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帰ってきても色々とある

村の特産は異世界です


・帰ってきても色々とある


 良いようにされていると言うのが、正直な気持ちと言わせて貰います。なんのことか、ですか? IMO研究所とか言う、新興の研究所のことです。勿論、その価値がわからないなどと愚かなことは申しませんよ。ただですね、もう少し協調性を持って貰いたいと言うのが経験を積んだ者としての苦言と言うことになります。

 腹を立てていないか、ですか。嫌ですね、若い頃ならいざ知らず、今は頭を沸騰させるようなことはありませんよ。ええ、外交と言うのは化かし合いが原則なんです。従って、腹を立てたら負けと言うのが常識なんですよ。


 IMO研究所の代表、ああ、あの異世界帰りの青年ですね。中々大した物とだと思います。ええ認めるのは吝かではありません。D.C.で発生した停止現象ですか、その被害を止めただけでも大きな成果だと思います。ただですね、その前にあった竜人の襲撃を含め、日本政府の対応がいただけませんね。もっとうまく使いこなさないと、我が国の利益に繋がらないと思います。

 息子が同行者として抜擢された。扱いの難しい問題ですからね、適切な人選であることを評価します。


 しかし立木でしたか、あのような愚物が取り仕切っているのは気に入りませんね。経歴を調べてみましたが、少しも光るところを見いだせませんでしたよ。してみると、日本政府の無様さも、あのような愚物を重用していることが理由に思えてしまいます。


 はい、友池です。これはこれは上原大臣。ご無沙汰と言う程会っていないとは思いませんが。それで、今日はどのようなご用件で? 先日ギブソン大統領を迎えたときのこと、ですか。相変わらずIMO研究所に振り回されているなと、古巣の不手際に目眩がした気がしますよ。ええ、転移でしたか、その活用は、うちが切り出すべきもののはずです。

 それで、わざわざ電話を頂いたのはどのようなご用件で? ちょっと耳に入れておきたいこと、なんですか、ええ、遠慮無く言ってください。


「ツアコン程度なら使ってやる……とかなんとか?」


 それは、私の息子のことを言っているのですか? 違う、省全体のことを言っているのだと。接待用の海外駐在員以上の仕事をしていない。その自覚を持っているのかと言われたと言うのですね。ちなみに、それは誰が口にした言葉ですか?

 なるほど、立木氏が直接息子に言ったのですね。


 その挑発、しっかりと乗ってやろうじゃ無いかっ!


 なんです大臣、激怒しているように聞こえたと仰るのですか? いやですね、私はとても冷静ですよ。ええ、冷静に腹を立てていますので。大丈夫ですよ、IMO研究所に怒鳴り込んだりはしませんし。ええ、あんな山奥にまで足を運ぶつもりなんかありませんので。

 それはそれとして、どうして私に告げ口のような真似を? そうですか、省の中が騒ぎになっていると言うのですね。だから、早い内に耳に入れた方が良いと考えられたと言うことですか。ええ、判断としては悪くないと思います。ただですね、この程度のことでガタガタと騒ぐなと言いたいですね。それからもう一つ、OBに面倒を押しつけるものではないと思います。明らかに、責任逃れを考えておいでですよね?


 言葉に詰まりましたね。やはり、責任逃れを考えておいででしたか。仕方がありませんね、古巣に少し恩返しをすることにしましょうか。ですので、先方に連絡をして頂けませんか? ルートが無い……いくら何でも、恥ずかしい状況になっているのではありませんか? 自覚はしているが、打開策が今のところないと仰ってくださいますか。つまり、IMO研究所から救いの手を差し伸べられたわけですね。

 でしたら、それを後悔させてあげましょうかね。外からは難攻不落でも、内に入れば簡単に浸食できるものなのですよ。ええ、歴史的教訓と言うのを教えて差し上げようと思っています。


 結果的に、先方との連絡は菅谷総理を頼ることになりました。この時点でですね、省に勝ち目が無いのははっきりしていますね。少なくともこの問題は、菅谷総理預かりと言うことになるわけですから。

 なんです、紹介はしてやった。後は、お前たちが勝手にやれと言うのは。それは、好きに暴れて良いと言っていますか? なるほど、好きにして良いと言うことなのですね。なるほど、総理は立木氏をそこまで評価していると言うことですか。私のことも評価している……ありがとうございますと答えるべきなのでしょうかね。


 それで菅谷総理経由で先方と連絡。結果、相手がこちらに出向いてくれることになりました。転移能力者を抱えていることを考えれば、あちらが動く方が簡単なのでしょうね。

 ええ、虎ノ門にあるオフィスを指定しましたよ。ポトマックコンサルティング。俗に言われる天下りの受け皿となる外郭団体と言う奴ですね。


 そして約束通り……なぜか午後を指定されたのですが。約束通りの時間に、IMO研究所から副所長の立木氏、所長秘書の小谷氏がやってきました。立木氏は良いのですが、小谷氏は確か菅谷総理の私設秘書でしたね。どうやら、私にプレッシャーを掛けようと考えたと言うことですか。



 甘いと言って差し上げましょう



 それで現れた立木氏ですが……はっきり言って冴えない男ですね。着ているものにしても、どこかの吊るしで売られているブレザーのようです。ズボンにしても、上等とは言えないと思います。そして仕立てのあまり良くないストライプのワイシャツで、しかもノーネクタイで来てくれましたか。時計は、そうですか、スマートウォッチと言う奴ですね。

 一方小谷氏は、紺のブレザーですね。まあ、秘書が目立つのは宜しくないので、極真っ当なチョイスと言って差し上げましょう。その辺り、菅谷総理の下で鍛えられているようですね。


 私、私ですか? 銀座の老舗に付き合いがあるんですよ。従って、そこのオーダーメイドのスーツを着ています。要人と会う仕事をしていると、安物など着ていると自分の価値を下げることになるんです。そしておかしな格好をすると、色物に見られてしまうことになります。ちなみに時計は、控えめなところでロレックスをしています。

 ようこそポトマックコンサルティングに。ええ、立木さんのご活躍は幾度も耳にしていますよ。わざわざ遠くまでご足労頂き感謝いたします。なんです、緊張していると言うのは。世界が違う人と会うのだから、どうしても緊張してしまうと仰るのですか。まさか、そのような冗談を聞かされるとは思ってもいませんでしたよ。冗談では無く本音で言っている。ご謙遜をと、繰り返させていただきます。


 それから小谷さんと仰りましたか。菅谷総理が、頑張っていると評価されておいででした。こうして同行されているのは、それだけ研究所内で重要な位置を占められておいでと言うことですね。

 なんです、その冷凍マグロと言うのは? 今日は来たくなかった、副所長命令で無理矢理出席させられたと仰りますか。狐と狸の化かし合いは、胃に良くないと言うのですね。見た目からすると、狸は立木さんと仰るのですね。でしたら、狐は私と言うことになるわけですね。いやぁ、お若いのに中々仰りますね。なるほど、集落で鍛えられた訳ですか。


 今日ですか、なぜ声をお掛けしたかと言うことでしょうか。それでしたら、先日仰ったことの真意を伺いたいと思いましてね。いえ、本来なら私が出向くところだと思っていますよ。しかし、転移でしたか、その能力のないものには如何にも上里集落でしたか、上里集落は遠すぎるのですよ。

 そうですか、真意も何も言ったとおりだと仰るのですね。


「あなたが、矢面に立ったことがすべてだと思っておりますよ」


 そうですか、そこまで理解されておいでと言うことなのですね。失礼を承知で伺いますが、あなたは本当に立木清彦氏なのですか? ええ、IT企業で管理職をされていた立木さんなのかと聞いているんです。どう分析してもですね、前々職ですか、違いが多すぎるのですよ。

 なんです、開き直った年寄りの悪あがきと言うのは? 年寄りが開き直ったぐらいで、どうにかなるものではないのですけどね。それが本当なら、この世界はもっと面白いものになっていますよ。


「この世界がもっと面白いものと仰りますか。今でも、十分に面白いことになっていると思うのですけどね」


 そうですか、ですが少なくとも私の周りは面白くなっていませんね。勿論、異世界は興味深い存在だと思っています。ただ、今は、それだけと言うのが正直な気持ちですね。

 最先端を見ていないからと仰りますか。なるほど、それも一理あるのかも知れませんね。ただ、その最先端を公開していないのはあなたたちだと思っているんですよ。だったら、見せてくださると仰るのですね。ほほう、公開されている以上の世界があると仰りますか。それで、私はどうすればいいのですか?


「何もする必要が無いと言うのが答えになりますね」


 何もしなくても良い。でしたら、どうやって最先端を見せてくださるのですか? 立木さんの隣を見ろ……隣にいるのは小谷さんなのですがっ!


「紹介します。神話の時代から生きてきた、エルフの大魔法使いであられるラズライティシア様です。シア、こちらが外務省の重鎮、友池実篤さんですよ」


 いつの間に……と言っても良いと思いますよ。それで、いえ、お茶で結構です。そうですか、私はIMO研究所に拉致をされたと言うことですね。違う、違うと仰りますか?


「ええ、ちょっと窓から外を見てください」


 窓から外を、ですか。なるほど、外の景色は見慣れた虎ノ門の景色ですね。つまり、こちらとIMO研究所を繋いだわけですか。しかしこれは、魔王城公開で用いられている技術ですよね。最先端と言うには、すでに陳腐化……は流石に言い過ぎですね。ただ、繰り返し公開されて手垢が付いた感があると思いますよ。

 そう思うのなら、その扉を開けて向こう側に行ってほしいですか。あちら側に行くと、何かあると言うのですね。それで、こちらは……なるほど、本山名誉教授のラボなのですか。それで、私にどのような最先端を見せてくださるのですか?


「武見君、例のものを見せてくれますかね」

「良いんですか?」

「頑丈な年寄りですから大丈夫でしょう」


 なんです、その頑丈な年寄りと言うのは。それはそうと、私が浮いているように感じるのは気のせいですか? そうですか、気のせいではないのですね。しかしこの程度、女神様の恩恵とやらで出来ていることですよね?


「女神様の恩恵を使っていないからです。ちなみに、これは武見君が魔法によってあなたを浮かせているんです。すでに、魔法も論理的解析が入っているんですよ」


 魔法の論理的解析……と仰りますか? それは、どのような意味で仰っていますか?


「武見君は、魔法をプログラムとして解析しています。その結果ですが、『魔力』の供給さえ受ければ彼もこのように魔法を使うことが出来るんですよ。今現在は、魔力を女神様に貰っているのですが、直接源から貰ってくる検討に入っているんです」


 それは、我々一般人でも魔法を使うことが出来ると言っていますか? そこまでには、まだ多くのステップを踏む必要があると言うのですね。


「それとは別に、魔法によって細胞に対して干渉することも出来ています。細胞のリプログラミングは技術として、すでに確立したものがあります。新しい医療として、適用範囲を探っているのも確かです。ただ我々は、魔法と言う別のアプローチで、更に応用範囲を広げることを考えています。先ほど最初の結果が出たところですが、細胞の寿命延長も可能であることが確認されました」


 すみません、頭がしっかりと文系なので。もう少しかみ砕いて意義を教えて貰えますかね。


「不老とまでは言いませんが、寿命を大幅に伸ばす方法の手がかりを得たと言うところです。今のところ細胞の寿命を倍程度に伸ばすことが出来そうですよ。勿論、超えるべき課題は沢山残されているのですけどね」


 それはっ! 失礼、少しばかり興奮してしまいました。なんです、まだ他に成果があると仰るのですか?


「手術の概念も変えられる可能性が出てきました。今までは切った張ったをしていました。それを、本山たちの研究で多能性幹細胞を移植する方法が編み出されました。そして新たに、細胞自体を直接操作する方法の目処が立ったと言うことです」


 すみません。ちょっと理解が追いついていないんです。もう少し、具体的な事例で教えて頂けないでしょうか?


「でしたら、あなたの腕にナイフを入れて……冗談ですので本気にしないでください。ええ、ナイフで切るのは私の腕にしておきますので。じゃあ、武見君、治療の方をよろしく頼みますよ」

「まだ、成功確率が低いんですけど……」

「切り方さえ失敗しなければ、通常の治療でも治る程度です。いざとなったら、シアかアンに直して貰いますよ」


 そこで、メス、ですか。メスでブスリと……いえ、あまり血を見るのは得意では無くてですね。そこで傷口を差し出してくれますか。ええ、しっかりと穴が空いていますよね。しかも、しっかりと血が出ているのも確認できました。手品、手品でないのは確認できたと思いますよ。もの凄く痛い、ですか。当然と申し上げておきます。


「ここの所、続けて痛い目に遭っている気がしますよ。じゃあ、武見君お願いします」

「うまくいかなかったら、すぐにラズライティシア様に直して貰ってください」

「魔法はイメージが大切と聞いています。ですから、うまくいかないと言うイメージを持たないでくださいね」

「あまりプレッシャーを掛けないで貰いたいのだが……」


 何か呟いているのは、恐らく魔法ですか、魔法を唱えているのでしょうね。ただこの言葉を理解するのは、今の私には無理な相談と言うものです。ですので私は、ぶすりと刺された傷跡をしっかりと観察することにしました。するとどうでしょう、血の跡こそ残っていますが、開いていた傷口が目の前で塞がってくれたではありませんか。濡れティッシュで血を拭い去ると、傷一つ無い年寄りの腕が目の前にあったのです。

 傷口のあった腕を持ち上げた立木氏は、『魔法には』と説明を始めてくれました。


「治癒魔法と言うものが存在しています。この治癒魔法、イメージが大きな意味……違いますね、ほかの魔法も同様にイメージが重要でしたね。それはそれとして、傷の治ったことをイメージして魔法を発動させます。さて、ここで重要なことは、怪我を治すにはイメージが重要と言うことです。だとしたらですね、誰が人体に対してそのイメージを一番持っているのかと言うことです。更に踏み込んだことを言うのなら、人間の身体に対する理解はこちらの医者に異世界人は敵いません。ここまでの説明で、何か思いつくことはありませんか?」


 つまり、患部を理解出来る医者ならば進んだ治療が可能になると言うことですか。いや、それは医学に革命を起こすことが出来ませんか?


「現時点での問題は、こちらの人間で魔法を使えるのが武見君だけと言うことです。ただし、集落の住人の多くは魔法を使うことが出来るんですよ。そしてブーランジェリー王国のある世界、シャトレーゼ王国のある世界にも、多くの魔法使いが存在しています」


 その世界への窓口は、唯一IMO研究所だけと言うのですね。ええ、認めます。私たちが、あまりにもその価値に対して無知だったことを。竜人やエリシオンさんが示した破壊的力、それだけを注目していたのは間違いありません。


「ですので、見え見えの挑発に乗ってくださったことに感謝をしているんですよ」


 それは、私の台詞と言わせていただきます。挑発と言う形で、私たち外交を生業にする者に救いの手を差し伸べてくださったんです。見極めてやろうなどと言う考えが、どれだけ傲慢なことだったのか。私は、それを思い知らされた気持ちになっているんです。


「いえ、こちらもとても失礼な真似をしたと思っているんですよ。ただ、私たちは交渉に長けていないのです。ですので、このような直接的な方法をとってしまったと言うことです」


 なるほど、交渉に長けていないと仰るのですね。取りあえず、ご冗談をと返させていただきます。持ち札が強力だからと言うのは認めますが、私のようなロートルがまんまとおびき出されてしまいました。その事実だけで、『交渉ベタ』と言って欲しくないと思いますよ。

 とは言え、私に求められる役割が理解出来たような気がします。ですので、私から一つ提案させていただきたいと思います。私が理事長をしているポトマックコンサルティングですが、そっくりそのままIMO研の傘下に入れていただきたい。ロートルが5人、そしてひよっこが5人では、十分な戦力と言うのはおこがましいのは理解しています。ですので、IMO研究所の末席にでも加えて頂ければ幸いです。


「最終決定は、研究所代表である諸星さんが戻られてからと言うことで宜しいでしょうか? 取りあえず、私の方では後沢氏、堀内氏には事情を説明しておきます」


 宜しいも何も、それが当然の手続きと言うのを理解しておりますよ。

 それからですね、省への説明は私に任せて頂ければと。ええ、これでも面倒がられているのはわかっているんです。面倒な年寄りが、更に厄介な年寄りとなって口を出すことにいたします。


「それでも、外務省の方々は安心されるのではありませんか?」


 仰るとおり、安心をするのでしょうね。私が加わることで、訳のわからない存在から、厄介でも理解出来る存在になるわけですからね。ただですね、IMO研究所に加わる以上、私も今まで通りのやり方をするつもりはないのですよ。

 いやぁ、譲歩が原則的に要らない立場と言うのは、ストレス解消にはもってこいだと思いますよ。積年の恨みとはまでは言いませんが、溜まっていたものを吐き出すことにしましょうかね。




 友池氏……お父さんの方を紹介された夜、うん、予想が付くよね。集落あげての大宴会をさせて貰ったよ。その大宴会、東京からシンクタンクのメンバー全員が集まったし、立木さんが声を掛けたので後沢と堀内氏も出席したんだ。いやね、人集めは立木さんに期待していたのは確かだよ。だけど、これってその期待を超えていると思うんだ。

 なんでさ、こんな外交に於ける頭脳集団を引っ張ってこられるんだ? それはそれとして、あのおじさん……ちょっと見覚えがあるんだけど、胸に国会議員のバッチを付けてるあの人なんだけど、誰?


「上原外務大臣ですけど。諸星さん、米軍基地で会っているはずですよ」


 そうか、やっぱり外務大臣だったか。そう言われれば、確かに横田で会っていたのを思いだしたよ。ちなみにだ、あの時の俺って緊張でガチガチになっていたんだ。


「その、ガチガチになっていた人が上里集落滞在を提案するんですか?」


 いやさぁ、俺がエリート苦手っての知ってるよね。友池さん、康成さんの方なんだけどね。外務省の超エリートの人なんだよ。エアフォースワンでさ、その人と同じ空間に閉じ込められるんだよ。俺が我慢できると思う?


「もう少し、ご自身の価値を理解していただきたいと思っているんです」


 もしもし、どうして友池さんが……面倒ですね、どうしてあなたがこちらに?


「上原大臣のお供です。恐らくですが、父への牽制、もしくは人質と考えたのではありませんか?」


 そうですか、お父様に牽制するためと言ってくれるんですね。なんです、甘すぎると言うのは?


「別に、将来の外務次官に未練はないと言うことです。面倒なことを言うようなら、退職願を出してポトマックコンサルに転職することにします」


 つまり、うちに来ると言うのですね。いえ、歓迎しますよ。歓迎はしますけど、そんなことで良いんですか? なにか、日本外交の屋台骨が揺らいでしまう気がするんですよ。ですから、すでに揺らいでいると言わないように。不安にしかならないじゃないですか?

 ところで友池さん、今更ですけど奧さんがいるんですよね? そうですか、外交官として独身は宜しくないと言ってくれますか。それで、お子さんは? なるほど、お二人おいでなのですね。それでですね、ハイエルフとか翼人の女性をどう思いますか? いえ、闇エルフをダメと言うつもりはありませんよ。


「私は、妻を愛していますよ。子供も大切にしているんです」


 何か、当てつけられたような気がする答えですね。そうですか、当てつけているつもりは少しだけあると仰ってくれますか? ただ、答えとしてはごく一般的なものなのですね。おかしいなぁ、俺もセレスとルーテシアを愛しているんだけどな……


「恐らく余所でも言われたかと思いますが、そこで二人の名前が出るのが問題と言うことです」


 やっぱりそうなりますか。そうなるんじゃないのかと思ったんですよ。では、俺はお父様たちに挨拶をしてきます……どうして付いてきますか?


「あちらの側にいないと、何か危険な気がしたんですよ」


 危険を感じましたか……危機察知能力は備えられているんですね。ええ、翼人とハイエルフが獲物を狙う目をしているんですよ。

 では、お父様の同僚の方たちにご挨拶を……しかし、年齢層がぐっと高くなったな。


「定年での退官組ですからな。あなたのお父上よりも年上ばかりと言うのは間違っておりませんぞ」


 そうですか、ところでお名前をいただいて宜しいですか?


「有原と申します。昔、英国大使などしておりました」


 英国大使……つまり、オルティアさんのところと言うことですか。


「今の首相、アリシア氏が議員時代に挨拶をさせて貰ったこともあります」


 ええ、そう言う人の集まりなんですよね。それで、お隣の方々は?


「私は、立花荘八と申します。中国大使なんかしていましたよ」

「ご挨拶が遅れました。私は、御門智則と申します。少しばかり、アラブ諸国で大使をしておりました」

「朝日敬吾と申します。ロシアで全権大使などしていました」


 はあ、皆さん錚々たる経歴をお持ちなのですね。ああっ、胃がきゅっと縮まった気がするぞ。ええっと、立木さんヘルプをお願いしても良いですか?


「お願いされても、なんの助けも出来ませんよ。この中に入ったら、私なんて下っ端そのものですからね。塵芥と言う奴ですよ」

「いえいえ、立木さんのご活躍には感服させて頂いております。これで、外交の素人と伺って、世の中は広いと感心させて頂いたぐらいです」

「大使までされた方に言われると、私も胃がきゅっと縮まった気がしますよ。このままだと血を吐いてしまいそうなので、あちらに行っても宜しいですか?」


 ええっと、『嘘ばっかり』と言って良いですか。ほら、4方も『冗談ですよね』と言ってくださいましたよ。


「嘘も何も、私など小物でしかないのですけどね。しかも私は、根っからの理系人間なんですよ。外交とか戦略とか、素人なのは今更説明しなくてもわかっていますよね」


 繰り返します、違いますね、声を揃えて言わせて貰います。『それがどうした』と。いやぁ、揃いましたね。やはり皆さんも、同じことを考えてくださったのですね。


「外交戦略部門が、立木副所長の配下と言うのがすべての答えになっていますよ」


 ああっ、友池さんも参戦してくれましたか。ええ、研究の方はオルティアさんですからね。それ以外の部門は、立木さん配下と言うことになるんです。で良いんだよな、後沢。


「孝明直轄にするのは無理ゲーだからな。必然的に、立木氏の下に置くことになるな」

「ハロワで拾われた老人に、過剰すぎる要求だと思いますよ」

「つまり俺は、宝物を掘り当てたと言うことだな」


 ああ、それは積極的に肯定させて貰おう。


「知恵袋も用意したんです。いい加減、引退させて貰えませんかね」

「あーっ、そのことなんだがな。各方面から、絶対に逃がすなと釘を刺されているんだ」


 各方面、各方面なのか?


「各方面だな。菅谷総理とか本山名誉教授とか大芝教授たちと言えばわかるよな。後はだな、俺と堀内も同じ考えなんだよ。考えても見ろ、誰がこの面子を揃えることが出来るんだ? 今回のことで、うちの株価も爆上がりになっているんだぞ。と言うことなので、立木氏、特別ボーナスを出すので期待してくれ。それから、引き続き人材の発掘をお願いする」


 だそうですよ立木さん。もう、大活躍ですよね。なんです、休暇を取って温泉に行きたいのですか。ええ、2泊3日程度なら許可をしますよ。


「温泉宴会、ですかな?」

「是非ともご一緒させていただきたいところですな」

「いいですな。寒い季節なので、鹿児島辺りはどうですか?」

「だそうですよ諸星さん。諸星さんもご一緒されますか?」


 俺? うん、今回は遠慮させて貰うかな。ただ、俺の代わりに小谷さん『遠慮します』……そうか、被せてくれたか。


「でしたら、私は慶子を……」


 両手でバツを作ってくれましたね。うん、その気持ちは俺でもよくわかるな。だってケイコさん、酔っ払いには混じりたくないって言っていたから。この面子の温泉旅行……絶対にくつろげないもの。


「シア、シアは一緒に行ってくれますね」

「われか、われも一緒に行くのか? いやな、キヨヒコの誘いだ。嫌と言うつもりは無いのだぞ。だがな、ぬし以外全員男が集まっておるのだろう。ならばだな、われは遠慮した方がいい気がするのだ」

「インテグラ、あなたも同じ答えと言うことですか?」

「私? かびたババアが行かないのなら……後が怖いので行かないことにするわ」

「多分、呼んでも出てこないのでしょうね……」


 上を見ましたね。上を見たと言うことは、クロアさんとかフィオレンティーナさんのことを考えましたね。多分ですけど、出てきたがらないと思いますよ。


「友池さん。どうしてこうなるのでしょうね?」

「それを、我々の責任にしていただきたくありませんな。何しろ駐在しているときには、数限りなくハニトラを仕掛けられたぐらいなんですよ」

「それは、女性に好かれたとは言わないと思います」


 えっ、ハニトラって本当にあったんですか。その辺りのお話、じっくりと伺いたいなと。なんです、今現在ハニトラに掛かりまくっていると言うのは。


「諸星さん。あなたは、奧さんが何人いましたかね」


 ええっと、まだ闇エルフに手を出していないので11人だったかな。


「まだ、手を出していない、ですか。つまり、手を出す予定があると言うのですね。だそうですよ、ハニトラを仕掛けてもどうやら無駄そうです」


 なんです、その無駄と言うのは。浮気をしても、個人的弱みになってくれない。だから、ハニトラを仕掛けるだけ無駄なんですか。つまりなんです、脅迫のネタにならないと言ってくれるんですね。確かになぁ、今更別の女性に手を出しても、『またですか』と言われるだけだもんなぁ……


「そうですね。今度は『どこの王女様ですか』と聞かれるだけでしたね」


 今のところ、王女様は二人なんですけど。そうですか、二人いること自体がおかしいと言ってくれるのですね。そうか、やっぱりおかしかったのか。そうじゃないかと思っていたんですよ。




 大宴会の終わった翌日、外務省関係者は転移ゲートを通って東京へと帰って行かれました。昨日はですね、思いっきり緊張なんかさせられてしまいましたよ。なんです立木さん、自分も緊張が酷かったと仰ってくださるのですね。何度も繰り返したことですけど、『嘘』と言って差し上げます。

 諸星さんもそう思いますよね。でしたら、声を揃えてさんはい、『嘘』。声が綺麗に揃いましたよ。


「年寄りいじめですか? 酷いですね。昨日は、本当に気を抜くことが出来なかったんですよ」


 立木さんが、ですか? なんです、過剰な評価は良くないと言うのは。でもですよ、立木さんのお陰で、IMO研究所は錚々たる人たちをメンバーに加えているんです。後沢さんたちも、とても高く評価されておいででしたよね。菅谷総理も、『絶対に逃がすな』と仰ったそうじゃありませんか。


「やはり、小谷さんも理解されていませんか。まあ、諸星さんも理解されいないようですけどね」


 諸星さんも、なんですか? 諸星さん、何か心当たりがありますか? そうですか、無いのですね。いえ、私もありませんから、別におかしなことじゃないと思いますよ。


「一番大きな誤解は、彼等が救いの手を取った……感謝していると考えていることです」


 救いの手を差し伸べたのは、確か立木さんですよね。それは否定しないですよね?


「否定しませんよ。その上で、IMO研究所の構成人員を思い出してください。トップは、市会議員をしていた諸星さん。そしてその秘書として、菅谷総理の私設秘書をしていた小谷さん。ハロワで拾われた技術屋の私、理論物理学者のティア、ゲーム会社サンダーボルトの朽木君、医者の武見君と研究者のかすみちゃん。さて、この中で悪巧み……は言いすぎにしても、駆け引きの世界で生きてきた人がどれだけいますか?」


 諸星さん、そこで肩を竦めないように。それから、私を指差すのもダメですからね。それでも今の質問に答えるとするとですね、諸星さんと私と言う所でしょうか?


「では、海千山千のあの5人に対抗できますか? それ以前に、何を考えているのか想像が付きますか?」


 ええ、絶対に無理とお答えさせていただきます。諸星さんは、そうですよね、絶対に無理ですよね。もうね、人生経験が違いすぎますよ。しかもあの人たちって、大国とかと渡り合ってきたんですよね。ゲームで言うところの経験値がだんちだと思いますよ。


「ポトマックコンサルですが、配下に加わる決断をされていますよね。いくら何でも、早すぎると思いませんでしたか?」


 ええっと、度肝を抜いたから……と言うのは流石に無理がありますね。言われてみて、待ち構えていたと言う気がしてきました。もしかして、彼等はこうなることを初めから想定していたと言うことですか?

 違う、そうなるように彼等が誘導したんですか?


「策略とか謀略とか、IMO研究所と言うのは素人の集まりなんですよ。その中に海千山千の5人が、組織ごと入ってきたんです。さて、私たちに賛同したからだと小谷さん、諸星さんも考えられますか?」


 つまり、なんですか。中に入ってIMO研究所を牛耳ろうと考えていると言うことですか? すべてでは無いが、それに近いことを考えているはずと仰るのですね。


「役人と言うのは、本来縁の下の力持ち的な役割を果たす組織なんですよ。最近悪用されている気がするのは忘れることにしますが、その中で外務省だけはかなり毛色が違っているんです。外交官と聞くと、小谷さんはどのようなイメージを持たれますか?」


 ええっと、華麗な世界ですか? 各国で情報収集し、日本の利益を拡大する人ですよね?


「諸星さんは?」

「右に同じです」

「それは、縁の下の力持ちとは違う価値観だと思いませんか? そして違う価値観を持っている人たちが、今まで蔑ろにされてきたと思っているわけです。蔑ろにされたと考えた時、彼等はどのような活動をしてくれるのでしょうね」


 ええっと、あまり明るい未来が見えない気がするんですけど。諸星さんは、そうですか、諸星さんも利用される未来しか見えないと言うんですね。でもですよ、立木さんはわかっていて彼等を招き入れたんですよね?


「このままだと、IMO研究所がブーランジェリー王国に逃げ出す未来が見えたからです。誤解無きように申し上げておきますが、彼等はもの凄く優秀なのですよ。外交ベタと言われる日本ですが、間違いなく彼等は優秀なんです。問題は、その使い方が未熟だったと言うことです。そのせいで、彼等も劣化してきているんですよ」


 結構辛辣なことを仰るんですね。それって、政治家、特に与党に問題があると言っていますよね。否定できるかと言われたら、流石に否定は難しいと思いますよ。


「言い方は悪いのですけど、彼等はIMO研究所に罠を掛けたわけです。すなわち、彼等にしてみれば私たちは罠に掛かったことになるわけです。釣り糸を垂れた釣り人を、待ち構えていて海の中に引きずり込んだとも言うことが出来ますね」


 それって、もの凄く状況が悪くないですか? でもですよ、この件には菅谷総理も関わっていますよね。つまり、菅谷総理の意思が入っていることになりませんか?


「菅谷総理の意思……ですか。流石に、それを否定することは出来ませんね。ただ、それが小谷さんの考えているようなものかは別ですけどね」


 別と言ってくれますか。私は、IMO研究所の首に鈴を付けることを考えていたのですけどね。なんです諸星さん、『お前たちで勝手にやれ』と言うのは。


「いや、友池さん……康成さんの方なんだがな。アメリカで話をした時、菅谷総理が耳を塞いでいたと教えてくれたんだ。ああ、立木さんが友池さんに声を掛けたときのことだよ。友池さんは、菅谷総理は『本件に関わらない』つもりと言っていたんだ。


 それって、総理にしては無責任だと思いますよ。ええっと、違うんですか?


「小谷さん。面倒な組織が2つ有って対立しているとき、どうすることを考えますか?」


 その面倒な組織って、うちとポトマックのことを言っています? そうですか、その二つと言ってくれますか。だから『勝手にやれ』と言うのですね。つまり、潰し合ってくれた方が都合が良いというのですね。


「どちらが残っても、面倒さは変わらないからだと思いますよ。単純に考えれば、面倒な相手が一つ減ることになるわけです……と言うのが、常識的な考えなんですけどねぇ」


 なんです、ほかに問題があるんですか? 問題しか無い、こちらに負担を掛けるなと言ってくれますか。ちなみに、こちらって誰のことを言っています? それから、私を指差さないように。勿論、諸星さんだったら『無理っ!』。思いっきり被せてくれましたね。


「だからと言って、私に一癖も二癖もある……違いますね、癖しか無い年寄りを押しつけないで欲しいものです。もうね、常識的に能力の限界を幾つも超えていますよ。京都の研究が進み始めているので、年寄りの面倒なんか見たくないんですよ。年寄りの面倒を見ても、人類の進歩に何の貢献も無いんです。理系的な知的興奮からも離れているんです。ですから、法学部出身のお二人に任せたい『無理っ!』二人して被せないで欲しいんですけど。お二人とも、国会議員を目指しておられたんですよね?」


 いやぁ、つくづく力不足を思い知らされましたので。なんです諸星さん、菅谷総理から人が良すぎると言われたのですか。だから国会議員には向いていないのを理解した。だそうですよ、立木さん。


「仕方が無い。朽木君に……こら、そこでいきなり踊り出さないようにっ!」


 もの凄い危機察知能力ですね。しかも朽木さん、こっちを見て口元をにやけさせているよ。


「外交官って、ねちっこいから嫌なんですよね。と言っても、誰も引き受けてくれないわけですか。仕方が無いので、なんとかすることを考えて見ますよ。最悪の場合、シアかシオンの手を借りることにでもしますか」


 もしもし、なんか不穏な言葉が聞こえてきたんですけど。ええ、『最悪』とか手を借りる人たちのことを言っています。ラズライティシア様はまだしも、エリシオンさんだと手荒なことにしかならないと思いますよ。そうですか、色々と無かったことにすると言うのですね。ところで、本当にそれだけですか? さらに大きな混乱を起こすことと考えていませんよね? 考えていませんよね?

 ごめんなさい。これ以上の面倒は勘弁して欲しいんですよ。諸星さんもそう思いますよね。はい、強く同意してくださるのですね。


「だとしたら、お二人の期待には添えませんね。彼等が加わらなくても、ますます世界は面倒なものになってくれるんですよ。それに比べたら、彼等を巻き込む方がマシだったと言うことです。取りあえず、彼等は私の『部下』になるわけです。でしたら、彼等の慣れ親しんだ世界を真似てみますかね」


 もしもし、なんです、その慣れ親しんだ世界と言うのは? 正確には、若手の時に経験した世界と言ってくれるのですね。上からの理不尽に耐えて貰う。もしかして、いじめのようなことをしようとか考えていませんよね?


「刺される前に刺せ、を実行しようと言うだけです。大人しいこと、控えめなことが美徳でないのは小谷さんもご存じですよね?」


 そうきましたか。ええ、私の学んできた世界では美徳ではありませんね。むしろ、間抜けと言われてもおかしくないことだと思います。


「後はですね、彼等の価値観を変える……壊した方が良いのかな。それをちょっと考えて見ますよ」


 さっきから、穏やかじゃ無いことばかり聞こえてくるんですが? 価値観を壊すって、何をどうしようと考えているんですか?


「諸星さんを代表として、上里集落の価値観、大切にしているのは集落の住人を守ることです。色々と仕掛けさせて貰っていますが、前提として異世界から来た彼等のためになることを考えたものなんです。一応確認しますが、間違ってはいませんよね?」


 ええ、間違っていないと思っていますよ。元々上里集落を作ったのは、異世界から帰ってきた人の居場所を作るためなんですからね。今は、一方通行で来た人たちも含まれていると思っています……だけじゃ有りませんね。異世界との交流窓口にもなっていると思っているんです。

 そうですよね、諸星さんも同じ考えをされていますよね。


「加えて言うと、こちらの世界のドロドロとしたものに巻き込みたくないと思っている」

「彼等を利用して、自分の地位を上げることを考えておいでですか?」

「俺はっ、一度もそんなことを考えたことは無いぞ!」


 なるほど、諸星さんが国会議員に向かないわけですね。お前はどうか、ですか? 将来の役に立ってくれたらなとは思っていますよ。でもですね、それは経験と言う意味で言っているんです。彼等を利用して、もっと具体的に言うのなら、票を稼ぐのに利用しようと思ったことはありません。


「今回の5人は、日本の利益、そして自分の名声……ちょっと違いますかね。自己満足と言うのが主となるんですよ。自分がこれだけ日本の役に立った。国民として、それを否定するつもりはありませんよ。ただですね、この集落の設立趣旨とは微妙に違っていると言うことです。日本の利益を優先する……純粋にそう考えるだけなら、大きな問題が起きることはないと思います。それでも日本の利益を優先した場合、犠牲になるものも出てくるわけです。そこでの問題は、日本の利益に対する考え方です。『日本の利益』って、定義が難しいと思いませんか? そしてその定義は、自身の考え方が決めるものなのです。従って、気をつけないと自分の利益が日本の利益と勘違いをしてしまうんです」


 それって、あの5人のことを言っています? 今はまだ、最初のパンチが効いているのですか。それが薄れれば、間違いなく流されてくれると言ってくれるのですね。


「小谷さん。ポトマックコンサルに行ったとき、狐と狸の化かし合いと言いましたね。実は、あれは第一ラウンド……前哨戦ですかね。実際の化かし合いは、これからが本番と言うことです。無邪気に手の内を晒した……と思わせておくことも重要なんですよ」


 でも、武見さんたちの成果を教えたんですよね。それって、重要な部分を晒したことになっていませんか? それに比べれば、魔法に関することはすでに公開されていると思うんです。あれは、応用に過ぎないと言うのですか? だったら、本当に重要なことはなんなのです?


「世界の仕組みの謎……と言うのが適当なのでしょうね」


 もしもし、それって何のことを言っているんです? 諸星さん、諸星さんに見当が付きますか? ですよね、全然見当が付きませんよね。

 それで立木さん、本質的な問題ってなんなのですか? 宿題にするから、一度頭を悩ませて欲しい……もしもし、ここまで来てお預けにしてくれますか? そうですか、教えてくれないんですね。でしたら、ヒントぐらいくれてもいいと思うんですよ。


「絶対神様……コスモクロアさんでしたか。そしてクロア、フィオレンティーナと言う存在。そして、魔力の源とされている存在を思い出してください」


 どれ一つとして、目新しい物はないと思うんですけど。そりゃあ、絶対神様にはお目に掛かっていませんよ。でもですよ、存在自体は諸星さんがご存じですよね?

 そうですか、ヒントはここまでと言ってくれますか。でしたら考えて見ますけど……考えて見ますけど、答えにたどり着く自信は全く有りませんよ。そうですか、それでも考えてみて欲しいと仰るんですね。それで、答え合わせはいつして貰えるんですか? 色々と謎が解けたところですか? 一体誰が、その謎を解いてくれるのでしょうね。



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