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聖地襲撃の前に

村の特産は異世界です


・聖地襲撃の前に


 怒濤のクリスマスパーティーが終わると、次は聖地襲撃と言うイベントが待っている。ただなぁ、その前に本宅側住居の整理が必要になったんだよ。

 ちなみに本宅側には、8戸の一戸建てが建っている。それに加えて、温泉専用の建物が1、事務所兼集会所と倉庫を兼ねたプレハブが1棟と言うのが本宅側敷地のすべてである。ちなみに家の広さと住人の関係は次の通りとなっている。


諸星邸:6LLDK 孝明、セレス、ルーテシア

立木邸:5LDK 清彦、慶子、かすみ、陽佳

小谷邸:4LDK 静香、オルティア、

ラズライティシア邸:4LDK ラズライティシア、エクシブ

白船邸:4LDK 裕一郎、アクア、シエンタ

薄墨邸:4LDK ぼたん、シャルロット

ジャック邸:5LDK ジャック、カローラ、ベルタ、シーマ

グレゴリー邸:5LDK グレゴリー、アイシス、コンテッサ、クレタ(以上敬称略)


 なんだ、敬称略ってのは。それはそれとして、最低でも4LDKだからね。住宅としては結構立派なものと言って良いと思うよ。ただ、モデルハウス感が拭いきれないのも確かだけどな。

 今のところ、なんとか収まっていると言うレベルなのは確かだ。まあ、住居の見直しが必要と言うのもわかっているんだよ。ただ、今は真冬の大谷村。しかも上里集落は、更に標高が高いところにあるんだ。だから、本格的な見直しは春になってからと言うことが決定していた……いたんだよ。それが、見直しと言うことになったんだ。


 何故見直しと言う話になったかと言うとだ。魔王と呼ばれていたエルフ、つまりエリシオンさんがどこに住むのかが問題になったんだ。わかるよね、立木さんの家がいいと言ってくれたんだよ。立木さんのところ、取りあえず1部屋空きはあるんだよね。だから、場所的にはあることになっていたんだけどね……

 ラズライティシア様が反対したのは今更だよね。自分が立木さんの家に住むから、エリシオンさんは入れ替わりでエクシブと同居すれば良いって。どう考えても成立しない話だよね。しかもインテグラが、自分も本宅側に住みたいって言い出したんだ。結果的に見直しが必要になったんだ。

 それでどうなったかと言うと……


ラズライティシア邸:エクシブout、オルティア、エリシオン、インテグラin

小谷邸:オルティアout、エクシブin

薄墨邸:フローリアンin


 となったんだけど、ちょっとラズライティシア様のところが怖いかなって感じがする。うん、立木さん頑張ってとだけ言っておこう。


 ちなみに住人たちの間では、本宅側に住むのは『ステータス』なのだそうだ。だから、空いている部屋……俺の所が一番多いのだけど……そこに入居すべく醜い争いが起こっていると言う噂がある。でもなぁ、残り3部屋ではどうにもならないと思うんだ。王妃様3人は……って言われてもね。人数だけなら大丈夫に思えるだろう? だけど、王妃様にはもれなくお付きの者がいるんだよ。そうなると、俺の家も定員オーバーになるわけだ。

 と言うことで、全員集合は春までの課題と言うことで整理が付いた。しかし俺って、どれだけ広い家に住めばいいんだ? そもそも、今居るところにそんな土地が無いんだけど。


 そこで立木さんの提案が、第二の手前にある土地を活用すると言うものだ。昔村営バスが転回するのに使っていた場所があるようで、それなりの建物が建てられるそうなんだ。そこにちょっとしたマンション……アパートメントかな。それを建てると言うものだ。

 そこに立木さんたちが引っ越しをして、空いた本宅側に大きな屋敷……屋敷なのか? 俺用の屋敷を建てるのだそうだ。ちなみに屋敷……俺には不釣り合いな気もするんだけど。将来の拡張性も考えた設計で、当初は50室程度を考えているらしい。


 50室って……多くない? 俺、そんなに奧さんは居ないんだけど。王妃様3人が連れて来る側仕えも含む。一人当たり3人を連れてくると、王妃様含めて12人になると言うんだね。のこり8人の個室を合わせると、すでに20室が塞がることになる。

 それでもさぁ、30室も余るんだけど。ああ、俺の部屋と書斎があるんだね。じゃあ後28室は? 来客用の部屋が10ぐらいと、後はこれから増える奧さんや王妃様用……なんで増えることが前提になっているんだ? 取りあえず闇エルフから一人は増えるだろうって……どうして、確定した未来のように言ってくれるんだ?


 それで空き地に作るアパートなんだけどね。南向きの斜面を利用した建物にするそうだよ。そうすることで、道路から見たときの場違い感をなくすのだそうだ。それで建物自体は地上2階、斜面に沿って4階建て。地上部1階が入り口や共用施設……集会場のようなものかな。それ以外にもフィットネス施設……フィットネス施設って! 2階に男女別大浴場と家族風呂2つ……説明だけ聞いてると、どこかの温泉リゾートだよね、それ。共用施設には食堂と調理場もあるのね。さっきの訂正、どこかの湯治場かな。ちょっと豪華な。

 それで各フロアに10室ぐらい居室があるんだ。後はバストイレ、食卓……どこかのコンドミニアムなのかな。


 それでフロア割りはどうなってるのかな? 一番下が立木さん、その上に小谷さんと白船君が入って、その上がジャックとグレゴリーなんだね。なんか楽しそうってのは言っちゃダメ? そのだ、いちいち面倒くさいと言わないように。俺って、寂しいと死んじゃうウサギと一緒なんだよ。

 20室も埋まっているのに寂しいとは言わせない。あのぉ、奥さんたちはそうだけど、やっぱりそっちの方が楽しそうなんだけど。


「昼間は研究所の大部屋に詰めているんですよ」


 だから、寂しいことはないと言ってくれるんだね。確かにぃ、確かに昼間は研究所にいたな。だったら我慢できる……と思って良いのかな。

 ところで、新棟のお風呂だけど、勿論温泉なんだよね。そうか、第二の方から引っ張ってくるんだ。なんです、屋上に露天風呂を作ると言うのは。しかも家族用の露天も作るって……至れり尽くせりじゃないですか! そっちには湯殿がある……確かに、湯殿がありましたね。それはそうですけど、新居の方にも大浴場が欲しいなあって。後は、露天風呂も欲しいのですけど。




 そんな住居の諸々を決めてから、俺たち一行は聖地に向けて出発した。うん、26日の深夜に出発して、27日の朝にホテルに到着。そしてその日は、テレビカメラを引き連れて東京散策と言うことになった。

 ちなみに現地添乗員として、自衛隊から精鋭20人が参加することになった。だから翼人……ベルベディアたち、獲物を狙う目をしないように。フェロモンを使ったら、もれなく毟ってあげるからね。


 隠す必要がなくなったので、バス移動は楽……なはずがないだろう。何しろ、バスなんて見たことのない奴らが集まっていたんだ。だから俺は、久しぶりの強制力。つまり、全員をしっかり眠らせてやったよ。寝かしつけてしまえば、騒ぎようはなくなるからね。

 ホテルに着いたところで、大宴会……じゃなくて朝食会。朝食なのに酒がある……これぐらい、去年も通った道だよね。それが終わったところで、各グループに別れて観光やらテレビ出演とか。テレビ出演?


「今日の異世界に行こう! でですね、お子様から質問が来たんです」


 なんです、その質問と言うのは?


「いえね、オークって身体が大きくて強いでしょう。だからでしょうね、『お相撲さんとどっちが強いの?』と言う可愛らしい質問があったんです。それもあってですね、栃木部屋の協力を得て交流することになったんです。ぶつかり稽古とかちゃんことかですね」


 それ、なんか面白そう。そうか、面白そうだから実現したと言うのか。他にもスポーツイベントがあるのか?


「ハイエルフの運動能力のことはご存じかと思います。それもあってですね、陸連に協力して貰って体力測定をしようと言うことになりました。ちなみに、一部のオークにはこちらにも参加して貰います。ええ、フィールド競技の方ですね。砲丸投げとかハンマー投げとかです」


 ええっと、それも面白そうって言っちゃダメか。ちなみに、そこで世界記録とか出たらどうなるんだ? 資格認定の問題があるので、単なる参考記録になるのか。なるほどね、ハイエルフとかぱない運動能力をしているからな。


「ちなみに、運動能力だけなら闇エルフの方が上のようですよ」


 なるほどねぇ。だけど彼女たちがよく了解したな。


「活躍すると、集落内での立場が強くなると言っておきました」


 集落内の立場って……闇エルフが最下位。確かその上ってハイエルフだったよな。多少の活躍ぐらいじゃ、立場が逆転することはないと思うんだが。


「その上が翼人、更に上がドラゴンですからね。仰るとおり、逆転は難しいと思います。それでも、周りの見る目が変わると思いますよ」


 まあ、彼女たちの場合、きっかけが微妙だからな。うん、その意味で言えば翼人も問題だとは思うぞ。だけど、翼人は押しが強いからなぁ……

 それで、竜人はどうするんだ? あと、翼人も。


「一部エルフと一緒に、各種施設訪問をしてもらいます。これも、『今日の異世界に行こう!』の一環です。はい、健康上の理由で上里集落に来られないお子様対応だと思ってください。ですので、魔王様にはこちらに出席していただくことになっています」


 そうか、それは重要なことだと思うぞ。それで質問なのだが、俺には何予定が組み込まれているのか……なぜ、そこで視線を逸らしてくれる?


「あるにはあるのですけど……公式に官邸を訪問するんですよ。官邸訪問って、諸星さん的には『今更』ですよね」


 確かに今更ではあるな。ただ、菅谷総理に挨拶するのは必要だと思うぞ。ところで、千代田区1番1号に行かなくても良いのか?


「あそこはですね。なかなか難しいと言えば良いのか。ご興味はお持ちのようですが、なかなか条件が整わないのですよ。それに、軽々に扱うことが出来ませんからね」


 なるほど、そう言うことね。うん了解。

 じゃあ、俺たちの予定は菅谷総理への挨拶だけと言うことで良いのだな……なぜ、そこで顔を逸らしてくれる?


「いえ、諸星さんの予定は間違っていませんよ。ただですね、奥様方……特にセレスさん、ルーテシアさん、王妃様たちなんですけどね。銀座巡りが予定に入っているんです。はい、勿論テレビカメラが同行しますよ」


 その程度なら、別に視線を逸らされるようなことじゃないと思うのだが。


「それがですね、全員一緒と言うことは無いんです。王妃様たち、セレスさん、ルーテシアさんの3つのグループにわかれるんです。諸星さん、どのグループに同行されますか?」


 なぜ、3つに分けてくれるんだ? そうか、素材は多い方がいいと言ってくれるのだな。


「それぞれにですね、案内人が一人付くことになっているんです。その案内人……女優さんとかなんですけどね。その案内で、銀座を巡ってグルメとかお洒落とかを楽しんで貰う企画なんです。ちなみにこちらは、MHKだけではないんです」


 色々と売り込んでくれているんですね。そうですか、異世界公開のプロデュース権を買ったのを理由にしてくれますか。気のせいか、芸プロのようなことをしているんですね……また視線を逸らしましたね。つまり、どこかの芸プロが絡んでいるのだと?


「いえ、もうちょっと阿漕なことをさせて貰ったんです。テレビ局と芸プロにですね、『いくら出す?』とやってあげた結果です。ちなみに、相撲部屋と慰問は『今日の異世界に行こう!』の一コーナーです」


 なるほど、商魂たくましいと言うことか。ところで、投資をかなり回収……じゃないな、濡れ手に粟になっていないか?


「かなり儲けさせて貰っているのは確かですね。ただですねぇ、後沢さんたちが黙って見逃してくれると思いますか?」


 思うかと聞かれたら、思わないと言うのが答えなのだが。そうか、後沢たちが管理してくれているのか。


「後はですね、立木さんにもチクチクと言われていますよ。色々と企画を囁いてくれるから、逆らえなくなってくれるんですよね」


 あ~あの人ね。立木さん、若いときに就く仕事を間違えたんじゃ無いのかな?


「私もそう思ったんですけどね。ただ立木さんには、ここまで積み上げたものがあるから出来ることだと言われたんですよ。そう言われてみればそうなんですよねぇ……」


 積み上げたものがあるから……か。バグってる人脈もその一つなんだろうな。あっ、出会いもバグってるか。


「それはそうとして、そろそろ皆さん出発されます。諸星さんは時間がありますが、どうなさりますか?」


 ところでセレスたちは? そうか、テレビ局からお迎えが来ると言うのだな。メイクと着替えをしてから、銀座に遊びに行くのだと……なんか、それはそれで楽しそうだな。

 それで俺は、どうやって総理官邸まで? さぁって……それは無責任と言っても良いよな。


 その結果はどうなったか……かな。うん、小谷さんが居るのを忘れていたよ。だから官邸との段取は、全部小谷さんが済ませてくれていた。


「私のことを忘れてくれますかね……と言うのは良いのですけど、ちゃんとお着替えをしてくださいね」


 そう言えば、小谷さんもビシッとスーツを着ているんだ。だったら俺も、スーツを着ないと……スーツって持ってきたっけ?


「ちゃんと、セレスさんが用意してくれましたよ。まあ、忘れたとしても取りに帰れば良いんですけどね」


 確かに、確かに空間転移を使えば良いんだな。それはそれとして、すぐに着替えることにしようか。うん、シャワーも浴びるから30分ぐらい待ってくれるかな。


 そして30分後、菅谷総理差し向けの車で官邸まで向かうことになった。今回は公式訪問ということで、ちゃんと正面から入ることになった。ええっと、小谷さんは助手席に乗るんだ。で俺が後ろの席。なんか偉くなった気がしちゃうよ。


「事実偉いんですけど……と言うのはおいておきますが。もうちょっと表情を引き締めて貰えますか……いえ、もう良いです」


 なぜ、そんな反応になる。うんごめん。一つ一つ指摘してくれなくて良いから。だって、全部俺のダメージになるんだ。

 それで菅谷総理がお出迎え。そして握手を交したところでカメラ目線。一通りシャッター音が鳴り響いたあとで、菅谷総理の案内でソファーに座ると。


「先日の事件解決への貢献に日本国総理大臣として感謝する」


 そこで頭を下げてくれたところで、もう一度シャッター音が鳴り響いてくれた。

 そこで俺の答えは、『日本国民として当然のことをしたまでです』と言うことになる。うん、こんなものは建前だよね。俺は、菅谷先生だから超法規的措置を執っただけなんだ。ただここでこれを言うと、色々と煩くなってくれるんだよ。主に、菅谷総理の後を狙っている人たちがね。


「米国大統領からも感謝されている。そして具体的な感謝は、次回訪問時に形にしてくれるそうだ」


 次回訪問時、ですか。具体的日程は何かあったのですか?


「一般教書演説の前に行いたいと言っている。具体的には、1月の10日と指定してきた。そこでホワイトハウスを中心とした地域の停止現象の解除後、ニューヨーク、ロサンゼルス、フロリダ、ハワイ訪問を予定しているそうだ。ちなみにニューヨークとロサンゼルスは、竜人が襲撃した地点でもある。フロリダは……まあ、避寒地だからな。フロリダとハワイで、バカンスでも楽しんでくれと言う所だろう。ちなみに、そのいずれも大統領が同行してくれるそうだよ」


 ええっと、大統領が同行してくれるのですか。なんか、畏れ多いと言えば良いのか、なんと言えば良いのか。あれっ、なんで手で合図をしてくれます?


「これは、オフレコと言うことだ。今年は、大統領選挙があるからな。ギブソン大統領は2期目を狙っているのだが、竜人やら停止現象でミソが付いているんだよ。その挽回のためにも、君との関係を強調したいと言うことだ。今回の同行は、君のためと言うより彼自身のためと言うことになる」


 なるほど、選挙対策と言うことですか。だとしたら、俺以外の同行者の指定はありましたか?


「当然だな。君の奥方……と言うとわかりにくいが、セレスさんが指名されている。それに加えて、竜人を連れてきてほしいそうだ。竜人の安全は保証するのだそうだ」


 竜人の安全を保証、ね。大勢の人が食われたことを考えれば、当然考慮されることだと思うよ。ただなぁ、俺がいる場所で奧さんを害せると思ってほしくないな。


「今更のことだが、君を敵に回す真似はしないと言うことだ。それが、彼にとっての選挙対策にもなるのだからな」


 また手で合図。これでオフレコは終わりと言うことですか。


「それで、アメリカ対応をして貰えるかな?」


 乗りかかった船……と言うより菅谷総理の依頼ですからね。俺としては、受けないと言うのはあり得ないんです。それで、具体的にはどうすればいいんですか?


「それなのだが……」


 あれっ、菅谷総理がこめかみに人差し指を。なんだ、何かあったのか?


「横田からの出発を指定してきた。大統領自ら、エアフォース1で迎えに来てくれるそうだ。従って、その前に日米首脳会談を行うことになった」


 大げさって言っても良いですよね。ところで、俺たちのパスポートとかはどうすればいいんです。当たり前ですけど、誰一人としてパスポートを持っていないんですよ。


「パスポートか。流石に不要とは言えないな。それぐらいならすぐに用意させることにしよう。米国入国関連は、あちらが考えれば良いことだろう。国賓相手だと考えれば、ビザとかESTAとか言っていられないからな」


 手続き上は問題が無いのですね。なんです、何か変なことを言いましたか?


「君は、先日DCに行ったのを忘れてないか。密入国……依頼があっていったのだから、密入国でも無いのだが。あの行動が許容されているのだぞ。今更パスポートとかビザとか気にされてもな」


 あ、あれは緊急事態だったと言うことで。はい、それを指摘されれば仰るとおりなんですけどね。


「まあ、米国はそんなところだ。あちらにはあちらの思惑があるのだから、あまり恐縮する必要は無いぞ。それからだが、君に一つお願いすることがある」


 俺にお願いですか……色々とお願いされていると言うのは言っちゃあいけないことですか。そうですか、言っちゃいけないことなんですね。

 それで、お願いと言うのは何でしょうか?


「通常国会が1月の27日に始まることになっている。その冒頭で、君に挨拶をして貰いたい。当然、衆参両院でお願いをする。国会開会式への出席は、可能かどうか現在調整を行っているところだ」


 ええっと、それってありなんですか? 国事行為の式典って、一般人が出席できるものじゃないと思うんですよ。


「だから調整と言うことになる。異世界出現と言うのは、それだけの大事件だと思ってくれれば良い」


 大事件ですか……それは認めますけど、慣例を曲げてまですることですか。そうですか、『おことば』の中にも盛り込まれると言うのですね。


「もう少し先の話だが、君たちに勲章を与えることが検討されている。君と立木氏なのだが、勲章の種類は現在検討中だ」


 俺と立木さんに、ですか? なんでと言っても良いと思いますよ?


「繰り返すが、異世界と言うのはそれだけの事件と言うことだ。そして文化的に見ても、非常に意義の大きいものとなる。従って、旭日章とするか文化勲章とするかを検討させている」


 俺みたいな若造が勲章ですか? 出来れば、遠慮したいなぁと思っているんですけど。


「他国の国王様と考えれば、難しいと言うのも理解出来るのだがな」


 なぜ、それをここで持ち出してくれますか?


「シャトレーゼ王国の王女様も奧さんに加えたと聞いているのだがな。あちらとしては、ゆくゆくは国王に迎えたいと思っているのではないのかな?」


 その当たりはノーコメントで。一応俺は日本国民ですからね。はい、民法の定めに従って奧さんは1人セレスだけなんです。


「そして内縁の妻が10人と言うことか。まあ、それはそれとして、本日はお越し頂いて感謝する。叶うのならば、しばらく異世界関連は遠慮したいと言う所だな」


 それなんですけど。神様……フローリアンさんじゃありませんよ。神様から、『帰還事業』があると言われてしまいました。帰還事業とは何か、ですか。俺のように……どちらかと言えば十河陽佳さん。今は立木陽佳さんなんですけどね。彼女のように、異世界に連れ去られた人が帰ってくると言うことです。


「国民を守る立場だと考えれば、文句を言うことの出来ない話と言うことか。ただなぁ……できるだけ穏便な形で済ませて貰えるとありがたい」


 それは、俺も同感なんですけどね。少なくとも、魔王城出現とかエリシオンさんのような事件は勘弁してほしいと思っていますよ。ああ、竜人のパターンも勘弁してほしいと思っています。


「そのエリシオンなのだが、彼女は今回連れて来なかったのだな」


 集落でお留守番だそうです。何しろ今回は、立木さんが来ていませんからね。色々とマスコミ対応で忙しいのがわかっているので、集落に残ってのんびりとするのだそうです。


「なるほど、お披露目は奈良と言うことか」


 そう言うことと言うことです。年始に相応しい話題だと思いますよ。




 総理大臣訪問を終えた俺たちは、一度ホテルに戻ってお着替えをすることになった。年末の街に繰り出すには、流石にスーツは固すぎると思ったんだ。

 それでその後は、なぜか小谷さんとデート……なぜ嫌そうな顔をしてくれる?


「気分的なものです。被害妄想なのかも知れませんけど、セレスさんと比較されそうな気がして……」


 それって自意識過剰じゃないのかな。そもそも比較の対象にならないと思うんだよ。


「もっと酷いことを言っているのをわかってます? それはそうとして、どこに行きましょうかね」


 それなんだが、どこか良いとこを知らないか? 俺は東京の地理に明るくないんだよ。


「年末の東京ですか。そう言えば、去年は銀座を歩いただけでしたね。ところで、どんなところに行ってみたいですか?」


 どんなところかぁ……年末らしい所って言っても良いか?


「年末らしいところですか。かと言って、アメ横とかはないですよね。だったら、そうだなぁ、お昼も考えて浅草にしますか」


 東京の下町って奴か。うん、テレビでしか見たことがないんだよ。去年も、計画だけして結局行かなかったよな。うん、浅草賛成。すき焼きも良いと思うぞ。


「すき焼きですか。秘書時代だったら、ちょっと尻込みをしてしまうんですけどね。そっかぁ、今だったら豪遊しても余裕なんですよね。あれから、1年ちょっとしか経っていないのかぁ」


 その意味で言えば、1年前もあまり贅沢は出来なかったと思うんだ。まあ、『官房機密費万歳』をしてたんだがな。


「じゃあ浅草で浅草寺、門前町を散策しましょうか」


 うん賛成。久しぶりに、二人でのんびりと言うのもいい気がするんだ。すき焼きすき焼き、甘味甘味。うん、なかなか楽しそうじゃ無いか。




 ホテルに戻ったのは、5時少し過ぎぐらいかな。意外と言っちゃいけないのかな、本当にのんびり出来た気がするんだよ。もしも俺が暴漢に襲われていなければ、小谷さんのような人を奧さんにしていたのかなと思ったぐらいだよ。

 思ったのは良いのだが、逆に高嶺の花かと考え直してしまった。俺はしがない地方の市会議員。衆議院議員になると粋がっていても、本当になれるのかもわかっていなかったからな。それに引き換え、小谷さんは東の大学法学部卒のバリキャリなんだよな。そう考えると、俺じゃ釣り合わないような気がしてきたよ。


 それから断っておくが、小谷さんと間違いなんか起こしてないぞ。更に言うとだな、危ない空気になったことも無いと言っておく。


「そんなことより、今日の異世界に行こう! を見ませんか?」


 そう言えば、オークたちが相撲部屋に行っていたんだな。おおっ、番組が始まったよって……どこのスタジオだ、これ? 魔王城に見えるんだけど。


『今日の異世界に行こう!は、相模原市のミカちゃんの質問に答えることになりました。みんな覚えてるかな、オークとお相撲さんのどっちが強いのかと言う奴です』


 おおっ、いきなりこれが来てくれたか。うん、この結果が楽しみだったんだよな……楽しみだったんだよ。


「なんか、やるだけ無駄だったって気がしますね」


 ああ、オークたちの体重って、300キロを超えていたんだよな。それを考えれば、この結果も予想できたってことか。

 ぶつかり稽古って言って良いのかな。最初はオーク側からぶつかって行ったんだけど、二番目からはオークが受け止める側に回ったんだ。それは良いけど、最初に弾き飛ばされた人は大丈夫なのかな? 随分遠くへ飛ばされたような気がするんだ。治癒系って、誰も行っていないよな?


「あの関取さんたち、自信をなくさなければ良いんですけど」


 その当たり、違う生き物だと割り切って貰うしかないと思うよ。だって、本当に違う生き物なんだからね。


「問題は、ちゃんと言葉が通じることですね。だから『違う生き物』って言われても割り切れないと思うんですよ。でも良かったですね、オークの頭に毛がなくて」


 なんで、毛が無くて良かったんだ? それって、『怪我が無い』と『毛が無い』を掛けたと言うことか? もしもそうなら、思いっきりベタだと思うぞ。


「関取って、大銀杏でしたか。それを結えないとダメなんです。諸星さんじゃ無いんですよ、そんなベタな駄洒落は言いません」


 関取ってそうなんだってのは良いんだけど、俺はベタな駄洒落を言った覚えはないんだがな。なんだ、最初に言ったのがすべてと言ってくれるんだな。

 ああ、マミちゃんが取り繕うのに苦労しているよ。でも、相模原市のミカちゃんだったかな。お相撲さんよりオークの方が強かったよ。


 それで次は、陸上競技の方か。これは、別のチャンネルでやるんだな。なんだ、放送はもっと後なんだ。結果は……見なくてもわかる気するな。


「ええ、ハイエルフとか闇エルフの身体能力は常人を超えていますからね……違いますね、人を超えていましたね。100m走なんて、簡単に世界記録を更新してくれるんじゃありませんか?」


 走り幅跳びだってそうだと思うぞ。それからオークの力があれば、テクニックが無くても砲丸とかハンマー投げも凄いことになるんじゃないのかな。ちなみに、こっちの規則はどうなっていたっけ?


「LBGTQでしたか、多様性を持ち出せば拒絶できないと思いますけどね。まあ、ルールを決めているところがアレですから、多分エルフたちが参加することはないと思いますよ」


 だよなぁ、かなり恣意的にルールを決めてるもんなぁ。だけど、俺的にも参加なんかさせない方がいいと思うんだ。彼らが参加すると、別の競技に変わってしまいそうな気がするんだよ。


 それで、こっちは施設訪問って奴か。なんだ魔王様たちも、結構様になっているじゃ無いか。こうして見ると、魔王様って常識人だよな。うん、ちゃんとお子様相手に楽しく遊んで居るぞ……なんか、魔法を使ってないか? なんで魔王様が治癒魔法を使えるんだ?


「あの子、交通事故で歩けなくなったって紹介されていましたよね。とってもいい話なんですけど、この後が怖い気がします」


 だよなぁ、全国からお願いが殺到する気がするんだよ。だって、事故とか病気とかで身体が不自由になった人って沢山いるんだもの。その全員に対応していたら、時間なんていくら合っても足りないと思うんだよ。


「諸星さんだったら、もっと凄いことが出来ますよね?」


 出来るのかと聞かれたら、多分出来ると言う答えになると思うぞ。テレビ越しでも、強制力を働かせることは出来るんだからな。


「諸星さん、教祖になってみますか? そうすれば、信者の治療をする理由が立ちますよ」


 教祖……ブルブル。絶対に嫌って答えておくよ。宗教ネタって、あっちの世界でも碌なことが無かったんだよ。だから、教祖ってのは冗談でも言わないで欲しいんだ。

 それで翼人たちは……お子様を抱えて遊覧飛行か。こうして見ると、とっても神々しい一族なんだけどなぁ……発情さえしなければなんだけど。


「ですが、施設の慰問と言う意味では成功だと思いますよ。だって子供たち、全員嬉しそうな顔をしているんですからね」


 そりゃあ、そうなんだけどな。確かに、全員とってもいい顔をしているよ。ドラゴンの方も、子供たちが走り回って喜んでいるな。うん、こうして見ると慰問は成功だと思って良いんだろうな。

 だとしたら、これからも慰問は計画した方がいいと思うんだよ。だって、今回は東京近辺だけだろう?


「多分ですけど、その当たりは立木さんが手を打ってくれると思いますよ」


 そうかもしれないんだけど。後沢に、『頼り過ぎるな』って釘を刺されたんだよ。お前たち、立木さんに仕事をさせすぎって。言われてみると、一番忙しく仕事をしているんだよ……そうは見えないけど。


「一番忙しく仕事をしている……ですか。温泉旅行と居酒屋ばっかり目立っているんですけどね。そう言えば、研究所で必要な諸々の仕事……一体誰がやっているんでしょう」


 それをしているのが、立木さんと言うことだよ。多分だけど、うまい仕組みを作ってくれているんだろうな。それにしたところで、立木さんの功績なんだよ。


「だとしたら、そんな人を引き当てた諸星さんの功績でもありますね。実は、諸星さんの引きも神ってるんじゃありませんか?」


 立木さん、小谷さんを考えればそうなのかもしれないな。だけど、俺は自分の出会いを神っていると思ったことは無いんだよ。


「そうですか? あたしには神っているのは諸星さんって気がしたんですよ。それはそうと、番組的には成功だったようですね。取りあえず、初日は無事終わったと思って良さそうです。さあ、今夜はホテルで宴会ですか」


 ああ、大宴会だな。それはそうと、今日は一升瓶を抱えて冷凍マグロにならないように。気をつけるが、約束は出来ないと言ってくれるのか。一応釘を刺しておくが、ワインのボトルなら良いって意味じゃ無いからな。勿論、ウィスキーのボトルも不可だと言っておく。




 意外に残っていると言っていいのでしょう。私たち夫婦だけだと思ったら、シアたちまで残ってくれましたか。しかも朽木君と武見君も居残り組なんですね。それからアン、手伝ってくれてありがとう。お陰で、日帰りでお墓参りをすることが出来ましたよ。

 それからフィーナ、面倒を掛けたみたいだね。ああ、下の交差点あたりで小さな騒ぎが起きていたのは気づいているんだよ。


 それで総勢14人ですか。村の奥さんたちの助けが無ければ、流石に料理が追いつかなかったのでしょうね。それでおでんにスペアリブ……この唐揚げは鶏じゃありませんよね?


「魔王城で販売する唐揚げ……バジリスクの唐揚げだ。エリシオンさんがとってきたのを、下のキッチンで試作してみた。それから板のようなフライは、クラーケンフライと言う奴だ」


 クラーケンにバジリスク、ですか。名前だけ聞いていると、美味しそうに聞こえませんね。それでも、意外と言って良いのか、食べられないものにはなっていませんね。ソースを考えれば、それなりにいけると言って良いと思います。


「そう言うことで、ソースの検討もしているところだ。エリシオンさんには、素材確保への協力をお願いする……できれば、ラズライティシア様にもお願いをしたいところだ」


 その辺りは取扱注意と言っておきます。取りあえず、おしぼりで汗を拭いてください。それから陽佳ちゃん、慶子を呼んできてくれるかな。料理は良いから、こっちに来てみんなで夕食を食べましょう。お酒? それは、飲みたい人が自分で努力をすれば良いだけですよ。


「だったら、お母さんを呼んでくるわっ!」


 ああ、お願いしますよ。今日はね、みんなでのんびりと過ごすのが目的なんですからね。




 はい陽佳です。以前は十河陽佳と自己紹介したんですけどね。今は立木陽佳って少し自慢げに自己紹介します。戸籍年齢22歳、そして実年齢18歳の控えめに言っても美少女だと思っています。

 だからかすみ姉さん、そこで手鏡を探さないように。少なくとも、腕っ節だったら勇者の私の方が強い……ごめんなさい、一升瓶は勘弁してください。でもかすみ姉さん、なんで一升瓶がでてくるの? 今日は、日本酒を飲んでいないよね? 乙女の嗜みって……乙女ねぇ。別に深い意味は無いから一升瓶をしまってくれるかな。


 あれからですね、本当に色々なことがあったと思います。私的に大事件と言えば、高卒認定に合格したことですね。もうね、自分でも合格したことが信じられなかったと言えば良いのか。でも結果は合格なんだから、来春からは女子大生……響きが良いと思いませんか? 来春からは女子大生なんですよ。

 それで住まいですけど、お母さんと検討中と言うことになっています。最初は大学隣にある寮に入るつもりだったんだけど、中古マンションを買うと言う話に発展してくれました。いきなり一人住まいかって思ったんだけど、同居人が出来ることになりました。うん、同居人と言うのはシオンさん。シオンさんも大学に通うから、寮じゃ無くてマンションと言うことになったのよ。今のところ新居の候補は、大学から少し西に行ったところにあるファミリー向けの物件なんだって。三条通のマンションは、酔っ払いが多いからダメと言うお母さんの意見が通った結果です。


 それで同居人のシオンさんなんだけど。とっても綺麗で可愛い人だと思いますよ。それでもちょっと複雑な思いがあるんです。ええ、お父さんとの関係のことを言っています。お母さんが問題にしていないから……それも不思議なんだけどね。文句を言っていないから私も何も言わないことにします。なんです、その前にみんなが殺されそうになっただろう、ですか。それを含めて、お父さんとの関係が割り切れないところがあるのよ。だってお父さん、シオンさんに殺されそうになったのよ。

 お父さんを殺そうとしたシオンさん……正確には、インテグラ母さんが狙いだったのだけどね。その意味で言えば、お父さんは巻き添いってことになるんだけど。それはそれとして、集落にいた全員が消滅の危機だったそうよ。シオンさんはとっても強くて、グレゴリーさんとかジャックさんとか、魔王を倒した二人とも歯が立たなかったんだって。

 そして魔王様……ヴェルサティス様なんだけどね。力の差を感じて、何もすることが出来なかったそうよ。その意味で言えば、フローリアンさんも諦めていたみたい。魔王様に勝てないんだから、シオンさんに歯が立たないのも仕方が無いと言えば仕方が無いんだけどね。そして他の竜人たちだけど、全員石にされていたんだって。もうね、強すぎでしょシオンさん。


 話をシオンさんに戻すのだけど、年齢は1千歳を超えているんだよね。それなのに、私より幼く見えるのってなに? その上美人で可愛くてスタイルが良くて……ごほん、こっちはあまり触れないことにします。私だって、命は惜しいと思ってるから。しかもお父さんとしっかり関係してるんだよ……なんかさぁ、娘としてやっていられないと言えば良いのかなんと言えば良いのか。でもシオンさんの事情を聞くと、仕方が無いのかなと諦めてもいるのよ。だってシオンさん、本当に長い時間苦しんできたんだもの。

 それからかすみ姉さん。シオンさんが例外なだけだからね。だからそこで、自分を指差さないように。オルティアさん……オルティアさんは、うん、大人同士で考えてくれるかな。


 それで今日の夕食は、とっても賑やかなものになりました。京都からかすみ姉さんが帰ってきたのもあるけど、武見さん、朽木さん、カプチーノさん、パッソさんまで遊びに来てくれたの。だから賑やかなんだけど、その分食堂が狭くなっちゃった。


 ところでバジリスクって、なに? クラーケンって、どんな生き物なの?


「バジリスクは、鳥の体に蛇の尾っぽを持った魔獣。目で見られると、見られたものは石になってしまうの。それから、毒を持っているわ。クラーケンはクラーケン……こっちだと、とっても大きなイカかしら?」


 ありがとうシオンさん。簡単に言うと、この世界に居ない化け物と言うことね。それが食卓に並ぶって、流石は上里集落って言って良いのかしら? でも意外。それなりに美味しいと思えるもの。


「そうですか、とっても美味しいと思いますよ」


 フローリアンさん。それは比較の対象が悪すぎると思うよ。だってあの世界の料理と比べたら、何を食べても美味しいと思えるもの。素材は異世界のものかも知れないけど、村のおばさんたちが腕によりを掛けて調理してくれたんでしょ。だったら、普通に食べられてもおかしくないんだよ。

 ところで家族団らんの時間にテレビを付けるんだ……ああ、『今日の異世界に行こう!』を録画してあったんだ。うん、あの時間って色々と忙しかったんだよね。それで……オークさんが活躍してるよ。だけどあの関取の人、大丈夫なのかな。随分と遠くまで飛ばされていったけど。はっきり言ってさ、オークさんの突進を受け止めるのは無謀だと思うよ。前の世界でも、王国の兵隊さんたちが跳ね飛ばされていたんだもの。


「だからぶつかり稽古の立場が変わったんだろう」


 そうだね武見さん。確かに立場が変わってるわ。だけど流石はオークさん、関取さんの突進を微動だにしないで受け止めているわね。それで思うんだけど、ひょっとして私の方が強いのかな? だって。私の体当たりでオークさんを下がらせることが出来たんだよ。


「一応勇者の恩恵ですからね。普通の兵士10人よりも強いはずなんです」


 なるほど、普通の兵士さんたちよりずっと強かったんだ。それで、今でも勇者の力を使えるのはどうしてなの? 私、チョーカーを外したんだけど。


「それが、私にもよくわかっていないんです」


 よくわかっていないのか。だったら、エルビスとかキャロルとかも恩恵を使えるのかな? だって、条件は私と一緒だよね。


「使える理由がわからないので、彼らもわからないと言うのが答えになります」


 だよね。フローリアンさんがわからないんだったら、私がわからなくても仕方が無いか。


 あれっ、あれは魔王様たちだよね。そうか、養護施設に行ったんだ。なんかさ、魔王って立場とは反対のことをしているよね。でもさ、治癒魔法の上位版を使ってるよね。あんなことしちゃって良いのかな? そりゃあ、あの子は歩けるようになったけどさ。同じような境遇の子って世の中には沢山いるよね。魔王様だけじゃ、どう頑張っても手が足りないよね。きりがないと思うもの。


 ねえ、なんでみんな驚いた顔をしているの?


 私が常識的なことを言ったから。問題点をちゃんと理解しているのに驚いた。あのさぁ、私も来年から女子大生になるんだよ。これぐらいのことなら理解出来るんだからね。だからかすみ姉さん、生暖かい眼差しを向けるの止めてくれないかな? うん、一応自覚はあるんだけどね。



夏のコミケが出てこない。だって、暑いんですよ。

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