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上里集落だぞ

村の特産は異世界です


・上里集落だぞ


 疲れた。疲れたと言って良いと思うぞ。何しろ東京で起きた停止現象、それを解消してきたのだからな。ああ、ただ停止状態を解除するだけなら難しくなかったんだ。だけど、下手に『動き出せ』ってやると、そこら中で事故が起こりまくってくれるんだよ。だから自衛隊と協力して、個々の状況に応じて停止現象を解消したんだ。

 だから疲れた……うん、丸一日かかったんだよ。それから集落のことだけど、上杉氏から無事収束したと教えて貰った。その辺り、流石はラズライティシア様と行って良いのだよな。ただなぁ、上杉さんにおかしなこと言われたんだ。なんだ、その、立木さんが『性的に』魔王を誑し込んだって言うのは……性的ってなに?


 本当はすぐにでも帰りたかったんだよ。だって集落には、セレスたちも居たんだからね。でも自衛隊……と言うより、菅谷総理に待ったを掛けられてしまったんだ。まだ停止現象の完全解消が確認取れていない。帰るのなら、それを確認してからにして欲しいと頼まれたんだよ。流石の俺も、菅谷総理に頼まれたら嫌とは言えないんだ。それに、集落全員無事と言うのは教えて貰っていたからね。だから、最後まで確認してから集落に戻ったんだよ。シャルロット、ご苦労だったと言ってあげよう。

 それで集落に戻ったんだけど……ちょっと頭が理解することを拒否してくれたんだ。ええっと、一人女性……エルフだよな。かなり可愛らしいし、スタイルもハイエルフたちより間違いなく良いと思う。その可愛らしいエルフが、立木さんに甘えていたんだよ。新しく増えたのは、彼女だけなんだよ。だとしたら、彼女が魔王だと考えてもおかしくないよな。だから、『魔王を誑し込んだ』と言うことになるのか? だけどそんな真似をしたら、ラズライティシア様とインテグラが……なんで二人ともデレてくれているんだ?


「諸星さん。余計なことを詮索しない方が良いですよ。私は、そう言うものだと諦めることにしましたから」


 なんだ小谷さん、その、『諦める』と言うのは。考えるだけ無駄って……そんなことで良いのかと言って良いよな。そうか、言っても良いけど無駄なことと言ってくれるんだ。そうか、無駄なんだ……

 ところで立木さん、そこでデレてるエルフを紹介してくれますか?


「デレてるは余計ですよ。それはそうとして、彼女の名はエリシオン。魔王として恐れられたエルフの大魔法使いです。年齢は……多分ですけど、1千歳以上だと思いますよ。それでも、シアよりは若いはずですけどね」


 つまり、彼女が集落上空に物騒な魔法を放ってくれた魔王様と言うのですね。ええ、俺が綺麗さっぱり消し去りましたよ。難しかったかって聞いてくれますか? それって、知ってて聞いてますよね。ええ、『消えろ』と命令しただけです。


「だそうですよシオン、彼が集落最強……最強の存在です」


 シオンですか。ああ、彼女の目尻がしっかり下がっているよ。それはそうとして、どうして最強のところで考えてくれたんです? そうですか、他に言い方がないかを考えたと言うことですか。まさかとは思いますけど、非常識とか考えていませんよね。そうですか、でしたら良いんですけど。

 それで、もう彼女に危険性はないのですね。なるほど、しっかりと言い聞かせたのですね。インテグラとは……和解も済ませているのだと。その方法は聞かない方が良さそうですね。いえ、俗に言う『わからせ』をしたのかなって。


 それはそれとして、今回の事件はどう発表するんですか?


「こんなこと、正直に発表できると思いますか?」


 いえ、全然。でもですよ、何か発表しないわけにはいきませんよね? 自衛隊だって、こちらで起きたことを知っているんですから。そうですか、事件を起こした魔王を俺が撃退したことにするんですか。ええ、確かに消滅魔法は俺が処理しましたよ。それで、俺が魔王ごと消滅魔法を消し飛ばしたことにするんですね。

 はい、立木さんには集落を守って貰いましたからね。あの魔法が発動していたら、セレスたちも無事では済まなかったのは確かです……なんで、揃って微妙な表情を浮かべてくれるんですか? それからそこの魔王、『鈍すぎる』と言うのは誰のことを言っているんだ?

 それはそうとして、立木さんは集落を守ってくれたんです。だから、それぐらいの労は厭いませんよ。確かに、正直に発表するのは問題が多すぎますからね。主に、立木さんの評判方面で……ええ、たまにはこれぐらいいってもいいと思うんですよ。


 それはそうとして、アメリカはシオンさんに任せても良いですか? それは無理……どうしてと聞いても良いですよね?


「彼女の存在自体知られていないからです。彼女の派遣理由が説明できないんですよ」


 ええっと、だったらラズライティシア様は?


「われは、キヨヒコと離れるのであれば断らせて貰う」


 だったら立木さんも一緒に……大所帯になってしまいそうですね。ええ、止めた方が無難と言うのは理解しました。


「やはり、諸星さんが行かれるのが良いと思いますよ。間違いなく、思いっきり歓迎してくれるでしょう。セレスさんたちを連れて、アメリカツアーと言うのも素敵だと思いませんか? ワシントンDCからニューヨーク、フロリダに行ってディズニーランド。最後はハワイで……カリブ海も捨てがたいと言いますけど。2週間掛けて、じっくりと遊んできても宜しいのでは?」


 遊んでって……停止現象を解除しにいくんですよね。東京よりも広がっているから、それなりに時間が掛かると思うんですよ。

 と言っても、丸二日あればなんとかなるとは思いますけど……そうですか、これで俺がアメリカの恩人になるのですね。だから、手ぶらでは帰して貰えないのだと。フロリダとかカリブ海……すみません、カリブ海はよく知らないんです。だから俺は、ハワイ程度で十分だと思うんですよ。




 日本の停止現象に関しては、特に事故も無く解消されたことが確認された。そうなると、次は内閣総理大臣の会見と言うことになる。そして問題解決の立役者、我がIMO研も記者会見に出席することになった。

 誰が出席したか、だって? IMO研の広報担当は立木さんだよ。だから、立木さんが色々と説明するんだよ。ちなみに菅谷主将との事前打ち合わせで、かなりの部分まで説明することになってしまった。その辺り、自衛隊内で情報が拡散することを恐れたと言うことだ。赤い旗をマークにしたところに知られると、後から面倒なことになるからだそうだ。


 つまり、かなりの情報が漏れていると考えて良いわけだ。


 そう言うことで、菅谷総理の後に立木さんが演壇に登場。そしていつものアナウンサー……うん、MHKの人なんだけどね。でもさぁ、馴れ合いが生じてない?


「事件の時系列は、菅谷総理に教えていただきました。IMO研も大変なことになっていたと伺っています。簡単で構いませんので、何が起きたのかを教えていただけないでしょうか?」


 簡単でって言われても、結構これが難しいんだよな。だから俺が出ていかなかった……もう少し言うと、俺はアメリカに行っていたんだ。だから、全体を知っているのは立木さんだけと言うことになる。だって小谷さんだって、魔力酔いが理由で意識を失っていたからね。


「事件の背景ですが、上里集落で竜人を保護しているのはご存じかと思います。その竜人ですが、元いた世界から逃げ出してきたと言うことです。古すぎて過去の詳しい経緯は曖昧になっているのですが、今回事件を引き起こした存在。魔王と呼ばれる存在と対立したのが理由となっています。魔王と呼ばれる存在に、100以上の竜人が殺されたのだそうです」


 あの竜人が100人以上も……何度聞かされても凄いとしか言い様がないんだけど。それを、あの可愛らしい魔王がしたって、本人を見たら余計に信じられないのだがな。

 竜人が束になっても勝てない存在。それを持ち出したから、詰めかけた報道陣のざわめきも止まらないな。どうやら、この辺りの経緯はリークに含まれていなかったらしいな。


「それで、上里集落にいる竜人が逃げ出してきた……と言うことですか?」

「種を維持するために、選抜されたメンバーだと言うことです。そして彼らを逃がすために、当時のリーダー……インテグラさんの夫でワジャ……インテグラさんよりも更に巨大なドラゴンなのだそうですよ。決死隊を作って時間稼ぎをされたのだそうです」


 改めて聞かされると、重いなぁ……とても重い責任を持って逃げてきたわけだ。それを考えたら、竜人たちの行動も理解出来るな。だってキャミ、あの子供が最後の希望なんだからな。死に物狂いになって見つけようとしたのも理解出来るぞ。こっちには迷惑だったのだが。


「それで、我々の世界に流れ着いたと言うことですか。ところで、彼らが逃げ出した世界はどうなったのでしょう?」

「どうなったか……先日のワシントンDC、東京を思いだしていただければと。ただ、長い戦いがあったと聞いています。もっと荒廃していたことは想像に難くありません。ちなみに、上里集落……研究所棟のあるエリアなのですが、消滅の危機に瀕していたことをお知らせいたします」


 ええっと、あの馬鹿みたいなエネルギーのこと? そうか、ラズライティシア様の極大攻撃魔法を超えていたのか。なんですラズライティシア様、自分でも時間を掛ければあの程度のことは出来ると仰りますか。

 いえ、立木さんもいませんからね。ここで張り合っても意味がないと思いますよ。それでも癪に障るから、主張だけはしておく。だから、俺を魔法で攻撃しないでください。


「魔王……説明の便宜上、彼女のことを魔王と呼ぶことにします。長い長い戦いのせいで、命に対する感性が狂っていました。ワシントンDC、東京の両都市で発生した停止現象ですが、私たちは陽動だと勘違いをしたのです。ですが彼女は、そのつもりは無かったと答えています」

「その東京でのことですが、ビルが1カ所不自然な形で守られていたそうです。立木さん、本件に関して説明いただけるでしょうか?」

「当然出る質問だと思います。敢えてぼかされた点、そのビルには私の息子が勤務していました。答えとして、これがすべてと言うことになります」

「そのせいで被害が拡大したとの意見が出ているのは耳に届いておられるでしょうか?」


 言葉を選んでくれているけど、その話は俺にも聞こえているんだ。つまりなんだ、立木さんに責任を迫りたい奴がいると言うことか。


「時間的には、5分程度のロスだったそうです。従って、被害半径が300m広がったことになるわけです。ですから、被害が拡大したと言う指摘が出るのも当然だと思います」


 ああっ、認めちゃったよ。認めちゃったけど、この後どうするつもりなんだろう。いや、立木さんじゃ無くて責任を持ちだしている人たちなんだけどね。一つ間違えたら、俺たち全員……は極端にしても、怖いお姉さんたちを敵に回すことになるんだけどな。うん、ラズライティシア様、インテグラさん、エリシオンさん、フローリアンさん、クロアさん……フィオレンティーナさん、わざわざ出てきて自分を指差さなくても良いですよ。


「認めていただきありがとうございます。ただ今回の件について、IMO研が乗り出す法的根拠がないと言うのが政府から発表されています。道義的責任追求にしても、善意に対して悪意を返すものだと説明されています」

「道理からいくとそうなのですが、それでも感情と言うのは難しいと思います。ですので、私は応分の責任をとらせていただこうと思っています」


 うん、何が言いたいのかわかるよ。だけどね、俺は勿論、他の誰も認めてはくれないと思うよ。


「なるほど責任をとられることを考えられているのですね。それはとても立派なお考えと申し上げます。ただ私が言って良いことではありませんが、『止めてください』と言わせていただきます。引退してご自宅に帰って年金生活、ですか。それは責任を取ることでは無く、責任を放棄することになります。立木さんは、健康維持に心がけて、IMO研で活躍すること以外に責任を取る方法はありません。いいですか、まだまだ楽にさせるわけにはいかないと言うことですよ」


 おお、やんややんやの喝采だよ。だからフィオレンティーナさん、このアナウンサーに神の祝福とか言わないように……別に構わないか。うんうん、どんどんあげちゃってくれるかな。そう言うことだから立木さん、年金生活に逃げられると思わないように。


「どうやら、会場の皆さんも同じ思いのようですね」

「政治家とか経営者とか、辞職をして責任を取っていると思うのですが?」

「立木さんは、政治家でも企業経営者でもないからです。世の中には、辞めないことでとる責任もあると言うことです」


 うんうん、その通りだと思うよ。ここで辞めるのは、『無責任』だと思うんだよ。


「年寄りに過剰な期待だとお答えさせていただきます。もうね、体力的にきつくなってきているんですよ」

「でしたら、それが責任と言うことになると思います」


 ああっ、さっさと責任問題を終わらせてくれたよ。誰も異を唱えないところを見ると、首を取ろうとは思ってないようだな。


「では、次の質問となります。今回の騒動を引き起こした原因、魔王で宜しかったですか。その魔王は、今どうしているのですか?」

「魔王、ですか。ここに連れてきている……のですけど」

「……連れてきているのですか」


 ああ、顔色が変わってくれたよ。うん、その気持ちもよくわかるな。だって、竜人をものともしない戦闘力を持っているんだもん。しかもアメリカと東京で、停止現象まで引き起こしているんだ。恐怖を感じても仕方がないと思うぞ。

 でもなぁ、その実態は本当に可愛らしいエルフなんだよ。しかも立木さんにベタ惚れだし……なんですラズライティシア様。そうですか、ラズライティシア様もベタ惚れと言ってくれるんですね。ああインテグラ、今更聞かなくてもわかっているよ。ところで……なんでクロアさんまで? そうですか、クロアさんもベタ惚れと言ってくれるのですね。


「ええ、連れてきていますよ。では、これから皆さんにご紹介いたします。シオン、出てきてくれるかな」


 愛称はシオンで決定ですか。まあ、こんなものは本人たちの問題ですからね。

 ああエリシオンさんが出てきたよ。でもあの格好、どこかで見たことがあるような……


「ええ、アニメのコスプレです。本人も気に入ったようなので、今回の衣装としました。あれっ、元々ハイエルフのコスプレ用衣装だったんです」


 版権元に許諾をとったのかな? そうか、市販品である以上着ることに問題は無いと言ってくれるんだ。


 本当か?


 と言うのは良いのだけど、記者さんたちの反応が薄いな。そうか、意表を突かれたと言うことになるのか。そりゃあ、竜人と長期にわたって殺し合いをしてきた魔王だもんな。どんな凄いのが現れるのかと思っていても不思議はないと思うよな。

 だけど、実態は可愛くて美人のエルフだもん。スタイルは、ルーテシアに匹敵しているしな。ああ、記者さんたちもわれを取り戻したようだな。うん、もの凄い数のフラッシュが焚かれているよ。そうか、SNSでも話題が沸騰しているんだ。あの怯えた表情……はっきり言ってそそると思うよ。だけど『シオン様』って。ラズライティシア様、一言どうぞ。


「孝明よ、われに何を言わせたいのだ?」


 いえ、ちょっと興味を持っただけですので、はい。

 それはそれとして、記者さんたち大丈夫かな? いやぁ、美形って得だよね。だってさ、一つ間違ったら彼女は人を殺していたんだよ。だとしたら、厳しい追及があっても不思議じゃないと思うんだ。あっ、勇者がいたぞっ!


「こちらの世界での破壊活動……つまり、ワシントンDCと東京での停止現象について、罪を感じられていますか?」


 おおっ、SNSで非難囂々になってる。だけどさぁ、『復活できたから良いだろう』は違わないかな。だってさ、あの近辺は1日近く経済活動が止まったんだよ。だとしたらさぁ、それなりに金銭的被害が出ているはずなんだよ。

 それにワシントンDCの方は、まだ復旧していないんだ。ただあっちは、アメリカ側の意図があるみたいなんだけどね。


「罪……私は沢山の罪を抱えている。だから、最後は消えるつもりでいた。だけどキヨヒコ……立木が許してくれた。一緒に生きてくれると言ってくれた。だから私は、立木と一緒に生きていく道を選んだ。それでも、罪を償う必要はあると思う。だから、何をすれば償ったことになるのか。立木と相談していこうと思ってる」


 SNSが阿鼻叫喚……立木さんへの罵詈雑言が溢れてる。そりゃあ、まあ、ねえ。何かありましたって、顔にしっかり出てるんだもの。


「立木さん。責任と言う言葉をご存じですね?」

「責任に押しつぶされそうになっています」


 なんかぬるい世界が作られてるなぁ。最初の頃の殺伐さが懐かしくさえ思えてしまうよ。


「私の話は良いのですが、今回の件で法的整備の重要さが浮き彫りになったかと思います。そしてIMO研の位置づけも考えていただきたいと思います」


 そこで立木さん、指を一本立ててくれた。


「今回のワシントンDCと東京への対応ですが、菅谷内閣総理大臣からの依頼で行われております。そこで誤解していただきたくないのは、『菅谷』『内閣総理大臣』だから対応をしたと言うことです。現時点で、他の方が総理大臣になっても対応をしないかと思います。また菅谷総理が退陣されて菅谷先生となった場合、対応の可否は非常に微妙になるかと思っております。行政機関の長と菅谷先生の両方の条件が満たされと言うのが対応した理由です。なぜ菅谷総理かと言うのは、一番苦しいときに助けていただいた恩に報いているとお考えください」


 確かになぁ、俺も菅谷先生だから頼みを聞いたところがあるんだよ。だって、何の法的整備もされていなかったんだよ。だったら、怖くて普通出ていけないと思うんだ。そうか、そこには菅谷先生に対する信頼もあるんだな。


「次に、IMO研は民間企業の立場を堅持いたします。すなわち、強制的に行政機構……すなわち警察等の組織に入ることは拒否いたします。上里集落の住人に対し、役割の強制が行われる場合はブーランジェリー王国に全員逃げます」


 うんうん、これが大事だと思っているんだ。だから記者会見前に、立木さんとはしっかり擦り合わせを行ったんだよ。


「3つめですが、当たり前ですけど『ただ働きはしません』と言うことです。価格交渉をしていませんので、言い値で……とまでは言いません。今回の貢献に対し、政府で評価を行い支払っていただけば結構です。後ですね、その金額は非公表……では皆さん納得がいかないと思います。ですので、公表していただければ結構です」


 ああっ、事前に聞いていたけど、これって結構嫌らしい要求だよな。そしてね、その場合のツッコミどころもちゃんと考えてあるんだよ。


「彼女、シオンに請求するのは認めません。理由は、今回は偶然聞き分けてくれたからと言うものです。偶々決裂しなかっただけで、決裂していたら請求先は存在しないことになります。そして彼女は、IMO研に対して支払いを行うだけの資産を有しておりません。それでも彼女に要求を行うと言うのであれば、今後IMO研は協力を拒否することにいたします」

「今後発生する異世界関係の事件に対し、IMO研究所は積極的な関与をされる予定ですか?」


 あっ、積極的と言う言葉を入れてくれたな。ただ、まあ、この程度は想定した範囲に入っているんだよ。


「IMO研、と言うより上里集落の存在理由と言うものがあります。異世界から帰還された諸星さんは、自分と同じように異世界から帰ってきた人たちの居場所を作ることを考えられました。その居場所となるのが、上里集落と言うことになります。ただ現在は、帰ってきたではなく『来た』と言う片道の方も受け入れています。こちらの世界に来た異世界人と言う意味では、帰還者だけに限定する理由がないと言うのが答えになります。今後異世界関係の事件に関与するか否かは、その事件自体が持つ意味を我々も考えて行動することといたします……と言うのが公式の答えとなります」

「ケースバイケース……と受け取れば良いと言うことですか?」

「そう受け取っていただいても宜しいかと思います。先ほども申し上げましたが、私どもが関与する法的根拠がないのです。従って、手の届くところ……前回の魔王城のような事件に対しては、積極的に関与することもあるかと思います」


 ケースバイケース……本当に身も蓋もない言い方だよな。だけど、俺たちの立場を考えれば、そうするしかないと思うんだ。き、気まぐれとは違うぞ。頼まれもしないで、勝手に出て行く真似をしないと言うことだからな。


「最後ですが、アメリカの対応はどうなっているのですか?」

「それは政府に聞いてほしい……とお答えいたします。ちなみに、ただ停止現象を解除するだけなら簡単にできるようです。現時点で停止解除ができるのは、諸星さん、ラズライティシア様、シオンの3人となります」


 あっ、ラズライティシア様が膨れてる。そりゃあ、エリシオンさんが愛称呼びなのに、自分は『ラズライティシア様』って他人行儀な呼び方だもんな。だから膨れる気持ちもわかるけど、あの場で『シア』って呼んだら誰のことかわからないと思うんだ。

 だったらこれから乗り込んでいく……自分の立場を示した方が良い。立木さんに怒られるから止めた方が良いと思いますよ。だったらアメリカには二人で行く……反対はしませんけど、鴻池さんが反対しそうですね。ラズライティシア様、水着姿を晒しますか?


「ぬしは、われがナイスバディなのを知らないと見える。まあ、この身体はキヨヒコ……たまにエクシブ……のものだからな。見も知らぬ奴にサービスするつもりなど無いぞ」


 俺も、セレスの水着姿を披露するつもりは無いんだけどな。なぜか、水着姿が出回っているんだよ。あれって、俺と一緒に写った奴だよな。はっ! つまり俺の姿が消されていると言うことかっ!


「無様だな、孝明よ」


 それは否定しない。それよりも、記者会見は終わったようだな。今日はすぐに帰ってくると言っていたから、戻り次第歓迎の大宴会だな。

 ……もう帰ってきたんですか。そうですか、記者さんたちにサービスですか。それから立木さん、ちょっとSNSでも見てみますか? ええ、『立木タヒね』で溢れているんですよ。それからエリシオンさん、発信者を辿って報復すると言わないように。そんなことより、これからエリシオンさんの歓迎会を開きますからね。ええ、今夜は寝かせませんから……そこで立木さんの顔を見ないように。寝かせないの意味が違いますからねっ!




 年の瀬が迫ると、幾つか恒例行事が行われることになる。うん、クリスマスもその行事の一つだよ。そしてクリスマスが終わると、次は聖地遠征が待っているんだよ。今回は凄いよ、だってバス5台を連ねていくことになったんだ。それだけ、異世界人が増えたと言う意味にもなるんだけどね。

 それとは別に、立木さんは自宅の大掃除に帰っていた。ちなみに掃除は奧さんと二人で、その後御衣黄さんたちが合流して夕食をとったそうだ。夕食と言っても、ろばたのお店での豪遊と言うのが実態のようだね。


 多分ガードが堅かったからだと思うのだけど、今回は誰も連れて帰ってこなかったな。御衣黄さんが言うには、店内にはそこはかとない緊張感が漂っていたようだよ。


 それでクリスマス……去年は、全員合わせても26人プラス自衛隊員だったんだよ。でも今年は、総勢200人を超えるところまで来てしまった。1年で10倍増だから、来年が怖いと言っちゃいけないかな。

 ちなみに、クリスマスパーティーは2部構成になったりした。なぜかと言うと、『今日の異世界にいこうっ!』とタイアップしたからなんだ。だから第1部には、番組MCの3人も参加したりした。だけどマミちゃん、こっちに入り浸っていないか?


「今更ですが、諸星さんがとても『鈍感』と言うのがよくわかりました」


 小谷さん。なんで、そこで鈍感と言う話が出てくるんだ? 自分で考えろって……そこまで言っておいてそれはないと思うんだけどな。そうか、教えてくれないのか。だったら強制力……冗談だから、うん、冗談だからそんな目で見ないでっ。

 番組とタイアップと言うことなので、飾り付けからなんやらは鴻池さんが手配してくれることになった。その結果、うんその結果なのだが、これでもかと言う程魔王城がライトアップされたんだ。ただね、番組自体は6時前に終わるんだ。それでもかなり暗くなるから、それなりに見応えはあったんだけどね。


 ところで、やけに大きな鶏を焼いているんだけど……それってなに? コカトリス……パンの国にそんな鶏はいなかったと思うんだけど。

 ああ、これね。これって、本当に鶏って言って良いのかな? 身体の大体の部分は鶏。だから鶏と言ってくれるんだ。蛇に見えるのはおまけ、おまけで良いのか?


 そうか、お菓子の国の方で捕まえてきたのか。ただ冒険者に捕獲を依頼したせいで、犠牲が沢山……30人ぐらい? そうか、犠牲が30人も出たんだ。エリシオンさんに頼んで、石化を解除して貰った。それもあって、あっちでもエリシオンさんは大人気だった。『立木死ね』『立木コロス』を至る所で聞かされたと言うのか。大人気だな、立木さん。


 クリスマスのメインは、コカトリスの丸焼き……何人が、その正体に気づくんだろうな。そうか、放送では生前の姿も見せてくれるのか。でも意外って言って良いのか、思ったよりもずっと美味しいと思うぞ。ただちょっと、噛みごたえがありすぎる気もするけど。そうか、まだ調理方法が確立していないのか。

 だから今晩の丸焼きは、もう少し柔らかくなるはずだ……夜の分も捕まえてきたのかっ! だから30人も……違う、ラズライティシア様とエクシブがさくっと捕まえてきたのか。で、ラズライティシア様の評判は? エクシブがモテた。それで、俺の質問への答えは? エクシブがモテた……うん、悪かった。聞いちゃいけない質問だったんだな。


 なになに、コカトリスの安定供給を考えている。安定供給が出来たらどうするつもりだ? 魔王城で提供することを考えている。そうか、その点抜かりはないのだな。

 だったらパンの国からワイバーンは持ってこなかったのか? もうペット化している。だから、殺して食べるわけにはいかない。貴重な観光資源と言ってくれるのか。


 悪かったなワイバーン


 ああ、新しいパターンだよな。


 うん、クリスマスパーティーの一次会なんだけど、とっても盛り上がったと思うよ。番組の取れ高、その取れ高だけど、リアルタイム集計でかなりの視聴率が出たみたいなんだ。SNSでは、『コカトリス食いてえ』の書き込みが溢れたようだよ。じゃあ次はバジリスクだな。あっちの方が更にやばい……まあ、エクシブに任せておけば大丈夫だろう。

 あとはタコとかも居た気が……クラーケン、そうそうクラーケン。クラーケンが居るのなら捕まえてくるのも良いな。うん、今はタコも高いから。異世界魔物料理ってのも、お客を呼べて良いのかもしれないな。


 取りあえず大盛り上がりのうち、一次会は無事終了した。それで場所を研究棟に移って、いよいよ本番の上里集落大クリスマスパーティーの開催だぁ……ドンドンヒューヒュー。と言うのは良いのだが。なんでここにマミちゃんが? それにBLTの二人もどうしているの? ところでそちらの綺麗な人は……カンナさん。ひょっとして最上カンナさんですか。ええ、ファンなんですっ!

 なんです、マミちゃんに悪いと言うのは。どうしてマミちゃんに悪いのですか? ええ、回りからは鈍感とよく言われますけど。

 それはそれとして、どうして芸能人が増えているんだ。


「いやぁ、色々と売り込みがありまして」


 売り込みがあったって……二次会は上里集落の内輪の会だよ。どうして、芸能人が参加しているのかな? 大丈夫、テレビカメラは入っていない。そう言う問題じゃないと思うんだけど。


「ずっと一緒に番組を作っていますよね? 私、参加しちゃいけませんでしたか?」


 いやマミちゃん、いけないってことは無いんだよ。だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれるかな。うん、集落代表としてマミちゃんたちをお客さんとして迎えるから。これは俺の決定だから誰にも文句を言わせないぞ。これで良いのかな?

 嬉しい、だから別室でお礼をしたい。うん、これからパーティーが始まるからな。代表として俺が抜けるわけにはいかないんだ。


 それで、うん、挨拶だよね。これでも集落代表だからね。挨拶が必要なのはわかっているよ。なんで立木さんがステージに立っているんだ? 乾杯って……俺が仕切るんじゃ無いのか?


「司会なんて、下っ端がするものですよ」


 そうなのか、乾杯の音頭は上のものがするものだと思ったんだけど。普通はそう、だけどこの集落は普通が通用しない。そもそも乾杯するまでの間が持たない……確かになぁ、そんなことが有った気がするよ。

 それは良いのだけど、なんでクロアさんとフィオレンティーナさんが居るの? いいの、こんな所に来ていて。


「彼女の問題が解決したので、かなり宇宙も落ち着いてくれたんです」


 そうか、だから時間が出来たと言うのか。だとしたら、もうこの世界へのお客さんは来ないと思って良いのか? まさか……まさかって言ってくれるのか? そうか、まだ来るのか。帰還事業、帰還事業と言ってくれますか。なるほど、こちらの世界から飛ばされた人たちが戻ってくるんですね。だから帰還事業と言うんだな。

 ところで伺いますが、こちらに来るのは飛ばされた人だけなんですよね? だぁかぁらぁ、そこでまさかと言わないように。せいぜい飛ばされた人の配偶者とか恋人程度にしてくださいよ。なんです、『キボウハキイタ、タダキイタダケ』って、どうして棒読みしてくれるんです?


 今回の宴会のメインは、なんとコカトリス料理……って、さっきと同じだよな。だけどこの人数相手だと、いくらコカトリスが大きくても足りないと思うんだ。なんで、コカトリスの数が増えているんだ? 誰も1匹とは言っていない。エクシブが頑張った……ラズライティシア様も行ったんだよな。

 ところでその鍋は……熊鍋。熊もあっちで捕まえてきたのか? 違う、大谷村から頼まれてルーテシアとエクシブが捕まえた。どうして荷造り紐を使わなかったって聞いても良いよな?


「ここの所身体が鈍っている気がしたんだよ。だから、運動がてらに熊狩りをしたんだ。私も、コカトリスを狩りにいきたかったな」


 暇だったら行っても良かったと思うんだが?


「いや、おばばがな」


 おばばって……ひょっとしてラズライティシア様のことかな。それは良いけど……よくないか。本人に聞こえないようにしろよ。それでラズライティシア様がどうかしたのか?


「シオン……エリシオンと比べられてへそが曲がっていたのだ。だから私は、遠慮することにした」


 あ~、そう言うことね。それで、ラズライティシア様は?


「わざとらしく立木に泣き付いていたよ」


 泣き付いたに、わざわざ『わざとらしく』をつけてくれるのか。そうか、あの程度のことで泣き付く理由がないと言うのだな。ただエリシオンさんの牽制に使ったと言うわけか。でもその牽制、意味があるのか?


「いや、全くなかったな。何しろおばばが泣き付いている横で、頭を撫でられて喜んでいたのだ」


 そうか、あそこもなかなか面白い関係になっているんだな。ところで、インテグラはどうしていたんだ? そうか、和解はしてもエリシオンさんは怖いと逃げ回っているのか。

 ところで、預けた闇エルフはどうしてる?


「どうしてると言われてもだな。しっかり集落に馴染んでいるよ。ほら、あそこのカレーコーナーを見てごらん。闇エルフたちが列を作ってるだろう?」


 闇エルフだけじゃ無くて、始祖竜たちも並んでいるよな。あと、ステーキのライブキッチンにも。

 ところで、魔王様たちの影が薄いのだが? ああ、魔王様。なんか元気がない気がするのだが?


「余は、自信喪失と言うものをしておるのだ」


 自信喪失……唐突だな。理由を聞いても良いか?


「うむ、以前余が、諸星殿に『可愛い系の魔王』をリクエストしたのを覚えておるか?」


 そう言えばそんなリクエストを受けた気が……ひょっとして、勇者と恋仲の魔王とか言う奴か?


「そうだ、その魔王のことを言っておる。その意味で言えば、エリシオン様は中途半端だったのだ」


 中途半端って……それ以前に、なぜ彼女に様をつけるんだ?


「だから自信喪失と言う話になるのだ。なんだ、あの化け物じみた力は。同じく化け物の竜人どもを子供扱いにするなど信じられんだろう。それをあんなそそる体をした可愛らしいエルフが成し遂げたのだ。井の中の蛙大海を知らず……だったか。こちらのことわざの意味を思い知らされた気分なのだよ」


 そうか、確かに彼女は竜人の天敵なのだが……それで、『様』を付けて呼ぶ理由は?


「余が、エリシオン様の僕となったからだ」


 魔王様が、エリシオンさんの僕に……ポチポチ。それって、本気で言っているのか?


「本気も本気。この身を粉にして仕えると言ったのだ。言ったのだが、いらないと言われてしまった。だから今は、認めて貰えるまで頑張っておるところだ」


 まあ頑張れと言っても良いのだが。一応確認しておくのだが、彼女と立木さんの関係を知っているよな?


「知っているが、それがどうかしたのか? そう言えば、アクトロスが落ち込んでいたな。今度ばかりは、流石に勝負にならないと言っておったぞ。見た目に……ラズライティシア様までならなんとかなると言っておったのだがな」


 そうか、まあ頑張ってくれ……何にとは言わないがな。


「ところでエリシオン様は、魔王城公開に関係してくださるのか?」


 なぜそれを立木さんに聞かない? まあいいのだが、彼女には別の仕事をして貰うことになってる。うん、こちらは立木さん案件なんだ。まあ、レアキャラで出る可能性も微レ存だがな。


 それから鴻池さん……ああいたいた。俺が来るのを待っていた……なんか嬉しいことを言ってくれますね。それで、俺に何かあるんですか? ひょっとして、ハワイ旅行の日程が決まったとか?


「いえ……そちらもお願いが必要でしたね。そのお願いと言うのは、諸星さんのアメリカ遠征にカメラを同行させていただきたいんです。立木さんが仰るには、アメリカツアーになるのだそうですよ」


 それは俺も聞いたのだが。本当にアメリカツアーなんかになるのか?


「最初は私も疑問だったんですけどね。立木さんが仰るには、アメリカはかなり必死になっているそうなんですよ。何しろ竜人には3カ所も襲われましたし、今回はホワイトハウスの真ん前で停止現象が発生しましたよね。なんでウチばかりと言う気持ちになっているそうです。それもあって、諸星さんとの関係構築……要は、お願いしやすい環境を作ろうと企んでいるのだそうです。ちなみにこれ、立木さんの北米仲間からの情報だそうですよ」


 立木さんの北米仲間って……あの人、どこまで人脈が広がっているんだ? いくら何でも、おかしすぎないか?


「ええ、おかしいと思いますよ。あの人、思った以上に凄い人なんですよね。ハロワの話なんですけど、未だに信じられないぐらいです」


 そうだよなぁ、あの立木さんがハロワで募集票を見ていたなんてな。それはそうと、お願いがあったんだよな。


「ええ、お願いですね。そのエリシオンさんのことなんですが。『今日の異世界に行こう!』にゲストで出て貰えないでしょうか。SNSでもそうですけど、彼女を見たいと言う要望がもの凄く大きいんです」


 そりゃあ、あれだけ綺麗で可愛いとな。その要望が強いのは理解出来る気がするぞ。ただな、なぜ俺に聞いてくれる? エンターテインメント部門の窓口は朽木君だったよな?


「朽木さんにもお願いしてありますよ。善処する……とは言ってくれたんですけどねぇ。今ひとつ弱い気がしたので、諸星さんにお願いに上がったと言うことです」


 朽木君が弱い……だったら、俺も弱いと思うのだがな。立木さんの上司。だから命令することが出来ると言ってくれるのか。あのなぁ、俺が立木さんに敵うと思っているのか?


「なにか貶された気がしたのですが……私の気のせいですか?」


 はい、気のせいと言って差し上げます。それはそうとして、慶子さんだけなんですね。


「家内と一緒に居て、なぜ不思議がられるのかわからないのですが……それはそうとして、私がどうかしましたか?」


 いえ、それはですね、鴻池さんお願いします。


「逃げましたね。逃げてくれましたね……と言うのは良いのですけど、エリシオンさんにですね、『今日の異世界に行こう!』にゲスト出演して貰いたいんです」

「ああ、朽木君が言っていた奴ですね。おかしいですね、朽木君から話を聞いていませんか? 私は、条件付きで認めたのですけどね」

「いえ、まだ朽木さんからはなにも。それで、どんな条件なんですか?」


 ああ、おっかなびっくりになってるな。うん、それは理解出来るんだよ。だって、立木さんって、時々突拍子も無いことを持ち出してくれるんだ。


「私は、無理難題を持ちかけることはしないのですけど。駄目なら駄目と、はっきり答えますので。それから条件ですけど、まだ彼女がこちらの世界になれていないんです。だから、あまり負担を掛けるようなことをしないで貰いたいぐらいですね。勉強と言う意味では、テレビに出るのも良いと思っているんですよ」

「反対はされないと言うことですか?」

「せいぜい常識……マスコミの常識ではありませんよ。常識的に生きている人たちの……と言ってもわからないですね。限度をわきまえてくださいとお願いする程度です。それから、朽木君が窓口なんですよ。お願いをしておいて、飛ばしてくるのは感心しませんね」


 ああ、原則論を持ち出してくれたよ。確かになぁ、エンターテインメント部門は朽木君の担当なんだよな。その意味では、鴻池さんの行為は褒められたものじゃ無いんだよな。


「どこまで許容するかは、朽木君に任せています。ですから、詳細は彼と詰めてください。それはそうとして、年明けに奈良に行く話を覚えておいでですよね?」


 年明けの奈良って、例の発表をする件ですよね。ええ、忘れていませんよ。ですよね、鴻池さん。


「段取は進んでいます。異世界交流文化会館を、暫定で県庁内に設置するところまで話は進んでいます。正式な交流会館は、現在用地選定中となっています。館長を藤原教授にお願いする、で宜しいのですよね」

「本人からは快諾を貰っていますよ。こちらから出すより、大学教授の方が潰しが効くでしょう」

「藤原教授は、上里集落公開でもマスコミに顔が出ていますからね。その意味で言えば、適任者と言って良いと思います」

「それで、発表の日程は決まりましたか?」

「あちらは、元日に会見を行いたいようですよ。はっきり言って、インパクト狙いだと思います」


 よりによって、クソ忙しい正月にか? あっ、だけど悪い考えでも無いのか。多分だけど、正月番組でもここのことを扱うんだよな。だとしたら、それに便乗するのも悪くはないわけだ。

 ええっと、それだけじゃないんですか?


「ですから、それに乗ることにしました。今日の異世界に行こう! なんですけど、正月生特番が計画されていたんです。マミちゃん、BLTのスケジュールも押さえてあります。最上カンナさんもゲスト出演を名乗り出てくれましたよ。奈良県庁とこちらの二元中継を行うところまで話が進んでいます」


 ええっと、今頃と言っても良いよな。うん、普通正月編成ってもっと早く終わってるよね。魔王様の出現で、色々と予定が変わった。だから、番組構成も流動的になっているんだ。


「はっきり言って、我々の世界も落ち着きがなくなっています。臨機応変に対応しないと、時機を逸してしまうことになるんです。それもあって、正月番組をかなり変更することになりました」


 そうか、時代は動いているのだな。ところで立木さんは、どちらで出席されるのですか?


「私は、奈良の方で出席しますよ。どうやら、本山も顔を出してくれるようです。例の居酒屋なんですけど、貸し切り対応をしてくれるそうです」


 例の居酒屋って……オルティアさんと出会った場所ですか? なるほど、それは面白い試みだと思いますよ。それで居酒屋側の出席者は?


「私とティア、シアとインテグラ、かすみちゃん、アン、本山……ぐらいですかね。東京の方から誰かが押しかけてくる気もしますが……」


 慶子さんはどうするんですか? ええっと、県庁側で出席されるのですか。理由は……酔っ払いの中に入りたくない。陽佳ちゃんのためにも、自分が付いていた方が良いと言うのですね。なるほど、了解です。

 ところでエリシオンさんの名前が出ませんでしたが……?


「エリシオンさんには、県庁側で出て貰おうと思っているんです。夫は、彼女にも一緒に学んでほしいのだそうですよ」


 あっ、鴻池さんが驚いた。つまりその話は聞いていなかったのですね。初めて聞いた……なるほどなるほど。


「上里集落だと、普通と言われる感覚を学べないんです。だから同年代……精神年齢的になんですけど、似たような年代の女性たちと一緒に学んでほしいと思ったんです。後は、心のリハビリと言う意味もあります」


 そうですか。心のリハビリと言ってくれますか。確かに、リハビリが必要なのでしょうね。


「ただ、彼女の場合は行ったきりにはならないと思います。今日の異世界に行こう! でしたか、色々な世界に触れることも大切だと私たちは考えているんです。だから、奈良とこちらは半々になると思いますよ」


 移動が面倒と言ってはいけないんでしょうね。ええ、彼女は転移能力がありますからね。なんです、フローリアンさんが常設ゲートを作ると言うのは。そうですか、陽佳ちゃん用のゲートでもあるんですね。

 ちょっと疑問なんですけど、二人はどこに住むことになるんですか? マンションを借りる……ゲートがあれば、通学時間は掛かりませんよね?


「気持ち……これは陽佳ちゃんだけで無く、受け入れる側の気持ちのことも言っています。その気持ちを考えると、あちらに部屋を作る必要があるんですよ」

「ですので、私たちが一緒に行って部屋を決めてくるつもりです」


 慶子さん。嬉しそうに見えますよ。そうですか、お嬢さんは頼ってくれなかったと言うのですか。だから、一緒に探せるのが嬉しい……エリシオンさんは良いんですか? 可愛らしくて憎む気持ちになれない。そうですか、いえ、それで良いのですかとは聞きませんよ。


「ところで諸星さん。また、奥様を増やされたのですか? しかも、またお姫様」


 もしもし慶子さん、突然何を言い出すんです。闇エルフは連れてきましたけど、お姫様を連れてきた覚えはありませんよ。はい、お目にも掛かっていないはずです。


「ですが、あの一角に王様らしき方がおいでなのですけど」


 あの一角……おかしいな、俺には見覚えがないのだけど。しかもなんだ、俺が見たら揃って土下座をしてくれたぞ。おい、一体どうなっているんだ? なんだ木下君、その紹介すると言うのは?


「シャトレーゼ王国国王様を紹介するんですよ」


 なぜ、シャトレーゼ王国国王様がここに居るんだ? 謝罪……何に対する謝罪なんだ?


「闇エルフを差し向けて、諸星さんを殺害しようとしたことへの謝罪です」


 ああ、確かにそんなことがあったな。でも、失敗したことがばれるのは良くないって話じゃ無かったか? 確かにそうだが、今は失敗して良かったと思っている。だから、闇エルフに責任を問うことは無い。罪は、すべて命じた自分にあると言っていたのか。

 だけど、ここに居る説明にはなっていないよな?


「謝罪をしたいと仰ったので、こちらにご招待したのですけど?」


 じゃあ、お姫様に見える人は?


「お詫びの印だそうですよ。シルビア様と仰るのですけど、きつめの見た目をされているのですが、民たちからはとてもお優しい方との評判です。もちろん、美姫としても名高い人ですよ」


 なんだ、そのお詫びの印と言うのは? 俺は、別にお詫びの印なんかほしいとは思っていないぞ。それ以前に、誤解を与えたのは俺の方だと思っているんだからな。


「諸星さん、棚を作るのは諦めたんですよね」


 い、いや、だからと言ってだな。なんだ、ブーランジェリー王国のことは知っていると言うのは。どうして、違う世界のことを知っているんだ? 自分が教えた……教えたって。


「諸星さん。綺麗なお姫様はお好きですよね?」


 綺麗なお姫様を嫌いな男はいないと思うぞ。だったらこれで決まりって……いや、そういう意味で言っているわけじゃ無いからな。だから、これはポーズじゃ無いんだからな。



綺麗なお姫様は好きですか?

すみません、コカトリスとバジリスクがごっちゃになっています。

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