新たな魔王
村の特産は異世界です
・新たな魔王
せっかく見つけたのに、追跡に失敗してしまった。やっぱり空間が広すぎるのが問題なのね。それでも収穫はあったと思う。うん、あの大きな光から出てくるのを見かけたから。だとしたら、最初に確認するのは一番大きく光ってる世界になると思う。
だから急いで……急ぐ必要も無いわね。私には十分時間はあるのだし、彼女たちが戻るのを待つ必要もあると思う。だから、ゆっくりと、本当にゆっくりと大きな光に向かうことにした。
あなたは誰? どうしてこんな所に居るの?
もう少しで到着と思ったら、金色の髪をした女性が立ち塞がってくれた。とっても綺麗な女性と言うのは良いのだけど、それ以上に感じたのはとても大きな力を持っていること。私程度では、足下にも及ばない大きな力を持っていると思う。
私の邪魔をするの?
私を止めようと言うの?
今更なの?
邪魔はするが、止めるつもりは無いと言うのね。そう、あの世界には私など及びも付かない存在がいるのね。だから止めなくても、世界が壊れることは無いと言うんだ。だとしたら、どうして私の前に現れてくれたのかしら?
ひょっとして忠告のつもり? 違うの? 忠告じゃないの?
予言のようなもの、私が普通の人に敗れると言ってくれるのね。そう、私を倒してくれるのは普通の人なのね。
別に、落胆などしていないわ。これまで私がしてきたことを考えれば、どこかで報いを受けてもおかしくないと思ってるから。ただ、今の私を、『普通の人』が倒せるとは思えないのだけど。
破れるとは言ったが、倒されるとは言っていない。むしろ、救われると言ってくれるのね。私が救われる……つまり私は死なせて貰えるのね。今の私には、死は救いでもあるのよ。
そう、そこまでは教えてくれないんだ。でも、邪魔をしないのならそれで良いわ。今の私では、あなたに勝てるとは思えないもの。ここで死ぬのは、一番意味がないことだと思ってる。
じゃあ、行くから
少し時間を使ってしまったけど、気にするほどの時間では無いわね。でも、『良い出会いを』と言うのは、今の私に相応しくないのは確かだと思う。
楽しそうに帰ってこられると、つい文句の一つも言いたくなる。ただ流石は年の功、立木さんは先手をとってくれたよ。ああ、去年も行ったコミケとか言うイベントのことだ。夏に行かなかったからどうなるのかと思ったのだが、冬のコミケには参加すると言うのを教えてくれたのだ。
「ホテルの方は、鴻池氏に手配をして貰いましたよ。多分ですけど、昨年と同じホテルになると思いますよ」
そうですか、あのホテルですか。ただ、あのスイートルームは、ちょっと分不相応と言えば良いのか。だから、そこで呆れないでほしいのですけど。俺のメンタリティは、地方のしがない会社員の息子なんですから。
そのリクエストは鴻池氏にして欲しい。今回の件は、さほど関与していないと言ってくれるのですね。ところで立木さんも、コミケに行かれるのですよね?
「私は、ここでお留守番をしていますよ」
留守番……ですか? 本気で言っています? そうですか、本気で留守番をしていると言うのですね。ただその前に、一度横浜の自宅を掃除しに帰る。ここから先の予定は、その程度だと言ってくれるのですね。
「かすみちゃんに、京都に呼ばれなければ、ですけどね」
そちらは仕事ですから、まあ、頑張ってくださいとしか。そうですか、立木さんは年末の行事には不参加と言うことですか。ちなみに、理由を伺っても良いですか?
「身体を休めるため、ですよ。移動はたいしたことはなくても、コミケに行くのはそれだけでもかなりの体力を使いますからね」
ひょっとして、立木さんもコミケに行ったことがあると。そうですか、30年近く前に一度行っている。なるほど、どう言う所かご存じと言うことですね。
「今回は、諸星さんが楽しむ番だと思っていますからね。昨年は、コスプレゾーンで楽しまれたと聞いていますよ」
コスプレで楽しんだ……確かに、大いに楽しませて貰ったと思う。ただなぁ、あの時は翼人たちの正体を隠していたんだよな。だとしたら……今年は、身バレの心配が必要ない訳か。
「ちなみに、先方の実行委員会とは話が付いていたりします。ですから、コミケwithIMO研究所と言う形でコラボレーションすることになっているんです」
えっ、いつの間に? そりゃあ、異世界ものってまさにコミケの世界ですよね。そうですか、だから出し惜しみをするつもりは無いと言ってくれるのですね。
「魔王様には、オークとデモンを選抜して連れて行って貰いますよ。それに加えて、ピアッツァさんにも参加して貰うことにしています。生『くっ殺』をするのだと燃えられておいででした」
伝説のあれを生でするのですか。なんです、この寒空にビキニアーマーでやってくれるのですか。なるほど、魔王様もメイクをしてくれるのですね。ええ、今のままだと顔色の悪いイケメンでしかありませんからね。はい、その脚色には賛成させて貰います。
なるほど、大きなお友達の反応を見たいと言うことですか。ハイエルフ、翼人も全員参加なのだと。ちなみに、追加の翼人も連れて行くのですか? なるほど、出し惜しみはしないと言うのですね。だから、闇エルフも連れていくことにするんですか。
ナイスです立木さん
それで、今度はバスを何台……5台連ねていくのですね。エルフ系だけでも70ぐらいになる。翼人は40ぐらい。魔王様のところで15、竜人も30になるわけですか。ちなみに始祖竜たちも連れて行くつもりと言うことですか。そりゃあ、彼らもしっかりと居着いていますからね……あれっ、やけに人数が多くないか?
ところで立木さん、誰が彼らの統制をとるんですか? そうですか、俺を指差してくれますか。なるほど、自衛隊にも協力依頼が出してあると。自衛隊の精鋭……主にオタク方面が支援をしてくれるのですね。それなら安心……むしろ不安になるのはどうしてでしょうね。
いえ、嫌だといっているつもりはありませんよ。それに、昨年も東京に行っていますから、セレスと年末の風景を見るのも悪くないと思っているんです。ただ、今年は二人で行動できるかどうかは微妙なんですけどね。
それはそうと、結構落ち着いたと言っても良いですよね。大部屋……所長室を使えと言うのは言わない約束でお願いします。大部屋の空気もまったりしていますよね。
「実際のところ、大谷村対応は忙しいのですけどね。何しろ、いきなり人数が増えてくれたんです」
それは……誠に申し訳ありませんとしかいいようがありません。それは良いのですけど、どんな方向で話が進んでいるのですか? そうですか、雪が降り出したので動いていないと言うのですね。だから、国道沿いにある施設を完全に借り上げることになった。ひょっとして、工事関係者が泊まったあれのことですか。そうですか、あの施設を借り上げたのですね。部屋が足りないので、大宴会場で雑魚寝をして貰っている。まあ、数が数ですから仕方が無いのでしょうね。ええっと、何人連れてきたのでしたっけ?
「翼人の女性が20、始祖竜も20、闇エルフが30……都合70人と言うことになりますね」
流石にそれだけ増えると、収容する施設が足りなくなるな。ああ、パンの国に連れて行くのも解決策なのは確かだな。ただな、あの翼人のことを考えると、面倒を運び込むことになりそうな気がするんだ。だったら、俺の目が届くところに置いておいた方がいい気がするんだよ。
そうですか、取りあえず雑魚寝でなんとかなっているのですね。だとしたら、宿舎……で良いんですよね。それを考えないといけませんね。
「それはそうなんですけど。これから里は雪に閉ざされますからね。それを考えたら、入れ物は春になってからと言うことになります。取りあえず村長には、住まいの候補を探して貰っているところです」
中林さんかぁ……また観光のリソースが増えたと、喜んでいそうな気がするぞ。ああ、木下君と田中さんが、パンの国とは違った資源があると言っていたんだ。
ところでジャック、黄色いマークが画面に出てないか? 誰か、ワシントンDC? で跳躍したのか?
「いえ、反応が小さすぎて本当に転移なのかわかっていないんです。ただこれが本当だと、ホワイトハウスのすぐ近くなんですよ。夕方の6時過ぎともなると、まだ街には沢山人が居るはずです」
「白船君、上杉さんからの情報はありませんか?」
「今のところ、なんとも……」
「つまり、誤報の可能性があるわけですか。今の検出感度は、どこに設定してありましたか?」
「レベル5にしてあります。感度が高いと言えば高いのですが……これ以上下げると、シャルの転移で取りこぼしが出るレベルです」
「つまり、誤報かどうか微妙な線と言うことですか。ニュートリノの観測はどうなっていますか?」
「こちらの方が反応が遅くて……今出ました。かなり大きなエネルギー反応を確認。何者かが、DCに転移をした模様です」
「グレゴリー君、自衛隊に緊急接続してくださいっ」
な、なんだ、一体何が起きたんだ? 今回のことだけど、クロアさんから警告が無かったよな。そう言えば、最近クロアさんじゃ無くてフィオレンティーナさんが現れているのだが。
あっ、上杉氏が画面に現れてくれたな。
「上杉さん。転移反応をワシントンDCで検出したことは伝わっていますね?」
「今、官邸を通じてホワイトハウスと連絡を取っているところだ。まだ連絡が取れていないらしい」
「つまり、何かが起きた可能性が高いと言うことですね」
ふうっと息を吐いて、立木さんは椅子に座り込んでくれた。俺の気のせいなのか、立木さんが焦っている気がするんだ。まあ、俺も慌てているからどっこいどっこいなんだがな。
「ジャック君、反応の規模はシャルロットさんの転移レベルなんですね?」
「重力波の観測結果はそうです。ただ、ニュートリノの方は先日の竜人を超えています」
「莫大な魔力を持った人間大のものが転移してきましたか……インテグラたちの言っていた、『魔王』の可能性がありますね」
「魔王、ですか」
ああ、ジャックがゴクリとつばを飲み込んでくれたぞ。それだけ緊張したと言うことだと思うのだが……実は俺だって似たようなものなんだ。
「新たな転移が検出されてない……現場に留まっているのか、はたまた転移によらない移動をしているのか。ニュートリノレベルを見る限り、現場に留まっていると考える方が妥当そうですね。それでも言えることは、今の私たちには何も出来ないと言うことです」
よく、そこでコーヒーをとりに行けますね。俺なんか、緊張から飲み物が喉を通ってくれそうに無いんですけど。
「それでも、諸星さんには落ち着いてほしいんです」
俺にコーヒーですか、いえ、ありがたく頂きますけど。とにかく、一口でも飲んでみます。
と言ってコーヒーを口に含んだら、別の画面に菅谷総理の顔がポップアップしてきた。うん、総理官邸地下にある危機管理センターだよね、これって。
「諸君の表情を見る限り、何かがあったことは了解していると解釈させて貰う」
菅谷総理の表情が厳しいな。これは、かなり深刻な状況になっていると言う意味だよね。
「米国から情報が入ったのですね?」
「うむ、ギブソン大統領から支援依頼が届いた。現在ホワイトハウスから3km離れた地点で異常が発生。発生地点を中心に、すべてのものが変質を始めている。まるで時間が止まったような……と言うのが得られた情報だ。生きとし生けるものすべてが、その活動を停止したそうだ。異常現象は、人が歩くような速度で拡大を続けている。このままだと、30分もしないうちにホワイトハウスも動くもののない世界に包まれることになる」
これが、すべてが静止した世界と言うのか。グレゴリーの時間停止能力より遙かにエグい現象だぞ、これ。
「それで、日本政府はどのような対応を決定したのですか?」
「正式な支援依頼である以上、こちらも最善を尽くす必要がある。従って、日本国内閣総理大臣として、IMO研究所社長、諸星孝明氏の出撃をお願いする」
「法的根拠がないのは理解の上……と言うことですね」
「従って命令では無く、お願いと言うことになる」
あちゃぁ、菅谷総理が頭を下げてくれたよ。だったら、俺が行くしかないと思うんだ。だっ……なんで立木さん、止めるんですか?
「諸星氏を派遣するリスクを理解されてのことと考えて良いのですね?」
「そのリスクとは、別の地点で同じ現象が起きることを言っているのかね?」
「もっと具体的に、東京の中心で同じ現象が起きることを言っています。諸星さんを派遣すると言うことは、東京の対処が出来なくなるのは理解されておいでですよね」
「それは……」
行くつもり満々の俺だったのだが、東京も狙われていると言われたら、迂闊に行くと言えなくなってしまった。相手が空間転移を使えるのなら、DCから東京に転移してきてもおかしくないんだよな。
「起きてから考えると言うのは、私の立場を考えれば無責任と言うことになるのだろう。それでも、支援しないと言うのは現状許されないことなのだよ」
「そうだろうとは思いました。ところで出撃する場合、どこに行けば良いのですか?」
つまり、俺が出撃すると言うことだよな。だけどなんで、立木さんが仕切っているんだ? いや、俺じゃあ仕切れないのはわかってるんだけど。今の話だって、俺は気づいてもいなかったんだからな。うん、言質を取る必要があったのは理解出来るんだ。
「今から地図を貰う」
「了解しました。ではシャルロットさん、諸星さんを連れて地図の地点へ転移してください」
「わ、わかりましたっ!」
なぜシャルロットが? 転移だったら、俺もすることが出来るのだが?
「諸星さんに、米国内の土地勘があるとは思えません。今は、一刻一秒を争うときだからです」
「転移地点の地図が来ました。コンタクト先も情報として入っていますっ!」
「ではシャルロットさん、通訳もしてあげてください」
「い、行ってきます……りいぷっ!」
あっ、目の前の景色が変わった。それは良いのだが、ここはどこなんだ? やけに立派な建物なのだが?
「合衆国議会議事堂です。諸星さん、到着の合図に光を点して貰えますか?」
明るくなれ……で良いのかな? もうちょっとピンポイントで……だったら、光よっ!
「それで結構です。はい、SPが近付いてきますね。多分ですけど、ギブソン大統領が一緒です」
だ、大統領直々になのか?
「礼儀を尽くしたと言うことと、諸星さんの近くが一番安全だからだと思いますよ」
俺の近くが一番安全……そう言われても自信は無いのだが、確かに安全なのかもしれないな。
え、ええっと、俺が大統領と握手、握手するのか。いや、緊張するんだよ、こう言うのって。映画みたい……そんなことを味わう余裕なんかないんだよ。
諸星さんは、今頃ワシントンDCで大統領に会っているんですね。それは良いのですけど、日本は大丈夫なんですか?
「小谷さん、悪い知らせがあるのですけど聞きたいですか?」
やっぱり、悪い知らせがあるのですか。それって、予想通り東京に何者かが転移してきたと言うことですよね。そうですか、何者かが転移してきたのですね。地図を見たら……東京タワーですか。そこって、首相官邸まで2kmも無いですよねっ!
「息子の職場から徒歩10分の距離でもあるんですよ」
ちょっと待ってください。それって、気づいたときには逃げられないってことを言っています?
「その悪い知らせだ。立木氏の言う通り、東京タワーを中心に停止現象が観測された。拡大速度は分速60m……人がゆっくり歩くぐらいと言うことになる」
「諸星さんは派遣してしまいましたからね。ですので総理は、直ちに官邸から避難をしてください。今のままだと飲み込まれるまで、30分も掛かりません」
「今、陸自がヘリを飛ばしている。だが、諸星氏が戻ってくるまで、停止現象への対処方法が無いのは確かだ」
「あちらも、おいそれとは返してくれないでしょうね。停止現象の停止はまだしも、解除ともなればかなりの時間が掛かることになると思います」
「一応理由を教えてくれるかね?」
「停止現象が同時に発生していないからです。解除の順番によっては、予期せぬ事故が発生することになります」
その前に、逃げようとして事故が起きている気がしますね。ああっ、諸星さんが居ても最悪じゃ無いですか。
「キヨヒコよ。われがぬしの息子を拾ってこようか?」
今なら、確かに間に合いますね。でしたらラズライティシア様、すぐにでも転移して貰えますか?
「待ってください。いやっ……」
なぜ迷うんです? 今行かないと、手遅れになってしまうんですよ。
「シア、あなたは菅谷総理に合流してください。そして可能なら、停止現象の解析をお願いします。解析が出来さえすれば、停止現象自体を止めることが出来るはずです」
「ぬしの息子を優先しなくても良いのか? 拾い上げてから菅谷とかのところに行ったとしても、さほど時間は変わらないと思うぞ。少なくとも、ここで考えているよりは時間を無駄にしないはずだ。だからキヨヒコ、われは勝手にぬしの……違うな、われらの息子を救いに行くことにする」
あっ、ラズライティシア様の姿が消えました。でも、時間からするとギリギリになりましたよね。大丈夫ですか、立木さん……大丈夫じゃ無さそうですね。流石の立木さんも、ご子息が絡むと冷静ではいられないと言うことですか。
でも立木さん、立場を優先されたのですよね。それがとても苦しい選択と言うのはわかっています。私が何を言っても慰めにならないのもわかっているんです。
「小谷さん、私の顔を思いっきり張り倒してください」
なぜ、そんなことを。切り札が居なくなった以上、自分がしゃっきりしないといけないから。そうですか、でしたら張り倒させていただきますけど……遠慮無く、ですか? インテグラさんとかが怖い気が……あれっ、インテグラさんが顔を青くして震えてる。
だったら、仕方がありませんね。後から文句を言わないようにっ! パシッ
「嫌な役回りをさせてすみませんでした」
手が痛かったと言うのは言ってはいけませんね。いえ、立木さんに任せすぎと言うのは理解しているんです。ただ、私にはどうしようもなくて、ですね。
「では、今から全員に命令します。すぐに、ここから遠くに逃げてくださいっ!」
えっ、それってどう言うことですか? ひょっとして、ニューヨークと東京が陽動って言っていませんか?
だったら……
「気づいたのは偉い。でも、手遅れ」
一体誰? あっ、エクシブさんが跳ね飛ばされた。一体何が起きてるのっ……起きてる……
情報を得るため、賑やかなところを選んで転移してみた。ここはどこ、ワシントンDC……そう、そう言う名前の街なんだ。ええ、見たこともない建物が沢山並んでると思う。それに、歩いている人たちも見たことのない格好をしているわね。
そこで一人捕まえて竜人のことを聞いてみた。言葉、言葉なら何も問題は無い。魔法を使えば、言葉の問題も解決することが出来るから。そう、ジャパンと言う国に竜人が保護されていると言うのね。だったら、次はジャパンに行くことにしましょう。ところで、ジャパンってどこにあるの? 知らない……ちょっと残念。極東の島国と言うのは知っている。それって、答えになっていないんだけど。
仕方が無いから、別の人に当たることにするわ。それからあなた、大人しく石になっていなさい。
こうしてジャパンに来たのだけど、ちょっと苦労したのはどうしてだろう。どうして、名前はわかっても場所を知らないの? 憧れているんだったら、場所ぐらい知っていてもおかしくないと思うのだけど。
それは良いけど、珍しい塔が建っているのね。鉄……こんなに沢山鉄を使っているんだ。ここでは竜人の香りがしないから、こっちには来ていないと言うことになる。だとしたら、ジャパン……そう、こちらではニッポンと言うのね。それで、どこで竜人が匿われているのかしら?
それを確認するために、まだ若そうな男を捕まえることにした。ところで、コスプレって……なに? 私のしている格好のことなの。こちらでは、この格好をコスプレと言うのね。それで……そう、竜人は長野県? 上里集落と言うところで匿われているのね。ちなみに長野県ってどこ?
そこで親切な男性は、光る板を見せてくれた。そう、私たちは今ここに居るのね。そして、竜人が匿われている上里集落はここと言うこと。ありがとう、場所については理解出来たと思う。だからあなたには、感謝の代わりに時間を止めてあげるわ。これで、あなたは老いることも無く、今の姿を保つことが出来るのよ。ううん、感謝なんて必要無いから。これは、私からのお礼だと思ってくれれば良い。
空高く上れば、見せて貰った地図との比較が出来る。そう、上里集落と言うのはあそこにあるのね。それで探査……なるほど、竜人が沢山いるのは感じることが出来る。ここに居る竜人を始末すれば、私の旅も終わりを迎えると言うことになるわけだ。
じゃあ転移……じゃなくても良いわね。ここからだったら、飛んで行ってもさほど時間は掛からないと思うから。ところでこの白いものは何? とっても冷たいんだけど。
ミツケタ
あれは、長老のマイバッハね。お風呂に入ってのんびりだなんて、ちょっと癪に障るので置物になって貰いましょう。あら、他の竜人もいたのね。だったら仲良く置物になっていなさい。
後は、インテグラが見当たらないわ。これだけ竜人が揃っていたのなら、居ないとおかしいのだけど……なるほど、あっちの建物の中に居るのね。私の脅威になりそうなのは……人間に一人強そうなのがいるわね。だったら、その人は無効化することにしましょう。
回りは寒いのに、ここの中は暖かいのね。それに、私が見たこともないものが沢山揃ってる。でも、感心するのは後回し。脅威……さほど脅威では無いのだけど、脅威を取り除くことにしましょう。ええ、私が転移してきたのには気がついていないみたいね。あらあの老人、危ないことには気づいたみたい。でももう手遅れ、誰一人として逃がしはしない。
悪いけどあなた、少し眠っていて貰うわ。ただ、もう目覚めることはないと思うけど。
それからあなた。そう、私の首にナイフを突き立ててきたあなたのこと。あなたのことを見くびっていたこと謝罪してあげる。だけどね、ナイフなんて覚えてないぐらい突き立てられたの。だから、刃物への対応は忘れてないわ。ええ、そこの男と一緒に眠っていなさい。
それから、これは時間停止……そう、そんな能力者もここには居たのね。だけど、それも私には通用しないの。それにあなた程度じゃ、止められたとしても瞬きするほどの時間でしか無いわ。だからあなたも……そう、切断能力者もいたんだ。ちょっと驚いたけど、それだけでしか無かったわ。あなたも、お仲間と一緒に眠っていなさい。
これで、私の邪魔をできる人は居なくなったわね。だからインテグラ、そんなに怖がらなくても良いのよ。あなたの夫、ワジャと同じ所に送ってあげるから。だってあなたたちは夫婦だったでしょ。だから、離ればなれになるのは良くないと思うの。
それから、この辺り一帯は綺麗に消し飛ばしてあげるわ。そうすれば、あなたのお仲間も砂粒になってくれるから。ええ、消滅魔法を発動させているのよ。
あらっ、抵抗しないの? 巨大化すれば、少しだけ生きている時間が延びることになるわよ。そう、仲間、愛する人を道連れには出来ないと言ってくれるの。大人しく殺されるから、ここに居る人は見逃して欲しいと言うのね。
気に入らない
だから、ちょっとだけ魔力を解放することにしたわ。これで、普通の人なら意識を保つことは出来なくなるのよ。それから、転移で逃げられないように結界で包んであげたわ。だから大丈夫、結界の外に被害は出ないから。その分、結界の中の破壊が酷いことになるのだけどね。
ねえ、本当に抵抗しないの。抵抗しなくても、ここに居る人たちの運命は変わらないのよ。そうか、私の隙を狙っていたのね。でもね、杖を取り上げても魔法の発動には関係しないわよ。この杖には術式が保存してあるけど、全部私が作り出した魔法だからね。だから杖が無くなっても、術式を詠唱すれば終わりなの。
ねえインテグラ、何か言うことは無いの? 首を捕まれてるから、言葉がしゃべれないと言ってくれるのかしら。だったら……そこの老人、無駄なことをしようとしないで。今更あなた程度が逆らったところで、何も変わることはないのだからね……そう、あなたがインテグラの新しい男なのね。だったらインテグラ、一緒に居られるようにしてあげる。慈悲……そうね、これは慈悲と言うものなのよ。ちょっと乱暴かもしれないけど、男だったら受け止めてくれるかな……ポイッ
これで動くものがいなくなった……あら、あなた、老人のくせに結構しぶといのね。でも、大人しくしていた方が良いと思う。骨、沢山折れてるよね。そうやって動けば、それだけ苦しむことになるのよ。しかも、寿命を縮めることに繋がってくるのよ。ただ大人しくしていても、大して生きていられないのは間違ってないわね。ええ、消滅魔法が発動するまでのことよ。
なぜこんなことをするのか、かしら。そうね、理由があったのは確かね。でも、その理由も忘れてしまったわね。それぐらい、ずっと昔のことだと思ってくれる? それで、この後どうするのかと聞いてくれるの?
ねえ、どうしたら良いと思う?
嘘よ。私も一緒に消滅するつもりで居るの。だって、彼女を殺したらやることが無くなるから。だったら、罪に塗れた私が生きて居ちゃダメでしょ。
驚いた。まだそんなに動けたのね。でもね、私から杖を取り上げても今更手遅れよ。もう消滅魔法は発動間際まで育ってくれたの。あと少し術式を足してあげれば、この辺りが消滅することになるはず。そう、その時には、私も一緒に消えてあげる。
ところでこれは何をしているの? 口を塞がれることぐらい、想定しているとは思わなかったの。詠唱はね、言葉に出さなくてもすることが出来るのよ。だから、口を塞いだぐらいじゃ……なぜ、唇を重ねてくれるの? ええ、正直ちょっと驚いたと思う。だけど、少し驚いただけのこと。詠唱には何の影響も……舌を絡めるのって、本当に意味のあることなの? うん、さっきよりもずっと驚いた。こんなこと、こんなこと、誰にも許したことも無かったのよ。確かに詠唱はしにくくなったけど、でも影響は殆どないと思う……
んっ
えっ、そんなところも触ってくるの。それは良いけど、良くない。一体、何のつもりなのかしら。だから、そんなことをしても詠唱の邪魔には……少しだけなるのかしら。でも、いい加減にしないと……
あっ
おかしな声が漏れ出てしまったわ。そう言えば、もう唇は塞がないのね。だからと言って、どうして耳を甘噛みしてくれるの? 背中がざわざわとするのはなぜ? それから耳を弄ばないで……だからいい加減にしないと……どうして突き放せないの。あなた、あばら骨が折れているはずよね。だって、口付けするとき……そうか、これは口付けと言う行為だったんだ。それは良いけど、つばから血の味がしているのよ。もう無理をしなくても……
んんっ
また声が漏れ出てしまった。もういい加減にして……私、どうしてあなたにしがみついているの。足腰に力が入らない……なぜ? なにか、頭がじんじんとしびれてきたのだけど。だから、耳は舐めないで……止めてとは言わないけど。それから、そこは汚いと思う。だって、お風呂なんていつ入ったのかも覚えてないもの。
だから、もうやめて……ううん、止めないで、違う、もうやめて……やっぱり止めないで。おかしい、私の心が分裂を始めてる。相手は立ってるのがやっとの年寄りなのよ、どうして振り払うことが出来ないの。違う、私が振り払おうとしていないのか。どうして私、自分から唇を重ねているの。どうして自分から舌を絡めようとしているの?
どうして……だって、気持ちいいから。だって、心も体も気持ちいいから。どうして、どうして気持ちいいの?
「もう、無理をする必要はありませんよ」
無理って、無理ってなにが? 私は無理なんかしていない、無理なんかしていない、つもり。無理なんて……無理なんて……
ああっ
何か身体の中を駆け上がってきた。こんなの知らない、私が私じゃ無いみたい。怖い……でも、止めてほしくない。でも、怖い。私が私じゃ無くなってしまう。だから、怖い、怖くて仕方が無い。
私の身体が私のものじゃ無くなってる……私の気持ちとは違う……本当に違うの?
「エリシオン、私があなたを許しますよ」
許すって、何を。私は許して貰うことなんか……ダメ、そこ気持ちいい。うん、ダメじゃ無い、もっとして。もっと名前を呼んでっ。
「エリシオン……シオン、あなたは十分以上に苦しんだんです。だから、もう自分を許してあげてください」
そう、でも私は沢山悪いことをしたの。だから、許されることがあってはいけない……もう許して、そんなに責めないで……もっともっとして。もっと名前を呼んで、シオンって呼んで。
おかしい、何も考えられなくなってきた。でも、発動した魔法は止められない。あれは、そう言う魔法に作ってあるから。だけど、だけど、とても気持ちいい。もっともっとして欲しい……
「シオン、私と一緒に生きてくれますか?」
こんな私を欲してくれるの? 嬉しい……嬉しいってなに? でも、嬉しい。だけど悔しい……もう、魔法は止められない。あと少ししたら、私たち全員が消滅することになる。だから離して、今離してくれれば発動した魔法を私が持ってどこかに行けるから。
「シオン、あなたを一人にはしませんよ」
それは嘘。あなたの身体は限界のはず。でも、今手当をすればまだ間に合う……だめ、誰も手当をすることが出来ない。ねえ、神様、お願いだからこの人のことを助けて。私のことはどうでも良いから……だから、もう無理をしないで。でも、そこ、気持ちいい……ああっ、何かがこみ上げてきた。もうだめ、意識を保っていられない。頭の中が真っ白になるっ……
しかし、酷い有様だな。何が酷いかと言うとだな。全部酷いが、何よりもキヨヒコが知らない女と抱き合っていることだ。しかもその女、満足そう……幸せそうと言って良いのか。幸せそうな顔をしてしがみついているのだぞ。このわれを前に、こんなことが許されると思うのか? しかもこの女、雌の臭いを振りまいておるではないか。
しかもなんだ、インテグラが壁際で失神していると言うのは。それに部屋の中が荒れ放題になっておるでは無いか。あそこで失神しているのはエクシブなのか? ああ、白船も失神しているな。手にナイフがあるところをみると、白船の奴が戦ったと言うことになるのか。してみると、幸せそうな顔をしている女が『敵』と言うことになるのだが。なぜその敵が、キヨヒコに抱かれて幸せそうな顔をしているのだ。これは間違いなく、絶頂を迎えて失神しておるのだよな。訳がわからないのだが……
誰かわれに説明してくれないか?
それは良いのだが、キヨヒコを……なんだこの女。しがみついて居て引き剥がせないのだが。それは良いが、良くないが、キヨヒコが死にかけておるぞ。取りあえず治癒魔法……セレスっ居るのなら手伝え。大丈夫だ、コーメーなら東京に行っておる。
「そうですか、我が君は東京に行かれたのですね。それで、立木様のご子息は保護できたのですか?」
われが、その程度のことをしくじるとでも思ったのか? 面倒なので、建物ごと結界で包み込んでやったぞ。ああ、停止魔法と言ってもその程度のものだったのだ。
それでセレスよ……それとも他の名前で呼んだ方が良いのか。そうか、今はセレスの方が良いと言ってくれるのだな。どうして気がついたと聞いてくれるのか。われを馬鹿にしておるのか? いいか、冒険者ギルドにセレスなる職員はいなかったのだ。
それは良いのだが、キヨヒコの治療はどうなっておる。そうか、危ないところだったと言うのだな。クロアが連れて行こうとしたので、孫と一緒に説教をしたのか。しかしなんだ、ぬしらは自由に生きておるのだな。もう少し立場を考えろと言っても許されると思うぞ。なんだ、その、立場を利用したと言うのは。
ああ、もう良いから何が起きたのか説明してくれ。他の奴らか、見た限り深刻な状態の者はおらんだろう。放っておいても、もうすぐ意識を取り戻すはずだ。
「彼女が、魔王と呼ばれたエルフの大魔法使いエリシオンです。彼女の事情ですが、その説明も必要ですか?」
それぐらいのことなら、エリシオンとやらから聞けば済む程度のことだ。われが知りたいのは、ここで何が起きたのかと言うことだ。
「彼女の目標は、インテグラさんだったと言うことです。一緒に竜人もいましたから、さらに都合が良かったのでしょうね。インテグラさんを抹殺して、一緒に自分も消えることを考えていたようです。ただ彼女は、あまりにも多くの命を奪いすぎました。だから、人の死に対して感覚が狂っていたんです」
人の死に対する感覚が狂っていた……それが、集落で発動していた消滅魔法と言うことか。孝明が間に合わなければ、本当に集落が消滅していたぞ。まあ、ぬしがおるのならいらぬ心配だったのかもしれないがな。
しかしだ、なぜその魔王とやらがキヨヒコと抱き合っておるのだ?
「なぜと言われたら……立木様が、性的に襲われたからと言うことになりますね。大丈夫ですよ、最後まではしていませんから」
それを大丈夫と言って良いのか疑問だな。しかしなんだ、その性的に襲ったと言うのは。何故キヨヒコが、魔王とやらを性的に襲う必要があったのだ?
「発動していた消滅魔法を止めるため……と言うより、時間稼ぎなのでしょうね。時間を稼げば、我が君が間に合ってくれると信じておられたのだと思います。魔法を発動させる条件ですが、今更私が講釈する必要はありませんよね?」
ああ、今更と言うのは認めてやろう。そこに転がっておる杖なのだが、多くの術式が刻み込まれておるな。その杖を取り上げてから、次に詠唱を止めたと言うことか。だがな、魔法の発動はイメージが重要なのだ。たかが詠唱を止めた程度で……だから、性的に襲ったと言うわけか?
「彼女にとって、初めての経験でしたね。だから、身体を襲う甘い感覚に抗うことが出来ませんでした」
なあ、セレスよ。よもや、その程度のことでわれが納得すると思っておるのか? ああ、魔法発動に必要なイメージを破壊すれば魔法は発動しない。そのために、初めての感覚で意識を奪うと言うのは間違っておらん。だがな、陵辱された女が、幸せそうな顔でしがみつくと思っておるのか? キヨヒコのことだ、この女の心を救ってやったのだろう。
「そこまで理解されていて、なぜ質問をされたのですか?」
まあ、確認のようなものだ。それでだ、この女をどうするつもりだ? この世界での破壊は阻止したが、多くの命を奪った大罪人であろう。
「それは、私が決めることではありません。この世界において、私は我が君の貞淑な妻でしかありませんからね。彼女は我が君が……立木様が保護されることになると思いますよ」
だがな、インテグラと折り合いが付くのだろうか。その問題はあるのだが……しかしキヨヒコは、面倒な女に好かれるのだな。それからセレスよ、われは自分が面倒と言うのを否定しないからな。だから、何か言いたげな顔でわれのことを見るのでは無いぞ。
それからエリシオンと言ったな、もう寝ているふりをする必要は無いぞ。われもセレスも、ぬしの意識が戻っておるのはわかっておったのだからな。
キヨヒコにキスをするなっ!
「一緒に生きてほしいと言われた。だから、私はこの人……キヨヒコで良いのね。キヨヒコのものになったの。そして今の口付けは、所有権を確かにするためのマーキング」
ぬしは、われに喧嘩を売っておるのか?
「私は、事実を口にしただけ。彼は、私を一人にしないと言ってくれた。そして一緒に生きて欲しいと言ってくれた。だから私は、一緒に生きていくためにマーキングをしただけ。取りあえず、その物騒な魔法は止めてほしい。ここで争うと、大切な彼を傷つけてしまうから」
なあセレス、なぜかわれが悪者にされた気がするぞ。そうか、ぬしもそう感じたと言ってくれるのだな。だがな、われはキヨヒコの息子を救ったのだぞ。停止領域の拡大も止めてきたのだがな。
「でも、私を攻撃しようとした。それは、私に抱かれた彼を傷つける行為」
そのキヨヒコを痛めつけたのは、一体誰なのだろうな。
「それは私。でも、彼はそんな私を許してくれた。だからその話を持ち出しても、だからとしか言い様がない。しかもあなたは彼の治療をしていない」
なにか、面倒なことになっておるな。まあ、ぬしが一人増えた程度なら問題は無いであろう。ケイコが騒がぬ故……ティアとかすみが騒ぐのだろうが。それにしても、少しキヨヒコが頑張れば済む程度だな。
「ところで、ここはなんなの? どうして消滅魔法を消し去ることができるの? しかも、見た目通りの化け物みたいなエルフが居るのって。それからあなたは、女神様だと思えば良いのかしら?」
ちょっと待てっ! 見た目と能力には関係が無いのだぞ。い、いや、キヨヒコはわれのことを『綺麗だ』と言ってくれておる。だから、自分で見た目を認めたと言うわけでは無いのだからな。
「あなた、意外に面白い人なのね。最後に話をするのが、あなたたちで良かったと思う」
最後と言ってくれたか。そうか、ぬしは犯した罪のことを言っておるのだな。だがな、それは甘すぎる考えと言ってやろう。もはや、ぬしは自分の運命を決めることは出来ぬと知れ。
のう、キヨヒコよ
「ええ、居なくなるのを私が許しませんよ」
と言うことだ。それからキヨヒコ、ここで始めるでは無いぞ。最後までするのなら、場所を本宅に変えてからしてやれ。遠すぎると言ってくれるのか……仕方が無いな、セレス、飛ばしてやってくれるか? われか、われは癪に障るからしたくないのだ。
ああ、これは嫉妬と言うものだぞ。必要なこととわかっていても、嫉妬を止めることは出来ぬのだ。それからキヨヒコよ、体力の前借りをしなくて良いのか? 今なら、特別にわれが魔法を掛けてやろう。
「その程度の魔法なら、私が掛けることが出来る」
ああ、ぬし程の力があれば、体力回復は難しくないのだろうな。ただな、体力回復は限度を考えて使うことだ。あまり過ぎるとだな、われらの分が残ってくれないのだ。特にインテグラなのだが、ご機嫌取りをする必要があるのだ。
そこで始末すると言わないように。そんなことをしたら、キヨヒコに嫌われることになると忠告しておく。それから外の竜人たちだが、われと孝明が停止状態を解除しておいたぞ。だから、心置きなく可愛がって貰うのだな。そうか、最初から気にしていなかったと言ってくれるのか。こんなことを言ってはなんだが、もう少しぬしは立場と言うものを考えた方が良いと思うぞ。
行ったか……そうかイッタか。あれ、何か表現がおかしくなった気が。それは良いのだが、後始末は必要だな。だからセレス、ぬしは姿を隠した方が良い。さも無ければ……まあ構わぬか。さて、誰から起こしたものか……そこで間抜け面を晒しているシズカから起こすことにするか。
これシズカ、もう大丈夫だ。しっかりせい……ああ、怖かったのだな。もう大丈夫だから落ち着くのだぞ。うむ、大団円で良いのか。誰一人として命を落とすこと無く事態は収束したぞ。
「は、初めて、死を実感しました」
そうか、初めて死を実感したと言うのか。そうだな、あのままだったらぬしは消滅することになっていただろう。だが、もう危険は取り除かれたのだ。エクシブたちも気を失っておるだけだ。だから……仕方が無いな、われの胸を貸してやろう。
セレスよ、悪いがエクシブを起こしてやってくれ。大丈夫だ、エクシブが抱きついてくることは無いはずだ。シズカをエクシブに任せないことには、他の者たちを起こしてやれぬからな。特にインテグラは、起こす際には細心の注意が必要なはずだ。
おおっ、ジエータイとの通信が復活したのか。ああ、こちらの事件は無事解決したぞ。われか、われの手柄では無いぞ。キヨヒコが魔王を性的に誑し込んで……もとい、説得に成功したのだ。今の言い違いはわざとかと聞いてくれるのか? そんなこと、今更と言ってやろう。
それでそちらはどうなっている? なるほど、孝明が頑張って復旧させておるのだな。ああ、現象の解消が難しくないのはわかっておる。ただ闇雲に復活させると、二次災害とやらを起こすことになるからな。そうか、だから時間が掛かっておるのだな。そして、この後はアメリカとやらに飛ぶことになっておるのか? なるほど、連絡待ちととなっておるのか。あちらも、復旧手順を考えておると言うのだな。だから派遣は、回答次第と言うことになるのか。それで良いのかと思えてしまうのだが……
色々と思惑が飛び交っている……そうか、貴重なサンプルと言ってくれるのか。なるほど、アメリカとやらは停止サンプルの確保を考えていると言うのだな。わかっておったことだが、なかなか面倒なことになっておるのだな。だが、奴らだけでは無理と言ってやろう。
可愛い系の魔王登場です。ただ、即落ちしましたけど。




