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一族

村の特産は異世界です


・一族


 アメリカ大統領ですか、はい、たっぷりと遊んでから旅立って行かれましたね。当初12時間の予定だったのですが、結局3時間ほど延長となりました。ええ、最後は宴会に参加していきました。いやさぁ、それで良いのかと言いたくなってしまいましたよ。

 移動に時間が掛かりませんから、あちらに着くのは午前11時。許容の範囲と言えばそうなんですけどね。


 それは良いんですけど、ハイエルフのお持ち帰りは不可ですからね。当然闇エルフのお持ち帰りも不可です。こらこら、始祖竜なら良いのかって……発想自体が間違っていると思ってください。

 集落纏めて持ち帰りたい……一生お金に苦労させることは無い、ですか。あいにく、今でもお金に苦労していないんですよ。


 それはそうとして、立木さん何をこそこそとやっていたんですか? スカウト……スカウトって、前に言っていた奴ですか? そうですか、友池さんに声を掛けられたんですね。それで、成功したんですか? 今のところまだ。かなり心が動いている。適当にあしらわれただけじゃ無いんですか?


「彼の実家が怒鳴り込んでくるかどうかですね」


 ええっと、立木さん、何をしたんですか? 確か、相手はエリート外交官一族なんですよね。敵に回したりしたら、とっても面倒なことになってくれると思うんですよ。

 違う、無視をされるのが一番困ると言うのですか。敵に回しても怖くない……理由を伺っても宜しいですか?


「困ると言うのは違うのかも知れませんね。どちらかと言えば、見込み違いと言った方が良いかと思います。ここは、異世界への唯一の窓口になっています。うまく手の内に取り込めば、これ以上ない強力な外交手段なんですよ。ただ、ここには外交の素人しかいないんです。だから、今まで好き勝手やってきたわけですよ。それで破綻しなかったのは、手札があまりにも強力すぎたからなんです」


 手札があまりにも強力……それって、戦力的なことを言っていますか?


「単純な武力と言う意味では、諸星さんと言う超越した存在がいますね。ただ学術的な方に目を向けると、シアとシオン、インテグラさんと言う存在がいるんです。本山の所に預けている二人もまた、集落の戦力になっているんですよ。あの二人はまだ、さほど評価されていないと思いますけどね」


 その学術的って、どういう意味ですか? 魔法とかのことを言っているんですか?


「大本は魔法なんですけどね。あの3人は、空間転移をすることが出来るんです。そしてシオンが示した、時間停止の魔法があるんです。シアも色々と出来るのですが、空間転移、時間停止……これは、グレゴリー君も出来ましたね。ああ、アンの転移ゲートもあったか。これまでの常識を遙かに超えたことが出来るようになったんです。その技術のすべてを、IMO研究所が独占しているんです」


 確かに、とても強力と言うのは理解出来ました。ただ、外交的な意味がよく理解出来ないんですよ……ええっと、ちょっと待ってください。何か言いたいことがわかってきた気がするんです。

 ちょっと待ってくださいね……なんです、『大統領が何を言ったか』ですか。確かあの人、『集落を纏めてお持ち帰りしたい』って言っていましたね。ただ魔王城って、簡単に移転できないと思うんですよ。


 それはそれとして、当たり前ですけど上里集落自体に大きな価値を認めていると言うことですよね。もしも魔王城が移転できたりしたら、纏めて引っ越しが出来ると言うことになるわけですか。今やっている研究……あちらなら、同じことが出来ると豪語してくれそうな気もしますね。

 でもですよ、バグっている立木さんを忘れていませんか。そして、そこから派生する人脈と言うのもあると思うんです。


「そこまで言われるほど、私は大したものではありませんよ」


 いえいえ、ご謙遜を。ここまで研究が進んだのは、立木さんの人脈と異常な発想のお陰だと思いますよ。シオンさんの事件は、立木さんがいなければ違った結末になっていたと思います。


「それは、内部にいるからわかることですね。外からの目で、上里集落を評価することが重要なんですよ」


 外からの目、ですか。う~ん、もやっとするものはあるんですよ。ただそれが、何が理由になっているのかはっきりしなくてですね。それで、敵に回しても怖くないと言われても……外務省を敵に回したら面倒極まりないと思うんですよ。だって、相手は外交を一手に担うお役所なんですよ、そんな真似をしたら……

 あれっ、実は何も起きない? 上里集落自体、日本国内にありましたね。あくまで、国内問題に閉じてくれるわけですか。でも、国連の協議はまだ終わっていませんよね? あっ、外務省は主導権を取れていないのか。あれあれ、アメリカ大統領とダイレクトルートが出来てしまいましたね。それに、英国首相ともダイレクトルートが出来てるし……


「その状況で、中国、ロシアは外務省を経由してくると思いますか?」


 外務省がうちと対立したら、間違いなく飛ばされることになりますね。安全保障上も、うちと握った方がメリットが大きいのは間違いありませんから。しかも外務省は、そっちの国と縁切りなんかできませんもん。

 もしかして、外務省の関係しないところで外交が成立してしまう……いやいや、そんな簡単なものじゃないと思うんです。


「ええ、簡単なものじゃありませんね。ただ、IMO研究所は今のところ日本に閉じているんですよ。だから、今のままなら外務省は怖くないと言うのが答えになるわけです。そして対外関係に関して言えば、協力してくれれば助かると言うのが答えです。ちなみに、ティアやアスカは、外務省を経由していないんですよ」


 学者さんたちは、外交なんか気にしていないと言う訳ですか。だったら、無視されても困らないと思うんですけど。なんです、利用しにくくなると言うのは。優秀な人間が利用できれば、それだけ自分が楽になると言ってくれますか。ああ、そういう意味で『困る』と言ってくれるんですね。


「だから彼の一族……具体的には、友池実篤氏が怒鳴り込んでくるのを期待しているんですよ」


 ええっと、確かシンクタンクで理事とかしていませんでしたっけ? 怒鳴り込んできたら、結構面倒なことになると思うんですよ……って言うか、どうやって怒鳴り込んでくるんですか? 流石に、菅谷総理に頼めませんよね? 外務大臣にしたって、集落のルートを持っていませんし。


「外務大臣を通して菅谷総理にお願いが行くことになると思いますよ」


 そうなると、もう怒鳴り込むってレベルじゃないと思うんですよ。そうですか、それも狙いと言ってくれますか。偉いと思っているから、呼びつけてくれるんですね。それって、立木さんの手のひらで踊ることになりませんか?


「それほど、簡単な相手じゃありませんよ。海千山千、私などでは相手に不足でしょうね」


 立木さんでもダメと言ってくれますか? なんです、自分は理系のエンジニアと言うのは。それって、今更主張することですか。もうね、色々とその前提って崩れていると思うんですよ。




 ああっと、カルチャーショックと言って良いんだよな。うん、アメリカで受けた歓迎のこと。あと、停止現象の解除の考え方も違っていたな。

 だって、日本ではとっても慎重に解除して行ったんだよ。もうね、パズルを解くように部分解除を繰り返したんだよ。それなのに、こっちに来たら『テイキットイージー』で終わりだよ。うん、外側から解除してくれれば、それ以上何も望まないと言われたよ。止まったのと逆順でやれば、さほど被害が出ないだろうって。


 その結果、結果ねぇ。まあ、人が死ぬようなことは無かったな。うん、それが答えになっているんだ。思ったより事故が少なかった……ですませていいのかな。

 でも、あちらとしてはそれで良かったみたい。ホワイトハウス……ここも停止現象で止まっていたんだけどね。そこの復帰記者会見で、俺のことを思いっきり持ち上げてくれたよ。うん、『奇跡の男』ってね。神が使わした奇跡の男……確かにさぁ、俺を作ったのはゼッタイシン様だからね。神が使わしたと言うのは間違っていないと思うよ。ただ彼等が信仰している神様じゃないと思うんだけどね。


 それからだけど、日本からの移動は3時間遅れになりました。俺、俺が理由じゃ無いよ。大統領が、まだ良いだろうと出発を延ばしたのが理由なんだ。しゃぶしゃぶ、すき焼き、寿司、天ぷら……一昔前の和食だよね、それ。それを食べ尽くすまでは出発しないとごねてくれたんだ。ああ、後はタグ付きの蟹もあったな。もうね、贅沢三昧をしてくれたよ。かかった費用の請求書なんだけど、外務省に回して良いのかな?


「招待したのは諸星さんです」


 友池さん。それを言ってくれますか。ええ、確かに俺が集落には招待しましたよ。それに乗ったのは、日本政府だと思うんですよ。そうですか、立木さんに『費用の心配は要らない』と言われたのですね。だったら、お金の話はこれで無しと言うことで。

 それで、転移先はなぜか連邦議会……しかも上院。そこに転移をさせられ、万雷の拍手で迎えられることになったよ。まだ停止現象を解消していないんだけど、どうでも良い雰囲気になっていないか? そこから下院に移動をして、もう一度晒し者……もとい、歓迎を受けたんだ。この時点で、そろそろ日が暮れそうになっていたよ。それで、外側から解消してくれれば良い、なんだよ。もうね、その程度のことかと思ってしまったんだ。


「解決することがわかっていたので、自分たちの都合を優先したと言うことです」


 まあ、いつ解消しても結果は同じなんだけどね。そう言われれば、急ぐことに意味は無いんだろうね。


「ここだけの話ですが、調査班からゴーが出ていなかったのだと思います」


 調査班……立木さんに言われた奴かな。そうか、そのことを言っているんだ。でもなぁ、あんなので良かったら実験室で再現してあげるんだけど。

 なんです、それを大きな声で言ってはいけないんですか。ええ、どうしてとは聞きませんよ。これでも、色々と立木さんに釘を刺されているんですからね。


「そんなことを、あまり自慢げに言って欲しくはないのですが……なるほど、私に声を掛けてくださるわけですね」


 立木さんが、友池さんに声を掛けた。ええっと、外務省のエリートに声を掛けたのですか? 当然、IMO研への引き抜きですよね? 外務省の超エリートを?


「超は過剰ですよ。後はですね、立木さんも本気じゃないと思いますよ……ちょっとニュアンスが違いますかね。外務省に揺さぶりを掛けてくれた、さも無ければ救いの手を差し伸べてくれたと言う所でしょうか」


 エリートであることは否定しないんですね。それより揺さぶりならまだ理解出来るんですけど、救いの手って……どうしてですか?


「省として、異世界に関与できていないことです。今回の件にしても、ツアコンの域を脱していないんです。立木さんに、企業の海外駐在員に甘んじるつもりかと聞かれてしまいました。それならそれで、便利に使ってくれるそうですよ」


 それって、救いの手と言うより挑発ですよね。もう、これ以上無いほど挑発している気がするんですよ。


「ええ挑発ですね。回りに聞こえるよう、しっかりと言ってくださいましたから。多分ですけど、マスコミから省の方に『実は』とご注進が行っているのではありませんか。省としては、喧嘩を売られた気持ちになっていると思いますよ」


 そこまでしたんですか。ところで、菅谷総理はなんと言っていましたか? なんです、耳を塞いでいたと言うのは。総理が、そんなことで良いんですか?


「お前たちで勝手にやれと言うことなんでしょうね。ただですね、この戦いは外務省が圧倒的に不利なんですよ。腹を立ててる連中にしても、冷静になればそれぐらいのことはすぐに理解します。人材の問題はありますが、IMO研は我々を飛び越えて各国要人とコンタクトを取れるんです。すでに、アメリカ大統領、英国首相と繋がりを作ってくれました。諸星さん、中々の手腕ですね……と言って差し上げます」


 そこで疑問形と言うのは、ちゃんと事情を理解しているからと言うことですよね。白状しますけど、俺はそんなことを考えていませんでしたからね。12時間の移動……友池さんとの移動が辛いかなと。後はですね、アメリカ大統領にごまをすっておこうかと思った程度です。


「そうですか、私と旅をするのを『辛い』と言ってくださいますか。なるほど、そこから改善する必要があると言うことですね」


 ええっと、お気を悪くされましたか? ちょっとですね、エリートと言う方に気後れをしてしまってですね。だからですね、友池さんだからと言う話じゃ無いんです。そうですか、それぐらいは理解していると言ってくださるのですね。

 なんです、すでに立木さんから説明を受けていると言うのは?


「一つ疑問なんですけど、あの人って本当にITベンダの部長さんだったんですか? いえ、経歴はちゃんと調べてあるんです。評価的には、並と言う所でしょうか。普通に部長職を勤め上げ、役職定年後セカンドキャリアを利用されて退職されています。そこまでは調べたんですけどね……その経歴と今が結びつかないんですよ」


 改めて説明されてみて、俺も疑問を深くしましたよ。ええ、経歴と今が結びつきませんね。

 それで話を戻しますけど、外務省はどうされるんですか? 挑発に対して報復とか考えられていませんか?


「頭を抱えていると言うのが正直なところでしょうね。日本政府は、IMO研に返しきれないほどの借りがあるんですよ。従って、正面から戦争をすると政府に見捨てられる恐れがあるんです。しかもですよ、アメリカ、英国も敵に回ってくれるんです。各国大使から、間違いなく釘を刺されることになると思います」


 頭を抱えている……だけですか? 外務省と言うのは、とてもプライドの高いところだと伺っているんですけど。弱小研究所の副所長に舐められたまま、黙っているとは思えないのですが?


「まず、その『弱小』と言う間違った認識を改めてくれませんか。IMO研と言うのは、『世界で唯一』の研究所なんです。ですから、本来もの凄い外交手段になるはずなんですよ。それなのに、日本政府はそれを生かせていなかった。その辺り、ひとえに私どもの不徳のいたす所なんです。正直、立木さんのお誘いに心がしっかりと動きましたよ」


 つまり、友池さんは外務省を辞められると言うことですか? さも無ければ、出向でおいでになると?


「残念ながら、ターゲットは私じゃ無いようです。いえ、手を上げれば喜んでいただけるとは思いますよ。ただ、現時点で欲しいのはうるさ方……つまり、省から煙たがられている人材と言うことです」


 それって、OBとか言っています? そうですか、OBのことを言っているんですね。歴史のある省だから、OBの発言権が強いのですか。


「OBなら、喧嘩を買ってくれるだろうと考えておられるのでしょうね」


 それって、もの凄く面倒なことになりませんか? そうですか、面倒なことになってくれるんですね。それで、具体的には誰が怒鳴り込んでくるんです。


「私の父……だと思いますよ」


 友池さんのお父様、ですか。当然外務省のOBなんですよね……そうですか、外務次官も経験されておいでですか。下手をしたら、全面戦争になったりしませんか?


「先ほども言いましたけど、この戦いで省に勝ちはないんです。それぐらいのことは、父もちゃんと理解していますよ。それどころか、わざと挑発に乗る可能性もあるぐらいです」


 狐と狸の化かし合いに聞こえるんですけど……そうですか、それを否定しないと言ってくださいますか。おかしいなぁ、超越持ちなのに胃が痛くなってきたよ。


「こんなもの、なるようにしかならないものですよ。ですから、あまり気にしないでバカンスを楽しまれてはどうでしょう?」


 バカンスって……これから、大統領主催の晩餐会ですよね。あのですね、とても楽しめるとは思えないんです。


「奥様方は……エリザベスさんを除く、ですかね。それ以外の奥様方は、気にされてないようですよ」


 リズは、元々アメリカ国民ですからね。だから、俺以上に緊張することになると思います。いや、俺も負けていないか。うん、負けていない、負けていない。


「別に、張り合うことじゃないと思いますけどね。それからですね、明後日はニューヨークに移動して国連でご挨拶と言うことになっています」


 国連で挨拶……ですか。断ることは出来ないんですよね、そうですか、出来ないと仰ってくれるんですね。出来ないのかぁ……胃薬飲んだ方が良いのかな? 効くとは思えないけど。




 諸星さんなんですけど、顔がしっかりと引き攣っていますね。はい、衛星放送でアメリカのことが中継されているんです。ええっと、違うんですか? これって、日本政府提供の映像なんですか。なんで、日本政府がこんな映像を?


「菅谷総理が気を利かせてくれた……と思っておくことにしましょう」


 ひょっとして、危機管理のためとかじゃありませんよね。そうかもしれないが、気にしないことにしている。今回は、口を出すつもりは無いと言ってくれるんですね。だから、諸星さんを見て楽しもうというのですね。ええ、しっかりと楽しませて貰おうじゃありませんか。

 しかし、相変わらず小物ムーブをしてくれてますね。小物界の大物……どこかで聞いたフレーズだな、これ。


「しかし、国連で挨拶ですか。諸星さんのことだから、嫌々でも受けてしまうんでしょうね」


 受けるんでしょうね。でもですよ、受けないと言う答えはないと思うんですよ。これって、間違いなく名誉なことだと思うんですよ。


「名誉には違いありませんよ。ただ、それ以上に負担に感じているはずです。ただ、断れないと思っているのでしょうね。嫌だったら、断ることだって出来るのに」


 ええっと、断るのって問題になりませんか? 諸星さんは民間人。だから、誰も出席を強制できないと言ってくれますか。従って、断っても問題にならないと言うのですね。


「まあ、断ったら菅谷総理からお願いが来ることになるのでしょうね」


 だったら、結果は同じですよね? 結果は同じでも過程が違う。菅谷総理を通すことで、押しつけられにくく出来ると言うのですね。なるほど、諸星さんはホイホイ引き受けてしまいますからね。

 ところで、今日のおやつは何ですか。はい、10時のおやつのことを言っています。


「なぜ、私が催促されるんでしょうね?」


 いえ、立木さんだったら美味しいものを手配しているだろうなって。はい、これは催促ですよ。それで、今日は? なるほど熱いお茶と……これはなんです? エビせんべい。名古屋土産で有名なお菓子なんですね。なるほど、お墓参りのお土産と言うことですか。てっきり、ぴよりんチャレンジでもしてくれるのかと……あのぉ、私何か言っちゃいました?


「そちらは、3時のおやつに考えていたんです」


 そうですか、当てずっぽうで当てちゃいましたか。なんか、『勝った』って気持ちになれますね。うん、久しぶりに気分がいい気がしますよ。はっはっはっ!




 明けましておめでとうで……で良いのか? 何か、今更と言う気もするのだが。ちなみに研究の方は、正月休みが明けてから再開することになっている。涼真の奴はスキーに繰り出していった……いや、別に羨ましくは無いぞ。スキーぐらいだったら、ここだったらいつでも行けるしな。

 そんなことより、立木さんから『お年玉』と言って分厚い紙を渡されたんだ。言っておくが、請求書とか領収書とかの差し戻しじゃ無いからな。使った経費は、スマホ入力で手間いらずになっているんだよ。


 ところで懐具合なのだが、以前と比べものにならないぐらい良くなっている。生活に掛かる金が殆ど無くなったと言うのも大きいのだが、給料の方も『何これ』と言うレベルで支給されているんだ。たくさんくれるのはありがたいのだが、俺はまだ実績を上げていないと思うんだよ。言ってみれば、OJTの真っ最中と言うところだな。本山名誉教授とか立木さんに、手取り足取り教えられているんだよ。

 だから『多すぎないか?』と立木さんに聞いたんだよ。そうしたらだな、税金で持って行かれるよりマシと言われてしまった。周りからの厚意が多すぎて、支出の殆どが食費に化けていると言われたんだ。ああ、異世界人が食いまくってくれる食費だよ……一部、自衛隊員の悪乗りもあるような気がするんだがな。


 それで立木さんのくれたお年玉なんだが、とある調査データなのだそうだ。だったら電子データでくれと言ってもおかしくないよな。当然、なぜ紙なのかを質問したさ。その答えが、出所がブーランジェリー王国だからと言うものだった。

 王国の調査データって、流石に首を捻らせて貰ったな。ただ中身を精査したら、とんでもないものだと言うのがわかってしまった。ああ、ブーランジェリー王国の寿命調査と言う奴だ。ちなみに、このデータにはハイエルフとかは入っていない。俺たちと同じ、人とされているものの寿命調査なんだ。


 答えから言わせて貰うと、これで研究が大きく進むことが確実になったんだ。


 どう言うことかと言うと、寿命……住民の年齢が、明らかに二つのグループにわかれていたんだよ。その一つのグループが、50代程度で死亡しているグループだ。日本でも明治辺りを考えれば、別に不思議では無いデータと言うことになるな。

 そしてもう一つが、100歳を遙かに超えて生き続けているグループがあるんだよ。それが、同じ家族の間でも明確に違いが出ていると言うことだ。中には、数百歳生きたと言う眉唾物のデータもあったぐらいだ。そしてこの極端に別れたデータが正しいものと考えた時、一つの事実が浮かび上がってきた。長寿のグループに、特徴的な技能を持つ集団が含まれていたんだよ。そう、『魔道士』と呼ばれる集団が含まれていたんだ。


「それって、仮説として立てられていたものよね」


 ああ、俺たちが仮説として立てていたものに違いない……もしもし、どうして俺のモノローグに割り込んできてくれるんだ?


「それだけ大きな声を出していて、モノローグと言うのは流石に辛くない?」


 そ、そうか、そうかもしれないな。

 それはそれとしてだ、俺たちは確かに仮説として寿命に対する魔力の影響を立てていた。だがな、それって年末のことなんだよ。検証方法については、年明けの課題にしていたよな。それなのに、こうしてデータとして裏付けが出てきてしまったんだ。いや、ありがたいことには違いないんぞ、違いないんだが……ちょっと理不尽なものを感じてしまっただけだ。


 ああ、今更と言うのは強く肯定させて貰う。だけどな、立木さんにこの手の話をしたことがあったか? 年明けで落ち着いたときに、一度話をしてみることになっていたよな。それなのに、どうしてわかっていたように調査データが出てくるんだ? どう考えてもおかしすぎるだろう?


「それは否定しないけど……今まで、どれだけ私たちが頼ってきたと思う? 他のことだって、十分におかしかったと思うわよ」


 それを言われるとだな……確かに否定できないのだが。だとしたらだ、立木さんは魔法と寿命の関係に気づいていたことになるんだぞ。もうな、どっぷりと俺たちの研究に入って貰った方が良いんじゃないのか?


「それ、本山先生も言ってたわよ。でも、お父さん……お父さんと話をして止めた方が良いと言う結論になったと仰ってたわ」


 そうか、取り込まない方が良いと言う結論なのか。ところで、お父さんと言うとき言葉に詰まらなかったか? いや、いい、今のは聞かなかったことにしてくれ。ああ、俺は何も聞かなかった、聞かなかったからな。

 ところで、なんのケースを持っているんだ? バジリスクとコカトリスの胆石……胆石なのか?


「正確には、胆石みたいなものだそうよ。安全性の保証は出来ないけど、研究に使えるんじゃ無いかって」


 立木さんがそんなものを? しかし、安全性の保証は出来ないって……そんなものをくれるなよなと言って良いよな。


「でも、お、父さんは手で転がしていたわよ。だったら、大丈夫だと思うんだけど……なんで、ジュラルミンケースなんだろう?」


 立木さんが手で転がしていた。そのくせ、御衣黄さんに渡すときには厳重なケースに入れた……なんか、嫌な予感がするんだがな。


「武見さんも?」


 ああ、立木さんは大丈夫で、俺たちには危ないものって……魔法絡みだと思うんだよ。俺たち、簡単に魔力酔いをしていただろう?


「その可能性は十分にあるわね。それで、魔法絡みだとしたら……でも、胆石よね? だったら、何かの術式とかが付与されているのかしら?」


 あるいは、その前の段階。つまり、純粋な魔力を帯びていると言う奴だな……もしもそうだったら、使い道がありそうだぞ。


「例の、細胞に魔力を与え続ける道具……と言うことかしら?」


 そう、それ。この中の石が、魔力を発し続けているのならそう言うことになるよな?


「つまり、長時間魔力を供給し続けることができる訳ね」


 そこで大きなため息、か。まあ、俺も同感と言わせて貰おうか。


「つまり、この石を使って細胞の観察をしろと言うことでしょ? 私たちの細胞と、シア母さんたちの細胞。魔力のある環境に置いたとき、分裂の仕方とか寿命とかをこれで調べることが出来るわけだよね」


 まあ、ため息を吐きたくなるのも理解出来るぞ。俺たち、まだ立木さんの手のひらの上で踊っていることになるんだからな。しかしなんだ、あの人ってITエンジニアなんだよな。


「そう言っていたわね。付け足しのように、厨二病って言ってたけど」


 厨二病で終わらせて良いとは思えないんだけどな。だけど、これで正月早々やることが決まったわけだ。研究が進むと喜んで良いのか、自分の手柄じゃ無いことを悲しむべきなのか。中々複雑な気持ちになっているんだ。ああ、贅沢言っているのはわかっているんだよ。




 ニューヨークかい、そうか、どうだったって聞いてくれるんだね。そりゃあ、もうね、最高って言ってあげるよ。うん、ミュージカルとか連れて行って貰ったんだよ。なんかさぁ、もう世界が違ったと言えば良いのか。すごいよね、ショービジネスって。なんかさぁ、ハイエルフたちにもやらせてみたくなったと言えば良いのか。まあ、身体能力だけじゃどうにもならないんだろうね、こう言うのって。

 それで、夜は高級なステーキハウスで会食。まあ、悪くはなかったよ、悪くはなかったんだ。ただね、集落では飛騨牛とか信州和牛とか食べているんだよ。それと比べてどうかと言われるとだな。まあ、美味しい赤身だったかなって所だね。


 それで、夜はキンキラキンのホテルに泊まって、大統領と一緒にバーで歓談。一応歓談なんだけどね、ちっともくつろげなかったって言っちゃ駄目? そうか、言っちゃ駄目なのか。

 ところで友池さんは、一緒に飲まないんですか? 仕事中だから飲めないのだと。美味しくない酒は飲まないことにしているとまで言ってくれますか。


「今日は、私は単なる付き添いでしかありません。ですから、付き添いの仕事をしていると言うのがお答えになります。ちなみに、ここにもカメラが入っていますからね」


 その辺りは、選挙対策と言うことですか。はっきり言って、良いように利用されていますよね。そこで否定してくれると嬉しいんですけどね。

 その辺りが、外務省の力不足の所。いえ、開き直ってほしくないんですよ。


「本気で転職を考えたと言うところです。宮仕えの辛さをひしひしと感じているんですよ」


 友池さんだったら歓迎しますよ。いえね、集落って若い男が圧倒的に不足しているんですよ。良くない予感がする……ですか? 気のせいと言って差し上げましょう。


「つまり、気のせいでは無いと言うことですか。だとしたら、まだ我慢した方が良さそうですね」


 そうですか、それは残念ですね。ところで、お父様の話はどうなりました? 確か、わざと挑発に乗るとか乗らないとかあったと思いますが?


「まだ動いていないのか、さも無ければ情報を制限しているのか。情報が伝わってきていませんね」


 そうですか。まだ動きがないと言うことですね? いえ、日本に電話なんかしませんよ。この後ハリウッドでしたっけ、あとハワイも行きますよね。そこが楽しめないような気がするんです。どうせ結果は変わらないと思いますから、嫌なこと、怖いことは先延ばしにしておこうかなと。

 もしもし、どうしてこめかみを押さえてくれるんですか?


「いえ、持たれている力とのギャップが、ちょっと。なるほど、立木さんが細心の注意を払われているのも納得できますね」


 立木さんが細心の注意を払っている……ですか。立木さんだけじゃ無い、菅谷総理も扱いに気を使っているのだと。立木さんは別にして、菅谷総理はどうしてですか? いえ、だからこめかみを押さえないでくださいよ。


「一昨日ですが、諸星さんは何をなさいましたか? 後はですね、大統領に差し上げたガントレットを、いとも簡単に別のものに作り替えてくださいましたよね。飛行とプロテクトの恩恵、ですか。そんな非常識なものを、いとも簡単に作れてしまうのが異常だとご理解ください。腫れ物を扱う以上に気を使う必要があると言うことです」


 腫れ物を扱うって、なんか嫌ですね。俺は、ちょっとやそっとじゃ爆発なんかしませんよ。はい、最近分別が付いてきた……なんか表現がおかしな気がするな。自分でも落ち着いたと思っているんですからね。こんなことを言うのはどうかと思うんだが、思慮深くなった気がするんですよ。ですから、いちいちこめかみを押さえないでください。


「失礼。本気で目眩を感じてしまいましたので。それから、明日は国連で演説ですからね。ああっ、後から立木さんに文句を言われそうな気がしてきました」


 ええっと、なぜ立木さんに? そろそろネタばらしをする。なにか、ばらして貰うようなことがありましたか?


「国連演説なんですけど、別にやらなくても良かったんですよ。何しろ諸星さんは、完全な民間人ですからね。民間人に対して誰も強制なんか出来ないんです。できて、お願いが限度なんですよ」


 ええっと、つまり俺は国連で恥を晒す必要は無いと言うことですか? もう手遅れ……手遅れだから教えてくれたと言ってくれるんですね。


「最終的には、演説をすることにはなるんですけどね。その場合、国連から日本政府、日本政府から諸星さんにお願いと言う形になるんです。勿論、国連演説を名誉だと考え、積極的に演説をしたいと言うのなら別ですよ」


 はっきり言っておきますが、名誉だとか、進んで演説したいなんて思ったことはありません。今だって、超越しているはずなのに胃に痛みを感じるんですよ。


「だから、立木さんに文句を言われると言わせていただきました。それはですね、国連演説をすることじゃありませんよ。諸星さんを安売りするなと言う意味でです」


 俺を安売りするな……ですか。つまりなんです、何かをさせたいのなら、もっと手順を踏めと言うことですか。そうですか、気軽にやらせるなと言うことですか……どうして、もっと早く言ってくれないんですかっ!


「それが、外務省の立場だからです。結果が変わらないのであれば、手間を可能な限り掛けないことが身についてしまっているんですよ。それで、自分の立場を軽いものにしているんですけどね……」


 それがわかっていて、どうして言ってくれなかったと言わせて貰います。なんです、自分は外務省の職員と言うのは。職員だから、省としての対応を変えることは出来ないと言うのですか。なるほど、その辺りが官僚と言う訳ですね。

 ところで、ネガティブリストがどうかとか出発前に言っていませんでしたか? あれって、何のことなんです?


「絶対にやってはいけないことのリストです。その中に、大統領の招待は入っていませんでした。実は、国連での演説も入っていなかったんです。駄目なことの代表的な物は、そうですね、住人の派遣に関して安請け合いをすることです。異世界人の保護に関しては、駄目なことが列挙してありましたよ。従って、代理で私が答えているのは、そのネガティブリストに沿った答えなんです」


 ええっと、確か立木さんは『ギリギリを攻めてくる』とか言ってきた気が。あっ、苦笑を浮かべましたね。つまり立木さんの言っていることは間違っていないのだと。


「正確には、ギリギリをはみ出たところとか言っていませんでしたか?」


 つまり、自覚があると言うことですか。そうですか、自覚があると言ってくれるんですね。だったら、やって良いこととかを定義した方が良くありませんか?


「つまり、ポジティブリストで指示を出した方が良いと仰るのですね。確かに仰るとおりなんですけど、百科事典ほどのリストを作れと仰るわけですか?」


 なぜ百科事典と聞いても良いですよね。


「お願いされることが、多岐にわたるからと言うのがお答えになります。これなら問題ないのでは……と言うことがリストに無かったら、私は断らなければいけなくなるんです。それが続くとですね、私を飛ばして話をしようと言うことになってしまうんです。かと言って、いちいちお伺いを立てるわけにもいかないんですよ。その意味で言えば、立木さんもよく理解されていると言うことになります」


 ポジティブリストと言うのですね。確かに、やって良いことを定義すると、あれもこれも記載しないといけなくなるわけですか。それでも漏れが出てしまう……と言うのは理解が出来る気がします。

 でも、普通の人はポジティブリスト、ですか、それで考えますよね? 日本人ならそう、ただ外国はネガティブリストを使うことが多い。つまり、今回立木さんがネガティブリストを提示したのは、国際標準に則ったやり方と言うことなんですね。


「ええ、とても真っ当な対応をされていると思いますよ。その辺り、アメリカとかのプロジェクト経験が生きている……と言いたい所なんですけどね。契約関係は本社に任せていたので、立木さんはあまり関係していなかったようです」


 つまり、どう言うことですか? そうですか、どこで経験を積んだのかがわからないと言ってくれますか。なるほど、考えれば考えるほど謎が深まってくれると言うのですね。

 ちなみにですね、そう言う時の良い方法を俺は知っているんです。特別ですから、お教えいたしましょうか? 是非とも、ですね。ええ、でしたらお教えいたします。


 開き直れば良いんです


 まあ、俺の立場ならと言うことですけどね。どうです、少しも役に立たない助言だったでしょう。そんなことは無い、と仰ってくれるのですか?


「ええ、私も開き直ることにします」


 自分で言ったことなんですけど、それで良いのですかと指摘させていただきます。




 ロサンゼルスからフロリダに移動。今は冬だから、フロリダは絶好の季節なのだそうだ。それもあって、大統領もフロリダに別荘を持っているそうだ。うん、俺とは違う世界に生きていると思うよ。だってとても大きな家……土地も含めてだけど、広い土地に大きな家が建っているんだ。

 綺麗な芝生に、これで大丈夫なのと聞きたくなる柵。そして庭には、ひょうたん型のプールが作られていたよ。ただね、セキュリティは万全なのだそうだ。ゲーテッドシティで良いのかな、確かそんなことを友池さんが教えてくれたんだけどね。この区画自体が、高い柵で囲まれているんだよ。従って、柵の中に入るにはセキュリティを通過しないとダメと言うことになっている。もうね、どんだけ金持ちなのかと言いたくなったよ。


「荷造り紐数巻で買うことが出来ますけどね」


 ええっと、そんなものなんですか? 確か1mあたり100万円で売ったと思っているんですけど。なんです、今は相場が上がっていると言うのは。1mあたりなら、10万ドルでも飛ぶように売れると言ってくれますか。10万ドル……1千万円以上と言うことですか!?


「荷造り紐があれば、ドラゴンを捕獲できるのですよね? だとしたら、それでも安いと言うのが答えになると思いますよ」


 マジですか。そうですか、マジなんですね。実はですね、もっと凄いことが出来ると言っちゃ駄目ですか? そうですか、外で言いふらすなと言うのですね。ええ、それぐらいは立木さんに釘を刺されていますよ。まあ、釘を刺されなくても言いませんけど。

 ところで、これでギブソン大統領の役に立っているんですか? そうですか、とっても役に立っているんですね。だとしたらですね、政敵で良いんですよね。政敵にとって嬉しくはありませんよね。どうして、そこで驚いてくれるんです?


「いえ、諸星さんに指摘されるとは思っていませんでしたから。それはそれとして、すでに何人かスナイパーを捕まえていますよ。諸星さん、荷造り紐さんを配置していましたよね?」


 ええっと、していましたと言うのが答えになります。出発前にですね、あまり目立つと暗殺されることになると言われたんです。ええ、俺じゃ無くて俺以外の人たちのことですよ。ちなみに俺、銃で撃たれても死にませんから。

 なぜ、そこでこめかみを押さえてくれます?


「いえ、本当に人なのか疑問に感じてしまったんです。なるほど、常識を捨てないとダメと言うことですか……はぁ」


 出来れば、俺を見てため息なんか吐かないでほしいんですけど。そうですか、ため息で済んでいる分優しいと言ってくれますか。ええ、そう言うことにしておいてください。


 それからフロリダのディズニーワールドで遊んで、カリブ海クルーズもしたんだよ。もうね、沖縄とは違った綺麗な海を堪能することが出来たんだ。なに、あの浅めで澄んだ青い海は。なんかさぁ、とっても贅沢な気分を味会わせて貰ったよ。

 そしてカリブ海クルーズを堪能してから、次はハワイへひとっ飛び。ちなみに、アメリカ国内の移動には、空間転移を使っていないからね。だから、4時間とか5時間とか、エアフォースワンを使って贅沢旅。そしてフロリダからハワイへは、7時間ほどの旅となったわけだ。友池さんと一緒でも大丈夫と聞いてくれるんだね。もうね、色々とお話をしたから気にならなくなったよ。

 そうなると現金なもので、IMO研にスカウトしたくなっちゃったんだ。ただ、今回は人事的な話をするなと釘を刺されていたんだ。だから、思っただけで、直接的にはお誘いすることはしなかったよ。


「いえ、誘っていただいても結構なんですけどね」


 そうなんですか? その前に、どうして俺の考えが理解出来るんです? なんとなくわかった……俺って、そんなにわかりやすいですか?


 ハワイでは、プライベートビーチで暇と言う贅沢な時間を味わうことが出来たよ。そして夕食がバーベキューと言うのは、定番中の定番だと思うんだ。ただね、アメリカ標準って言って良いのかな? 肉がね、巨大な塊だったんだ。バーベキューってさ、味を付けた薄切り肉を網の上で焼くものだと思っていたんだ。


「諸星さん、それは単なる焼き肉でしかありませんよ。誤解されがちですけど、バーベキューと言うのは調理方法の一つですからね。例えば肉でしたら、ここで塊を焼いて切り分けるのが正式なお作法と言うことになります」


 つまり、俺の知っているバーベキューは、単なる屋外焼き肉と言うことですか? そうですか、単なる屋外焼き肉だったんですね。なるほど、俺は誤解していたんですか。

 ところで、日本がどうなったかご存じですか? なぜかですね、立木さんが何も連絡してくれないんです。日本を気にせず楽しめ……と言う意味だと思うんですけどね。小心者の俺としては、教えて貰わないと気になって仕方が無いんです。


「小心者……と言ってくださいますか。そうですか、否定されないんですね。それはそれとして、日本の方はですね、まあ、なるようになったと言えば良いのか、そうか、そう来たかと思わせていただきましたよ」


 なんです、その歯に物が挟まったような言い方は。そうですか、教えたら面白くないと言ってくださいますか。強制力、使っても良いですか?

 ちょっと言い過ぎたかな、友池さんに土下座をさせてしまったよ。うん、これは反省だな。だから、なるようになると開き直ることにしたんだ。立木さんだったら、きっと想像の斜め上を行ってくれると思っておくことにしたんだよ。


 それでね、一通りの日程を終わらせてから日本へ空間転移で移動。これもまたさ、超法規的措置と言う奴なんだよ。当たり前だけど、国境を正規の手続きで超えていないんだ。だから友池さん、お手数をお掛けしたことお詫びいたします。

 ちなみに、お土産は定番のマカダミアナッツチョコになりました。それを段ボールで10箱……って、なんです友池さん、普通なら関税が掛かると言うのは、なるほど、個人のお土産の範疇を超えているんですか。でもですよ、うちの奴ら全員に食べさせようと思ったらこれぐらい必要なんですよ。なるほど、税関はそんな事情を斟酌しないと言うのですね。そうですか、だったら関税は立木さんに任せることにします。あの人、IMO研究所の経理担当もしていますから。


 それで友池さんたちと別れ、俺は転移でIMO研へと帰宅。うん、2週間ぶりの我が家って感じだね。時間帯からすると、まだ勤務時間のはずなんだよ。だからお土産のマカダミアナッツチョコを持って、研究所の大部屋に転移っと。


 知らない人がいるんだけど?


 なんか、とってもダンディーな人が、立木さんたちと談笑をしているんだ。年齢は、立木さんと同じぐらいかな。もうね、格好良いって空気をバリバリい振りまいているんだよ。


「やはり、賭けは成立しませんでしたか」


 なんです、いきなり。そうですか、俺のお土産を掛けていたんですね。それで賭けが成立しないと言うことは、全員が外してくれたと言うことですね? 違う、全員がマカダミアナッツチョコに賭けていた。一人の例外も無かったと言うことですか。そうですか、予想通りだったと言うのですね。


「それを悪いと言うつもりはありませんよ。ハワイ土産として、マカダミアナッツチョコは定番中の定番ですからね」


 そうですか、定番中の定番と言ってくれますか。でもですよ、友池さんは『これが無難でしょう』と言ってくれたんです。定番だから、無難と言って間違いは無い。そう言われればそうなんですけど……なんか嫌って気がしただけです。

 それはそうとして、そちらの方を紹介していただけませんか?


「友池康成氏のお父上、実篤氏です。今回、シンクタンクごとIMO研に加わってくださいました」


 今、なんて言いました? いえ、友池さんのお父上と言うことじゃありません。シンクタンクごとって聞こえたんですよ。そうですか、聞き間違いでは無いと言ってくれるんですね。そうですか、シンクタンクごとIMO研に加わってくれたと言ってくれますか。

 ちなみに、後沢はなんと?


「後沢氏は、しっかりと驚いていましたね。ただ、反対はされなかったので大丈夫でしょう」


 そう言う問題なんですか? それから友池さん、IMO研究所の下に入って良いんですか?


「こちらから、お願いさせていただいたことです。まあ、差し伸べていただいた手を取ったと言うことになるのでしょうね」


 差し伸べられた手を取った……ですか。そうですか、円満な交渉だったと言うのですね。

 なんで、まさかと言うんです? 小谷さん、その辺りはどうだったんだ? いや、なんで耳を塞いでくれるんだ? 立木さん、一体何をしでかしてくれたんです!




マカダミアナッツチョコ、美味しいですよ

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