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ちゃんと成果は出している

村の特産は異世界です


・ちゃんと成果は出している


 はい、御衣黄かすみと申します。ええっと、どうしてそこで『私生活で行き詰まっている』って枕詞を付けてくれるんですか? その、否定はしませんけど、しませんけど必要な情報じゃありませんよね? 上里集落、IMO研究所の存在意義を考えたら、研究に行き詰まっている方が重要だと思うんです。

 そのことをお父さんに相談したらですね、グレゴリーさんの能力のことを思い出させて貰いました。いえ、彼の能力は知っていましたよ。集落全員の特殊能力……と言っても、特定の能力を持つ人は限られていますからね。それを覚えるのは別に難しいことじゃないんです。ただ知っていることと活用することは別物と言うのを、今回思いっきり思い知らせて貰いました。


 お父さんの助言で手がかりを掴んだのなら、次はそれをどう活用するかですよね。恥ずかしながらですね、それもお父さんに頼ってしまいました。


「グレゴリーとやらが、われに時間停止を掛けると言うことだな?」


 その結果ですね。ラズライティシア様にご協力頂くことになりました。そしてグレゴリーさんと私、そして武見さんの4人で京都のラボに行くことになったんです。

 はいラズライティシア様、その予定でいるんです。いるんですけど、今日はその前段階ですね。もしもし、何かご機嫌が優れないように見えますけど。


「うむかすみよ。キヨヒコの娘なら、われにとっても娘のようなものなのだ。だからわれのことを、ラズライティシア様などと他人行儀な呼び方をするものではないぞ。シアと呼び捨てでも良いし、シア母さんと呼んでくれても良いのだ。まあ、ぬしが『娘』と言う立場に不満を感じているのはわかっておるのだがな」


 ええっと、あまりはっきり言わないで欲しいのですけど。そりゃあ、確かに不満に感じてますけどね。それはそれとして置いておいてですね、シア母さんで良いんですか?


「うむ、それでかすみよ、今日は何をするのだ?」


 今日はですか、今日はですね、グレゴリーさんのデモンストレーションをして貰います。はい、時間停止能力についての情報共有です。と言いますか、出来ることの検証を先にしておく必要があるんです。時間停止された細胞を採取しても、分析できませんでしたじゃ話にならないですからね。だから出来ること、出来ないことを本実験の前に確認しておこうと言うことです。

 それは良いんですけど……随分と関係の無いことをしていませんか?


「キヨヒコが言っておったのだが、学者と言うものは興味を抑えることが出来ない困った者だそうだ。従って、あのような力を見せられれば、色々と見てみたいと考えるのも不思議では無いと言うことだ……」


 シア母さん、どうして急に天を仰いだのですか。グレゴリーさんの次は自分の番……なるほど、次はシア母さんが興味の対象になるのですね。

 それはそれとして、武見さんは大人しいのですね。別にそういうわけじゃ無い、まだ現実として認められないところがあるのですか。こう言っては何なのですが、武見さんって常識人だったんですね。


「涼真には、非常識が服を着て歩いていると言われていたのだが……」


 非常識が服を着て歩いているんですか。あいにく上里集落には、諸星さんと言うトップオブ非常識さんがいるんです。常識的に見えるお父さんだって、やっていることは十分非常識だと思いますよ。だってお父さん、いつの間にかやく……ヤの字の人たちを手懐けたりしてるんだもの。酒瓶持って挨拶に行くって……任侠映画でもなかなか見ないことだと思うのよ。

 えっ、任侠映画を見ていたのか、ですか? その、鶴田浩一さんって渋くて良いと思いませんか? なんです、そのふけ専って言うのは? 別に、お年寄りが趣味と言うことはありませんよ。たまたま好きになった人の年齢が高かっただけです。


 ところで、武見さん……早速ハイエルフの女性と関係したんですよね。カプチーノさんでしたっけ、これまで付き合ってきた女性と違っていましたか? ええ、体の中の構造とかですね、挿入したときの感触とか……もっと言うとですね、体液の味とか酸性度とか……


「そう言う下ネタをだな。真面目な顔をして聞かないで貰いたいのだが……特にあんたみたいな美人に聞かれると来るものがあるんだよ」


 おべっかは必要ありません。人の女性との違い、どんなことでも良いので教えてください。これはですね、卑猥な好奇心とは別世界のもの……科学的探究心と言うものなのですよ。


「猥談の方がマシとは言ってはいけないか? そうか、言っちゃいけないことなんだな」


 ええ、話題を逸らすのは感心しませんよ。それで、実際にしてみてどうだったのですか?


「個人差以上のものは見つからなかった……で良いか? なあ、答えがわかってて聞いてるよな?」


 ここまで遺伝子分析をしてきましたからね。それに、翼人の話も聞いているんです。ですので、同じだろうなとは思っていましたよ。お父さんに聞いてみたのですけど、シア母さん、インテグラさん、クロアさんは基本的に同じだったそうです。


「そこまでわかっていて、どうして俺に聞いたんだ?」


 お父さんには医学の素養がありませんからね。だから医学者である武見さんの見解を聞きたかっただけです。


「それで、本音は?」


 本音ですか。嫌ですね、単なる暇潰しですよ。暇潰し。

 あっ、グレゴリーさんが解放されたみたいですね。これで、今日のお勤めは終わりになりますね。


「なあ、俺たちが来る必要はあったのか?」

「うむ、われも疑問に感じていたところだ」


 来る必要ですか。あるに決まっているじゃ無いですか。はい、本番はこれからなんです。


「御衣黄さん、スッポン鍋で良かったんですか?」


 はい釜利谷さん。お父さんから接待費……軍資金……接待費ですね。接待費を預かってきましたから、ちょっと豪勢にいってみようと思ってるんです。せっかくですから、シア母さん、武見さん、グレゴリーさんと皆さんの親睦を深めようと思ったんです。そうですね、次はインテグラさんにも来て貰うことを考えているんですよ。細胞サンプル、色々あった方が良いですよね。

 なんです、そこでひそひそ話をしないように、武見さん、私は『マッド』なんかじゃありませんよ。シア母さん、そこで『嘘』はないと思います。私はですね、ただ研究熱心なだけなんですからね。


 ええ、ラボの皆さんとの親睦会は盛り上がりました。一次会はスッポン屋さんで、二次会は焼き鳥屋さんでした。それから3次会でバーに行って、最後はカラオケスナックで締めと言うことになりました。ちょっとした疑問は、ホテルをとる必要があったかなと言うことですね。はい、カラオケスナックを出たところで東の空が白んでいましたから。

 それでホテルに戻ってシャワーを浴びて、軽く仮眠をとって朝食を頂きました。ところで武見さん、眠そうに見えますけど大丈夫ですか? そうですか、まだお酒が残っているんですね。それに加えて寝不足ですか。武見さんって、結構修羅場を潜っているんですよね。その割には、まだまだひ弱だと思いますよ。

 と言うことなので、シア母さん宜しくお願いします。はい、武見さんにリフレッシュを掛けてあげてください。


「これが魔法と言うことか?」

「うむ、酔い覚ましと体の活性化だな。どうだカズシよ、少しはシャキッとしたか?」

「今の魔法なのだが、俺でも使うことが出来るのか?」

「ぬしが魔法をと言うのか? 結論から行くと、難しいと言うことになるな。何しろ魔法を使うには、魔力と言うものが必要になるのだ。そしてぬしは、その魔力を持っておらんだろう」

「そうか、魔力が無いと魔法は使えないのか」


 ああ、残念って顔をしていますね。ところで武見さん、なぜ急に魔法を使いたいと言い出したんです?


「いや、今のリフレッシュの魔法なのだが。術式と言えば良いのか、それを再現してみようと思ったんだ。そうか、術式を再現するだけでは魔法は使えないのだな」


 もしもし、魔法の術式を再現って……本気で言ってます?


「術式と言う以上、プログラムのようなものだろう。そしてプログラムなら、俺の得意分野なんだよ」


 プログラムと魔法の術式って、全く別物だと思いますよ。どの言語かは別として、プログラムを組むのに対応した言語がありますよね?


「魔法だって似たようなものだろう。魔法語で良いのか、それを組み合わせることで魔力を魔法として顕現させる……魔力をって自分で言ってしまったな」

「うむ、カズシの言っていることは間違っておらんぞ。だがな、ぬしには魔力と言うものがないのだ。従って、術式を再現できても魔法は使えない……ことも無かったな」

「俺にも魔法を使う方法があるのか?」


 シア母さん、それって本当のことなの。だって、武見さんは魔力が無いんだよね。魔力が無ければ、借りてくれば良いって……お金の貸し借りじゃ無いんだからね。


「論より証拠と言うだろう。ただここにはリフレッシュの必要なものはおらんだな。だったら、もっとわかりやすい炎でやってみるか。よいかカズシ、われの使う魔法を理解してみよ」


 そこで指を立てたお母さんは、理解出来ない言葉と早口で唱えました。そうしたら、指の先にマッチで点けたぐらいの炎が生まれました。


「なるほど、魔力を再構成して炎にしたと言うことか。それで、肝心の魔力はどうすればいいんだ?」

「うむ、こうするだけのことだ」


 あれっ、シア母さん武見さんに何かした? 魔法化してない魔力をぶつけた。ねえ、そんなことをしても大丈夫なの。なに、その普通なら失神するって言うのは。


「俗に言う……と言ってもかすみは知らないな。魔力酔いと言うものをするのだ。こればかりは耐性によるのだが、少しの魔力でも失神……最悪死ぬこともあるな」


 死ぬこともあるって……流石にまずすぎるでしょう。それで武見さん……大丈夫? 顔が、思いっきり青くなってるわよ。


「これが大丈夫そうに見えるのか?」

「うむ、取りあえず意識はあるのだな。ならば、ぬしを蝕む魔力を魔法に転換して見せよ」

「いくら何でも、スパルタ過ぎやしないかっ」


 そこで指を立てた武見さんは、早口で何かを唱えてくれました。そうしたらですね、シア母さんが点したのよりも大きな炎が生まれてくれたんです。もうびっくりと言えば良いのか、恩恵とか貰わないで魔法を使ったのって、多分だけど人類初じゃ無いのかしら。

 でもせっかくの炎だけど、みるみるうちに小さくなってくれたわ。つまり、魔力切れってこと?


「体は楽になったのだが……あれだけ苦しんで、あの程度の炎しか熾せないのか」

「思いっきり手加減して魔力を与えたからな。ぬしにもう少し耐性があれば、もっと魔力を与えることも出来たのだ。とは言え、いきなり魔法を使ったのは驚天動地のことだ。なるほど、キヨヒコが天才と言っただけのことはあるな」


 うん、いくらプログラムに似てるからって……凄すぎると思うわ。ところで武見さん、検体を貰ってもいいかしら。そう、魔力を持たない私たちが、魔力を受けたときの影響を調べたいのよ。体から切り離されたらって、何のためにグレゴリーさんが来てると思ってるのかな?

 うん、でもまだ色々と準備が整っていないの。だから、検体をとるのは次の機会にするわね。それからシア母さん、みんなをラボに運んで貰っていい? 本山先生と話をして、これからの計画を少し修正しなくちゃいけないのよ。うん、サンプルに武見さんを加えるの。お父さん、本当にいい人を見つけてくれたわ……私も一緒にいたか。


「なあ、彼女はいつもあんななのか?」

「あんなの意味がよくわからぬのだが……われから見たら、普段のかすみと変わらぬぞ」

「ああ、俺の知ってる御衣黄さんだと思う……魔王様たちを震え上がらせる女傑だからな、御衣黄さんは」


 これ、そこ。どうして私が女傑になるのかな。なんですシア母さん、何一つとして間違ったことは言っていない。ええっと、そういわれると傷つくんだけどな。



 色々と本山先生と相談をしたら、多用されている必殺技を使うことになりました。はい、お父さんを召喚することになったんです。もうね、訳のわからないことになったら、お父さんに頼るのは私たちの共通認識になってしまったんです。

 そして今回は、さらにオルティアさんも召喚されることになりました。なぜ……と言うとですね、魔力の供給源も一緒に探ろうと言うことになったからです。ちなみにこれは、お父さんの提案と言うことになります。


「いい加減、私に頼るのを止めて欲しいのですが……」


 その気持ちはわかるけど、うんごめん、まだまだ無理だと思う。だって本山先生、こういう話はお父さんに振るのが一番だって言ってたもの。理由を聞いたら、『まともな研究者が壊れる』んだって。


「確かに、私は真っ当な研究者……研究者ですらないのですけどね」


 はあっっと大きなため息。うん、ため息ぐらいなら幾ら吐いても構わないよ。それでね、武見さんが魔法を使ってくれたのよ。だから、ちょっと出来ることを考えようかなって。こんな話、本山先生のところの研究者の人たちには可哀想だよね。

 だからと言って、自分に振るのは間違っている……うん大丈夫、だれも間違ってるとは思ってないから。それで、武見さんのことなんだけど、これからどうしたら良いと思う?

 そっか、だからオルティアさんを連れてきたのね。魔力の概念をオルティアさんに考察して貰うのね。それはそれとして、質問が一つあるんだ。うん、インテグラさんが大人しくしてくれたんだね。てっきり、自分も付いて行くと我が儘を言ったんじゃないの?


「彼女は大人の女性ですよ。大人の女性……だと思っておいてください」


 お父さん、ご苦労様でした。こっちにシア母さんがいるから、普通は大人しくしていないと思うんだ。

 繰り返すけど、武見さんのことをどうしたら良いと思う? だって、魔力を持たずに魔法を使ってくれたんだよ。だとしたら、出来ることを考えるのも大切だと思うんだ。


「それなのですけど、魔法の逆展開は可能だと思いますか?」

「魔法の逆展開……と言うのは?」

「魔法として練り上げられたものを、魔力に還元することを言っています」

「キヨヒコよ、それはアンチマジックとは違うのか?」

「シア、アンチマジック自体を理解していないんです。その説明から始めてくれますか?」


 うん、アンチマジックと言われてもさっぱりわからない。厨二病……で良いんだっけ? その患者のお父さんがわからないのなら、私たちにわかるはずが無いよね?


「魔法に対するカウンターのようなものだな。具体的に言うとだ、魔力の練り上げ……魔法への転換を邪魔するものだ。この魔法……でいいのか、それを使われると魔法を使うことが出来なくなるのだ」

「だとしたら……」


 流石のお父さんも、すぐには答えが出なかったようね。答えはある、ただ説明の仕方を考えただけ。なんかさぁ、お父さんがどんどん人間離れしてきた気がするわ。ねえ武見さん、あなたもそう思わない?


「そうか、俺には論理的思考をしている気がするのだが?」


 論理的思考って……一応私も理系なんだけど。それからグレゴリーさん、何か意見があるのかしら?


「俺も、言いたいことが理解出来た気がするんだが……ただ、言語化能力に欠けているのでそれ以上は無理だな」

「アンチマジックの詳細がわからないのですが、魔力の練り上げを阻害する。だとしたら、プログラムに邪魔なコードを挿入するようなものと考えることが出来ますね。それに対して私が言っているのは、ゆで卵を生卵に戻せないかと言うことです」


 ゆで卵を生卵に戻すって……絡みついたタンパク質を解くって奴のこと? つまり、形作られた魔力を元の魔力に戻す……そう言われると、出来そうな気がするから不思議ね。でも、それをすると何か良いことがあるの……ねえシア母さん、どうしてそこで膝を打ってくれるのかしら?


「かすみよ、われには画期的な話に聞こえるのだ。例えばだが、インテグラのブレスなのだが、あれは魔法の結果なのだ。われの極大攻撃魔法もそうなのだが、魔力を練り上げ破壊の力に変換したものなのだ。その力を元の魔力に戻せるのなら、魔力の攻撃を無力化することが可能となる。しかも魔力に還元されるのだから、再度魔法に練り上げることも可能となるのだぞ」


 無力化の意味はわかるけど、再利用の利点がよくわからないんだけど……どうしてそこで武見さんを指差すの? つまりなに、武見さんを攻撃したら、カウンターで魔法が帰ってくると言うのね? だそうよ武見さん、シア母さんの極大攻撃魔法を受けてみる?


「俺に死ねと言っているのか?」


 単なる話の流れだけよ。ただ今の状況では、魔法の逆展開が出来そうなのは武見さんだけよね? もしもし、シア母さんはどうして手を上げてるのかな?


「われにも出来そうな気がしただけだ。同じ魔法で打ち消すことなら今までしてきたのだが、確かに元の魔力に還元する方が役に立ちそうだな。そう言うことなのでカズシ、これからぬしに浮遊魔法を掛けてやろう」

「おい、いきなり難易度が高くないか?」

「かと言って、炎熱魔法ではぬしが焼け死ぬことになるのだぞ。浮遊魔法程度なら、ちょっと痛い目を見る程度で終わってくれるのだ」

「そのちょっと痛い目と言うのが恐ろしいのだが……おい、いきなりそれかっ!」


 あっ、武見さんが50センチぐらい浮き上がった。それぐらいなら、落ちても怪我をしないからいいと思うよ。


「全くむちゃくちゃだな。それで術式なんだが……なんとか解読できたのだが。どうすれば、魔法に還元できるんだ?」

「パズルだと思って解いてみてください。なにしろゆで卵だって、尿素を使えば生卵に戻すことができるんですからね」

「化学的変化と一緒にして欲しくは無いのだが……カウンターをしろと言うのとは違うのだよな?」

「別に、それでも構いませんよ。武見さんは、魔力を持っていませんよね。その状態で、どうやってカウンターをするのですかね」


 ああ、武見さんが頭を抱えてるよ。確かに、魔法のカウンターをするには魔力が必要だよね。そしてその魔力を、武見さんは持っていない。うん、結果的に魔法を魔力に還元するしか手段が無いわけだ。


「物理現象になった時点で魔法とは違っていると思えるのだが……」

「ソノブツリゲンショウナノデスガ」


 ああっ、オルティアさんが参戦してきた。


「アナタノカラダガウイタノハブツリゲンショウ。デモ、アナタノカラダヲモチアゲテイルノハマホウ」

「だがな、体を持ち上げる力は物理現象……何の力だ?」


 あっ、今度は首を捻ってる。色々と忙しい人なんだね、武見さんは。


「重力操作では、こんなに精密に体を持ち上げられないか。なにか得体の知れない力に包まれて、体を持ち上げられている……その得体の知らない力が魔法と言うことだな」


 今度は眉間にしわを寄せて……うん、考えてる考えてる。


「つまり、術式に含まれている力の部分……どれだ……これか。それはそれとして、どうして俺はいつまでも浮いているんだ?」

「うむ、われが魔力を供給し続けているからな」

「つまり、術式には魔力供給を受ける部分があると言うことだな」


 もう一度眉間にしわを寄せたと思ったら、急に何か早口で呟いてくれた。つまり、解析が終わったと思って良いのね。だって武見さんの体が、ゆっくりと……じゃないな、50センチの高さから墜落してくれたから。


「結局、何をしたのですか?」

「ひとまず、魔力供給を遮断してみた」

「それならば、アンチマジックで実現できているものだぞ」

「なのだろうな。もう一度お願いをしてもいいか?」

「うむ、お安いご用だ」


 シア母さんのサービスが良いのは、お父さんがここにいるから? 否定はしないが、それだけでは無いと言うのね。そっか、面白そうなことになっているのが理由なのね。確かに面白い話になっていると思う。

 それで武見さん、今度は解呪……だっけ、解呪出来そう?


「それなんだが……解呪しても大丈夫なのか? いや、今朝酷い目に遭ったのを思い出したんだ」


 今朝、酷い目……ひょっとして、魔力酔いのこと? ほら、科学の発展には犠牲がつきものと言うじゃない。


「止めてくれと言うのは贅沢なことなのか?」


 うん、贅沢。だって、これで新しい扉が開くのかもしれないから。その機会をみすみす逃すなんて、科学者としての資質を疑われることだと思うのよ。


「ずいぶんなことを言ってくれるのだな……だが、間違っていないんだろうなぁ」


 上を向いて、頭を掻いて、大きく息を吐き出して。それって、お父さんがよくやってる奴だと思う。別に、二番煎じなんて言わないわよ。覚悟と割り切りが必要なのはわかってるから。

 うん、理解してるからさっさとやってくれないかな?


「人ごとだと思って……」


 人ごとでしょ。だからさっさとやってくれない?


 流石に観念したのかな、それは良いんだけど、悪い予感がするのは気のせい? 気のせいじゃ無い、ちょっとした仕返しを考えている。ええっと、ちょっとした仕返しって、なに?

 そう考えていたら、武見さんの体がゆっくりと降りていきました。そしてその代わりに、なんか危ないものが私の方へ……ひょっとして純粋な魔力? どんくさいと言われる私が、そんなものを避けられると思ってるの?


 と思って腕を顔の所に上げたら、誰かが私の前に立ってくれました。誰って……お父さん、歳を考えた方が良いと思う。武見さんも止めて……手遅れ、止め方を知らない。それって、かなり無責任だと思うんだけど。


「だけど立木さん、平気な顔をしているのだが?」


 ええっと、お父さん。こっちの面でも非常識になってくれたの? 非常識って言うなって、やっぱり非常識だと思うんだけどな。


「多分ですけど、慣れだと思いますよ。シアとかインテグラとか、魔力の塊と接することが多いですから」


 接する……深く接すると言う意味よね。なにシア母さん、時々魔力の抑えが効かなくなる。その時々って、どんな時のことかな? そっか、あの時のことなのね。ねえシア母さん、暴れて良いかしら。

 ところでお父さん、お父さんは魔法を使えないの? だって、魔力だったらシア母さんのを貰っても大丈夫なんだよね。なに、その、武見さんと頭の構造が違ってると言うのは。魔法の術式をプログラム解析するのが異常。そんな異常な真似は流石にすることができない。だってさ武見さん、お父さんにも異常って認めて貰ったよ。うん、うちの集落だったら喜んでも良いことだと思うわよ。あらっ、誰かが来たみたい。


 はい、ノックをして入ってきたのは本山先生でした。楽しそうな声が聞こえてきた……いえ、武見さんが異常だってみんなで言っていたんです。なんです、それがIMO研究所の常識と言うのは。IMO研究所には、異常な人揃いって……もしもし、私も異常な方に含まれているんですか?


「自覚がないのは問題だと思うのだがね。それは置いておくが、立木、今日はのんびりしていけるんだよな?」

「ここから帰るのは簡単と言うのもありますが、宿を取っていませんからね。まあ、軽くなら付き合えるだけの時間はありますよ」

「なら上等。おばんざいのうまい店があるんだ。色々と話したいことがあるから付き合ってくれ」

「その、色々と話したいことが怖いのですけどね」

「なに、次はどこに飲みに行くのかの相談程度だ。ああ、海の幸がうまかったんだよ」


 年寄りが揃って、慰安旅行の相談……いえ、次は仲間外れにしないでくださいね。だって日間賀島だっけ、私は行っていないんだから。うん、奈良は奈良で楽しかったけどね。

 それでお父さんと先生は別行動……だとしたら、私たちはどうすればいいのかな? オルティアさん、どうかしたの?


「ワタシモソチラニマジリタイ」


 だってさ、お父さんと先生。今日は遠慮して欲しい……それより、武見さんと議論をして欲しいと言うのね。


「ダッタラドコカデウメアワセヲシテホシイ」


 条件闘争は認めない。お父さん、結構はっきり言ってくれるんだ。そっか、オルティアさんも聞き分けてくれるんだ。

 それで、私たちは? どうかしたの武見さん。


「いや、今日はのんびりとさせて欲しいのだが……明け方まで騒ぐと言うのは勘弁して欲しい」


 その辺り、グレゴリーさんはどうなのかな。同感、連夜は流石に辛いと言うのね。仕方が無いなぁ、だったら一次会だけで切り上げましょうか。何です武見さん、一次会は何時に終わるのか、ですか。嫌ですね、普通の時間に終わると思いますよ。ええ、IMO基準の普通ですけど。朝までやってる居酒屋さん、確かあったと思うから。




 本山に連れて行かれたのは、ちょっと落ち着いた割烹のお店だった。まだ若めの板前と、落ち着いた雰囲気の女将……本山の趣味かな。それはそれとして、関東ではなかなか無いお店なんだよ。まあ私が知らないだけなんだろうな。

 それで本山、私をわざわざ呼び出した理由はなんだ?


「色々と相談に乗って貰いたい……まあ、そんなことだな」


 お前が、世界的権威のお前が、ただの年寄りの俺に相談と言うのか。悪い、ただの年寄りと言うのは問題があるな。それはなんだ、人の問題を言っているんだな。


「それが最初に出る奴が、ただの老人であるはずが無い。それはそれとして、色々と売り込みがあるんだよ。後はだな、名の通った研究所と手を組まないか、相互交流しないかと言うお誘いがある」


 異世界人の分析は、今のところお前の所が独占しているからな。IMO研へのコンタクトが難しければ、お前の所に行くのも不思議じゃないのは確かだ。その点で言えば、悪いことをしたと思っているんだぞ。


「いや、こんな美味しい研究素材を提供して貰ったんだ。感謝こそすれ、文句を言う筋合いはないと思っているぞ。下世話な言い方をするとだな、ノーベル賞級の研究素材を幾つも提供して貰ったことになるわけだ」


 その前に……まあ、下世話と言う枕詞を言ってくれたな。まあ、『人類の発展』に大いに貢献するのは間違いないんだろうな。ああ、個人的な名誉を得ることは否定しないぞ。それが、研究のモチベーションになるんだからな。

 それは良いのだが、私に相談することがあるとは思えないんだ。相手を見抜く目と言う意味で言ったら、私では太刀打ちできないだろう。なんだ、普通の研究者ならと言うのは?


「仮説を立て、その検証を行いさらなる仮説を立てる。それから視点を変えて、さらなる仮説を構築する。そのやり方が、今回全く通用しなかった。なにしろ分析しようとした検体から、全く差異を見つけることが出来なかったんだ。電気的刺激とか酸とか酸素とか熱とか……考えつく限りの刺激を加えてみても事情は全く変わらなかった。試しに放射線を当ててみたのだが、それでも普通の細胞と同じ振る舞いをしてくれたんだよ。こうなると、俺たち研究者の手に負えなくなってしまう。だから御衣黄には、お前を頼れとアドバイス……ではないな、俺の本音を口にしたわけだ。そうしたらお前、武見だったか、あんな傑物を連れてきたんだよ」


 武見君のことは、全くの偶然なんだがな。ただお前の言いたいことは理解出来る気はするな。


「売り込んでくる奴、提携を申し込んでくる相手は間違いなく優秀なんだよ。そいつらの中から、将来ノーベル賞を受賞する奴が出るぐらい優秀だと思っている。うちの奴でもそうなんだが、負けないぐらい優秀な奴は何人か居るんだよ。それでも、武見のような奴は一人もいなかった。そして異世界人の分析には、彼のような人材が求められているんだ」


 何しろ彼は、人類で初めて……多分初めてだと思うんだが、魔法を使ってくれましたからね。その意味で言えば、これまで無かった人材なのでしょう。


「その意味で言えば、御衣黄は俺たち側にいる研究者なんだよ。その御衣黄が特別なのは、IMO研を代表していること。そしてその背後に、お前と言う知恵袋を抱えていることだ」


 その先は待ってくれとしか言いようがありませんね。私がお前の研究所に行ったとしても、殆ど役に立つことはありませんよ。むしろ役に立つ場面が無いと言った方が良いと思います。もっと言うのなら、中に入り込まない方が良いと思っているぐらいです。


「それはお前の言う通りなんだろうな。外にいる方が、客観的な視点を持つことが出来るのは確かだ。中に入って研究すると、気をつけていても視野が狭まってくるものだからな」


 それも、仕方がないことだと思いますよ。あまりよそ見ばかりをしていると、研究の深みにたどり着けませんからね。たまたま今回は、私たちの常識の通用しない世界だったと言うことです。繰り返しますが、私の持っている常識も通用しませんからね。


「それがわかっているから、お前は非常識な世界に踏み出すことが出来るのだろうな。それもまた、得がたい才能なんじゃ無いのか? だから、うちに来ない方が良いと言うのは賛成できるんだ。色々なものを食い散らかして、意味のあるものをピックアップしてくれるだけでも価値がある。そして、たまにオルティア女史とか武見君のような人材を掘り当ててくれれば良い」


 随分と難しいことを言ってくれますね。だんだん私も有名になってきましたからね。これまでのような、偶然が期待できなくなっているんですよ。ええ、私の立ち回り先は分析されているそうです。これから先は、『優秀』な研究者が、日本の居酒屋や温泉で酒を飲んで待ち構えていると言うことになるんですよ。

 そんな状況で、偶然の出会いがあると思いますか? それでも、私なら偶然の出会いをしてくれる。偶然で無くても、使えそうなのをフィルタリングするだけでも意味がある。


「お前だって、上里集落に引き籠もってはいられないだろう。だったら、諦めて出会いを求めることだな」


 若い頃なら、出会い……つまり綺麗な女性との出会いを求めるところだと思いますよ。いえ、今はそっちも求めていませんから。求めてないんですよ……だから、クロアさんのことは持ち出さないように。あれはですね、出会いなんてものじゃ無いんです。捕食、そう私は捕食されたんですよ。

 そうですか、それでも羨ましいと言うんですね。だったら本山、お前向けの女性を紹介してあげましょうか。ちなみにうちには、フリーの女神様が一柱いるんですよ。なんです、話は聞いていると言うのは。年寄りには、肉体的限界と言うやつがあるんですよ。マラソンをやってるあなたと、一緒にしないで欲しいですね。




 和志は送り出した。だったら残された俺が何をすれば良いのか。うんキコちゃん、趣味に生きていると言わないように。エンターテインメント部門を統括するのなら、色々と挨拶回りも必要なんだよ。ああ、最初にするのは大谷村役場への挨拶だな。

 そう言うことなので、セレスさん、エリザベスさん、中林氏だったか、村長さんへの紹介を頼めるかな。予めお願いをしておくのだが、俺におかしな強制力を働かせないようにしてくれよ。人の奧さんに手を出すような悪癖なんか持っていないんだからな。


 それで、これからどうやって大谷村役場まで。


「それなんだけど、役場には直通ゲートが作られているのよ」


 直通ゲートって、女神様が作った奴のことか? こんなことを言ってはいけないのだが、奇跡の大安売りをしていないか。使えるものを便利に使っているだけ……そんなことで良いのかと思ってしまうのだがな。

 なるほど、役場の一室にIMO研専用の部屋を作って貰ったんだ。転移をするんだったら、場所を選ばないといけないのは確かだしな。しかしこの仕組み、欲しがる奴が沢山いそうだな。これだけでも、かなりの商売ができるんじゃないのか?


「それは否定しないわよ。シャルの転移だって、便利すぎる能力だと思ってるから。あれがあると、普通の交通機関が不便に感じられるから。ただ、そこかしこに転移して良いものなのかわからないし……」


 それは、安全性のことを言っているのか。確かに、こんなものは誰にも検証できないことだな。


「それに、シャルの能力は妨害されたこともあるのよ」


 妨害って、そもそも原理がわかっていないのに妨害できるのか?


「ええ、コーメーが妨害してくれたわ。その結果どうなったかと言うと、転移先が裏の森に変更されたのよ。それを知らずに転移した私たちは、5m積もった新雪にダイブすることになったわ。もうね、本気で死ぬかと思ったぐらいなのよ。だって、脱出しようにも同じ場所にしか転移が出来なかったから」


 5mの新雪にダイブって……想像するだけでもぞっとするな。ああ、スキーとかスノボはしたことがあるからな。コースから脇に逸れて、新雪に突っ込んだ経験もあるんだよ。さほど深くない新雪でも、和志に助けて貰わなければ脱出できなかったんだよ。もがけばもがくほど沈んでいく……手がかりが無いのがあれほど怖いとは思わなかったぞ。

 そうか、その時はもっと恐怖だったと言うのだな。


「だから、転移とかゲートとかに慎重になっているのよ。多分だけど、少しずつ接続先を増やすことになると思う」


 何が起こるのかわからない以上、慎重になるのも仕方が無いのだろうな。じゃあ、中林村長に挨拶するとしようか。魔王城公開、ブーランジェリー王国ツアーの責任者は、一応俺と言うことになっているんだからな。



 中林村長か、まあ普通のおっさんと言うのが正直な所だ。ただまあなんだ、やけに元気の良いおっさんなのは確かだな。なんで立木さんと言い、元気の良いおっさんが揃っているんだ……なんだ、なぜか背中に冷や汗が流れたのだが。殺気なのか、これは殺気なのか? だけど、どうして俺が殺気なんか向けられなくちゃいけないんだ。俺は、別に変なことをしていないぞ。


「朽木さん、それは私も通った道ですよ」


 ああ、小谷さんか。ところで、どうして小谷さんも通った道と言う話になるんだ?


「あるキーワードを口にするとですね。背中に冷や汗が出るようになるんですよ。具体的に言うとですね、立木さんのことなんですけどね」


 それはなんだ、立木さんをおっさんと言うと……あっ、さっきより酷い汗が背中に流れた。だ、誰だっ、俺に殺気を向けるのは。

 ……おかしいな、ここには小谷さんしかいないんだが。小谷さん、俺に殺気を向ける理由はないよな?


「それ以前に、私程度じゃ背中に汗なんか流れませんよ」


 だったら、この殺気はどこから向けられているんだ。別に大声ってことも無いだろう。だったら、誰の耳に届いているんだ? 小谷さん、どうして上を指差してくれるんだ? 上って……ここだと倉庫になっているんだよな? 倉庫にいるのは、せいぜい薄墨さんぐらいだよな。


「いえ、もっと上を指差しているんです。そのですね、燕温泉に行ってから更に酷くなったんですよ」


 いや、その説明でわかれと言うのは無理がありすぎるぞ。なんだ、その非常識は今に始まったことじゃないと言うのは。それはそうと、次に挨拶に行けば良いのは? 大谷興業……ああ、ゲート関係を見て貰っているところだな。確かに、エンターテインメント部門としては重要なパートナーだな。

 それでどうやって大谷興業に行けばいいんだ? なるほど、三辻氏……あのイケメンに話を通せば良いのか。しかし三辻氏なんだが、レディコミにでてくるようなイケメンだな。そうか、奧さんももの凄い清楚系の美人と言うのか。興味深いことだが、今必要な情報なのか、それ?


 しかしなんだ、俺もいけてる方だと思っていたんだ。だがな、流石に三辻氏と比べられたくないぞ。スタイル……腰の高さなんて日本人離れをしてるだろう。

 それは良いんだが、ここから本社までは? そうですか、車を出してくれるんですね。


「ベンツじゃなくて申し訳ありません」


 いやいや、普段の移動はミニバンを使っていたんだ。だから黒塗りのベンツなんて、あまり趣味じゃないと言えば良いのか、うん、ハイエースね。建設関係なら、普通の車と言って良いんじゃ無いのか?


「いえ、これはグランエースと言う車です。まあ、ハイエースと似たようなものですけど」


 そうか、俺は無知をさらけ出してしまったんだな。それはいいんだが、豪華な中身をしているんだな。


「エンターテインメント部門、つまり私どもとの窓口になって頂けると伺っております。立木様の関与が薄くなる以上、朽木様との良好な関係が大切だと考えておりますので」


 なるほど、立木氏は副所長だしな。ああ、エンターテインメントだけに関わっていられないのは確かだろう。ただ俺を呼ぶのに『様』付けは必要無いぞ。まだまだ24の若造なんだからな。

 そうか、三辻氏も24なのか。その割に落ち着いていると言うのは言ってはいけないことか?


「いえ、そう仰って頂いて光栄ですね」


 いや、まあ、なんだ。男でもぐっとくるイケメンだな、あんたは。それは良いのだが、大谷興業ってのは本当にここなのか? いや、その、なんか物々しい雰囲気があると言えば良いのか。


「朽木様がお見えになると言うことで、少し立て込んでいたと言うことです。我が社はIMO研との関係を重視しているんです。地場の目立たない建設会社が、こうして日の当たる場所に出させて貰ったのです。構成員……社員一同IMO研、立木様には感謝をしているんです」


 今、さらりと気になることを言われたような……気のせいでは無いが、気のせいにしておいて欲しい。いやいや、流石にそれはないと思うぞ。それから、どうして厳つい奴らが待ち構えてくれているんだ。


「お客様に礼儀を示すため……そう受け取って頂けると幸いです」


 だからと言って、両側に並んで頭を下げてくれるのか? 俺に、あの間を抜けて歩いて行けと? それで、前で頭を下げてる迫力のある人は? 三辻氏のお父上……大谷興業の社長様ですか。つかぬ事を伺いますが、破防法対象とかになっていませんよね。

 そうですよね、流石にそんなことにはなっていませんよね。いえいえ、失礼なことを言ったことを謝らせていただきます。


「そんな無様な真似はしていないと言うのがお答えになりますね。社員の生活を守るためには、何事もほどほどにするのが肝要なのですよ」


 その、何事もほどほど、ですか。ちなみに立木氏は、どうやってこちらと関係をもたれたのですか?


「どうやってって……一升瓶を2本下げてぶらりとおいでになりましたね。しかもお一人で……いやはや、度胸が座られていると言えば良いのか、なんと言えば良いのか。私では、とても真似ができないことだと思います。社長も、心底惚れ込んだと言っておりました」


 そうですか。そんな覚悟が必要な場所なんですね。言葉遣いが変わった……いえ、そんなつもりは無いんですよ。ただ、まだまだ自分の世界が狭かった。それを実感させて頂いただけです。はい、気にしないで頂けると幸いです。

 それからですね、いえ、どうして皆さん目をキラキラとさせているんですか? 異世界は憧れ、その仕事が出来るのを喜んでいる。そうですか、家族の方も涙を流して喜んだと言うのですね。いえ、お役に立てて光栄です。はい、これからも良好な関係を保っていければと考えている所存です。

 ところで、どうして安心したと言ってくださるのですか?


「いえ、朽木様がこちら側の方とわかったからと言えば良いのでしょうか。IMO研の方たちは、世界が違う方たちばかりなんですよ。立木様なのですが、普通の方に見えるのが一番恐ろしいと思います。その意味で言えば、諸星様も普通の方に見えますね。ただあの人の場合、発している空気が違うのでまだましだと思うんですよ」


 そうですか、私もそちら側と言うのですね。いえ、言っている意味はよくわかります。違いますね、思い知らされたと言えば良いのか。それはそれとして、社長様に挨拶させていただきます。はい、ご支援の程を宜しくお願いいたします。IMO研として、良好な関係を保っていければと考えておりますよ。

 五体満足で返して頂けるのですよね。言っている意味がわからない。いえ、ちょっと錯乱しただけと思っていただければ結構です。




人には、様々な意味で許容量と言うのがあったりします。まあ、経験と共に増えていくのですけど(意味深)

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