胸の所に白い布で『しおん』と書かれたのが用意されておったぞ。われのには、『しあ』と書いてあったな」


 あのオタクがぁっ! まさか、収録でそんなものを着なかったでしょうね。


「なぜ、まさかと言われるのかはわからぬのだが。だが収録では、波打ち際までしか絵を撮っておらんのだ。何を考えたのか知らぬが、シオンは白いワンピースを着せられておったな」

「おばばとグラはかりゆし? を着てたわね」


 なんか、収録側の趣味が入ってる気がするわね。そう、シオンさんの衣装の方。確認しておくけど、日の光で透けたりしなかった? なに、その対策済みと言うのは?


「私の身体は、全部あの人のものなの。だから、他人に身体の線を必要以上に見せるつもりは無いわ」

「シズカよ、地雷を踏みにいくのは感心せんぞ」


 そのつもりは全くなかったんですよ。それ以前に、どうして今の質問で地雷を踏むことになるんです?

 それはそうとして、対策はしたんですね。まあ、小さなお友達向けの番組ですから、配慮は必要ですよね。


「でも、大きなお友達もターゲットになっていると聞いた。大きなお友達は、お金を持っているから大切にした方が良いって」


 もしもしシオンさん、そんな情報をどこで仕入れたのかしら。そう、朽木君からなのね。一度彼を締めた方が良さそうね。

 それから、上から見たって言いませんでしたか? どうやってって聞いても良いですよね?


「飛んだ」

「そうね、飛んだわね」


 あーっ、3人とも飛行魔法を使えたんでしたね。だったら、飛んでもおかしくないわけですか。


「ちなみにだな、お子様を二人ばかり手を繋いで飛ばせてやったぞ」


 なるほど、子供番組の演出として大いにありだと思いますよ。それから、美味しかったものって何がありましたか?


「アイスクリームっ」


 そうですか、シオンさんはそれが最初に出てくれますか。それでラズライティシア様とインテグラさんは?


「色々と美味はあったぞ。ラーメン……ちがうか、八重山ソバもうまかった。後はだな、ステーキもうまかったと思うぞ」

「げんこつ型のドーナッツ」

「お豆腐も結構美味しかったわね。魚は……味は悪くなかったんだけどね。ちょっと色が気になったわ」


 色って……ひょっとして、青かったとか。そうですか、青かったんですね。ええ、青色って食欲を減退させる色なんですよね。

 ところで皆さんに一つ質問なんですけど。お土産とか買ってきませんでしたか? はい、石垣島のお土産なんですけど。


「勿論、慶子たちにおかしを買ってきたぞ。キヨヒコには、精力の付くハブ酒とやらを買ってきた」


 ええっとですね、私には何かないのかなぁってことなんですけど。どうして、そこで驚いた顔をしてくれるんです?


「われは、ぬしからお土産を貰った覚えが無いのだ。それなのに、ぬしはわれらに土産を要求するのか?」


 ええっと、以前東京バナナを買ってきたと思うんですよ。いえ、1年ぐらい前の話なんですけどね。


「それ以降、何度も東京に行っておるよな?」


 ええっと、行っていますね。でもですよ、私は仕事で行っているんです。はい、今回仕事で行ったのは否定しません。


「人に期待するのなら、自分も行動する必要があると言うことだ。まあぬしにお裾分け出来る程度には買ってきてある。故に、ケイコの所に遊びに行ってくるが良い」


 つくづくご配慮に感謝いたしますです、はい。

 ところで、今晩はどうなさいます? 確か、立木さんは出張中ですよね?


「京都なら、別に日帰りも難しくないのだがな。なにやら、武見らの相談に乗るような。後は、本山がたまには付き合えと言っていたようだぞ」


 つまり、立木さんは今晩いないと。だったらですね、夕食でも一緒にどうですかと思ったんです。


「まさか、シズカから夕食を誘われるとは思っておらんかったぞ。それはなにか、ぬしが作ってくれると言っておるのか?」


 それって、まさかと言われるようなことですか。立木さんたちが来る前は、私が作っていましたよね。まあ、色々と不満があるのは理解していますけど。

 それならそれで、出前を取れば良いんです。せっかく炬燵を出したんですからね。ここで、鍋でも突くのも良いのかなって。カニ鍋と雑炊セット、後は適当なおつまみをお願いすれば良いんです。刺し盛りですか、オッケーリクエストに加えておきます。それから肉とか要ります? そうですか、聞くまでもないと言うことですね。じゃあ、今日は焼き鳥にしておきましょう。


 さあて、日本酒の用意も必要ですね。せっかく炬燵ですから、燗酒と言うのも良いと思いますよ。燗酒用のお酒かぁ……立木さんに聞いておけば良かったかな。ストックにある純米酒でも持ってくるかな。うん、ちょっと倉庫を見てきますね。




 こうして差し向かいと言うのは、久しぶりのことになるんだな。取りあえず難しいことは後回しにして、まあ料理を楽しんでくれ。

 なんだ、後が怖いと言うのは。それは、俺の台詞と言わせて貰おうか。お前、どれだけ非常識な……と言うと叱られるか。IMO研究所と関わって、うちがどれだけ掻き回されたと思っている? 苦情……苦情なんかであるものか。いや、苦情と言っても良いのかもしれないな。うちの奴らがな、少しばかり自信をなくしていたりするんだよ。


「それは、苦情を言われるようなことなんですか?」


 研究所を預かる身としては、苦情の一つも言いたくなるってことだ。それから言っておくが、それ以上に感謝しているんだぞ。自信をなくしている奴らなんだが、思った以上に貢献できないことが理由なんだよ。色々と助言してやろうと手ぐすねを引いていたのに、出来たのは分析の手伝い程度でしか無かったと言うことだ。

 それなのに、ずぶの素人が掻き回してくれるんだぞ。御衣黄と武見も、理不尽さに頭を抱えているんだよ。だから苦情は、お前に対してと言うことになるな。


「やはり、苦情を言われる理由がないと思うんですよ。つまり、お前は私に手を引けと?」


 馬鹿野郎、誰がそんなことを言った。お前はな、今のままで良いんだよ。だからこれは、愚痴に類するものなんだよ。

 それは良いのだが、お前はどこまで自覚している? ああ、お前自身の問題のことだ。そうか、仕組まれた一人でしかないと言ってくれるのだな。それがわかっているのなら、俺はこれ以上何も言わないことにする。お前は、今まで通り気が向いたらあいつらに助言をしてやってくれ。違うのか、適当なタイミングで助言をすることになるんだな。


 話は変わるが、お前、御衣黄をどうするつもりだ……むせたな?


「まさか、お前の口からそんなことを言われるとは思っていませんでしたよ」


 まさかと言われるようなことか? あからさまだよな、あの子の意思表示。


「そうかもしれませんが……しませんよ。私では、かすみちゃんの希望を叶えることは出来ませんからね」


 そうか、彼女の希望と言ってくれるのか。まあ、わかる気もするんだがな。まあ、若いうちは悩んでも良いのだろうな。


「ティアがですね、気がついたら50手前になっていたと言っていましたよ」


 おい、俺は時間が解決すると言ったつもりなんだぞ。それなのに、危機感を煽るようなことを言ってくれるな。まあ、聞いているのが俺だけだから良いのだがな。


「お前の所に、若い男が沢山いたと思うんですけどね。誰か、かすみちゃんに挑んでくる男は居ないんですか? 見た目もスタイルもかなりいいと思うんですけど」


 見た目とスタイルか。それを否定するつもりは無いぞ。否定するのは流石に馬鹿だと思うからな。ただな、ちょっとと言うのが憚られるほど当たりが強いんだよ。いや、高飛車とかじゃ無いんだけどな。なんだ、その可愛らしいと言うのは。それは、お前の前だけだろうと言ってやる。

 それはそうと、うちの男どもは相手にされていないんだよ。いや、うちの奴らも優秀なんだぞ。ただなぁ、比較の対象が悪いと言うのか、なんと言うのか。お前や武見と比較されたらだな、うちの奴らはただ優秀なだけなんだよ。つまりだな、お前がおかしな癖を付けたのが理由と言うことだ。


「私は、癖を付けたつもりは無いんですけどね。と言うのか、指一本触れていませんよ」


 彼女の研究において、それだけお前の存在が大きいと言うことだ。それは否定しない……否定したら殴ってやる。


「超一流の学者が、そんな乱暴なことを言ってはいけませんね。それから、こんなものは時間が解決するものだと思っています」


 お前、気がついたら50前とか言っていなかったか。なるほど、オルティア女史の問題は解決したと言ってくれるのか。だったらお前は、20年後も現役でいるつもりか? 勿論、男としてと言っているぞ。


「その時には、私は80半ばですよ。生きてるかどうかもわからないぐらいです」


 80過ぎかぁ……確かにな。俺たちにとって、時間と言うのは残酷なものだよな。

 その時間で思い出したんだが、お前最近無茶しすぎじゃ無いか? 無茶はしているが無理はしていない……いやいや、順番が逆だろう。御衣黄たちの為にも、お前はまだ死んじゃいけないんだよ。大魔王だったか、一歩間違えたらお前は死んでいたんじゃないのか?


「一歩間違えたら、全員死んでいた……と言うことも有りませんでしたね。まあ、危ない橋を渡った自覚はしていますよ」


 襲撃された以上、撃退する必要があったのは認めてやろう。認めてやるのだが、なんで手を出すと言う話になるんだ? それから断っておくが、羨ましいとか思ってないからな。


「うちには、ハイエルフの綺麗どころと翼人の綺麗どころが居るんですけど。紹介、必要ですか?」


 だから羨ましいとか言っていないだろう。いや、だからと言って断っているわけじゃ無いんだぞ。

 それはそれとしてだ、あの外交集団は流石に問題だぞ。あんなのに関わっていたら、時間が幾らあっても足りなくなっちまうだろう。俺はな、お前には研究の手助けに専念して貰いたいんだよ。手助けをするのはいいが、そろそろ独り立ちして貰いたいと言うのか。それから、俺を指差すんじゃ無い。俺はな、普通に常識的な研究者なんだよ。だから、『嘘つき』と言うんじゃ無い。

 俺は俺で、これまで続けてきた研究で手一杯のところがあるんだよ。後一山二山を越えれば、医学は新しいステージを迎えてくれるんだ。


 後進に任せろと言ってくれるのか? ああ、種まきはしっかり済んでいるからな。だから、各地の優秀な奴らが俺の研究を育ててくれるのはわかっているんだ。ただな、俺は引退……違うな、俺も一緒に走って行きたいと思っているんだよ。

 武見君を使えと言うのか。それだったら、答えとしてはノーと言わせて貰う。理由は簡単、ほかに魔法を使える奴がいないからだ。魔法に頼らない、そして再現性の確保された治療手段の確立が必要だと思っている。


「そこで、少し発想を変えてみませんか?」


 発想を変えるだと? 何を変えると言ってくれるんだ?


「あなたの考える理想的な状態。それを武見君に作らせるんです。そしてその状態を治療に適用してみるんです。そうすることで、理想的な状態が本当に理想的な状態なのか。それを確認することが出来るはずです。それと平行して、理想的状態を作る研究を行えば良いんです」


 ちょっと待て。その意味を考えて見る……までもないのか。つまりお前は、研究で行われる試行錯誤の回数を減らす提案をしてくれたと言うことだな。ああ、それに意味が無いと言うつもりは無いぞ。研究の加速と言う意味であれば、間違いなく加速してくれるのだからな。

 だが良いのか? 武見君は、今でも一杯一杯に見えるぞ。これ以上負荷を掛けると、潰れてしまうことにならないか? だったら違う方法を考えると言ってくれるのか。


「シアとシオンを派遣することにしましょう。彼女たちなら、武見君よりも巧みに魔法を使うことが出来ますからね」


 なるほど、だがあの二人に手伝わせて良いのか。いや、うちの奴らは喜んでくれるのだがな。俺か、答えないといけないのか?

 それはそれとしてだ、あの二人を積極的に関わらせて良いのか? お前、研究は人の手によって成し遂げられるべきとか言っていたよな?


 するのは実験の加速だけ。考えることは、人によって行われると言ってくれるのか。それを言われると確かにそうなのだが……ただな、研究者の性ってのを忘れてくれるなよ。ああ、ドンドン脱線していくんだよ。あの二人が本格的に手伝ってくれるのだぞ。やりたいことが沢山出来てもおかしくないだろう。


「再現性の問題を聞いた気がするんですが、私の気のせいですかね?」


 ああ、気のせいじゃ無いぞ。ただな、お前も言っただろう? 『理想的な状態を作る研究は平行して行えば良い』とな。ちなみに再現性ってのは、魔法を使っても問題にされるんだよ。

 そう言うことだ。魔法を使う方は、武見君が開拓しているだろう。だったら、その成果を合体させることを考えれば良いってことだ。大丈夫、うちにも優秀な奴は沢山いるんだよ。だから、ちゃんと系統立てて実験を進めてくれるさ。


「話は変わりますが、研究資金は足りていますか?」


 お前も、大学に金がないのは知ってるよな。まあ、今のところなんとかやりくりしているんだがな。それで、研究資金がどうかしたのか?


「奇特な名誉教授がいましてね、ロハで施設を使わせてくれているんです。お陰でと言うこともありませんが、IMO研究所の研究費が余っているんですよ」


 別に、厚意で使わせているつもりは無いんだがな。うちの奴らの刺激になっているし、面白い結果が出ているのも確かだしな。


「そうですか。投資、寄付でも良いのですが、それを考えたのですけどね。なるほど、必要無いと言うことですね」


 ちょっと待て。誰がいらないと言った?


 ああ、正直喉から手が出るほど欲しいんだよ。だが良いのか?


「最終決済は諸星さんにお願いをするんですけどね。今のままだと、かなりの額が利益として計上されてしまうんです。法人税を払うことを否定しませんが、出来れば研究投資に回したいと思っているんですよ」


 うちとして願ったりなのだが。本当に、うちに投資をして良いのか? 繰り返すが、嫌と言っているわけじゃ無いからな。


「決済を通す関係がありますから、あまり過剰な期待はしないように。スポンサーにも確認しますが、反対はされないと思いますよ」


 そうか、考えてくれると言うのだな。いやな、研究費の工面は一大事業なんだよ。それなりにスポンサーは付いているのだが、正直まだまだ足りていないんだ。


「そうですか。だとしたら、ほかもちょっと突いてみますかね。いえね、せっかく対外折衝を得意としているメンバーを揃えたんです。でしたら、彼等を活用しないのは勿体ないでしょう」


 そうか、例の外交集団を活用すると言うことか。その代わり、人員の派遣を打診される可能性があると言うのだな。それぐらいだったら、俺の領分に違いないな。だから、条件の良いところを巻き込んでくれると嬉しいのだが。

 ところで立木、お礼に俺が接待した方が良いか? 流石に研究所からは出ないのだが、それぐらいなら俺のポケットマネーでなんとかなるんだ。


「でしたら、大芝たちと一緒に私が招待しますよ。ところで、友池氏たちも参加した方が良いですか?」


 すまん、流石に楽しめるとは思えないんだ。だから、彼等は抜きでお願いをしたい。ところで場所なんだが、南紀白浜ってのはどうだ? ああ、今ならクエがうまいんだよ。

 高級なところ? 俺たちが、そんなところを選ぶと思っているのか? 民宿で良いんだよ民宿で。その代わり、魚のうまいところをお願いする。クエ鍋が必須と言うのは今更だからな。




 なあ立木、外交集団は連れて来るなと言ったよな。なんだ、集団じゃ無くて一人だけと言うのは。お前、わかってて言ってるよな? わかって言っている。連れてきた以上は手遅れと言ってくれるのか。ああ、確かに手遅れだな。


「初めまして。本山様のご高名はかねがね伺っております」


 ご高名と言われるようなものじゃ無いんだがな。まあ、それなりに名前が通っているのは確かだな。そうか、緊張していると言ってくれるのか。ああ、どこまで正直に受け取っていいのかわからないんだ。


「そうは仰りますが、ここは完全にアウェイなんですよ。理系の集団に囲まれたら、私程度では太刀打ちできません!」

「そう思ってですね。文系の小谷さんも招待してあります」


 そう言う問題か? お前、どこかずれていないか? だよな、小谷さんもそう思うよな。


「ええ、仰るとおりです。立木さん、はっきり言って私には荷が重すぎます。ええ、どちらの相手も荷が重いと言えば良いのか。分不相応だと思います!」

「大丈夫です。小谷さんは、冷凍マグロ芸をしてくれれば十分ですよ」


 おいおい、未婚の女性にそれは可哀想だと思うぞ。まあ、俺たちの宴会の風物詩と言うのは確かだがな。彼女がいた方が、御衣黄も寛ぐことが出来るだろう。それから武見、お前はこちら側だからな。

 それでなぜ友池氏を連れてきたんだ? お前のことだから、意図があってのことなんだろう? 顔合わせ、顔合わせと言ってくれるのか。これから世界と戦っていくのに、お互いの存在が武器になると言うのか?


「はっきり言って、IMO研究所に出資したい方々が大勢いるんです。ええ、日本だけじゃありませんよ、むしろ外国の方が多いぐらいなんです。ですので、友池氏たちに交通整理をお願いしようと思っているんですよ。ただIMO研究所は、今時点で出資を必要としていないんです。ですので、あなたの所を窓口にしようかなと考えたわけです」

「ですので、私も『武器』を理解する必要があるんです。加えて申し上げるのなら、個人的にも親しくなれたらと思っているんですよ。大丈夫ですよ、これでも立木さんに鍛えられていますからね」


 立木に鍛えられた……余計危なく聞こえるのは俺の気のせいなのか? 気のせい、だったら、危ないのは確かだな。


「お前を、金策から解放するのが第一の目的ですよ。それから大芝、宇梶、あなたたちの場合は金額が大きすぎます。国から出ている金で我慢してください」


 なるほど、俺を金策から解放してくれると言ってくれるのか。なあ立木、俺はどんな礼をすれば良いんだ?


「私に礼、ですか? そうですね、ノーベル賞を2つほど取ってくだされば結構ですよ」


 おい、それは俺の功績になっちまうだろう。なんだ、御衣黄と武見も仲間にして欲しいと言うのは。俺に頼らなくても、この二人ならノーベル賞ぐらい取ってくれるだろう。


「そもそも、私のお金じゃありませんからね。ですから、私に礼をする必要は無いんですよ。お金が集まると言うことは、あなたの価値がそれだけ認められたと言うことなんです」


 俺の価値? IMO研究所の価値が、だと思うのだがな。


「本山名誉教授、それは過小評価と申し上げます。勿論、IMO研究所の価値を否定するわけではありませんよ。伺った範囲では、IMO研究所だけではここまでの成果は出せていないはずです。あなたの指導があって初めて、彼等は力を発揮できていると私は理解させていただきました」

「友池氏には、第三者としての意見を言って貰うことを考えていたんです。そして彼の言葉が、そのまま世間の評価と言うことになるわけですよ」


 なるほど、そこに俺の貢献があると行ってくれるのか。まだ釈然としないところはあるのだが、厚意はありがたく受け取っておくことにする。見栄を張れるほど、余裕がある訳じゃ無いからな。


「それから大芝、宇梶、お前たちの所にはデータ提供ということで良いんですよね。後は、ティアにも協力させますが」

「ラズライティシア様とエリシオンさんだったか、そっちも協力してくれるんだよな?」

「翼人も空間魔法を使えるんですよ。彼女たちにも協力させることにしましょう」


 なるほど、あちらには魔法……高次空間と言うのか。そのサンプル提供並びに知恵を提供すると言うんだな。ところで諸星氏なんだが、彼の協力は得られないのか?


「諸星さんは、今の研究の目処が付いてからですね。理由ですか、更に世界が違っているからと言うのが答えになります。まだ私たちは、神の領域に手が届いていないんです」


 そうか、神の領域と言ってくれるのか。言われてみれば、俺たちはまだ入り口に立ってもいないんだろうな。


「そんなことより、そろそろ始めませんか?」


 そんなことと言ってくれるのか。そうか、そんなことなんだな。接待を持ち出したのは俺だからな、確かに必要なことと言うのは認めてやるよ。




 いつも疑問に思うんですけど。どうして私は、ここにいるんでしょうね。だから、私程度じゃ友池さんのお相手も無理ですよ。ましてや理系組のお相手なんて絶対に無理です。

 冷凍マグロ芸……別に、芸にしているつもりは無いんですけどね。はいはい、私は御衣黄さんと大人しく飲んでいますよ。和歌山の海の幸……美味しいですからね。どんぶりですか、今日は湯飲み程度にしておきます。と言うことなので御衣黄さん、端っこで小さくなっていましょうか……武見さんはあっちでお願いします。


「いや、なんだ、俺もあっちは辛いんだがな」


 辛かろうがなんだろうが、立木さん一人に任せておいちゃ駄目でしょう。なんです、その立木さんが一番の問題と言うのは。その証拠に、錚々たるメンバーを仕切っていると言うのですか。確かに仕切っていますね、立木さん。

 でも良いんですか? ここだと、もれなく冷凍マグロ芸をすることになるんですよ。なんです、それは私だけと言ってくれますか。自分も御衣黄さんも、今まで冷凍マグロになっていないと言うのですね。だったら、ここでその殻を破ってみるのも良いと思いますよ。


 それはそうとして、白船さん、ジャックさん、グレゴリーさんのところなんですけど。そろそろおめでたですよね。受け入れの方はどうなっているんです?


「それだったら、京都の方で受け入れて貰うことになっている」

「ここまでの検診結果は、3組ともとっても順調よ。ただねぇ……」


 なにか、問題になることがありましたか? 何も問題が無いことが問題って、謎かけするのは止めてくれませんか?


「本当に、何も問題が無いのよ。アクアさん、カローラさん、アイシスさん、いずれも順調そのものなの。それから、アクアさんの子供は女の子。カローラさん、アイシスさんは男の子よ。ただねぇ……アクアさんの子供。エコーで見る限り翼が見つからないのよね」


 ええっと、それの何が問題なんですか。翼人の子は翼人。はい、それぐらいは聞いていますよ。つまりなんです、翼人だったら胎児の時点で翼が無いとおかしいと言ってくれるんですね。


「成長と共に翼が出現する……らしいんだ。まだまだ、謎に満ちていると言うのが答えになるな」


 なるほど、『ますます謎が深まった』と言う訳ですね。それはそうと、ささお二方とも湯飲みを空にしてください。難しい話も良いですけど、今は宴会を楽しもうじゃありませんか。紀土……キドで良いんですか? ちがう、キッドと読むんですね。ええ、とても美味しく頂いていますよ。

 それからクエですか、お刺身でも中々味わいが深いと思いますよ。それはそうと、私発見しちゃったんです。ええ、梅干しとお酒ってとっても合うんですよ。昔ながらのしょっぱい梅干しと日本酒って、ベストマッチだと思うんです。


 と言うことなので、今度は黒牛をお願いします。


 いえ、お酒は美味しく飲んでいますよ。間違っても、お酒に逃げているわけじゃありませんからね。あれれ、どうして友池さんがこちらに?


「流石にあちらは辛くなって、ですね」


 友池さんが? ご冗談を。えっ、冗談じゃ無いんですか?


「こう見えても、私もしっかり文系人間ですからね。色々な技術にも触れたことはありますし、紹介して頂いたこともあるんですよ。それでも、あそこの話は辛すぎるんですよ」


 そうですか、友池さんでも辛すぎると仰ってくれますか。なにか、ちょっと安心できたと言う所ですね。それで友池さん、日本酒でいいですか?


「個人的にはワインの白なんですけどね。今日は、皆さんにお付き合いさせていただこうと思います」


 ではですね、こちらに湯飲みなるものがあるんですよ。ぐい飲みじゃないのか、ですか? ぐい飲みだと、あっと言う間に飲み干してしまいますよね。だから、湯飲み、もしくはどんぶりがIMO研究所標準だと思ってください。

 それから御衣黄さん、武見さん、ナイナイって手を振らないように。それはそうと友池さん、いい飲みっぷりですね。そうですか、鍛えられているんですね。


 つかぬ事を伺いますが、後悔とかされていませんか。はい、IMO研に参加したことです。なるほど、底なし沼にはまってしまったと仰ってくれますか。


「後悔と言って良いのかわかりませんが、なぜもっと早く参加しなかったのか。売り込みの出来なかった自分が残念でなりませんね」


 残念と言ってくれますか。だから、手を差し伸べてくれたことを感謝すると言ってくれるんですね。あのですね、立木さんが『挑発』したと聞いているんですよ。とても失礼なことをしたと思っているんですけど……失礼には違いないが、実際は感謝していると言ってくださいますか。


「色々とプライドの高い人が多いですからね、頭を下げるのが苦手だったりするんです。挑発して頂いたお陰で、手を挙げるきっかけを頂いたんです」


 手を挙げるきっかけと仰ってくださいますか。つまり、コンタクトをする口実が出来たと言うことですね。


「そう言うことになりますね。省の方が慌てふためいていたんです。それを理由に、私たちが出しゃばったと言うことです。省の方は、私たちを送り込めたと考えていると思いますよ」


 なるほど。それを、立木さんが意図したと言うのですね。しかしいったいどんな経験を積んだら、そんなところまで頭が回るんでしょう。そうですか、友池さんでも想像が付かないんですね。


「話は変わりますが、小谷さんに伺いたいことがあるんですよ。小谷さんは、菅谷総理の私設秘書でしたよね。それは、将来国会議員になることを考えていたと言うことでしょうか?」


 それは……考えていないと言ったら嘘になりますね。ええ、将来設計の中に国会議員、衆議院議員になることがありました。でもですね、IMO研に関わって、私じゃ無理だなって思えるようになったんです。


「それは、置かれた環境が厳しすぎるからと申し上げておきます。小谷さんも理解されておいでだと思いますが、今の国会議員でIMO研究所を仕切れる方はいらっしゃいませんよ。経験も違いますから、あまり立木さんと比べない方が良いと思います。加えて言うとですね、立場と言うものは人を作ります。まあ、最後まで駄目な人がいるのも否定しませんけどね。小谷さんに議員になる志がお有りになるのなら、諦める必要はないと思いますよ」


 諦める必要が無いと言ってくださいますか。なんです、今なら圧勝できると言うのは。それって、異世界人を利用するとか考えていませんよね?


「公職選挙法上では、グレー扱いになる部分ですね。ただ立木さんが、彼等の国籍について菅谷総理に確認さておいででしたね。総理自ら、『日本国籍』を与えることを明言されています。それを考えれば、ハイエルフや翼人ですか、彼等の応援は選挙違反にはなりませんね。ただですね、彼等を利用しなくても圧勝できると思いますよ」


 異世界人を利用しなくて、ですか。そのですね、私の知名度はたいしたことはないと思うんですよ。それを考えるとですね、普通に選挙戦をしても勝てるとは思えないんですけど。それにこの選挙区の議員さん、しっかりと組織を固められているんです。


「どこまで先を見越したのかはわかりませんが、立木さんがしっかりと下準備をされておいでですよ。無料招待をしている関係で、教職員関係であれば小谷さんを支援してくださると思いますよ。後はですね、大谷村と白鹿村の皆さんですね。これだけ地元に利益……言い方は良くありませんが、お金と人を連れてきてくれた実績があるんです。大谷興業でしたか、彼等も率先して動いてくださると思います。どうです、思ったより票を稼げるとは思いませんか?」


 ですけど、それって私の手柄じゃありませんよね。確かに票を数えられますけど、これじゃ無いと言う気がするんです。ええ、贅沢を言っているのはわかっているんですよ。


「その辺りは、一度立木さんとお話しされた方が良いと思いますよ。勿論、小谷さんが国会議員になる夢を捨てられていなければですけどね」


 捨てたつもりは無いんですけどね。ただ、今のままでも良いのかなって気もしていたりするんです。すみません、ちょっとおかしなことを言ってしまいましたね。

 そっかあ、今ならかなりの票読みが出来るんだ……ええ、ちょっと、かなりですね。心が動いた気がしますね。




 また連れて行って貰えなかったって、文句を言っちゃいけないんだろうな。なんですラズライティシア様、自分たちも連れて行って貰えなかったと言うのですね。美味しいお魚を食べたかった……少しだけ腹を立てていると言うんですか。

 そのあたりはですね、立木さんも色々と考えていると思うんですよ。なんです、それぐらいのことはわかっているのだと。俺が文句を言ったので、カウンターをしただけだと言ってくださいますか。でもですよ、小谷さんは連れて行っているんです。だったら、俺も連れて行ってくれても良いと思いませんか?


「シズカを連れていくのに意味があるから……と言うことになるな」


 小谷さんを連れて行くことに意味がある、ですか。でもですよ、今回は理系の集まりでしたよね? まあ、コンサルグループから友池さんも参加していますけど。


「キヨヒコは、金策に巻き込むと言っていたな。ああ、本山の研究所への投資の話だ。IMO研究所だけで無く、ほかからも金を集めると言っておったぞ」


 本山先生のところへの投資、ですか。それって初耳なんですけど……


「かすみと武見が世話になっているだろう。それだけではないのだが、本山のところに金を入れることを考えておるようだ。本山がもっと自由に動けるようにとか言っておったぞ」


 お金のことは、殆どを立木さんに任せていますからね。ええ、収支報告は受けていますよ。投資余地があるのも報告としては聞いているんです。ただ、本山先生の話は聞いていなかったんです。


「そうか、聞いておらんと言うのだな。だとしたらだ、ぬしの机の上にある計画書はなんなのだ?」


 俺の机の上……ああっ、こんなところに『投資計画書』がっ!


「ぬしは、もう少し注意深く生きた方が良いと思うぞ。そう言うことなので、計画書を熟読することだな」


 ええっとですね、仰るとおりとしか言いようがありませんです、はい。ところで、小谷さんを連れて行くことに意味があると言いましたよね?


「ああ、言ったな。キヨヒコは、そろそろシズカに選択肢を与えてやると言っておったぞ」


 小谷さんに選択肢、ですか。小谷さん、菅谷総理のところから転籍してきたばかりですよね?


「ならば、将来計画と言い換えてやろうか。コウメイよ、ぬしはシズカを一生秘書にしておくつもりなのか?」


 小谷さんを秘書にしておくのかと言うんですね。俺としては、秘書でいてくれるとありがたいと言うのが答えになります。ただ小谷さんは、国会議員になると言う夢を持っていたと思うんですよ。だったら、それを応援するのも俺の務めかなと思ってはいますよ。


「キヨヒコは、それを友池とやらに言わせようと考えておるようだ。それからわれの気持ちだがな、シズカがいなくなるのを好ましくは思っておらんぞ。何しろわれら以外、シズカだけが最初から一緒におるのだからな。仲間と言う意味なら、シズカはとても大切な仲間なのだ」


 ええ、小谷さんがいなかったら、集落がどうなっていたかわかりませんからね。俺が適当だから、小谷さんが纏めてくれたところが大きいと思いますよ。ただですね、今居なくなられると結構困ると思うんですよ。気持ち的ではありませんよ。客観的事実としてです。

 あとですね、菅谷総理も賛成しないと思うんですよ。だって小谷さん、俺たちの監視役なんかしていますよね?


「役に立っているかはわからんがな。ただ、菅谷だったか、そやつの安心材料には違いないだろうな」


 俺も、そう思うんですよ。多分ですけど、立木さんでは代わりにならないと思うんです。立木さん、俺でも予想も付かないことをしてくれますからね。鴻池さんたちが振り回されるって、どんだけって思いますよ。


「キヨヒコは、ぬしがおるから遠慮無くやっておると言っておったな。いざとなったら、ぬしに後始末をさせるつもりのようだぞ」


 俺に……無理無理、絶対に無理って言いますよ。繰り返しますけど、絶対に無理ですからね。




大学の教授って、資金集めが忙しいみたいです。ええ、知り合いもそんなことを言っていましたね。

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